急角度の屈折 ~ 「五千回の生死」 | そっとカカトを上げてみる ~ こっそり背伸びする横浜暮らし

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大きな挑戦なんてとてもとても。
夢や志がなくても
そっと挑む暮らしの中の小さな背伸び。
表紙の手ざわりていどの本の紹介も。

相互読者登録のご期待にはそいかねますのでご了承ください。



突飛なタイトルに惹かれて買い求めたものの、
好みからすれば、ハズレを引いたかもしれないとの不安も。

幸い、私の勘の方がハズレてくれました。上質な短篇集です。

         


五千回の生死 / 宮本 輝 (新潮文庫)
 ¥497 Amazon.co.jp

 

  俺、一日に五千回ぐらい、死にとうなったり、
  生きとうなったりするんや。

深夜、一文無しで歩いているところに
とんだ変わり者とでくわしてしまいました。


一日に五千回とはせわしないです。
死を言葉にするにしては、セリフに明るさが漂います。

         

各篇の舞台設定と登場人物の陰陽が鮮やかです。

<所収作品>

* トマトの話: トマトを欲しがりつつ死んでいく男から預かった手紙
* 眉墨: 毎晩就寝前に眉墨を塗る、癌告知された母との軽井沢旅行
* 力: 頼りない子供時代を見守っていた父の目
* 五千回の生死: 日に五千回死にたい、生きたいと思う男との友情
* アルコール兄弟: 労組活動をする同期と対策を講じる男
* 復讐: 昔リンチを受けた柔道部の顧問に恨みを抱く3人の若者
* バケツの底: 建設現場でピンチを迎えた客を助ける営業マン
* 紫頭巾: 朝鮮人の女の子の死と紫頭巾姿の彼女をみたという噂
* 昆明・円通寺街: 円通寺通りと子供時代を送った街の回想

         


なかでも「トマトの話」、「力」、「五千回の生死」は、
陰陽どちらにも生々しいほどの生命力を感じました。

登場人物たちの屈折率もなかなかの急角度です。
いいなぁ、こういう大人の短篇集。


[end]


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