全身麻酔では、
筋弛緩薬や、麻薬の使用のため、
気道確保が必要になることがほとんどである。
多くの症例では問題ない気道確保であるが、
術前評価では予測しえない換気困難、挿管困難症例に遭遇することがまれにある。
気道確保の成否は、死亡や不可逆的脳障害などの患者の予後に直結するため、最重要問題である。
そのため、ASAでは,
1992年にDifficult Airway Management(DAM)にかかわるガイドライン発表している。
1983年に開発されたラリンジアルマスクは当時、一般的ではなかったのか、LMAは採用されていない。
Practice guidelines for management of the difficult airway. A report by the American Society of Anesthesiologists Task Force on Management of the Difficult Airway.
Anesthesiology. 1993 Mar;78(3):597-602.
http://journals.lww.com/anesthesiology/Citation/1993/03000/Practice_Guidelines_for_Management_of_the.28.aspx
その後、LMAの有効性が認識され、普及したため、
2003年にEBMに基づいたガイドラインのupdateがあった。
Practice guidelines for management of the difficult airway: an updated report by the American Society of Anesthesiologists Task Force on Management of the Difficult Airway.
Anesthesiology. 2003 May;98(5):1269-77.
http://journals.lww.com/anesthesiology/Citation/2003/05000/Practice_Guidelines_for_Management_of_the.32.aspx
日本語の解説↓
http://www.med.nagoya-u.ac.jp/anesth/jsa51/hp/pdf/tujimoto.pdf
換気困難、挿管困難でLMAの占める位置は重要である。
他にも、英国などにもガイドラインがある。
http://www.das.uk.com/guidelines/guidelineshome.html
最近はエアウェースコープをはじめとする、
気道の情報をモニターできる光学デバイスが相次いで発売、普及し、
しかもその有用性、
とくに従来法では挿管困難な症例でも直視下で挿管できる、
といった報告が数多くされている。
そのため、今までのガイドラインは現状に即しているとは言えず、
さらなるupdeteの必要性に迫られている。
そこで、光学デバイスを組み込んだアルゴリズムが作成され、
その実際を評価したpaperがpublishされた。
An algorithm for difficult airway management, modified for modern optical devices (Airtraq laryngoscope; LMA CTrach™)
: a 2-year prospective validation in patients for elective abdominal, gynecologic, and thyroid surgery.
Anesthesiology. 2011 Jan;114(1):25-33.
http://journals.lww.com/anesthesiology/pages/articleviewer.aspx?year=2011&issue=01000&article=00016&type=abstract
下記の新しいアルゴリズムに従って、麻酔導入、挿管を行う。
まず下記7点で術前気道評価(risk factor)を行う。
・男性>50歳以上
・BMI>30kg/m2
・Mallampati分類 Ⅲ、Ⅳ(3、4)
・最大開口時切歯間距離<35mm
・甲状切痕頤間距離<65mm
・下顎突出制限(下切歯が上切歯を超えない。)
・頸部周囲径>40 in women and 45cm in men(甲状軟骨レベルで測定)
開口制限あり。
頸椎可動性不良
挿管不能の既往あり
なら意識化挿管をおこなう。
それ以外なら酸素化、鎮静を行い、
上記のrisk factor3個未満ならマスク換気する。
マスク換気困難のGrade
1. airwayなしで換気可能
2. airway使えば換気可能
3. airway使って二人でやれば、あるいは一人ならさらに25cmH2O以上の圧コントロールの補助換気があればなんとか換気可能
4. カプノメータが反応したり、胸が上がるような十分な換気ができない
マスク換気のGrade評価を行う。
Grade1か2なら非脱分極性筋弛緩薬を投与する。
Grade3以上ならサクシニルコリンを投与する。
上記のrisk factorが3個以上ならマスク換気する前に最初からサクシニルコリンを投与する。
筋弛緩薬投与後、マスク換気をする。
マスク換気のGradeを評価する。
Grade1、2、3の場合
マッキントッシュ型喉頭鏡(必要ならGEB:gum elastic bougie も使用する。)
↓
Airtraq(必要ならGEBも使用する。)
↓
LMA CTrach
(換気できなければtranstracheal Ventilation Manujet)
のアルゴリズムで挿管を試みる。
Grade4の場合
LMA CTrach
(換気できなければtranstracheal Ventilation Manujet)
で挿管を試みる。
以上のアルゴリズムで2年間のprospective studyを行った。
全身麻酔が必要な予定手術(腹部、婦人科、甲状腺手術):12225例
意識下挿管を行った症例は4例。
術前評価でrisk factorが3個以上あった症例は188例(1.5%)
換気のGrade3は102例、Grade2例で、これらはいわゆる換気困難(CV)に相当する。
マッキントッシュ型喉頭鏡で挿管できなかった症例:236例/12218例
マッキントッシュ型喉頭鏡+GEBで挿管できなかった症例:29例/236例
(1例はその後、換気不能になり、LMA Ctrachで挿管試みられた。)
Airtraqで挿管できなかった症例:4例/28例
Airtraq+GEBで挿管できなかった症例:1例/4例
この1例と換気不能だった2例、計3例に対してLMA CTrachを挿入した。
LMA CTrachで全例換気可能で、その後全例挿管可能だった。
挿管不可能症例:0例/12218
結論:
光学デバイスを組み込んだアルゴリズムを活用することにより、
全例で挿管可能だった。
SpO2が90%以下になった症例:87例(0.7%)
SpO2が80%以下になった症例:17例(0.1%)
SpO2が68%まで下がった症例があったが、
あごひげもじゃもじゃで、術前評価でrisk factorが5個ある症例だった。
SpO2が80%以下になった症例の検討では、
平均BMIは49と尋常ではない。
SpO2が下がるのはたいてい、
マッキントッシュ型喉頭鏡で喉頭展開を行っている時に起こるので、
マッキントッシュ型喉頭鏡で挿管を試みる時間を短縮することを推奨している。
著者らの周産期センターではマッキントッシュ型喉頭鏡を使用するのは2分間に制限している。
マッキントッシュ型喉頭鏡±GEBで挿管できなかった29例のうち
7例はGrade3の換気困難であり、
換気困難は挿管困難の予測因子として有用かもしれない。
注意するべきは、
このアルゴリズムを運用するにあたって、術者はトレーニングを受けた後で行っている。
従って、挿管困難症例でいきなり不慣れな手技をおこなって同じような結果が期待できるわけではない。
普段からいろいろな挿管方法をやっておく必要がある。
Airtraq+GEBでも挿管できなかった症例は1例だけだし、
マッキントッシュ型喉頭鏡で挿管試みている間にSpO2が下がることが多いという結果を考えると、
最初からAirtraqで挿管すればいいのではないかという疑問も残る。
コストのことも考えると、
当院ではAirwayscopeとなるだろうか。
いつまでも過去の基本に忠実になる必要はないように思う・・・。
もちろん、最初からモニターで直視可能で、
途中でもしっかり換気ができるLMA CTrachを、
第一選択にするのが一番安全がもしれない。
むしろそうすべき!?
気になったのは術前評価のrisk factor。
一般的な教科書にも載っている内容ではある。
risk factorが3個未満の場合、
実際にGrade3以上の換気困難は90例/12033例(0.75%)だった。
一方、risk factorが3個以上の場合、
Grade3以上の換気困難は13例/188例(6.9%)だった。
まとめると感度12.6%、特異度98.6%であり、
換気困難の予測因子として、
risk factorが3個以上というのは、
換気困難にはならなさそうといえるかもしれないが、
かなり感度の低いものといえる。
したがって、術前評価の時に換気困難を予測することは困難だと認識する必要がある。
最近では日本でも組織的な啓もう活動の一環として、
Difficult Airway Management (DAM)ハンズオン・トレーニングが、
学会ごとに開催されている。
これは過去のテキスト例(ずいぶん前だが。)
http://nsa.kpu-m.ac.jp/kako/jsca25/program/img/w4_4t.pdf
ASAガイドラインと、ADSガイドラインをふまえた気道管理ストラテジーの日本の文献もフリーなら↓
http://www.jstage.jst.go.jp/article/jjsca/28/3/359/_pdf/-char/ja/
(17-2)で資料も作成予定です。