手書き文字の力 ~ 「恋文の技術」 | そっとカカトを上げてみる ~ こっそり背伸びする横浜暮らし

そっとカカトを上げてみる ~ こっそり背伸びする横浜暮らし

大きな挑戦なんてとてもとても。
夢や志がなくても
そっと挑む暮らしの中の小さな背伸び。
表紙の手ざわりていどの本の紹介も。

相互読者登録のご期待にはそいかねますのでご了承ください。

eメールが全盛となり、手書きのハガキや手紙が影をひそめました。

ツレアイと暮らし始める前、1万キロの長距離恋愛の時期がありました。

eメールなんてありませんし、電話代も高い時代だったので、
手紙でやりとりをしていました。
手書きでしたし、航空便でも日数はかかり、のどかなやりとりです。

何を書いたかさっぱり憶えていませんが、
面と向かっては口にしないような
素直な気持ちを文字にしていた気分の感触が残っています。

    

恋文の技術/森見 登美彦 (ポプラ文庫)
¥651 Amazon.co.jp

修士課程の学生守田一郎が、京都から修行に出された先の能登から、
友人に、妹に、森見登美彦などの先輩に宛てた書簡で綴る小説です。

相手からの返信は紹介されていないので、
その内容は読み手が想像するしかありません。それが楽しいんです。

    

守田一郎は学生としても男性としても、どうしようもない奴です。
その手紙の内容もまあ、ひどいもんです。
その場しのぎのアドバイスやら言い訳やらのオンパレードです。
そんな調子ですから、手書きの力がへんな方向に力を発揮します。

  - そんなことがあったのかあ。

宛先毎にまとめられた書簡を読み進むうちに、
日付順に手紙の往復の向こうで何が起きたか明になる趣向です。

    

終盤になると、守田一郎以外の人たちの書簡が登場します。

  - なるほどねえ。

それらの手紙を時系列に並べてしまったらつまらないものを、
読ませる順序で楽しませてくれます。

読みはじめて"なんじゃこれ"と腹がたっても、
第十一章までがまんすると楽しみが待っています。
読み手によっては、相当な忍耐力が要求されるかもしれません。

そしてちゃんと恋文の極意が披露されます。

    

  - なに、これ?

この本の表紙をみたツレの声色にはトゲがあります。

ノウハウ本のような紛らわしいタイトルから、
私がよからぬ企てをしているんじゃないかと勘繰ったようです。

いまさら恋文の極意を伝授されても、使い道がありません。

  - あっ、そうかあ。

面と向かって言えないことも、手紙にならできるかも。
ツレ宛てに嘆願書なら書けそうな気がしてきました。


[end]

***************************************
<----左側の
①「ライブラリーを見る」をクリックし、
②ライブラリの各本の"LINK"をクリックすると
 その本を紹介した記事にとびます。
***************************************
ペタしてね