360°から窓、窓、窓 ~ 「戸惑う窓」 | そっとカカトを上げてみる ~ こっそり背伸びする横浜暮らし

そっとカカトを上げてみる ~ こっそり背伸びする横浜暮らし

大きな挑戦なんてとてもとても。
夢や志がなくても
そっと挑む暮らしの中の小さな背伸び。
表紙の手ざわりていどの本の紹介も。

相互読者登録のご期待にはそいかねますのでご了承ください。



いまの寒い季節には窓を開けるのは、雨戸の開け閉めと
掃き出し窓から庭に出るときくらいです。
窓から内外の空気の出入りする場面は限られています。

もう少しして空気が緩んできても、
妻のサマンサの花粉症の始まりと重なり、
やはり窓が締め切られた時期が続きます。

     

広々とした敷地ならいざ知らず、うちでは
通りに面していたりお隣と接している窓は、
カーテン、ブラインド、すだれ、外枠で、
あるいは曇りガラスで
外からの光と視界を多少なりともさえぎっています。

わが家の窓は持てる力を発揮させてもらえません。

     

中学の頃、夕飯後に友人Kの家を初めて訪れたら
Kに注意されました。

  - 玄関から入ってくるもんじゃない。

次から彼の部屋には窓から出入りしました。
うちの窓より活躍の場がはるかに広く与えられています。

     

勤めるようになってから、友人Yのアパートに
鍋パーティーをしようと初めて訪れました。

  - 遅くなってごめん。

開始時刻に30分以上遅れた私は、
彼の部屋と思しき窓を勢いよく開けて入ろうとしました。

  - いきなり窓を開けて入ろうとするもんじゃない。

同じ友人でも好みが様々です。

     


窓には語るべき面は、まだこんなにあります。

戸惑う窓 / 堀江 敏幸 (中央公論新社) [2014年]
¥2,310 Amazon.co.jp

「窓」をモチーフに
前後上下左右360°の視点から書かれたエッセイです。

窓を境に内側から外側から、
  同じ窓から臨む光景の人それぞれの見え方、
映画、写真、絵画、小説、詩に登場する窓たち、
  窓を通して感じる光、風、空気、音、匂い
建物の一部としての窓そのもの、
  窓の前にいる人々 etc.

様々な切り口は、著者の感性の豊かさそのものです。

     

思いのこもった詳しい描写は、
私の描いた絵は本物に申し訳ないほど下手ながら、
見たことのない絵画を、
読み手の心の中で思い描かせてくれます。

見たことのないその窓の外に広がる光景では、
その光景とともに
その窓際にいた人たちの心持を思い描きます。

     

このエッセイに登場する窓たちに比べて、
口も、耳も、鼻も、目も、住み手にふさがれたわが家の窓は、
持っている力を発揮できずに戸惑っているに違いありません。


[end]


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