犯人を探すわけでもなく、そもそも先に起きた事件が何かわからず、
何が起きたのかをたどる謎解きです。
とりとめのない話の始まりこそ、この小説の色づけにふさわしい導入です。
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むかし僕が死んだ家/東野圭吾 (講談社文庫)
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7年前に別れた沙也加からの突然の電話。
<電話じゃ話しにくい>話を聴くために彼女と逢うと、
彼女のバッグから出てきたのは、真鍮の鍵と手書きの簡単な地図。
彼女の父親の形見です。
この地図の場所に行ってほしいの・・・・・・あたしと一緒に
◆
なぜ、沙也加そこに行こうとしているのか。
なぜ、結婚して一児の母になっている彼女が今さら<私>に頼むのか。
彼女の自分に<欠けている>ものの話を聴いてもとりとめがありません。
なのに、
さんざん依頼を受けられないと言っておきながら、
沙也加も仕方ないとあきらめたのに、
<私>は彼女とその地図にある場所に行こうと決心します。
一瞬目にしたあるものを見て。
◆
始めから終りまで、一貫して謎解きの物語です。
彼女の過去、いきついたその場所の正体、
徐々に手がかりを得て謎が解けていくなかで、
また新たな謎が生まれます。
それでも、一歩ずつ、一歩ずつ、丹念に謎を解きながら前進します。
それとともに変化を見せる、沙也加の不安、告白、そしてまた謎。
たどりついた地図にあった場所で、
その一ヵ所だけにふたりはとどまって、謎を解きつづけます。
◆
読み進み、ひとつ謎が解けるたびに、なるほどそうだったのか、と
通り過ぎたページの文字を想い浮かべました。
読み手を、<私>と沙也加とともに数多の小さな謎と格闘させておきながら、
がらがらぽん、とせっかく築いたが構図がひっくり返されてしまいました。
とても丹念に、精緻に仕込まれた謎たちです。
[end]
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