【求人募集】GIGAZINEのために働いてくれる記者・編集を募集します
http://gigazine.net/index.php?/news/comments/20100802_gigazine_job/
■この記事、案の定ネット上でものすごい反響を巻き起こしてるね。僕も昨日これを見た時は「なんじゃこりゃー!!!」と祭りにしたい心境になった(笑)けど、今朝方クーロン黒沢が「これってプロレス」「これで多くのPV稼げたでしょ」という指摘を見て、あぁそういうことだったのかと納得した。
確かにこれで多くの収入を得たのは間違いないだろうね。
とはいえ、この求人自体は、おそらく本気なんだと思う。今回解雇されなかった社員の暴露も飛び出し、この事態はどこまで進展するのか、目が離せない展開になってる。
http://anond.hatelabo.jp/20100802204158
http://anond.hatelabo.jp/20100803002311
この件で「ブラック企業」「労働基準法違反だろ」「個人事業主のライターと契約すればいいだろ」とかってのはいくらでも思いつくし書けるが、一日たった今、そのあたりを指摘してる人はすでに多くいるので、もう書かない。かといって僕が経営者よりのことを書くなんてありえないし(笑)、そういう立場の意見もすでに多々、出てる。
そこで、あまり見かけないこの点について取り上げてみたい。
>GIGAZINEで働くという事は、普通の雇用主と労働者の関係とはまったく違うのです。「ニュースサイトで記事を書くというのは、普通の労働とは絶対に違うのだ!」ということを事前にちゃんと理解していただきたいのです。このことはブログを書いたりしている人であれば直感的に理解できると思います。好きだからこそきちんと書くのであって、ノルマで書いているわけではありません。バイトやパートの延長線上の時給ベースの時間の切り売りで考えていてはだめですし、自分のプライベートの趣味のためのお金が必要だから、遊ぶ金が欲しいから、ただそのためだけに働くというような人だらけでは、お互いに不幸になるだけだからです。
ずばり書くと、ニュースサイトで記事を書くというのは、普通の労使関係はもとより、個人事業主だろうがなんだろうが労働体系に関わらず、もはや対価を得るという行為として成り立たないのではないか? というのが今回のポイント。
それは、いわゆる「ライター」と「小説家」という、文章を書いてお金をもらうのは同じでも、前者が不要になってきてる、ということでもある。
もっと言うと、お金になる独創性のある文章というもののハードルが極めて高いものになっていってるということ。
■ここで登場するのがオタキングこと岡田斗司夫氏。最近じゃダイエットで有名になっちゃったけど、この人のコンテンツ論の鋭さというのは15年近く前から最先端を行ってた。いわく、著作権には意味が無い、コンテンツはもともとフリーなものであって、媒体(紙とか本とか)に金がかかるだけだ、という指摘。
このあたりを最初(?)に指摘した『ぼくたちの洗脳社会』
という本は発行するやいなやネット上にテキストデータで全文がいきなり無料(!)でアップロードされており、びっくりしたものだった。15年前といえばWindows95が登場したぐらい。まだまだ従来のパソコン通信(ニフティサーブやPC-VAN)が全盛だったし、インターネットってのはメカ好きの好きものがいろいろ試す程度の代物だったよね。
当時はまだPDFとかないし、メルマガってのもまだほとんどない。著作権が当たり前のものとして存在していたし、金になる文章というものを、ましてや一部をプロモーション的に見せるのでなく全文を公開してしまうなんて、ものすごく画期的なことだった。
その後ブログや、ニュースサイトが生まれ、普及し、広がって行った。結果、何が起きたか? 岡田氏が予想したとおりの、コンテンツフリー社会が到来した。いまや産経新聞は全文が無料でiPhoneアプリで読める。ラブプラスの熱海観光情報もネットで見れる。ガイドブックなんかいらない、買う必要も無い。そういや去年マカオに行くとき、マカオ観光局がカラーのPDFで立派なガイドブックを無料でネット配布してて、それをプリントアウトするだけでマカオ観光はまかなえちゃったりした。
商品の評価やレビューもネットで見れる。kakaku.comや2ちゃんねるを見れば、いいも悪いもすべて見られる。もはやプロのレビューなんか、いらない。
ニュースもそう。第一報ですら、その場にいる一般人がTwitterでつぶやいて、写真を載せる。Ustreamやニコニコ生放送で中継する。そのすべてが無料で見られる。
この状況で「プロ」が金を得られるとしたら、なにか?
■2ちゃんねる創設者・ひろゆき氏の名言として「うそをうそと見ぬけられない人にネットは難しい」というのがあるが、そういう人(情報弱者、情弱と言われたりもするが)は今後減りはしても、一定数残り続けると思う。彼らにとってはその「権威」とそれから生み出される「信頼性」こそがお金を払う価値として意味を持ち続ける。プロの目というフィルターを通してくれないと安心できない、というような人にとっては安心料を払う意味があるんだよね。
そういう意味で「限定情報」を得られる一部の特権階級のみが生きていけるのではないか。先にあげたように普通のレビューはもはやプロを不要としているが、販売前に関係者のみに許された事前レビューは一般人が手を出しようが無い。
それは言い方は悪いが、業者との癒着によって得られる既得権益のようなものだ。よく言えば実績、かな。それはそれで意味があるのでこれからも残っていくだろうけど、不特定多数のライターが切磋琢磨するような状況ではない。一般人が手に入れて後のレビューは、もはや不要。
だからこそ、先の「権威」「信頼性」を売りにする大手マスコミは、記者クラブの温存に必死になってる。記者クラブこそが「既得権」「限定情報」であり、「権威」「信頼性」の源泉だからね。
フリーのライターさんたちはそれを解放せよという。彼らはその結果自分らがそれで飯を食えるようになると思ってる。甘いんじゃないかなぁ……。フリーに解放された途端、それは一般発売された商品と同じことになる。まだ物理的に足を会見場に運ぶという手間がかかる間はマシだけど、大臣会見がネット配信されるようになったら、彼らが記事を金にする手段はほぼ絶たれると思ったほうがいい。裏情報をどれだけ反映できるかが鍵だけど、アマチュアでもそういうの詳しい人はいくらでもいるしね。
インプレスWatchのように携帯電話発売前に試供品を借りてレビューするってのなら、まだ金になる余地は残ってる。でもそういうビジネスは一部の既得権として残るだけで、新規には成り立たなくなりつつある。インプレスはともかくGIGAZINEは、こんな求人を出さねばならない時点で時すでに遅しではないだろうか。
■もう一つはドネーション(寄付)方式か、アメリカの小説家のようなエージェント方式。この点、小説家は強い。「限定情報」を自分の頭の中に持ってるからね。スティーブン・キングや村上春樹は、どんなにコンテンツ無料の時代になっても生きていくことが出来るだろう。だがその地位も、今後はまず無料でコンテンツを提供し、その後にドネーションを得るという形でしか成り立たなくなっていく。
つまり「ちゃんともらえるか分からず、お金は後払い」ということ。日本の「半雇用」のような、何万部刷る前提でこういう内容を書いてください、みたいな形は難しくなっていくからだ。
その作業(文筆)が必ずお金になるという保障が無い以上、生活の糧の中心、労働と捉えることはほとんどの人が出来なくなる。つまり、人生設計に組み込むことが難しくなる。博打のようなものになる。博打はそれで食うことを考えず、あくまでも趣味でやるものでしょ?
もちろん、ある程度実績を積めば自分の文章がどれぐらいの金になるか予想がつくようになる。博打で食えるプロもいる。でもそれは結果論、かつ少数。
博打やる前に結果に関わらず給与を支払う約束をするスポンサーなんかいないよ。勝ったら何割かもらう代わりに参加費を払ってあげるってのはあるけどね。無限に近いライバルたちを相手に、出来に関わらず一定額のお金(賃金)を払うなんてお大尽な経営は、既得権をがっちり保つ大新聞などにしか出来ない手法になっていく。
■コンテンツが原則無料となった社会でコンテンツでお金を得るというのは、至難の業だ。結果としてお金になることはあっても、事前にいくらぐらいもらえるだろうという予算を立てるのはほぼ不可能になる。予算を立てられないのでは、ビジネスとして成り立たない。雇用関係を結ぶことも性質的に出来なくなる。
これが結論でしょう。
■GIGAZINE編集長は「好きだからこそきちんと書くのであって、ノルマで書いているわけではありません。」と言うが、好きだからきちんと書くなんてことは多くの人間がすでに無料でやってしまってる。下手に書くと炎上したり自尊心を傷つける書き込みで溢れたりするので、そうそうバカなことはできなくなってるのが現状だからだ。
この圧倒的なまでのコンテンツ無料の波に、賃金をいくらかでも出さねばならないGIGAZINEが立ち向かえるとはとても思えない。
好きだからすることと、お金を結びつけること自体が間違いという時代が来つつある。
この状況において成功するか失敗するかは、運でしかない。これも岡田斗司夫氏が指摘してることだ。経費のかかるプロも持ち出しでいくらでもがんばってくれるアマチュアも同じ。評価は後からついてきて、結果として金になる事がある。だが最初っからそれを当てにするビジネスという形式はもはや成り立たない。
生存と行為(仕事と労働)がイコールで結ばれなくなる。であれば、生存は別の形で担保しないといけなくなる……これもまた、岡田氏らが言ってるベーシックインカム論に繋がる流れなんだけどね。
いままで「やりがい搾取」などと言われてきたマスコミの方法論も限界に来てるってことだと、今回の騒動で思った。いくら尻叩いて搾取しても、昔のように「いつかは記名記事」「いつかは本を出せる」なんて夢を見せることは出来ない。無料で書きまくるアマチュアがいきなり一本釣りされ、マスコミや論壇の表に登場する。そういう時代になりつつある。
雇用という形態にとらわれず、記事1本いくらで買う。まず結果ありき、金はその後というような、個人事業主ライターとの契約に切り替えたほうが良いと思うけどねぇ。なんで労働基準法に縛られる雇用という形にこだわるんだ? 不思議で仕方が無い。
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