潔い変わり者 ~ 「もののはずみ」 | そっとカカトを上げてみる ~ こっそり背伸びする横浜暮らし

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大きな挑戦なんてとてもとても。
夢や志がなくても
そっと挑む暮らしの中の小さな背伸び。
表紙の手ざわりていどの本の紹介も。

相互読者登録のご期待にはそいかねますのでご了承ください。

休みの日、ツレアイと出かけたた折に、
ちょっと変わった雑貨屋を覗きました。
古いおもちゃや雑貨などを並べた店です。

古いといっても骨董的な価値があるものではなく、
ガラクタと隣り合わせのようなものが、
ところ狭しとひしめき合っています。

    「へんなのばっか」

ツレがこんなひと言を口にしました。

    

ちょうど私は、明治時代のそばちょこに目をとめていました。
そのひとつは、割れたものを継いでありました。
モノが少なく、貴重だったころの暮らしぶりがうかがえます。

    

ツレは、私の微妙な好奇心の波長を感じとったのでしょう。

この店でへんなのを買ったら、機嫌を悪くするぞ、
との意思が語調と言葉で明確に伝わってきます。

なんと効率のいいセリフでしょう。
ツレの小さな「っ」をふくめてたった7文字で、
私は見事に牽制タッチアウトです。

    

もののはずみ/堀江 敏幸 (角川文庫)
¥540 Amazon.co.jp

作家堀江敏幸さんの、お気に入りのモノたちにまつわるエッセイです。
小さな犬の置物、映写機、洋服のタグ、バスの車内表示・・・・・・
とりたてて統一されたテーマがあるわけでもないモノたちです。

それらのうち、多くのものは実用されておらず、
ただ堀江さんちに存在するだけです。

    

そういった「もの」たちを堀江さんが、うれしそうに語っています。
小説や他のエッセイに書かれている、
ためらいがちな文とはうってかわって、簡潔で歯切れのいい文章です。

自分だけの好み=価値観が、他の人とどんなに相いれなかろうが、
これっぽっちも気にしていない潔さが文章から伝わってきます。

    

すでに役割を終えたり、主役をおりた「もの」たちの
存在感あふれる話です。


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