いまの寒い季節には窓を開けるのは、雨戸の開け閉めと
掃き出し窓から庭に出るときくらいです。
窓から内外の空気の出入りする場面は限られています。
もう少しして空気が緩んできても、
妻のサマンサの花粉症の始まりと重なり、
やはり窓が締め切られた時期が続きます。
◆
広々とした敷地ならいざ知らず、うちでは
通りに面していたりお隣と接している窓は、
カーテン、ブラインド、すだれ、外枠で、
あるいは曇りガラスで
外からの光と視界を多少なりともさえぎっています。
わが家の窓は持てる力を発揮させてもらえません。
◆
中学の頃、夕飯後に友人Kの家を初めて訪れたら
Kに注意されました。
- 玄関から入ってくるもんじゃない。
次から彼の部屋には窓から出入りしました。
うちの窓より活躍の場がはるかに広く与えられています。
◆
勤めるようになってから、友人Yのアパートに
鍋パーティーをしようと初めて訪れました。
- 遅くなってごめん。
開始時刻に30分以上遅れた私は、
彼の部屋と思しき窓を勢いよく開けて入ろうとしました。
- いきなり窓を開けて入ろうとするもんじゃない。
同じ友人でも好みが様々です。
◆
窓には語るべき面は、まだこんなにあります。
- 戸惑う窓 / 堀江 敏幸 (中央公論新社) [2014年]
¥2,310 Amazon.co.jp
「窓」をモチーフに
前後上下左右360°の視点から書かれたエッセイです。
窓を境に内側から外側から、
同じ窓から臨む光景の人それぞれの見え方、
映画、写真、絵画、小説、詩に登場する窓たち、
窓を通して感じる光、風、空気、音、匂い
建物の一部としての窓そのもの、
窓の前にいる人々 etc.
様々な切り口は、著者の感性の豊かさそのものです。
◆
思いのこもった詳しい描写は、
私の描いた絵は本物に申し訳ないほど下手ながら、
見たことのない絵画を、
読み手の心の中で思い描かせてくれます。
見たことのないその窓の外に広がる光景では、
その光景とともに
その窓際にいた人たちの心持を思い描きます。
◆
このエッセイに登場する窓たちに比べて、
口も、耳も、鼻も、目も、住み手にふさがれたわが家の窓は、
持っている力を発揮できずに戸惑っているに違いありません。
[end]
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