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2012-04-29 16:38:29

「ホープ氏族のフィンガーボウル」

テーマ:アンティークガラス(イギリス)
            イギリス クリスタルフィンガーボウル6客セット  1880年頃
坐韻通信


 スコットランドのホープ氏族の紋章が入ったフィンガーボウルです。
 ホープ氏族といえば、リージェンシーの家具デザイナーとしてつとに高名なトーマス・ホープ(1770~1831)がいます。
 このフィンガーボウルはその孫にあたるホープ家の人達が注文してつくらせたものです。
 紋章は、少しこわれかけた地球の上に虹がかかり、その両側に湧き立つ雲があります。
 またホープ家のモットーは、「AT SPES INFRACTA」 と記されており、「Yet my hope is unbroken」という意味らしいです。
 スコットランドの名門だけあって、このフィンガーボウルも実に美しい形をしています。
 何にでも使えるフィンガーボウル。 テーブルを品よく飾ることでしょう。


坐韻通信



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                イギリス クリスタルフィンガーボウル6客セット
                 スコットランドのホープ氏族のクレスト(紋章)入り
                1880年頃    直径12.5cmx5.8cm


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2012-04-28 17:19:06

ヘッセ詩集「祈り」

テーマ:文学
 退院した日の帰り、以前から買い求めようと思っていた新潮文庫版の「ヘッセ詩集」をようやく手に入れた。
読み直したい詩が二編あったからだ。
 若い頃から求めてきた本たちは、生活の根本が変わるたびに古本屋に放出された。
 ヘッセ詩集もとっくの昔になくなっていた。
 それが、冬を超えるころだったか雑誌か新聞かで、ヘッセのことが書かれてあった。 ああ、いまヘッセを読まなくちゃあ、という思いに駆られた。
 読み直したかった詩の一つはこの詩だった。
 ただ納得したかった。

  
        祈 り       

  神さま、私をして私に絶望させて下さい、

  しかし、あなたに絶望させないで下さい!

  迷いの嘆きを残りなく味わわして下さい、
 
  あらゆる苦悩の炎をして私をなめさせ、

  私をしてあらゆる辱めを受けさせて下さい!

  私が自分を保持するのを助けないで下さい、 

  私が自分をひろげるのを助けないで下さい!

  しかし、私の我のすべてが砕けた時は、

  それを砕いたのはあなたであったことを、

  あなたが炎と苦悩を生んだことを、

  私に示して下さい。

  なぜなら、私は喜んで滅び、

  喜んで死にますが、

  私はあなたの中でなければ死ねないのですから。


                   ヘルマン・ヘッセ




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2012-04-08 20:57:19

「夜桜」

テーマ:店主ノート
ほの明りのもと夜桜を見ていると
ぼくの生れた日のことを想い出す
戦争で病いに倒れた兄が
傷病船で帰国して半年後
ぼくはとても暑い夏の夜に生れた
兄はよろこんでぼくの名を「健」とつけた
健やかであれとだけ兄は祈った
その兄を結核菌が兄の脳までのぼった
セキツイカリエス
死の二日前から兄はがむしゃらに
西瓜を食べ
「青い山脈」を歌い続けた

それまで、母はぼくを背負って
毎日、陸軍病院まで通った
広大な敷地のなかに点在する
病棟の周りには
大きな桜の樹が沢山
立ち並んでいた

その日も二歳半のぼくは
透き通る高音で「青い山脈」を
病室で歌ってみせた
自分ながらにその歌声に陶酔しながら
帰りが遅くなり外に出ると
満開の桜が病室の明かりに照らされ
白い花びらのトンネルになっていた
兄が病室から手を振るのが
光り輝くように見えた
夜桜の妖しい静かな景色を見たのは
それが初めてだった


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2012-03-28 21:59:39

「春」

テーマ:店主ノート
 ベッドのヘッドボードの向うに灯りがともる
 向いの小高い丘に建つ家並から
 夜のくらしのいのちがともる
 階下で阿久悠の「舟歌」が流れている
 谷間を入江からの夜気が
 ゆっくりと登ってくる
 横になったままふ~うと
 大きく息を吸う
 まぶたの裏にきのう会った
 青い線の入った白いサリー姿の
 シスターが微笑んでいる
 ケニヤから来たという彼女の
 素朴なやさしさがふわりと僕を包む
 世間はもう春なのだ

 夜一番の長い貨物列車が
 鉄橋を渡ってゆく
 写真集で見たインドの老女が
 こちらをじっと見つめている
 私は渇く、と声がする
 来店してくれた御婦人の
 バックとシューズの
 なんと水色の美しかったことか
 ああ春なのだ
 生きるほかない


坐韻通信



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     ※ 留守中も気をつかってご訪問くださり、ありがとうございました。
      ご心配をおかけしました。 体調少し戻りかかりはじめました。
      ありがとうございます。
    --------------------------------------------------------------------



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2012-02-23 21:58:40

「若さ かなしさ」 永瀬清子

テーマ:文学
 これほどすごい詩人だと知らなかったうかつさ。
 80を過ぎて刊行されたゆるぎなき高潔さの詩集「あけがたにくる人よ」の中から、今夜は「若さ かなしさ」を。


     若さ かなしさ      永瀬清子

  東京の小さい宿に私がいた時
  あの人は電話をかけてきて下さった
  あの人は病気で私に会いに来れないので
  それで電話で話したかったのだ

  かわいそうにあの人はもう立てない病気 
  それでどんなにか私に会いたかったのだ
  こんどはどうしても会えないよと
  とても悲しそうに彼は云った

  あの人は私よりずっと年上だし
  学識のあるちゃんとした物判りのいい紳士
  そんなに悲しい筈はないと若い私は思っていたのだ

  過ぎゆく人間の悲しさを
  私はまだ思いもせずに
  長く長く電話で話す彼に当惑さえしていた
  そして片手の鉛筆で
  何か線や波形を描いていた

  枯れ葉のように人間は過ぎていく
  その時瀕死の力をこめて私を呼んでいたのだ
  そして波のように私にぶつかりなぐさめられたかったのにー
  「人間ってそんなものよ」 「病気ってそんなものよ」
 
  私はああ、恐ろしいほどのつめたさ
  若さ、思いやりのなさ
  そそり立つ岩さながらー

  私を遠くからいつもみつめていたそのさびしい瞳に
  それきりおお 私は二度と会うことはなかったのだ




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2012-02-19 21:50:09

「母のかなしみ」

テーマ:店主ノート
              人間なんてさみしいね
            人間なんてかなしいね


 やなせたかしさんのピエロが涙を流しているタイル画に印字された文字がいまだに目の裏に焼きついている。
 確か高校生だったあの暑い日・・・。
 自宅の離れの方のトイレの目の前に突然貼り付けられていた。
 60にもなる母がなぜあんなタイルを古家の便所に貼り付けたのか。
 今になっても不思議でならぬ。 
 あの頃母はどんな思いを思いめぐらしていたのであろうか。
 当時人気の出始めたやなせさんのこのタイルを、なぜどこで見つけてきたのであろうか。
 当時の母の歳をこえ、かなしんでばかりいる自分に母は微笑んでくれているのであろうか。  



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2012-02-18 17:32:55

「クピッドの舞い」

テーマ:アンティークガラス(その他)
             イタリア ベトリ・アルテ・フォンタナ ゴブレット 1925年~1933年
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 天使(もしくはクピッド)たちが輪になって舞っています。
 花束やガーランドを、さらには天使の愛の‘矢’を持って踊ったり、跳ねたり・・・。
 黒エナメルの帯の中に一人づつ天使は表情まで豊かに描かれています。
 ‘Vedart' のサインが黒帯の中に細い線で書かれています。
 この作品を製作したのは、1881年にイタリア、ミラノで設立されたベトリ・アルテ・フォンタナ(Vetri d'Arte Fontana)というファームで、黒い帯の上に人物などを描いたさまざまなオブジェもあり、絵画的なモチーフを得意としたアールデコの作品が知られています。
 いかにもイタリアらしいモチーフで、1925年~1933年の間に作られたものです。
 実物はかなり大きなゴブレットで、直径12㎝、高さ19.5㎝もあります。
 非常に微妙な線と色彩で描かれております。


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                  イタリア ベトリ・アルテ・フォンタナ
                  ゴブレット 1925年~1933年


              
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2012-02-12 14:37:27

「リージェンシーのペア・クルーエットボトル」

テーマ:アンティークガラス(イギリス)
                イギリス ペア クリスタル・クルーエットボトル 1830年頃

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 僕はこの小さなクリスタルの壷を前にして、何も書けなくなりました。
 10代の終わりの果てしない物語の断片も、この壷を見ていると、一つとして掬い上げることができません。
 情熱的なものを受けつけない毅然とした立ち姿だからでしょうか。
 これは1830年頃のペアのクルーエット(cruet)ボトルです。 つまり食卓で使った薬味入れです。ビネガーやオイルを入れた。
 スクエアーな足元から立ち上がり、ストッパーまですべての面にカットがほどこされています。
 フォルムが見事です。 この時代のものがなかなか見つからないのに加え、これほど出来のよいものは極めて稀です。


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                イギリス ペア クリスタル・クルーエットボトル
                 1830年頃  5㎝x5㎝x高さ17.5㎝


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2012-01-26 16:07:08

「18世紀イギリスのゼリーグラス」

テーマ:アンティークガラス(イギリス)
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 1700年代後半のゼリーグラス点とカスタードカップ1点です。
 左のグラスが一番古く1760年頃、他の3点は1770年~1790年頃のイングランドのものといわれます。
 手前の小さいカップは、スコットランドのカスタードカップで、1810年頃のものです。
 とても珍しい貴重なグラスたちですから、お値段の方も現地でもそれなりに高価です。
 
 今では簡単に作れるゼリーですが、イギリスでは粉末のゼリーパウダーは1840年頃から発売され、それまでは骨を煮立てて上澄みをすくい続けてゼラチンを作っていたそうで、とても時間と手間がかかる大変な作業だったようです。
 また綺麗な色の数種のゼリーやクリームを何層かに重ねて、グラスごしのゼリーの色を愉しんだようです。
 こういう風に何事も愉しんで使ってゆきたいものです。


               イギリス 18世紀 ゼリーグラス
                     1810年頃カスタードカップ



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2012-01-24 20:38:55

「カーネーション」

テーマ:店主ノート
  はずしても
  ふみとどまっても
  人の道


 「カーネーション」は毎日が佳境です。
 連続TVドラマなど碌に見たこともないのですが、「カーネーション」はどうしたことか、その物語に日々くぎづけになります。
 最初は主人公を演ずる女性の演技の巧みさにひかれたのですが、すぐに、出演者全員が見事に役処を演じきり、見るこちら側はその展開にぐいぐい引きこまれてゆきました。
 これほど引きこまれるのはまず第一に脚本。 この脚本を書いた女性に頭が下がります。
 その人物の人物像がくっきりと立ち上る言葉の表現と物語性の巧みさは他に余り記憶にありません。
 15分間の人物たちのことばの表出と展開に一部の冗長さもスキもありません。
 戦前、戦中、戦後となり、僕の記憶にある風景も出始め、あの貧しかったけど、毎日が満ち足りていた少年の日々を思い起こしています。
 火野正平の自転車の旅とこの活き活きとした物語が、どれほど一日一日を越えてゆくのに助けになったことか、今夕もいま見終えて魂はまだふるえています。
 いつもそうですが、今日は近藤正臣の組合長の言葉は感動ものでした。
 「命を燃やさんでどうすうじゃ」 という言葉と最初の五・七・五の言葉でした。
 決して教訓的ではありません。


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               フランス ルネ・ラリック  「コキーユ」 1924年



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