謎は何? から始まる謎 ~ 「むかし僕が死んだ家」 | そっとカカトを上げてみる ~ こっそり背伸びする横浜暮らし

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大きな挑戦なんてとてもとても。
夢や志がなくても
そっと挑む暮らしの中の小さな背伸び。
表紙の手ざわりていどの本の紹介も。

相互読者登録のご期待にはそいかねますのでご了承ください。

犯人を探すわけでもなく、そもそも先に起きた事件が何かわからず、
何が起きたのかをたどる謎解きです。

とりとめのない話の始まりこそ、この小説の色づけにふさわしい導入です。

    

むかし僕が死んだ家/東野圭吾 (講談社文庫)
¥560 Amazon.co.jp

7年前に別れた沙也加からの突然の電話。

<電話じゃ話しにくい>話を聴くために彼女と逢うと、
彼女のバッグから出てきたのは、真鍮の鍵と手書きの簡単な地図。
彼女の父親の形見です。

  この地図の場所に行ってほしいの・・・・・・あたしと一緒に

    

なぜ、沙也加そこに行こうとしているのか。
なぜ、結婚して一児の母になっている彼女が今さら<私>に頼むのか。

彼女の自分に<欠けている>ものの話を聴いてもとりとめがありません。

なのに、
さんざん依頼を受けられないと言っておきながら、
沙也加も仕方ないとあきらめたのに、
<私>は彼女とその地図にある場所に行こうと決心します。

一瞬目にしたあるものを見て。

    

始めから終りまで、一貫して謎解きの物語です。

彼女の過去、いきついたその場所の正体、
徐々に手がかりを得て謎が解けていくなかで、
また新たな謎が生まれます。
それでも、一歩ずつ、一歩ずつ、丹念に謎を解きながら前進します。

それとともに変化を見せる、沙也加の不安、告白、そしてまた謎。

たどりついた地図にあった場所で、
その一ヵ所だけにふたりはとどまって、謎を解きつづけます。

    

読み進み、ひとつ謎が解けるたびに、なるほどそうだったのか、と
通り過ぎたページの文字を想い浮かべました。

読み手を、<私>と沙也加とともに数多の小さな謎と格闘させておきながら、
がらがらぽん、とせっかく築いたが構図がひっくり返されてしまいました。

とても丹念に、精緻に仕込まれた謎たちです。


[end]

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