1年間に読む本の数は百数十冊ていど。
毎年、年末に1年を振りかえり、
そのうちの数冊が強く心に残っていることを再確認しています。
まだ今年にはいって2ヶ月ちょっとながら、
この本を読み始めてまもなく、
あ、この本はそういう1冊になる、と予感しました。
◆
- 余りの風 / 堀江 敏幸 (みすず書房) [2012年]
¥2,730 Amazon.co.jp
19人の作家やエッセイストとその作品を、
こんなタイトルで多面的複眼視線で語っています。
空飛ぶスコットランド男 / 須賀敦子
耳打ちする声 / 植草甚一
四九・九ccの歩行感覚 / ジャック・レダ
余りの風 / 小島信夫 etc.
◆
私が作品を読んだことのある人はほんの数人。
読んだことのない人と作品に関する章でも
惹きこまれてしまいました。
◆
表題の「余りの風」では、
小島信夫が以前書いた小説群を
その後の巨編につなげたことを踏まえ、
その巨編発表前に彼がアメリカ抽象絵画に反応したのは
『「枠のない世界」へ踏み出していた証左』としています。
以前の小説群で余っていたものを枠を拡大して、
その後の巨編を創作したとみています。
◆
フットワークの軽快なカメラマンのごとく、
接写したかと思えば、ぐっと引いて望遠で全景をとらえ、
モデルを中心にしたかと思えば、背景に焦点を移します。
それでもカメラマンと違って、
著者は目の前にある光景ばかりでなく、
過去に読んだ文章や映像のストックとあわせて、
時間や地域を自由に巡って思考した作品を
文章に焼き付けています。
◆
国境を越えての膨大な文章を読み続け、
その作者の人生をたどり、その地域、その時代をとらえ、
そこに堀江敏幸の好奇心が加わり、
作家の創作姿勢を、その作品をとらえ直そうと企てています。
堀江俊之の蓄積と前進を基盤にしたこの企ては、
本好きの読む愉しみを力強く後押ししてくれます。
[end]
*** 読書満腹メーター ***
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(ペタお返しできません。あしからず。)
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