蓄積+複眼=前進 ~ 「余りの風」 | そっとカカトを上げてみる ~ こっそり背伸びする横浜暮らし

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大きな挑戦なんてとてもとても。
夢や志がなくても
そっと挑む暮らしの中の小さな背伸び。
表紙の手ざわりていどの本の紹介も。

相互読者登録のご期待にはそいかねますのでご了承ください。



1年間に読む本の数は百数十冊ていど。
毎年、年末に1年を振りかえり、
そのうちの数冊が強く心に残っていることを再確認しています。

まだ今年にはいって2ヶ月ちょっとながら、
この本を読み始めてまもなく、
あ、この本はそういう1冊になる、と予感しました。

      


余りの風 / 堀江 敏幸 (みすず書房) [2012年]
¥2,730 Amazon.co.jp

19人の作家やエッセイストとその作品を、
こんなタイトルで多面的複眼視線で語っています。

空飛ぶスコットランド男 / 須賀敦子
  耳打ちする声 / 植草甚一
    四九・九ccの歩行感覚 / ジャック・レダ
      余りの風 / 小島信夫 etc.

      

私が作品を読んだことのある人はほんの数人。
読んだことのない人と作品に関する章でも
惹きこまれてしまいました。


      


表題の「余りの風」では、
  小島信夫が以前書いた小説群を
  その後の巨編につなげたことを踏まえ、
その巨編発表前に彼がアメリカ抽象絵画に反応したのは
『「枠のない世界」へ踏み出していた証左』としています。

以前の小説群で余っていたものを枠を拡大して、
その後の巨編を創作したとみています。

      


フットワークの軽快なカメラマンのごとく、
接写したかと思えば、ぐっと引いて望遠で全景をとらえ、
モデルを中心にしたかと思えば、背景に焦点を移します。

それでもカメラマンと違って、
著者は目の前にある光景ばかりでなく、
過去に読んだ文章や映像のストックとあわせて、
時間や地域を自由に巡って思考した作品を
文章に焼き付けています。

      

国境を越えての膨大な文章を読み続け、
その作者の人生をたどり、その地域、その時代をとらえ、
そこに堀江敏幸の好奇心が加わり、
作家の創作姿勢を、その作品をとらえ直そうと企てています。

堀江俊之の蓄積と前進を基盤にしたこの企ては、
本好きの読む愉しみを力強く後押ししてくれます。


[end]


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