45年前、「戦争を知らない子供たち」という歌がヒットしました。
戦後生まれが日本の人口約8割。
1945年生まれは今70歳。同年に成人だった人は2.3%。(*1)
だとすると、従軍体験者は1%程度でしょうか。
☆☆*1:総務省人口推計2012年推計H24/10/1版
いまや戦争を体験していないのは子供ばかりか、
高齢者にまで広がっています。
☆☆☆ ◆
国内外の秘話、悲惨な史実の紹介、兵士と家族を描くドラマetc.
例年通り8月15日に向けて盛んにTVや雑誌などで
第2次世界大戦に関する特集が組まれていました。
戦争は悲惨だ。悪だ。してはいけない。繰り返すまい。
問えば、ほとんどの人がこうした趣旨で回答するでしょう。
その番組や記事を見ようと見まいと。
☆☆☆ ◆
日本が直面する可能性のある危機とは何か。
それを回避する方策にはどのような選択肢があるのか。
最低限知っておきたいのはこれだけです。
特集は、大小の史実を人々が記憶すること、
記憶が風化しないように繰り返しおさらいすることを
目指しているような気がします。
こうして記憶することにより、今後、日本が戦争せずにすむことに
どうつながるのか、わからずにいます。
特集番組や記事は、さらにその上に何を伝えようとしているのか。
結論を提示しないまでも論点は何なのか。
こうしたことが理解できず、毎年戸惑うばかりです。
☆☆☆ ◆
そんな中でこの若き社会学者は、別の切り口から戦争をとらえて
いました。
- 誰も戦争を教えられない / 古市 憲寿 (講談社+α文庫)
¥918 Amazon.co.jp / ¥756 Kindle版
「誰も戦争を教えてくれなかった」を改題、一部改訂)
☆☆僕は史実そのものではなくて、「戦争の遺し方」の違いに
☆☆心を惹かれた。
真珠湾、アリゾナ、南京、瀋陽、広島、沖縄、東京、アウシュビッツ、
朝鮮半島南北国境・・・・
著者は、先勝国、戦場となった国、敗戦国の博物館を巡りました。
☆☆「戦争、ダメ、絶対」と繰り返しながら、僕たちはまだ
☆☆戦争の加害者にも被害者にもなれないでいる。
日本の戦争に関する博物館を巡り、国が正面から戦争を語って
いないといいます。
☆☆☆ ◆
この著者の表現に眉をひそめたり、反発する人もいるでしょう。
いくつかの戦争博物館をアミューズメント施設と評したり、
戦争をフィクション・ドキュメンタリーの人気テーマだとしたり。
どの国でもあの戦争への関心が薄れています。
他国では、国としてとらえ方を明らかにした上、人を集める工夫と、
情勢変化にともない伝え方を変える苦心を見てとれます。
著者の博物館評は訪問時のエピソードの積み重ねとは言え、
日常的な風景で、特別な日の出来事ではなさそうなので、
一般化して語って差支えないと思えます。
☆☆☆ ◆
さらに、終盤で、
海外の徴兵の変化や今後の戦闘の姿にも話が及びます。
その話を踏まえると、
9.11、海外での爆破テロ、ISの存在、兵器ロボットの開発、
中東での原子力発電所の使用済燃料の保管、
サリン事件、新幹線内焼身自殺、ドローン官邸屋上着陸、
電線火災による鉄道のマヒ・・・・。
今の日本は平和、と考えていると足もとをすくわれそうです。
ミサイルからドローンからまで敵対兵器の制御信号のハッキング、
自国兵器のハッキング防止、
電力・交通・通信といった社会インフラのハッキング防衛や
国際協力による代替調達手段準備などを要します。
視点を変えて、過去をとらえ、現在と未来の平和・安全を考える
きっかけを提供する一冊です。
<目次>
序章 誰も戦争を教えてくれなかった
第1章 戦争を知らない若者たち
第2章 アウシュビッツの青空の下で
第3章 中国の旅2011-2012
第4章 戦争の国から届くK-POP
第5章 たとえ国家が戦争を忘れても
第6章 僕たちは戦争を知らない
終章 SEKAI no Owari
謝辞
過去形から現在形へ - 文庫版あとがきにかえて
戦争博物館レビュー
[end]
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