突飛なタイトルに惹かれて買い求めたものの、
好みからすれば、ハズレを引いたかもしれないとの不安も。
幸い、私の勘の方がハズレてくれました。上質な短篇集です。
◆
- 五千回の生死 / 宮本 輝 (新潮文庫)
¥497 Amazon.co.jp
俺、一日に五千回ぐらい、死にとうなったり、
生きとうなったりするんや。
深夜、一文無しで歩いているところに
とんだ変わり者とでくわしてしまいました。
一日に五千回とはせわしないです。
死を言葉にするにしては、セリフに明るさが漂います。
◆
各篇の舞台設定と登場人物の陰陽が鮮やかです。
<所収作品>
* トマトの話: トマトを欲しがりつつ死んでいく男から預かった手紙
* 眉墨: 毎晩就寝前に眉墨を塗る、癌告知された母との軽井沢旅行
* 力: 頼りない子供時代を見守っていた父の目
* 五千回の生死: 日に五千回死にたい、生きたいと思う男との友情
* アルコール兄弟: 労組活動をする同期と対策を講じる男
* 復讐: 昔リンチを受けた柔道部の顧問に恨みを抱く3人の若者
* バケツの底: 建設現場でピンチを迎えた客を助ける営業マン
* 紫頭巾: 朝鮮人の女の子の死と紫頭巾姿の彼女をみたという噂
* 昆明・円通寺街: 円通寺通りと子供時代を送った街の回想
◆
なかでも「トマトの話」、「力」、「五千回の生死」は、
陰陽どちらにも生々しいほどの生命力を感じました。
登場人物たちの屈折率もなかなかの急角度です。
いいなぁ、こういう大人の短篇集。
[end]
*** 読書満腹メーター ***
お気にいりレベル E■■■■□F
読みごたえレベル E■■■□□F
(ペタお返しできません。あしからず。)
*****************************
作家別本の紹介の目次なら
日本人著者はこちら
海外の著者はこちら
*****************************
<----左側の
①「ライブラリーを見る」をクリックし、
②ライブラリの各本の"LINK"をクリックすると
その本を紹介した記事にとびます。