「いい加減、マイケルの話をしてくれ!」というご要望があった。私もいい加減、嫌になってきた。なぜこのブログで原発の話を延々とやるのかについて、説明しておかねばならないだろう。

マイケル・ジャクソンが原発についてどう考えていたのか、私は知らない。ご存知の方は、ぜひ教えていただきたい。

私がこの間、ずっと考えてきた言葉は、Smooth Criminal である。放射能は典型的な Smooth Criminal であり、また、原子力産業自体が、Smooth Criminal によって構成されたものだと思うからである。

原発事故によって放射能を持つ物質が大量にばら蒔かれると何が起きるだろうか。それは風に乗って遠くまで漂っていく。そして雨となって地面に落ちる。人々の衣服や靴について家に忍び込む。何かの拍子で食べ物や飲み物に入る。あるいは、川に落ちて水道に入り、蛇口から忍びこむ。あるいは乾燥して地面から舞い上がり、呼吸と共に肺に入る。そうやって体の中から放射線を至近距離で浴びせ、遺伝子を静かに傷つける。ヨウ素なら半年、セシウムなら数十年にわたって。

遺伝子を傷つけられた細胞の大半は黙って死んでいく。しかし中には、遺伝子を無理に修復し、変な配列を創りだして生き延びる奴が出てくる。それでも大半は、免疫系によって排除される。しかしそれをくぐり抜ける奴が出てきたら、癌である。それは徐々に増える。この過程が人を殺すには、長い長い時間が掛かる。何年か、何十年か。発病してもすぐにはわからない。

こうやって発病した癌や白血病は、それが原発起源なのかどうかすらわからない。遡って原因を特定することが本質的に困難なのである。原発事故がどういう病気を引き起こすかを明らかにするには、何十年にわたる、詳細かつ広範囲な調査が必要である。そんなことをするには大きな権限が必要であり、費用も人員も掛かる。これができるのは政府だけであるが、政府が原発を推進したいなら、決して真剣にはやらない。御用学者が適当に調査すれば、必ずや「明確な影響は認められない」という結果が出る。多少出ても、「限られた被害しか認められない」という結果が出る。

国民は間違いなく、この結果を喜んで受け取る。そして「あれだけの事故が起きても、影響は限られていたので、原発は安全だ」という欺瞞言語がさらに強化される。人々は通常の生活に戻る。自分自身に向き合い、真の幸福を目指すなどという面倒なことはやめて、自分の苦悩の原因を放置して隠蔽する。隠蔽された原因から生じる苦痛を紛らわすための刺激を求める。膨大な数の人にとめどなく刺激を与えるには、電気が必要である。それゆえ、原発も必要である。

原発というシステムはそれ自体が、Smooth Criminal によって構成されている。自分をごまかし、欺瞞語を駆使し、弱い立場の人々を経常的に被曝させることで初めて作動する。人々に欺瞞言語を吹きこみ、「原発なしには決して楽しく暮らせませんよ」と脅すことで維持される。弱い人間の自己欺瞞を助長させることで、原発はさらに放射性廃棄物を蓄積する。それはただ蓄積されるだけで、どこにも捨てることができない。

更に深刻な Smooth Criminal は自然と生態系とに対する犯罪である。福島原発が水蒸気爆発を起こしても、幸いにも強い西風が吹いて、全ての放射性物質が海に出たとしよう。めでたしめでたし。日本は救われた。そして放射能は全て海に落ちる。微生物が吸収する。植物が吸収する。それを小魚が食べる。それを大きな魚が食べる。それを人間が釣り上げて、食べる。内部被曝する。人間が食べなくとも、放射能は、海を循環する。蒸発して、大気を循環する。

地球創世直後には大量の放射能があった。しかしそれらは地質時間的には短い時間しかもたない。プルトニウムさえ、半減期はわずか二万数千年であるから。そうして生命が出現するころには、ほとんどが消えてなくなっていた。それを悪魔に魂を売り渡した人類が取り出してしまった。日本人もまた、悪魔に魂を売り渡し、五十四基の原発を、この地震津波列島に作り出した。そうして案の定、想定された通りに、環境中にばら蒔いた。巨大な Smooth Criminal である。

以下は、This Is It と HIStory とを合成した映像である。これを見ると、「一度はやって欲しかったな~」と強く思う。繁栄する大都会に忍び寄る Smooth Criminal 。それは東京に忍び寄る福島原発の放射能の雲のことだったのかもしれない。