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二話連続で更新しております。
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20:旧友



偉い気難しい顔をした役人に王からの命令書を受け取り、高級な筒に収め懐に大事にしまった。
そして再び王宮の廊下に出た所、

「おい!」

不意に声をかけられて、僕はそちらに顔を向けた。魔法兵の鎧を着た大柄な奴がずかずかと寄ってくる。
誰だ、こいつ。

「俺だよ、俺俺」

「……?」

男は鎧の面を親指で押し上げ、その顔を覗かせた。

「……あっ」

誰だか、すぐに分かった。
その魔法兵は、かつて共に魔法学に励んだ、A班のメンバーの一人“ウェルナー・セバリュス”だった。

「何で、お前……どこか地方に飛ばされたと聞いていたが? いや、久々だなウェルナー」

「言っとくけど、春から王宮勤務だったからな!! リノ、それにしても久々だな。何か色々凄い頑シャープペンシル 高級
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張ってると聞いているぞ!!」
 
「……」

何を頑張っているのかは知らないらしいが、とりあえず彼は僕を褒めてくれた。
こいつは昔からこう言う奴だ。正義感は強いが適当で、人は良いが賢くはない。騙されやすいが本人は騙された事に気がついていない。

と言う様な、まあお人好しなんだ。

「王からの命令で、お前を護衛する事になった。ヴェローナ家へ行くらしいじゃないか」

「ああ。やっと、秘術書の返還の許可を頂いたんだ」

「聞いている。良かったなあリノ。学生時代、何もかんもあいつらに持って行かれて、本当に哀れだったからなあ」

「……」

背中をばんばんと叩くウェルナー。
流石は魔法兵として働くウェルナーだ。肉体労働をほとんどしない僕とは全然違う体格で、力も強い。思わず咽せそうになった。







ウェルナー・セバリュスは魔法学校にいた時から、このようであった。
引きこもり、陰険、腹黒の三拍子が揃いがちな魔術師たちの中で、正義感に溢れアグレッシブで、暇さえあれば体を鍛えると言う男臭さが前に出過ぎている、特殊な人材。
勿論、魔法兵になるのが夢だった彼にとって、必要な事ではあったが、あんまり暑苦しく真っすぐであったので、彼を苦手とした者は多かっただろう。
ジェラルに通じる所があるが、彼程美丈夫と言う事も無く、彼程世渡り上手と言う訳でもない、まあ色々と残念な所のある青年だった。
しかし本人にその自覚は無く、騙されようが良い様に使われようが理不尽な目に合おうが、あっけらかんとしていて毎日が楽しそうで、それはそれで特別な能力な様に思っていた。
学生時代の僕は色々ありじめじめしていた事から、彼を羨ましく思った事もあったっけ。

「そうだ、リノ!! お前結婚したんだってな!!」

馬車の中で、ウェルナーが「おめでとう良かったなおめでとう」と、手を取って祝福してくれた。
まあ結婚したのは一年も前の事であるが。

「良かった、本当に。マリーナに捨てられた時のお前は、まさに豪雨の中のずぶ濡れの捨て犬みたいだったからな!!」

「言いたい事は良く分かるが、お前にだけは言われたくなかったな」

笑顔で返しつつも、額に筋を作る。
僕がこの様になるのは、多分彼くらいのものだ。

女性に多々騙される事のあるウェルナーさんに言われましても。
彼は悪気の無い様子である。

「良いよな、守るべき家庭があると言うのは。羨ましい、実に」

「……お前は浮いた話を聞かないな」

「はは、無いから当然だ」

「……」

はっきりきっぱり、悲しいくらい。
彼は正直だな。







さて、ウェルナーのせいで緊張する暇も無くヴェローナ家の屋敷へ辿り着いた。
どうしてくれる、馬車の中で整理しようと思っていたあらゆる心構えが全く出来ていない。

「さあゆくぞ、リノ。悪の巣窟へ」

「……」

ウェルナーのテンションは置いておいて、僕は久々に訪れたヴェローナの屋敷を見上げた。
王都の南側の、貴族邸の立ち並ぶ通りにある、派手な屋敷だ。当然、グラシス家の屋敷よりずっと新しい。

僕らは王宮からの使いと言う事になっている。
門番にそう告げると、ヴェローナ家の人間は僕らを敷地内へ招いた。案外あっさりと。

長いレンガの道を歩き、館の前に辿り着くと、大きな扉の前にギルバットが立っていた。
その表情は険しく、僕を睨む瞳は鋭いものだった。







「僕をすんなり屋敷に入れてくれるとは、思ってなかったよ」

「……王宮の使いと言う事であれば、仕方の無い事だ」

ギルバットは淡々としていた。
ヴェローナの屋敷の玄関先で、あちこちから視線を感じるものの、その人物の人影すら見えず。
ヴェローナ家の者たちが僕らをどこからか見張っているのは分かりきった事だが。

「こそこそと。相変わらずだな、この一族は」

「……声がでかい」

ウェルナーは周囲を警戒しつつも、その鎧をガシャンガシャンと音ならし空気を乱していた。ついでも声もでかい。

足早に客間に通され、僕とギルバットは向き合って座った。ウェルナーは僕の後ろで、控えている。
彼は王宮の命令で僕の護衛を担っているから。

「で……用件は何だ」

ギルバットはピリピリした空気を隠しもせず、僕に尋ねる。
僕は懐から王の命令書を取り出した。

「……」

それをギルバットに手渡した所、彼は瞳の色を変える。

「そこに書かれた通りだ。……以前、お前たちがグラシス家から持って行った青の秘術書を、返してもらう」

「……はは、ふざけるな。どういう事だこれは」

「どういう事だ、だと? 理由はお前たちが良く分かっているはずだろう」

「……っ」

僕の言葉に、ギルバットは頬をひくつかせた。
そして、ふっと鼻で笑うと、偉そうな態度で前屈みになる。

「またレッドバルト伯爵に、何もかも助けてもらったんだろう。良いなあお前は、力のある者に媚を売り、金魚の糞の様に付きまとうだけで、ご褒美を貰えて。伯爵に良い様に扱われているだけだと、分かっているのか」

「……ああ、その点に関しては、自分でもたまに考えるよ。僕は結局伯爵の意のままに動いている気がするけれど、それは別に、今の所何の文句も支障もない。問題は、いったい誰に動かされているのか、と言う事だろう」

「……貴様」

「ギルバット、もう良いだろう。僕の悪口なら言いたいだけ言えば良い。そのかわり、青の秘術書を返してもらおう」

僕の態度は、ギルバットには気に食わないものだったらしい。
若い頃なら、いつもギルバットの挑発に乗ってしまい、彼の求める反応をしてしまっていたが、今となっては遠い昔の事に思える。
僕は目の前の彼の焦りと、その立場に乗りかかる重圧の様なものを感じ、逆に哀れみすら覚えた。
酷い奴だな僕は。

「全部、自分たちで招いた結果だろう、ギルバット。ヴェローナ家の薬が、今問題になっているのは知っている。薬は人の命を扱うものだ。常に最良の品を揃える必要があると言うのに、金儲けを第一に考えたから、大きな損失を招く結果となった。……どんなに気をつかっていても、魔法薬はその処方を間違うだけで、危険なものになりかねないと言うのに」

「う……っ、うるさい!! グラシス家だって、今に分からないぞ。レッドバルト家と画策して薬を売ろうとしているらしいが、どこでどんな噂が立つか!! ……ふん、見てろリノフリード、グラシス家が再び日の目を見ると思うな。時代はヴェローナ家のものだ!!」

ドン、と力強く拳を机に叩き付けた、ギルバット。
机の上に一応並べられているティーカップの中の茶が揺れこぼれた。
誰一人、それを口にしていないから、なおさら。

「……ギルバット」

「お前だって、魔法薬にケチを付けられたら、同じ様になる!! どうせ、ヴェローナ家の噂だってお前たちが画策して作り上げたものなんだろう。今に見てろ!!」

「……おい、ギルバット」

「ふざけやがって……っ!! せっかくここまで来たのに。くそっ、くそが……っ、グラシス家の薬だって……」

「……」

ギルバットは随分追いつめられている様だった。
僕は小さくため息をつく。

「ギルバット、一つ教えてやろう。……お前が、グラシス家の薬にケチを付け、噂を流すのは別にかまわないぞ」

「……は?」

「グラシス家には、“証明薬”というものがある。それは王宮に認められた、グラシス家の秘薬の一つだ。魔法薬による人体被害の原因を追及する薬だ」

「……秘術? “証明薬”だと?」

彼は不思議に思っただろう。
そんな薬は、青の秘術書の中には無いからだ。
これは父が隠しておいてくれた、“赤の秘術書”の中にある魔法薬。

「グラシス家が長い間、この国の魔法薬に携わり、何の問題も起こさなかったと思うか。何度も失敗を繰り返して、被害も出してきた。それでもこれらと向き合い乗り越え、信頼を勝ち得た。その中で出来上がったのが、“証明薬”だ。この薬があれば、魔法薬による被害の原因も分かり、また不当な難癖かどうかも、判断出来る」

「……なっ」

ギルバットは僕の淡々と告げる内容に、口をぱくぱくさせた。

「しかしその薬が判断するのは、結局の所“真実”だ。お前たちの薬が、確かな被害を出したなら、向き合って、解決して行く他無いだろう。そうやって、積上げて行くしかない」

グラシス家には、長い歴史の中で、先人たちの積上げて来た確かな魔法薬がある。
魔法薬に対する、多くの覚悟の証、基盤がある。

ヴェローナ家には、まだ出来上がってなかったものだ。

「……っ」

彼は、何か言葉を返す事も出来ず、膝の上で拳を握りしめ、それを震わせていた。
悔しさが嫌と言う程伝わってくる。

しかし僕も、彼に同情する程の余裕は無い。

「さあ、青の秘術書を返してもらおう。あれは、グラシス家のものだ」

もう一度、そう告げた。
ギルバットは無言で僕を睨んでいたが、フッと悪い笑みを浮かべる。その瞬間、頭上から妙な気配を感じたと思ったら、雨の様に降り注ぐ魔法の刃が。

「!?」

気がついた時には既に遅く僕は逃げ遅れたが、それらは僕の体のどこにも触れる事無く、全て弾かれた。
魔法兵ウェルナーの魔法障壁だ。

「卑怯者が!!」

ウェルナーが叫び、その手に持つ槍の型の杖を天井にかざす。すると、天井に隠された攻撃魔法の魔法陣が暴かれ、さらにその魔法式の魔力を辿り、部屋の隅に姿を隠していた刺客の男の魔力を見つけ出した。
ウェルナーは一瞬で、その男の足下を絨毯の繊維を素材に作り出した縄で縛り、身動き出来ない様にした。

「……おお」

僕は自分自身が危なかったと言うのに、その見事な魔法に感嘆の声を漏らす。
流石はウェルナー。魔法兵として、こういう事態に対する手際が見事である。

そう言えば、魔法兵と言ってもこいつはそこそこ器用な奴だった。
騎士とコンビを組んで戦う魔法兵とは違い、単独で行動出来る一級魔法兵だったっけか。
学生時代のA班は本当に逸材が揃っていたんだなと、こんな緊迫した状況の中しみじみ考えたりしていた。

殺されかけたのに余裕なものだ。
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