休みの日、ツレアイと出かけたた折に、
ちょっと変わった雑貨屋を覗きました。
古いおもちゃや雑貨などを並べた店です。
古いといっても骨董的な価値があるものではなく、
ガラクタと隣り合わせのようなものが、
ところ狭しとひしめき合っています。
「へんなのばっか」
ツレがこんなひと言を口にしました。
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ちょうど私は、明治時代のそばちょこに目をとめていました。
そのひとつは、割れたものを継いでありました。
モノが少なく、貴重だったころの暮らしぶりがうかがえます。
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ツレは、私の微妙な好奇心の波長を感じとったのでしょう。
この店でへんなのを買ったら、機嫌を悪くするぞ、
との意思が語調と言葉で明確に伝わってきます。
なんと効率のいいセリフでしょう。
ツレの小さな「っ」をふくめてたった7文字で、
私は見事に牽制タッチアウトです。
◆
もののはずみ/堀江 敏幸 (角川文庫)
¥540 Amazon.co.jp
作家堀江敏幸さんの、お気に入りのモノたちにまつわるエッセイです。
小さな犬の置物、映写機、洋服のタグ、バスの車内表示・・・・・・
とりたてて統一されたテーマがあるわけでもないモノたちです。
それらのうち、多くのものは実用されておらず、
ただ堀江さんちに存在するだけです。
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そういった「もの」たちを堀江さんが、うれしそうに語っています。
小説や他のエッセイに書かれている、
ためらいがちな文とはうってかわって、簡潔で歯切れのいい文章です。
自分だけの好み=価値観が、他の人とどんなに相いれなかろうが、
これっぽっちも気にしていない潔さが文章から伝わってきます。
◆
すでに役割を終えたり、主役をおりた「もの」たちの
存在感あふれる話です。
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