∫あの夏、いちばん静かな海。∫
テーマ:くり太郎の映画大歓迎
くり太郎の映画大歓迎
今回は…、
あの夏、いちばん静かな海。
(日本)
なんだろ…。
久しぶりだからかな…。
私…、
うんちく…、
うんちくしてるぜ
そうだ
ウンチだぜ

さ、いこうよ
これで今上映中の『アウトレイジ』以外は全て観たことになるんだけど、北野作品。
実は今回の作品だけ今まで観ずに残してたの、わざと。
このわざと残しとく、というのを北野監督以外の監督、役者さんにも私はやっていて、小津作品や黒澤作品にもまだ観てないものがある。残してある。
なんで?って…、
なんでだろうねぇ(笑)
好きな食べ物を最後に残しとく的な…いや、うーん、そういうあれじゃなくて…あの…あれよ…だから…ま、うん、
考えとく(笑)
北野映画が好きである。
で、今作品が1番になったなあ…北野作品で、今回観て…。
一枚一枚、絵をめくるように。
母親が子供に絵本を読み聞かせるように進んでいく。
複雑な話の流れ、カメラワーク、映像技術などで観る側を翻弄していく最近の作品とは真逆
正直翻弄ものの作品、作風に慣れきってる方にはしんどいかもしれんね、今作品は。
いや、別にいけないってわけじゃないからね。私も好きだから、翻弄もの。
耳が聞こえない、喋れない男がある日、ゴミ捨て場に捨ててあったサーフィンの板を拾う。
見様見真似でサーフィンを始めるがなかなかうまくいかない。
海岸ではそれを見て笑っているサーフィン経験者達と、男が脱いだ服をたたんでいる恋人の女がいる。彼女も耳が聞こえないし、喋ることができない。
この主人公の二人にはもちろんセリフはない。
周りの出演者もほとんどセリフらしいセリフはない。あってもアドリブ、即興に近いものだ。
淡々とその現場現場を一枚一枚見せていくだけの作品。
とにかく、リアルである。
現実を求めている。
もちろんこの世にある作品という作品は物語の現実化ということを求めているモノばかりなんだけど(の、はずだけど…。)
ただ、人に観せる芝居の世界の現実化ということで、日常ではありえない非日常的な、劇的でリズム、テンポのある動き、喋りなどを現実化するよう多くの役者さん達が求められていることが多い。
多いのはそういう作品、作風のものが多いからなんだけど、最近。特に日本は。
だけど今作品にはそれは当て嵌まらない。
なぜならば、今作品は限りなく現実の質に近い世界を現実化したものだからだ。
極端に言えば、
‘現実を現実化する’という質の作品だと思う。
北野監督の頭の中に入ったことがないから断言できないが、小津映画の影響があるんじゃないかしら。というか昔の日本の多くの作品は程度の差はあれ、この辺りの芝居の質をおさえていると思うの。
こういう質の作品を作るにあたって役者さんに求められることは一つ。
とにかく、芝居にしないこと。
芝居を芝居にしないこと。
余計なことをしないこと。
最近はわからないが、北野監督は現場に入って初めて役者にセリフを教えるそうだ。
たぶんそうすることで役者をテンパらさせ、セリフを言うだけで精一杯にして、余計な芝居をする余裕をなくさせようとしているのだと思う。
また言うが、今作品にはセリフがほとんどない。
主人公の二人にいたってはゼロだ。
さて、セリフがないと役者さんはどうなるか。
自身の経験からになるが、まず、
① オドオドする。
いや、オドオド
するよ、大概の役者さんは(笑)
ひとえに日ごろ、セリフに頼って芝居してるかってことだよね。
セリフを上手く喋れば、いい芝居が、いい作品ができるという勘違いからくるんだけども。
でまあ、オドオドしてる場合じゃないもんで。
何とかしないと。
そう…次は…、
② やるシーンの状況を考え、頭に入れる。
…うん。
で、次は…、
③ やる。
で…以上
終わり
以上だよねぇ(笑)
もう、やる、しかないよね(笑)
でもね、一度やってみてください。セリフがない芝居。
腹、すわるから。
つまり腹で芝居をする、腹で生きるってことがわかりますから。
あと、わざと余計な芝居をやってみてください。
スベるから(笑)
もぅ~ものの見事に自分がやってることがスベってる~ってわかるから、自分で。もう知覚過敏ですから(笑)
そして、次のことが身に染みてわかると思うの。
‘ただ、そこに居る。’
これがこの世の役者さんがあらゆる物語の世界の中で求める、求められる状態だとわたくしは思っております。
セリフがあろうとなかろうとね。
黒澤明監督はオーディションの時、役者にその場でただ歩くことを要求したという。
その歩きが審査員側、つまり撮影現場においてはカメラを意識したものであればOUT!なんだそうだ。
いつもその辺を歩くようにただ、歩くこと‘居ること’を役者さんに求めた。
私が知ってる中で、その‘ただ、そこに居る。’状態を見事にやってのけている役者さんとして1番にあがるのが笠智衆さんだ。
小津映画を中心に本当に見事である。
そして今作品‘あの夏、…’における主人公をやった真木蔵人さん、大島弘子さんのお二人も見事に、笠智衆さんばりにやってのけている。ただ、そこに居るのだ。
海に行く。
海から帰る。
サーフボードを買いに行く。
バス停で別れる。
バスから降りて、二人でまた帰る。
フェリーに乗る。
軽トラに乗せてもらう。
大会に出場するが、スピーカーから流れる大会の連絡放送が聞こえないため、出場することなく他のサーファーの演技を終わるまで見る。
喋らない二人。
しかし、目や手ぶりでコミュニケーションをとっていく。
心同士で、腹同士で会話をしている。
私達健常者と同じように。
いや、私達以上に二人の会話はしっかりとキャッチボールがなされていて、そして純粋。
周りから観れば静かな二人。
でも二人の心と心、腹と腹の間には言葉にできない思いが行き交えっている。
お話自体はそんな二人のひと夏の、何も複雑怪奇なことのない話。
昔の歌じゃないけど、何でもないようなことで、そして幸せなことがその画面には詰まっている。
北野監督はすごいと思う。
多くの人が忘れがちな、見向きもしないことを常日頃から素直に受けとめ、より深く考えてないとこういう作品はできないんじゃないかしら。
そういう日々って…、
しんどいだろうなぁ(笑)
しんど過ぎて、死んじゃうんじゃないかしら…。
心が強くないと人に優しくはできないよね…。
これから夏です。
8月末、
「何にもなかったなあ~、この夏…。」
という状況になった場合はどうぞ、今作品を観てください。
彼ら二人を見届けてください。








