6つの孤独 ~ 「蝶のゆくえ」 | そっとカカトを上げてみる ~ こっそり背伸びする横浜暮らし

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大きな挑戦なんてとてもとても。
夢や志がなくても
そっと挑む暮らしの中の小さな背伸び。
表紙の手ざわりていどの本の紹介も。

相互読者登録のご期待にはそいかねますのでご了承ください。

春の陽の下で花を求めて舞う蝶の姿はどこか優雅なものを漂わせます。
その蝶も、風が吹くと、それが決して強くなくても、
途端にその飛ぶ姿は、荒波の中の小舟のように危ういものとなります。

ましてや冬の時季ともなると、もうその姿を見ることはありません。

    

蝶のゆくえ / 橋本 治 (集英社文庫)
 ¥600 Amazon.co.jp
年齢の異なる女性6人の6つの孤独を描いた短篇集です。

美加は10代で出産後、離婚。
再婚した夫は彼女の連れ子を邪魔にし始めます。
そんな夫に彼女も同調しはじめる自分に歯止めがかかりません。

同期入社の26歳の3人の恋と別れ。
「お母さんが好きなの」という心が不安定なアオイと、
その相談相手夏子のいらだち。

そんな女性たちの孤独です。

    

こんな一文で、それぞれの作品の中に孤独の結晶をちりばめています。

  悲劇には「悪役」がいる。
  いつかまた、夫が自分のそばに戻って、「自分の夫」になってくれることを。
  孝子の中には、「寂しさ」の宿る場所がなかった。
  「特徴のない女」が一人で、遠くの故郷の夜の中にいる。


こんな文言を意識しだしたら、
誰でも暮らしの中でいくらでも孤独感と出会えそうです。

    

たくさんの人と接しようと、仲のいい友人がいようと、
それどころか家族と一緒にいても感じる孤独は、
独りきりというより、
誰にも自分の本当の気持ちを理解されていない、とか
周りの人からおいていかれたくないといった心持です。

    

自分の気持ちを誰かにぽつりとでも伝えたら、
伝える言葉を持っていたら、
そんな自分の気持ちに気づいていたら、

孤独は心をかすめても影を薄くするかもしれません。


[end]


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