結露 ~ 心の温度差 ~
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あけましておめでとうございます。

旧年中は、数あるブログより、ご覧頂き有難う御座いました。
ありがとうございます。
心より御礼申し上げますと共に、
皆様の良き一年をお祈り申し上げます。

年末から、今日に至るまで、タイトル通りの
『心の温度差』を感じました。

窓を見つめると、悲しそうな自分の姿と、
涙の代わりに、結露が緩やかに、したたり落ちていました。

昨年の9月末日から、今月末までで、
きっと私の結婚生活の最終形がでることでしょう。

新年から続きをアップしていこうと思ってましたが
あまりに、甘い思い出が私の胸を詰まらせました。

いつまでも、思い出に浸っていたり、
過ぎた時間を思っても仕方が有りませんので、
マイペースで、始めてまいりたいと存知ております。

飛べない鳥は?
飛ぶ事を忘れている鳥は?

酉年。ここから、私は飛び立ちます。
悩んでおられる方、何かを秘めてらっしゃる方。
お人の心は、お人それぞれでしょうが、
何かを開ける鍵は、必ずご自分の中に有ります。

って、私がそう思いたいだけなのですが・・・。

どうか、本年も宜しくお願い申し上げます。
飛躍の一年を。
実り深き、幸多かりし一年をお過ごし下さいませ。

良いお年をお迎え下さいませ。

今年は、実に私にとって、重大な意味を持つ年となりました。
皆様は、今年の終わりに、どなたのお顔が浮かびますか?
また、どんな出来事を思い出されますか?

私は、明日から、嫁の仕事として接待スキーに行きます。
多分行く事になるでしょう・・・。

タイの時も、日本に帰ってきてタイへ帰る時に
『帰りたくないな。いっそ怪我してもいいわ。』って
思っていたら、交通事故にあいました。

お陰で、タイへ帰るのが1週間延びました。
願えば叶うものですね。

そして『思い』は、現実になるという事を知りました。
良い事にせよ、悪い事にせよ、
思った事が現実としてやってきます。

最後の最後まで諦めなかったら、明日も行かなくて
すむのかも・・・。って思ってます。

皆様は、来年、どんな年に、なさりたいですか?
どんな色を付けたいですか?
出来る限り具体的な理想を描き落とし込んでいって下さいね。

という、私の理想は、まだ ぼんやりしたモノです。
ここ数年、願い続けてきたのは、
このブログの頃に帰りたかっただけ。
愛が欲しかった。。。
一番贅沢な『願い』だったのかもしれません。

時間は戻せないし、流れていくから・・・。
今ある現状を認めたくなかったのでしょう。

今日、主人とケンカしました。
嫌な事、いっぱい言いました。

すっごく自分が嫌いになり、嫌になりました。
可愛くない女だと思いました。

想像でモノを言いました。
多分、8割は当たっているでしょう。

『世間体のために一緒に居る事はない。』って
親に言ってきたと言ってました。
『私も、そう思うよ。』って言いました。

ココへ来て、主人の両親と私たちで
旅行先で話し合うことになりました。

さぁ、どうなるのでしょうか?
私は何を望んでいるのでしょうか?
お年明けには結果が出るでしょう。

あのね、クリスマスにお手紙もらったの。
『今年は、いつも汚いキーケース
 使っていたのでキーケースにしました。
 いつもありがとね。おかげで
 全力で仕事にむかえてます。
 感謝してます。
 
   早めのパパサンタより』

すっごい嬉しかったのに、それから今日まで
帰ってきた日は今日を入れて2日だけ。

遊びだすと、いつもこう。
そっちの人と居たくなっちゃうのがパパなのよね。

どっちが、本心なんだろうね?
多分、去年までの私なら、黙って熱が冷めるのを
待ってただろうね。
常に受身だった気がします。

今年は視野が広がりました。
これも、ネットで知り合えた皆様のお陰。

耐える事は美徳じゃないし、
勇気が無かっただけだと思う。

プライドが邪魔して、自分が嫌な女になるのを
見たくなかったんだろうし、
認めたくなかったんだろうなぁって思います。

来年はね、私、自分と戦います。
嫌いな部分も含めて自分を愛してあげようって
思います。

まず、そこから始めようって思ってます。

皆様にも、更に素晴しい新年となりますように
お祈り申し上げます。

ありがとうございました。

♪しおり4♪

街は、クリスマス本番5秒前。
ポインセチアが、街を赤と緑に染めて、
イエス様の誕生日を印象付けています。

この時期、お花屋さんには、ヒイラギにポインセチアが
たくさん並びます。
でも、ご存知でしたか?
とってもシクラメンが多い事を・・・。

シクラメンを見ると悲しい思い出が甦ります。
お花に罪は無いのに、街角のシクラメンを恨めしそうに
眺める私がココに居ます。

もう、何年前になるのかなぁ?
主人が愛人を自宅へ招き入れました。
痕跡をわざと残すのでしょうかしらね?

私の写真をどう思いながら、捨てたんでしょうか?
私のクローゼットをどういうつもりでかき回したの?
私の指輪をどういうつもりで持っていったの?
私のお台所を見て、どう思ったのでしょうか?

ちょっと聞いてみたくなりました。

その夜も、招き入れるであろうと思い、
ちょっと修羅場を作ってみようと、ベランダで待機してました。

子供が居なかった私は、お花を子供のように
可愛がってました。
毎日、お話して、キレイに咲いてくれたら嬉しくって。
とれたてのシソやトマトを食べさせてあげたくて。

何時間待ったのでしょうか。
ベランダにはシクラメンの花が寒そうに揺れていました。
一緒に、主人の帰りをベランダで待ってました。
なぜベランダに居たのかは、未だに解りません。

寒い心を、寒い気温に合わせたかったのかもしれません。
だって、温度差の居る所に居たら、
結露のように涙が、つたってくるって思ったから。

主人が『泣く女は嫌い』って言ったから。。。

結局、彼女とはケンカしたみたいで、
連れて帰って来れなかったようですが、
電話を聞いちゃったんですね。。。。。

聞くつもりは、無かったのですが、
出て行く機会を逃してしまったんですねぇ。。。
まぁ、それも必然だったのでしょう。

電話口で、甘くささやく言葉。
仲直りしようと必死なんでしょうね。

付き合ってる時の主人を思い出しながら、
今は、違う人に心が在る事を認識しました。

次『好き』の言葉が出るだろうなぁ。
って思った位置で主人の前に出て行きました。
今、思うと、私以外の女性に『好き』って言う
主人を見たくなかったんだろうなぁって思います。

驚きすぎて、主人の大きな目は、更に大きくなってました。

後は、静かな修羅場が訪れました。
もっと、派手なものだと思ってました。
『俺、あいつと居たいねん。』
で、家を出る決意をしました。

その日の事が、シクラメンを見る度に思い出します。
いつか、私の好きだった白い花びらにほんのりピンクの
縁取りのある 全て上向に花びらを付ける花を
再び愛せる日は来るのでしょうか?

私は、薔薇が好きです。
でも、次に好きになった人がプレゼントをくれるなら
白い花びらが少し上気し頬を染めたような
シクラメンの花がいいです。

車越しの抱擁

リアバンパーに近付くと美寿は身を屈めた。
そーぅっと車体スレスレに明の居る運転席へと移動した。

息を潜めて、匍匐前進ならぬ歩屈前進で、
逸る気持ちとは逆行してながら進んでいる。

「ちぃ~こちゃん」

「うわっ!!!」

隠れているつもりが見付かったので、美寿は驚きのあまり
屈んだ姿勢のまま、地面に手とおしりが着地して
足だけが進行方向上で宙に浮いていた。

ちーちゃんとは、美寿のあだ名である。
特典盛り沢山の末っ子に生まれたかった美寿は、
明の付けた愛称『ちびっこ』を家族にも強要する程、
気に入っていたのであった。

美寿の見上げた視点の先には、無精ひげを生やした明が居た。
多くの女性が生まれたての赤ちゃんを瞳に写した時に見せる、
慈悲深く、春の日差しのように柔らかい眼差しを持った明が居た。

「あ~あ。見付かっちゃった。。。」

「ちーちゃん、こういう時は、走ってくるもんやろ。」

明は、車から半分出していた手を美寿の方へ伸ばし、
反射的に、太陽に焼かれて熱くなったアスファルトの上に
付いてしまった美寿の手を、明の熱い血が流れる手の方へ
差し出すように促している。

「ほら、はよぅ(早く)、手ぇ伸ばしいな。
 そこ、おったらドアも開けられへんやろ。」


美寿が、伸ばした手を、会えない日の数だけの思いを託し
ぎゅーっと、時間を引き戻すかのように
明は自分の元へと力強く引き寄せ、やせっぽちの美寿を
車のドアごと抱きしめた。

「あきちゃん。。。おかえりなさいませ。」

黙ったまま、美寿のお腹辺りに、明はおでこを押し付け、
服で何かを拭き取っているかのように
ゴシゴシと首を上下に動かしている。

「あきちゃん。。。車、熱いよ。」

美寿の間抜けな答えに、じれったさを感じたのか
明は、運転席の窓から美寿を抱き上げて、
ハンドルと自分の間に美寿を挟むように、
車内へ引きずり込むのであった。

いくら、細い美寿でも、小さくは無いため、
抽象派彫刻作家が作ったオブジェのように、
車から、足だけが、はみ出していた。

オブジェであったのも、泡沫。
ドレスデンのレース人形を扱うかのごとく、
明は、美寿を専用シートへとゆっくりと招き入れるのであった。

駅への道

駅とは反対方向の住宅街へ向かう2本目の電信柱に
美寿は、メタリックパールが光る車と明を見つけた。

『わぁあ~!!!本物だぁ!!!ホントに居た~!!!』
ドクン どくん ドク…ン どくどくどくどく・・・。

明の居ない期間、毎日、美寿は、そこを通り
遠回りして、駅へ向かっていた。
居ないと解っていても、美寿の体がそうさせる。

美寿は、天性のマゾヒストなのかもしれない。
苦しく辛いと解っているはずであるポイントを
敢えて追求する装置が、どこかに備わっているのである。

居ない事を確かめたいのか、居る事を信じたいのか
受話器の向こうがベトナムの明に繋がっている事を知りつつ
待つ人の居ない道を、わざわざ選んで駅へ向かうのであった。

だが、今日は、そこに在るはずの無い景色が広がっていた。

いつも、空振りで駅へ向かう美寿にとっては、
遠回りしてきた道は、明に続く道であり、
赤絨毯が敷きつめられ、ライトアップされた
アカデミー受賞式に続く道のように感じられた。

『少し髪が伸びた事でしょ?着ている洋服が軽くなった事。
仕事が速くなった事にぃ・・・。』

いくつ明は、自分の変化に気付いてくれるのであろうかと、
そして、自分は、いくつ明の変化に気付けるのであろうかと・・・。
美寿の容量が小さい頭をフル可動させるのであるから、
壊れる寸前の機械の様に、頭から、煙が上がりそうである。

浅黒い明の腕が、車窓から、半分以上、姿が見える。
春には見られなかった光景である。
いくつかの変化に、季節も一緒に移行してくれていた。

美寿の早まる鼓動は、明の腕に反応を示し
1秒間に1.5回、脈打つ程に高まっていくのであった。

外の人には、気配りが出来る人間が明である。
愛車が出すエンジン音が、周囲に迷惑を掛ける事を知っていたし、
停車中にエアコンをかけるとすぐにオーバーヒートしてしまうのを
避けるため、いつも、夏は停車すればエンジンを切って窓を開ける。

そして、そんな気遣いができる明を、
美寿は、とても愛していたのであった。
10年後、30年後、50年後も、
明を取巻く愛は、永久不変であると美寿は疑う事を知らなかった。

だが、愛は時に有形無形である。
『愛の形が変わる事』=『恋愛関係の終わり』
美寿は、単純な分だけ、方程式もイコールは1つしかない。

婚約期間が過ぎ、結婚生活へと移り行く際に、
『二人の愛の形』に誤差が生じるなど思いもよらなかったのである。

それこそが、急に浅瀬から深い処へ堕ちたと感じる要因に
なり得る事とは、可哀相だが、知る術が無かったのである。

加えて、イコールは1つしかないのが、美寿なのであるから・・・。
これが、追々、長い苦しみとなるのであった。

歓喜の足音

ゥーウゥゥ ウォンオーン 
明が指揮を司るオリジナルのダブルクラッチの声が聞こえたのは、
美寿の終業時刻の1時間も前であった。

「おーぉ、彼、来たねぇ。」若先生が、冷やかし混じりに
3ヶ月間、聞く事もなかった音に敏感に反応を示した。

電卓の上を走らせていた美寿の指は止まり、
まだ見ぬ明の存在感を近くに感じ
「はい。彼の音です。」とだけ答えた。

余分な言葉と、感情を添えてしまえば、
記憶していた数字が消えていくような気がしたのと、
実物を見るまでは、安心できない美寿の用心深さが、
答えを短くさせた。

「あ~。今日は、終わり。終わり。どうせ美寿ちゃん
担当顧客分の今月分の入力、全て終わらせてるやろ?」


「あっ。はい。でも、今検算中です。」
「コンピューターが弾いてくれてるのと一致してるんやったら
帰って良し!」

「そんな事は、できません。」
「はいはい。明日、聞きましょ。
命短し恋せよ乙女!はよ(早く)、行って来い。」

「それから、今日は持ち帰り禁止な。楽しんでおいで。
それが僕からの今日の残業命令や。」


「わぁ、先生、おっとこまえ(男前)~!」
事務所の他の諸先輩たちも、囃し立てて場を盛り上げるのであった。

先生の心配りを活かそうと美寿の資料と電卓を取り上げ、
明の元へ走れる準備のお膳立てを整えるのであった。

そうでも、しないと帰らない美寿の性格を熟知した上の行動であった。
こじんまりしたアットホームな事務所ならではの
チームワークがそこに在った。

「人の恋路を邪魔するヤツは馬に蹴られて、 
 なんとやら・・・やもんな。」


コーヒー片手に、手を挙げて、手のひらからビームを発し
美寿の後ろめたさを払拭させてやるのであった。

大人の恋の機知に富んだ若先生らしい恋の応援の仕方であった。

中途半端な仕事をしたような気がしていた美寿は
後ろめたさを感じつつも、人の温かさに触れた事で、
気を取り直し、『明と今日という日を精一杯楽しもう』と
それが、恩返しであるような気分になっった。

ぺこりとお辞儀をした後、
「お疲れ様です。今日は甘えちゃいます。有難う御座います。」
事務所の扉をゆっくりと閉めて、180度回転した時点から
いつもの電信棒へ小走りに駆けて行った。

事務所内では美寿の足音が通常の3倍速で消えていくのを聞いて、
歓声と笑い声が、上がっていたのであった。

カウントダウン

鍵穴に、キーが差し入れられた瞬間、待ってましたとばかりに
直6気筒のエンジンが『ブオゥォーーーーン。オンオーン。』
雄叫びを上げ、ご主人様のお帰りを称えた。

Rは、尻尾を振ってお出迎えするかわりに、
体に響く低音を効かせたサウンドで喜びを伝えた。

『うおぉーーー!!!この音。この音!!!』

純子が気を利かせて、明のキーホルダーを持って
関空に行っていたのをいい事に、明は、これ幸いと、
純子の予測通り、家に上がることも無く、
美寿の元へ、一目散に走り出すのであった。

カユイトコロに手が届きすぎるが為に、
時折、純子の機転は、自分の心に暗転を運ぶのである。

ご近所から苦情が上がるマフラー音とバックファイヤーと共に
元気に駆け出す息子の車が見えなくなるまで
目を細めながら、見送る純子であった。

『大野さんちのバカ息子のお帰りだわ。』と、黙って見送る純子に、
ご近所さんは、イヤミのひとつでもお見舞しようと思うのか
わざわざ、出てきて、
一緒にお見送りをして井戸端会議に繋げるのであった。

『坊ちゃん、今日、お戻りなのねぇ。。。
 奥様が掛けるエンジンの音と坊ちゃんが掛けられる
 エンジンの音は違いますわねぇ。。。
 坊ちゃんが帰られたら、す~ぐ分かるわぁ~。
 同じ車ですのにねぇ。』

「すみません。。。」と、深々頭を下げる純子に、
「あら、やだ、そういうつもりじゃないのよぉ~。ねぇ、高瀬さん。」
と、気まずくなると、大げさに手を振り、別の人にバトンを渡す、
これが恐るべき、おばちゃま井戸端リレーなのである。

そんな1つの安いご近所ドラマが生まれている事を知ろうともせず、
明は、更に右足、左足を機敏に動かし
モータースポーツを楽しむのであった。

一速から、二速。二速で引っ張り、コンディションを確かめる。
助手席のアタッシュボードを潰して埋められた
湯温、水温、タコメーターは、明の気持ちに連動して
ヒートアップする。

夏と言う季節も重なり、全てのメーターが真上を越えるには
時間がかからなかった。
タコメーターだけが、ギア変換の度に、速いペースに合わせた
メトロノームのように左右に大きく動いていた。

明の気分は、高揚していた。
美寿から貰ったMOMOのスウェードで小さめのハンドルを
撫で回して、信号待ちの苛立ちを紛らわすのであった。

『あと、すこし・・・。待ってろ。美寿。』


かちゃかちゃかちゃかちゃ。
一方、美寿も、いつもより、速いペースでキーボードを叩いていた。
『ちょっと、仕事が出来る女みたいな音じゃん♪』とか思いながら
自分の奏でる音に酔いしれているのであった。

事務所の中央の壁にある大きな時計は、
明と美寿の近付きつつある再会を、静かに見守り
刻々と迫る時を、忠実に刻むのであった。

♪しおり3♪

どうやら、私は、かなり愛されていましたね。
そんな事さえ、忘れてしまうぐらいの日々でした。
昔、書いたものを読み返して、恥ずかしくなる時があります。

この最初のタイトルは『故郷のある人々』でした。
タイに行ってた時に、書いたものですので、
日本が恋しかったんでしょうね。

いつも、童謡の『ふるさと』が、頭の中には、流れてました。
後に出てまいりますが、何度も死のうと思いましたし、
マイナスな事ばっかり考えては計画してました。

でも、いつも、親孝行も出来てないのに、
両親よりは先に死ねないって。
それに、この地では、意地でも死ねない。って。

そんな時に、お仲人様が2次会にアカペラで熱唱して下さいました
『ふるさと』を思い出してました。

♪志を果たして いつの日にか帰らん♪
このフレーズが辛い日があると、いつも流れてました。

タイで、カツアゲ?に、遭遇した時も、
『なんと、ラッキー♪』
『もう、神様、私、頑張れないから、ごめんなさい』って
『あ~。これなら、死んでも許される』って心底そう思いました。

・・・あまちゃんでした。Babyでした。

自分で自分の事を、かわいそうだと感じると言う事は、
いかに、今までが自分が恵まれた環境にいたかの
証拠だった気がします。

タイでは、それを学んで帰国しました。
心から、物事に感謝するようになりました。

『結露』と改めたのは、日本に帰ってからです。
日本に帰りさえすれば『ばら色の人生が待っている』って
信じて疑いませんでしたからね。

『日本に帰ったら、心も落ち着くから待ってくれ』
との主人のセリフを約束だと思い込んでしまい、
待てど暮らせど、帰ってこない人に苛立ちを覚えていました。

でも、日本には当然日本語のテレビも流れてましたし、
お友達もいますし、両親も居ます。兄弟もいます。
気を紛らわす事は、たくさん有りました。

以前作った『故郷のある人々』は
ハッピーエンドで終わっているはずですのに、
現実は、なかなかハッピーへ向かいません。

ですから、もう1つタイトルを改めた物語が悲しいかな
出来てしまったのですね。

いつ、温度差は埋まるのでしょうか?
『神のみぞ知る』なのでしょうね。

でもね、神様、私、随分、逞しくなったの。
神様が造ってくれた道、自分で創り直しちゃうかもよ。
期待しててね♪

非行の理由

必要以上に飾られた食卓で、箸を進めていく仁の目の先には
暖炉のあるリビングに、腰を落とし、
捨て猫のように体を丸めて膝を抱える純子の姿が見えた。

涙も枯れ果てたのであろう純子の乾いた唇を見て、
仁は、純子にも、そして自分にも哀情を催すのであった。

仁は、やっと自分だけを見てくれるべき存在が
現れたにも関わらず、
自分たちの子供によって持ち去られた悲しみが胸を占拠していた。

大人気なく、怒り散らすわけにもいかない。
相手は、血を分けた自分の分身なのである。
ましてや、子供を慈しむ母親に文句は言えない。

家事もきちんと、通常の主婦以上にこなしている。
欠点を探しようにも純子に欠点は見当たらないのである。
指摘さえも、当たり所さえも見付からない。

仁が『子供じみたヤキモチ』と、言われるのは目に見えている。
非の打ち所の無さが、仁に、遣る瀬無さを運んでくる。
弱く、行き場を失った心は、求め彷徨う綿毛になる。

当然、そうなると、お金だけの関係でも、
一時の夢でも、自分だけを瞳に写してくれる女性に目が行く。

お金で愛を買っている。
割り切った付き合いなのである。
仁は自分に言い聞かせながら、箸を置く。

ご馳走様も言わずに自室へこもり行く夫を目で追いながら
純子は、仁の全てを悟りて、尚、膝を強く抱える。

ただ、子供にそれを気付かれるようでは三流以下の夫婦である。

だが、明は知っていた。
出張といいながら、妾の部屋で過ごす自分の父を、
仁が隠しそこなった写真により明は知ったのであった。

この時は、自分の父親を非難していた。
「どこまで荒れたら、親父は帰ってきて
お母さんを支えるようになるのであろうか?」

そんな事を思いながら、親を泣かす事を考えて、
暗闇の中、ガードレールの凸凹が見えるぐらいまで身を屈め
時にヘルメットがすれて転倒しながら、
子供なりの制裁を親に与えるのであった。

そんな時に美寿に出逢い、一笑されて、イガイガの金平糖のような
明の心は、溶け始めて丸みを帯びた金平糖に同じく、
本来の姿を徐々に取り戻していったのであった。

そして、その二人を純子は、心の底から応援し、
まだ結婚もしてはいない美寿を、
さも、わが娘のように可愛がるのであった。

愛の狭間

そう、男は外に出ると七人の敵と戦ってきて、
家では、安らぎを求める。
万の刺激は外だけで充分なのである。

玄関の扉を閉めた瞬間から、そこから先は、休息の地であり、
寝首を狩られることもない自分の縄張りであると
男は勘違いするのである。

休息の地が楽園となるか、敵地になるかは、
本人次第である事に、気付く男は極めて少ない。

営業努力を怠れば、成績が下がるセールスマンと一緒である。
妻の付ける評価が、そのまま家庭での快適性へと直結している。

卒業してからも、外でも、家でも、成績表が毎日渡されるのである。
学生時代の学期毎の成績表の方が、まだ良かったかもしれない。

だからこそ、無条件の拠り所を求めるのであろう。
男は結婚してからも母の代わりに妻にも無償の愛を欲するのである。

仁の生い立ちには、大きく影響しているバックグラウンドがあった。
母親が学生時代に亡くなり、父親が3回、後妻を招き入れた事である。
それ故、仁は人一倍、自分だけに注がれる愛を
貪欲に求めていたのである。

仁は、純子と知り合ってから、結婚に漕ぎ着けるまで、
毎夜、純子の実家に真紅のバラの花束を持って通ったのである。
真紅のバラは仁の実母,うい が生前好きな花であった。

純子の両親は、近所でも評判の浮名を流す大野家の長男との
縁談は『お断り』であった。

愛しく大事な子供であり、3姉妹の長女である。
純子の父もまた事業を手掛けていたため、跡取りにとも考えていた。

だが、純子は来る日も来る日も
毎夜、会社帰りにバラだけを届けて帰る仁の後姿に、心打たのであった。

純子は、ある日「お話、お受けいたします。」と
両親の反対を押し切って結婚に至ったのである。

式場に到着しても、結婚式が始まる直前まで
「今なら、まだ、間に合う。止めれるぞ。」と諦めきれない純子の父は、
聞き分けのない子供のように、最後の無駄な抵抗を続けるのであった。

そうまでして、苦労して手に入れた『天女』を、
仁は、どうして大事に出来なかったのか・・・。

純子は、二人の子供を連れて、線路の上に立った事もあった。
無邪気に、手を握り返す子供を見て我に返り家路に着いた。
そして、より一層、純子は子供だけに全てを賭け
労力と愛を注ぐのであった。

  時
人間

時間と人間の共通項が『間』とするなら、
愛の間に挟まる物は何なのであろう。
愛と人間と時間・・・。永遠でないモノは、人間であろう。

人間が人間である限り、永遠を約束できるものは何ひとつ無いのである。
悲しいと思うか、そこに『義』を見出すかは、心の在り方なのである。

将来、明と美寿も遭遇する未来は仁と純子の通ってきた道なのであった。