知らせ

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そこから合格発表までの時間は
どこの親でもそうであるように
私もただひたすら
二人が合格であることを祈るばかりだった。

普通の親でもそうであろうに
受験期の子供にはあまりに酷な出来事が
その時の我が家には起こっていたから
私の思いは人一倍だったと思う。

両親の仏壇
地元の神社
果ては昇る朝日にまで
私はとにかく手を合わせひたすらに祈った。

その時の私には
それ以外にできることが無かったからだ。

結果は
二人そろって合格というものだった。

両親が不倫だの
未成年者に対する教育保護の義務だのと
人として次元の低いところで争っているその時間
子供達は自分たちが今すべきことを
しっかりと見極め行動し成し遂げたのだ。

家で一人合格の連絡を聞いた私は泣いた。

もちろん嬉しさと
安堵感と
子供に対する申し訳なさとの入り交じった気持ちで。

二人の合格が確定した夜
私は子供達が好きなものを何品も何品も作り
夕食のテーブルに並べた。

夕方になり帰宅した子供達の顔は明るかった。
三人はよくしゃべりよく笑いよく食べた。

そんな安心した三人を見ていると
私はただただ嬉しくて誇らしくて
心の中で誰にとは無しに感謝した。

三人が各々の部屋に上がっていった頃
私は一人キッチンで洗い物をしていた。

さっきまでの子供達の楽しげな声が
まだ耳に残っていた。

私までもが久しぶりに心浮き立つ時間だった。

洗い物も終わり
私はコーヒーの入ったマグカップを手に
食堂の椅子に一人座った。

我が家の食堂のテーブルは
結婚した時夫と二人で選んだ古いものだった。

まだ子供もいないのに
夫は六人掛けの大きなテーブルを選んだ。

「二人で住むのにこんな大きなテーブル?
第一これはうちの食堂には大きすぎるよ。」

「いいんだ。子供はいっぱいの方が良い。
四人掛けじゃすぐに
買い替えなくちゃならなくなるよ。」

そう言って夫は笑った。

そのテーブルには未だに家族分の
五つの椅子が置いてある。

夫の席はもうすでに一年半以上前から空席なのに。

ここが埋まっていたら
今夜の子供達の喜びも
もっと大きなものだったのかな。

ふとそう思うと涙が出た。
私の心は子供達に申し訳ない気持ちで
いっぱいになった。

ここまで来て
離婚裁判まで始まっていて
今更そんな夢物語を思い浮かべたところで
もうどうにもならないことは
誰に言われなくても私自身が一番知っている。

自分一人なら
子供がいなかったのなら
私はとうに夫に見切りを付けて
少しでも多くの慰謝料をもらい離婚するよう
早急に話を進めていたであろう。

そして
こんな風に夫の影を追うことも無かった。

しかし我が家には
夫と血の繋がった子供達が三人もいるのだ。

私を除いて
その四人の血のつながりを考えると
有るべき姿を考えると
私は自分がどうすべきなのか
どう動くべきなのか分からなくなるのだった。

私はこの世で一番愛する子供達のために
その子供達の世界でたった一人の父親と
戦っているのだから。

四月の頭には
長女は地元の高校で
長男は東京の大学で入学式があり
新生活が始まる。

こんな事で落ち込んでいる暇は
今の私には無いのだった。




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