anesthemanのブログ

一般病院に勤務する麻酔科医です。ここは麻酔管理向上のための自己学習?の場です。解釈がおかしいときは指摘していただけると嬉しいです。


テーマ:

(17)-1 Difficul airway(換気困、難挿管困難)に対するアルゴリズム

の参考資料です。


見たことが無いデバイスが採用されています。

一度見ておくといいと思います。



マッキントッシュ型喉頭鏡+GEBでの挿管は↓
http://www.youtube.com/watch?v=JvqXil8apEI


LMA CTrachはLMAファストラックにモニターを装着できるようなデバイスである。
ひとたびLMAを挿入したら、声門を確認している間に換気できることがメリットである。
(挿管するときはさすがに換気はできない。)
http://medgadget.com/archives/2005/06/lma_ctrach.html


http://www.youtube.com/watch?v=BRlxrwU1Lm8&feature=related
(肥満患者に対する意識下挿管の映像↑。素晴らしい。)


Airtraqで挿管
http://www.youtube.com/watch?v=6iwqaSs96rc


モニターもつけられるらしい。
http://www.youtube.com/watch?v=BHYac--G8v0


Airtraq+GEBだと(↓映像のは違うけどこんな感じになる。)
http://www.youtube.com/watch?v=51Y9O-xr7Dg


Manujetは輪状甲状膜穿刺と経気管ジェット換気に用いるデバイスで、
http://www.hospitecnica.com.mx/productos/VBM/ventilador%20jet.pdf


日本的には↓
http://www.maruishi-pharm.co.jp/med/libraries_ane/anesthesia/pdf/29/29feature07.pdf


テーマ:

全身麻酔では、

筋弛緩薬や、麻薬の使用のため、

気道確保が必要になることがほとんどである。


多くの症例では問題ない気道確保であるが、
術前評価では予測しえない換気困難、挿管困難症例に遭遇することがまれにある。


気道確保の成否は、死亡や不可逆的脳障害などの患者の予後に直結するため、最重要問題である。


そのため、ASAでは,

1992年にDifficult Airway Management(DAM)にかかわるガイドライン発表している。
1983年に開発されたラリンジアルマスクは当時、一般的ではなかったのか、LMAは採用されていない。


Practice guidelines for management of the difficult airway. A report by the American Society of Anesthesiologists Task Force on Management of the Difficult Airway.
Anesthesiology. 1993 Mar;78(3):597-602.

http://journals.lww.com/anesthesiology/Citation/1993/03000/Practice_Guidelines_for_Management_of_the.28.aspx


その後、LMAの有効性が認識され、普及したため、

2003年にEBMに基づいたガイドラインのupdateがあった。


Practice guidelines for management of the difficult airway: an updated report by the American Society of Anesthesiologists Task Force on Management of the Difficult Airway.
Anesthesiology. 2003 May;98(5):1269-77.

http://journals.lww.com/anesthesiology/Citation/2003/05000/Practice_Guidelines_for_Management_of_the.32.aspx


日本語の解説↓
http://www.med.nagoya-u.ac.jp/anesth/jsa51/hp/pdf/tujimoto.pdf


換気困難、挿管困難でLMAの占める位置は重要である。


他にも、英国などにもガイドラインがある。
http://www.das.uk.com/guidelines/guidelineshome.html



最近はエアウェースコープをはじめとする、
気道の情報をモニターできる光学デバイスが相次いで発売、普及し、
しかもその有用性、
とくに従来法では挿管困難な症例でも直視下で挿管できる、
といった報告が数多くされている。


そのため、今までのガイドラインは現状に即しているとは言えず、
さらなるupdeteの必要性に迫られている。


そこで、光学デバイスを組み込んだアルゴリズムが作成され、
その実際を評価したpaperがpublishされた。



An algorithm for difficult airway management, modified for modern optical devices (Airtraq laryngoscope; LMA CTrach™)
: a 2-year prospective validation in patients for elective abdominal, gynecologic, and thyroid surgery.
Anesthesiology. 2011 Jan;114(1):25-33.

http://journals.lww.com/anesthesiology/pages/articleviewer.aspx?year=2011&issue=01000&article=00016&type=abstract




下記の新しいアルゴリズムに従って、麻酔導入、挿管を行う。



まず下記7点で術前気道評価(risk factor)を行う。

・男性>50歳以上
・BMI>30kg/m2
・Mallampati分類 Ⅲ、Ⅳ(3、4)
・最大開口時切歯間距離<35mm
・甲状切痕頤間距離<65mm
・下顎突出制限(下切歯が上切歯を超えない。)
・頸部周囲径>40 in women and 45cm in men(甲状軟骨レベルで測定)



開口制限あり。
頸椎可動性不良
挿管不能の既往あり
なら意識化挿管をおこなう。



それ以外なら酸素化、鎮静を行い、
上記のrisk factor3個未満ならマスク換気する。


マスク換気困難のGrade

1. airwayなしで換気可能
2. airway使えば換気可能
3. airway使って二人でやれば、あるいは一人ならさらに25cmH2O以上の圧コントロールの補助換気があればなんとか換気可能
4. カプノメータが反応したり、胸が上がるような十分な換気ができない



マスク換気のGrade評価を行う。

Grade1か2なら非脱分極性筋弛緩薬を投与する。

Grade3以上ならサクシニルコリンを投与する。


上記のrisk factorが3個以上ならマスク換気する前に最初からサクシニルコリンを投与する。



筋弛緩薬投与後、マスク換気をする。
マスク換気のGradeを評価する。


Grade1、2、3の場合

マッキントッシュ型喉頭鏡(必要ならGEB:gum elastic bougie も使用する。)
 ↓
Airtraq(必要ならGEBも使用する。)
 ↓
LMA CTrach
(換気できなければtranstracheal Ventilation Manujet)

のアルゴリズムで挿管を試みる。


Grade4の場合

LMA CTrach
(換気できなければtranstracheal Ventilation Manujet)

で挿管を試みる。



以上のアルゴリズムで2年間のprospective studyを行った。




全身麻酔が必要な予定手術(腹部、婦人科、甲状腺手術):12225例

意識下挿管を行った症例は4例。

術前評価でrisk factorが3個以上あった症例は188例(1.5%)

換気のGrade3は102例、Grade2例で、これらはいわゆる換気困難(CV)に相当する。

マッキントッシュ型喉頭鏡で挿管できなかった症例:236例/12218例

マッキントッシュ型喉頭鏡+GEBで挿管できなかった症例:29例/236例
(1例はその後、換気不能になり、LMA Ctrachで挿管試みられた。)

Airtraqで挿管できなかった症例:4例/28例

Airtraq+GEBで挿管できなかった症例:1例/4例

この1例と換気不能だった2例、計3例に対してLMA CTrachを挿入した。

LMA CTrachで全例換気可能で、その後全例挿管可能だった。

挿管不可能症例:0例/12218


結論:
光学デバイスを組み込んだアルゴリズムを活用することにより、
全例で挿管可能だった。



SpO2が90%以下になった症例:87例(0.7%)
SpO2が80%以下になった症例:17例(0.1%)
SpO2が68%まで下がった症例があったが、
あごひげもじゃもじゃで、術前評価でrisk factorが5個ある症例だった。


SpO2が80%以下になった症例の検討では、
平均BMIは49と尋常ではない。

SpO2が下がるのはたいてい、
マッキントッシュ型喉頭鏡で喉頭展開を行っている時に起こるので、
マッキントッシュ型喉頭鏡で挿管を試みる時間を短縮することを推奨している。
著者らの周産期センターではマッキントッシュ型喉頭鏡を使用するのは2分間に制限している。


マッキントッシュ型喉頭鏡±GEBで挿管できなかった29例のうち
7例はGrade3の換気困難であり、
換気困難は挿管困難の予測因子として有用かもしれない。


注意するべきは、
このアルゴリズムを運用するにあたって、術者はトレーニングを受けた後で行っている。
従って、挿管困難症例でいきなり不慣れな手技をおこなって同じような結果が期待できるわけではない。
普段からいろいろな挿管方法をやっておく必要がある。


Airtraq+GEBでも挿管できなかった症例は1例だけだし、
マッキントッシュ型喉頭鏡で挿管試みている間にSpO2が下がることが多いという結果を考えると、
最初からAirtraqで挿管すればいいのではないかという疑問も残る。

コストのことも考えると、
当院ではAirwayscopeとなるだろうか。

いつまでも過去の基本に忠実になる必要はないように思う・・・。


もちろん、最初からモニターで直視可能で、
途中でもしっかり換気ができるLMA CTrachを、
第一選択にするのが一番安全がもしれない。
むしろそうすべき!?


気になったのは術前評価のrisk factor。
一般的な教科書にも載っている内容ではある。
risk factorが3個未満の場合、
実際にGrade3以上の換気困難は90例/12033例(0.75%)だった。

一方、risk factorが3個以上の場合、
Grade3以上の換気困難は13例/188例(6.9%)だった。

まとめると感度12.6%、特異度98.6%であり、
換気困難の予測因子として、
risk factorが3個以上というのは、
換気困難にはならなさそうといえるかもしれないが、
かなり感度の低いものといえる。
したがって、術前評価の時に換気困難を予測することは困難だと認識する必要がある。


最近では日本でも組織的な啓もう活動の一環として、
Difficult Airway Management (DAM)ハンズオン・トレーニングが、
学会ごとに開催されている。

これは過去のテキスト例(ずいぶん前だが。)
http://nsa.kpu-m.ac.jp/kako/jsca25/program/img/w4_4t.pdf



ASAガイドラインと、ADSガイドラインをふまえた気道管理ストラテジーの日本の文献もフリーなら↓
http://www.jstage.jst.go.jp/article/jjsca/28/3/359/_pdf/-char/ja/


(17-2)で資料も作成予定です。


テーマ:

話題としては今更の感もあるが、
全身麻酔を行う麻酔科医のとっては重大な合併症の一つのため、
再度、復習する。


悪性高熱症は、脱分極性筋弛緩薬や、揮発性麻酔薬をトリガーとする、
細胞内Ca調節機構の異常が本態と考えられている。

その発症率は1例/10,000例から1例/220,000例ともいわれている。

日本では1例/60,000例という報告もあるものの、
調査対象が日本全体を反映しているとは言い難く、
遺伝子異常の存在を考えると、
報告された地域的な偏りの可能性も無視できなかった。

そこで、
日本全体での発症率や、
使用薬剤との関連性を調べる目的で、
DPCデータベースを用いた調査が行われた。

Prevalence of malignant hyperthermia and relationship with anesthetics in Japan: data from the diagnosis procedure combination database.
Anesthesiology. 2011 Jan;114(1):84-90.

http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/21169796

(残念ながらFreeではない。半年ぐらい待つか、図書館で入手する必要がある。)


DPCデータベースは、
日本全体の主な基幹病院で行われている手術のほとんどを反映しているため、
今回の調査結果が、
すなわち日本全体での悪性高熱症の発生頻度や、薬剤との関係をあらわしている。


ちなみに、

Diagnosis Procedure Combination(DPC)データベースは、
退院時情報や診療報酬データなどから構成され,
診断名・入院時並存症および入院後合併症とそれらのICD-10コード,手術処置名,麻酔時間,輸血量,使用された薬剤・医療材料,在院日数,退院時転帰,費用などの情報が含まれ、

入院医療費の定額支払い制度に活用されている。


DPC対象病院は、2003年4月より全国82の特定機能病院等から開始されたが、2010年4月には合計1334施設となる見込みらしい。


データは毎年7月~12月の6箇月間に全国の調査参加病院から収集される。
このデータは、医療サービスの利用やアクセス,アウトカムや費用などについて経時的に分析可能であり、臨床疫学研究にも応用可能であるとされている。

http://ja.wikipedia.org/wiki/%E8%A8%BA%E6%96%AD%E7%BE%A4%E5%88%86%E9%A1%9E%E5%8C%85%E6%8B%AC%E8%A9%95%E4%BE%A1

http://www.jstage.jst.go.jp/article/iken/20/1/20_87/_article/-char/ja


対象:


2006~2008年の18カ月に全身麻酔下に手術を受けた患者1238171症例
(27.8%が大学病院、72.2%が公立病院(それに準じる病院ふくむ。))


患者背景:

男女: 48%:52%
年齢: 18%が29歳以下
使用薬剤頻度:
セボフルラン75%、イソフルラン2.7%、ハロタン、エンフルランはまれ。
ベクロニウム63%、ロクロニウム20%、スキサメトニウム1.6%、パンクロニウムまれ。
プロポフォールは77%で使用。
(2008年当時の日本の中核病院では、ガス麻酔(ほとんどセボフルランだが)が主流で、TIVAは3割弱ぐらいと比較的少数派だったようだ。現在はどうなのだろうか。)


結果:


悪性高熱症の発生は17例(1例/73000例)
術前からの悪性高熱症と診断されていた、あるいはリスクがあるような合併症を伴っていた症例はない。
従後死亡症例は1例のみ。(セボフルラン、ベクロニウム使用)

使用薬剤はセボフルラン14例、ベクロニウム10例、ロクロニウム6例、プロポフォール12例で、イソフルラン等の揮発性麻酔薬や、スキサメトニウムでは発症例はなかった。
セボフルランを使用していない症例は3例あり、いずれもTIVAと思われる。
しかもその内の1例は筋弛緩薬も使用していない。


プロポフォールは安全と考えられているが、
プロポフォールだけでも発症例があったことは驚きだ。

DPCデータベースで調査を行うことのメリットとして、
ある薬剤を使用した症例と、
使用していない症例でのMHの発症率を比較できることが挙げられる。


比較してみたところ、
この規模の調査にもかかわらず、
残念ながら有意な薬剤は同定されなかった。


参考までに100万人当たりの発症頻度をあげる。


セボフルラン15.0人
ベクロニウム12.8人
ロクロニウム24.3人
プロポフォール12.6人
(あくまでも使用症例であって、重複している。
たとえばプロポフォールには導入だけ使用した症例がほとんどと思われる。)


唯一差があるのは男女差だ。
男は100万人当たり21.8人の発症頻度のところ、
女は6.2人だった。(P=0.029 )


30歳以上の11.8人に対して、29歳以下は22.5人と多いが、有意差はない。


頻度からすると当院では20年に1度、
しかも個人でいえばまず遭遇することのない稀な合併症といえる。

そうはいっても致死的な合併症であるので、
やっぱり把握しておく必要があるのはかわりない。


世界的に認められた診断基準はない。
海外ではClinical Grading Scaleという、
項目の重要度ごとに、異なる点数付けをしているScaleを採用しているようだが、
個々の検査を必ずしも施行できないことから、
JSA(日本)では別の診断基準が普及している。


体温基準
A. 麻酔中,体温が40℃以上
B. 麻酔中15 分間に0.5℃以上の体温上昇で最高体温が38℃以上


その他の症状
1)原因不明の頻脈,不整脈,血圧変動
2)呼吸性および代謝性アシドーシス(過呼吸)
3)筋強直(咬筋強直)
4)ポートワイン尿(ミオグロビン尿)
5)血液の暗赤色化,PaO2 低下
6)血清K+,CK,AST,ALT,LDH の上昇
7)異常な発汗
8)異常な出血傾向


劇症型(f-MH):A かB を満たし,その他の症状を認める


亜型(a-MH):体温基準を満たさないが,その他の症状がある


これで臨床診断を行う。


今回の調査では、MH発症者の致死率は5.9%だった。
1961~1984年の期間の致死率は42.3%、
(1970年代は約70%もあったという報告もある。)
1985~2004年の期間では15.0%だったことから、
年々、致死率は著明に改善してきている。


理由として、
カプノメーターの普及や、
持続体温測定の普及だけでなく、
ダントロレンの知識の普及と、
使用しやすさの改善(常備している病院が増えた。)が考えられている。


持続体温測定が役に立つのはいいとして、
なぜカプノメーターの普及が役に立つのか?

症状の経過は、

広島大学の悪性高熱症の説明から引用すると、
http://home.hiroshima-u.ac.jp/anesth/MH/JMH.pdf


早期には,ETCO2 の上昇,原因不明の頻脈がみられます。
中期には,アシドーシス、異常な体温上昇,SPO2低下,心室性不整脈などが見られます。
全身の筋強直はMH がかなり進行してからみられ、骨格筋の崩壊により尿は赤褐色を呈し、血清カリウム値が高くなります。
循環虚脱でショックとなりますが、頻脈に伴い高血圧を呈することもあります。
発症後1~2 日後に横紋筋融解症のピークとなり、CK 等の上昇度は症例によりかなりばらつきがあります。


となる。


臨床診断基準を満足して、確信にいたるには、
進行するまで待たなければいけない。


しかし、重症化する前に対応を開始することは、
悪性高熱症に限らず、どの合併症でも大切である。


そこで、いかに初期の段階で疑い始めるかが大切となる。


その点で、ルーチンでETCO2を測定することは役に立つ。
MHの発症初期にみられるETCO2の上昇をキャッチして、
疑い始めることにより、重症化する前に対応できるからだ。


換気量を増やして満足していてはいけない。


実際、今回MHを発症した症例のうち、
5例はダントロレンを使用することなく、リカバリーしている。
早期に認識することができたため、
麻酔薬の暴露を中止し、クーリングしただけで改善したと思われる。


早期認識、早期診断、迅速な対応は重要だ!


ところで、ダントロレンの使用量覚えていますか?




広島大学の悪性高熱症の説明をみるだけでも十分と思われるので、
一度、悪性高熱症に関して再確認しておいたほうが良い。

http://home.hiroshima-u.ac.jp/anesth/MH/JMH.pdf


DPCデータベースを使用することの問題点として、
診断精度があげられる。。
確定診断、使用薬剤などの情報はあるが、
検査値や、その病態などの情報はないので、
MHという診断の確からしさがどの程度なのかは確認のしようがない。
極端なことを言えば・・・、な症例も多いかもしれない。
そうすると、調査結果がかなりの誤差を含むことになる。


合併症の実態を調査することって本当に大変ですね・・・。


テーマ:
海外で良く聞くデスフルランが本邦でも発売されるらしい。

薬事日報

薬事・食品衛生審議会医薬品第一部会は1月31日、新有効成分としてデスフルランを含有する麻酔薬「スープレン吸入麻酔液」や、トラマドール塩酸塩とアセトアミノフェンを配合した非癌性疼痛治療薬「トラムセット配合錠」など4品目について審議し、薬事承認を了承した。いずれも、市販直後調査以外に承認条件はつかなかった。3月にも開かれる、次回の薬事分科会に報告する見通し。

 ▽スープレン吸入麻酔液(バクスターが製造販売):デスフルランを有効成分とし、全身麻酔の維持を効能・効果とする。類薬にはセボフルラン、イソフルランがある。再審査期間は8年で、原体、製剤ともに劇薬に該当する。海外67カ国で承認されている。



デスフルランの名前は聞いたことがあっても、
代謝率か極めて低いとか、覚醒が早いらしいぐらいしか知らない。


簡単な説明PDFは↓

電脳麻酔ブログでも、
しばらく前に特集が組まれていた。
No.1-5までの長編だ。

No.1

No.2

No.3

No.4

No.5


このデスフルランだがみんなの興味はどうだろうか!?
導入?あるいは、様子見?

それはそうと、
もうひとつ薬事承認された薬剤という情報の中で気になるのがある。

これ↓

 ▽トラムセット配合錠(ヤンセンファーマが製造販売):トラマドール37・5mgとアセトアミノフェン325mgの新配合剤。非オピオイド鎮痛剤で、治療困難な非癌性慢性疼痛、抜歯後の疼痛の鎮痛を効能・効果とする。類薬にカロナール錠などがある。

 トラマドールの単剤「トラマール」の昨年7月承認から1年を経過していないが、臨床試験で、単剤の50mg製剤に比べて、副作用を軽減できるとの成績が示され、配合剤の承認基準を満たすと判断した。再審査期間は6年で、原体、製剤ともに劇薬に該当する。海外70カ国で承認されている。


薬剤師さんのブログでも取り上げられていた。
米国でのことも書いてあり、参考にしたい。


http://ploop.blog12.fc2.com/blog-entry-226.html


ペインクリニックや術後に取り入れられるだろう新しい薬剤であり、
今後の動向に注意しておきたい。


テーマ:
術前には慣例として絶食期間を設けている。


理由はなんでか?


麻酔導入時に嘔吐反射が誘発されると誤嚥のリスクになる。
したがって、できるだけ胃の中を空にしておきしましょう!
ということだろうか。


ではどのくらい絶食期間を設ければいいのだろうか?
ASAは1999年に予定手術の術前絶食期間に関するガイドラインをだしている。


Practice guidelines for preoperative fasting and the use of pharmacologic agents to reduce the risk of pulmonary aspiration: application to healthy patients undergoing elective procedures: a report by the American Society of Anesthesiologist Task Force on Preoperative Fasting.


Anesthesiology. 1999 Mar;90(3):896-905. No abstract available.



ただし、このガイドラインがでてからも、

日本では相も変わらずガイドラインと比較してかなり長い絶食期間が維持されているようだ。


日本での術前絶食時間を調べた論文では、
平均絶食時間 12-13時間、
平均絶飲時間 6-9時間、
となっている。


Current practice of preoperative fasting: a nationwide survey in Japanese anesthesia-teaching hospitals.


J Anesth. 2005;19(3):187-92.


自分の指示はワンパターンに、
夕食後絶食、眠前まで水分可というものだから、
ますますひどい。

ではなぜASAのガイドラインが出てからもなお、
日本では長期の絶飲食時間が維持されているのだろうか。

ガイドラインの目的でもある誤嚥を恐れている人は25%程度いるが、
今までやっていたことを変えるほどメリットがあるとは思えない(56%)、
混乱を招く(40%)、
手術スケジュールの変更が自由にできなくなる(50%)、
などといった理由で、
いまだに長期の絶飲食時間が維持されているようだ。
(上記文献のtabel2参照)

やっぱり現実問題として、
いままでの慣習を変えるのは大変とみんな思っているせいだろう。
大変な思いをして変えるほどのメリットも感じてないようだし。

もちろん、最近では、
ERASの概念が普及してきたことにより、
いままでの慣習を変えよう!
周術期管理に注目してより良くしていこう!
という機運が高まっている。ハズ

今後は術前絶食期間が見直されていくものと予想される。


そんな中、
先のASAの術前絶食時間のガイドラインがupdateされた。

Practice Guidelines for Preoperative Fasting and the Use of Pharmacologic Agents to Reduce the Risk of Pulmonary Aspiration: Application to Healthy Patients Undergoing Elective Procedures: An Updated Report by the American Society of Anesthesiologists Committee on Standards and Practice Parameters

Anesthesiology. 114(3):495-511, March 2011.




誤嚥に関係する重要な要素の一つに、

胃液量がある。
胃液が多いほど嘔吐しやすそうで、
嘔吐した時の被害も多くなりそうである。

もうひとつが胃液酸度である。
胃液酸度が高いほど(pHが低いほど)、
被害が大きいといえるからだ。

したがって、ガイドラインではそれぞれのstrategyに対して、

胃液量が少なくなるというエビデンスがあるか?

胃液酸度が低くなるというエビデンスがあるか?

という視点で評価されている。


多くのstrategyで、
胃液量減少あり、
胃液酸度低下などが見られているが、
それらが、周術期の嘔吐、誤嚥のリスクを減らす、
というエビデンスはなく、
結局のところ、
recommendationは、
専門家の意見によるOpnion-based Evidenceに頼らざるをえない。

したがって、
本ガイドラインのrecommendationは、
基本的に専門家の意見中心といえる。

ガイドラインはあくまでもガイドラインであり、
ガイドライン通り絶食期間を設定しても、
胃が完全に空になってることを保証するものではないことは注意が必要である。


対象

健康な予定手術(妊婦は除外)


recommendation

術前の絶飲食期間の設定

clear liquids 2時間以上
Breast milk 4時間以上
Infant formula 6時間以上
Nonhuman milk 6時間以上
Light meal 6時間以上
fried & fattey foods 8時間以上


薬剤の使用


蠕動促進薬(プリンペラン)、
H2ブロッカー、
PPI、
制酸薬、
制吐剤、
抗コリン薬などのルーチンでの使用は推奨されない。

となっている。

clear liquidsは水、果肉のないフルーツジュース、clearな茶、ブラックコーヒー、炭酸飲料。
light mealは主にトーストのことである。
大人に関して言えば、飲水量の多少はあまり重要ではないらしい。
しかも、術前2-4時間以内に飲水すると、
4時間以上絶飲している患者より
胃液量が少なく、胃液酸度も低いという報告もあり、
とりあえず絶飲すればいいというものでもない。

当院でも少しずつ見直していくべきかな。



テーマ:

集中治療領域では血糖管理も重要なテーマだ。


なぜならば、

ICUに入室が必要な重症患者や、
大手術後の患者では、
DMの既往がなくても、
ストレス性高血糖がしばしば見られるし、
そのような高血糖状態は、
予後不良との関連があるといわれているからだ。


ということで、
今回のテーマは集中治療域、周術期の血糖管理についてだ。


Glycemic Control in the Intensive Care Unit and during the Postoperative Period
Anesthesiology: February 2011 - Volume 114 - Issue 2 - pp 438-444

http://journals.lww.com/anesthesiology/Fulltext/2011/02000/Glycemic_Control_in_the_Intensive_Care_Unit_and.34.aspx


重症疾患、あるいは手術侵襲が加わると、
炎症性サイトカイン↑、
インスリン拮抗ホルモン(カテコラミン、成長ホルモン、コルチゾール)↑
なだけでなく、往々にして組織低酸素になる。


これらの結果、

1.
インスリン非依存性細胞ではGLUT1のダウンレギュレーションが起こり、
glucoseの取り込みが障害される。


(補足:
glucoseを細胞膜を通過させるためには、
glucose transporter(GLUT)というものが必要である。
詳細は教科書を見るべきだが、
ウィキはこちら↓
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%B0%E3%83%AB%E3%82%B3%E3%83%BC%E3%82%B9%E3%83%88%E3%83%A9%E3%83%B3%E3%82%B9%E3%83%9D%E3%83%BC%E3%82%BF%E3%83%BC


一方、

2.
骨格筋や脂肪組織では、
GLUT4がダウンレギュレーションして、
やはりglucoseの取り組みが障害される。
(これが末梢性インスリン抵抗性↑の本態)


また、

3.
インスリン拮抗ホルモンにより、
肝臓での糖新生が亢進し、
一部グリコーゲン分解も加わる。

これらがあわさり、高血糖に至るといわれる。


高血糖が予後不良につながるなら、
治療的介入をすればいいではないか!
ということになる。


intensive insulin therapy(IIT)
血糖値を80-110mg/dlで管理したら予後はどうなるか!というstudyでは、
なんとICU死亡率(8→4.6%)、
院内死亡率(10.9-7.2%)ともに減少し、
morbidty↓になった。


Intensive insulin therapy in the critically ill patients.
N Engl J Med. 2001 Nov 8;345(19):1359-67.

http://www.nejm.org/doi/full/10.1056/NEJMoa011300


このIITは注目されたものの、
その後の多くの追試ではその有効性を証明されるどころか、
むしろmortality↑という悪影響まで報告されてしまった。


Intensive insulin therapy in the medical ICU.
N Engl J Med. 2006 Feb 2;354(5):449-61.

http://www.nejm.org/doi/full/10.1056/NEJMoa052521#t=articleBackground


mortalityかわらず、morbidity↓


Intensive versus Conventional Glucose Control in Critically Ill Patients
The NICE-SUGAR Study Investigators
N Engl J Med 2009; 360:1283-1297March 26, 2009

http://www.nejm.org/doi/full/10.1056/NEJMoa0810625


むしろmortality悪化


Intensive insulin therapy and pentastarch resuscitation in severe sepsis.
N Engl J Med. 2008 Jan 10;358(2):125-39.

http://www.nejm.org/doi/full/10.1056/NEJMoa070716


血糖さがる(151→112mg/dl)も、
死亡率、臓器不全率かわらず。
低血糖(4.1→17.0%)にふえ、
途中で安全性を考慮し、終了した。



A prospective randomised multi-centre controlled trial on tight glucose control by intensive insulin therapy in adult intensive care units: the Glucontrol study.
Intensive Care Med. 2009 Oct;35(10):1738-48. Epub 2009 Jul 28.

http://www.springerlink.com/content/1551k403n6168322/


死亡率変わらず、
低血糖(2.7→8.7%)にふえ、
やはり途中で試験終了となった。



低血糖自体も、
mortalityの独立予測因子の為、
79.2-109.8mg/dlに管理する、
intensive insulin therapyは現在では支持されていない。


2009年のanesthesiologyのReviewでは、
エビデンスとして不十分なIITに飛びついたことに、
反省を示している。


Perioperative Glycemic Control: An Evidence-based Review
Anesthesiology: February 2009 - Volume 110 - Issue 2 - pp 408-421

http://journals.lww.com/anesthesiology/pages/articleviewer.aspx?year=2009&issue=02000&article=00034&type=fulltext


この時の血糖維持目標は150mg/dl以下にし、
血糖の変動を抑えることは、
安全で、効果的とされていた。


実はこの血糖値の変動を抑えることも重要と考えられている。
poor outocomeの患者と血糖値の大きな変動に関連性があるとされているからだ。


(血糖値を大きく変動させると予後不良になるとまでは言えないと思う。
予後不良なほど状態の悪い人だから、血糖値も変動するとも言えなくもない。)


血糖値の変動を抑えるためにインスリンの持続投与が推奨される。


Continuous Perioperative Insulin Infusion Decreases Major Cardiovascular Events in Patients Undergoing Vascular Surgery: A Prospective, Randomized Trial
Anesthesiology: May 2009 - Volume 110 - Issue 5 - pp 970-977

http://journals.lww.com/anesthesiology/pages/articleviewer.aspx?year=2009&issue=05000&article=00009&type=fulltext


持続投与により術後心血管イベントの発生が12.5→3.5%に減少した。


また、
術前のglucose投与は、周術期の血糖値、インスリン抵抗性を改善させるということも言われる。
ERASにつながる概念だ。


そのため、
本論文では(最初の論文)


180以下の血糖値に血糖管理する。
intensive insulin therapyはルーチンでの施行はしない。
術前2時間前までに炭水化物(50-100g)含有飲料を服用する。
術中インスリン投与は持続静注が基本。
30-60分ごとにAラインからBGAで血糖チェック。
食事開始までインスリン持続静注は継続。
食事再開後は血糖チェックは3回/日
低血糖は早期発見、早期治療を行う。
施設に合わせたアルゴリズムの設定を。

というrecommendationになっている。
(かなり強引に改編しているが・・・。)


周術期の高血糖は有害!
でも厳格に管理すると低血糖が心配!
だからほどほどに注意して管理してね、
というところか。












テーマ:

主に女性にとって大きな問題の病気の一つに乳癌がある。


麻酔科医にとっては手術麻酔のリスクが低く、
思わず、軽く考えがち!?な手術ではある。


術後疼痛についても同様に軽く考えががちで、
胸部、腹部外科のように硬膜外麻酔を併用しない施設がほとんどではないだろうか。


しかし、40%ぐらいの患者は、
疼痛スコア5/10以上を訴えていたり、
その術後痛が慢性痛への移行のリスクファクターだったり、
術後25-50%の人が慢性痛を自覚していたりするという報告もあり、
決して手術を受ける人本人にとっては軽い手術ではないといえる。


実は乳癌手術を軽く考えてはいけないのである!


その乳癌の術後疼痛対策だが、
オピオイドなどの鎮痛薬の使用や、
創部への局所麻酔薬投与などに加え、
1995年の報告以降、傍脊椎神経ブロック(PVB)による鎮痛も注目されている。



今回はこのPVBの乳癌術後の鎮痛効果を検討したRCTのメタ解析を紹介する。



Efficacy and safety of paravertebral blocks in breast surgery: a meta-analysis of randomized controlled trials.
Br J Anaesth. 2010 Dec;105(6):842-52. Epub 2010 Oct 14.


http://bja.oxfordjournals.org/content/105/6/842.long

http://bja.oxfordjournals.org/content/105/6/842.full.pdf+html



対象


PVBの効果、安全性を検討したRCT15文献に対してmeta解析している。


PVB単独で手術施行している文献もあるが、
自施設で再現しようとした場合、
あまり現実的ではないので、
PVB単独と全身麻酔(GA)を比較した部分は省略する。



結果


7文献:GA+PVB vs GA
1文献:PVB vs continuous local anesthetic wound infusion


今後は超音波ガイド下ブロックが主流になるだろう、
取り上げられてる文献は抵抗消失法によるブロックが中心だ。


使用する薬剤、濃度、量は様々である。


GAにPVBを併用することにより、
GA単独と比較し、
術後2時間以内、24時間以内の疼痛スコア―は改善し、
オピオイドの必要症例数、必要総量も少なく、
鎮痛薬が必要になるまでの時間も2倍に延長している。

慢性疼痛への移行の相対危険度もわずかに低く、
移行する患者数も少ない。

心配する合併症も神経損傷や、気胸などはなかったという結果だ。


PVBと持続創部局所麻酔薬投与では概ね差が無いという結果だった。




GA単独よりも、
ブロックを追加した方が、
鎮痛効果が高かったという、
当たり前といえば当たり前の結果といえる。

何もしないより、いいことした方が相加効果が期待できるのは想像の範囲だ。



試みたことが無い施設にとっては、
やや敷居が高い手技かもしれないが、
超音波ガイド下ブロックが普及した現在、
特殊なブロックではないと感じる麻酔科医も多いものと思われる。


熱心に取り組まれている麻酔科医もいる。
http://pnbsiva.blogspot.com/2011/02/blog-post_09.html



PVBの効果で注目されているのはなにも術後鎮痛効果だけではない。


乳癌129症例の後ろ向き観察研究では、
PVBを併用することにより癌の再発率が下がったと報告しているものもある。


Can anesthetic technique for primary breast cancer surgery affect recurrence or metastasis?
Anesthesiology. 2006 Oct;105(4):660-4.

http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC1615712/pdf/nihms-11585.pdf


痛み自身で誘導されるサイトカインを、鎮痛効果により抑制したり、
免疫能を抑制したり、血管新生を促進するオピオイドの使用を制限できることが、
再発率減少のメカニズムともいわれるているようで、
PVB併用は、
麻薬による術後鎮痛よりも、
癌再発までも抑制するというのだ。
(揮発性麻酔薬も免疫能抑制効果があるのでTIVAがさらにいいかもしれない。)


術後鎮痛にも有用で、
癌の再発まで減少させる可能性がある、
傍脊椎神経ブロックだが、
残念ながら、
使用する局所麻酔薬の種類、量、濃度などまだスタンダードなものはないし、
方法論にしても、
これからは超音波ガイド下が主流になると思われるが、
神経刺激装置使用、抵抗消失法と比較して、
安全性や成功率の点で優れているかどうかは、
残念ながらエビデンスレベルではまだ確立していない。



超音波ガイド下傍脊髄神経ブロックの動画
http://www.youtube.com/watch?v=L7hVLNjBiSA



方法論は教科書を見るべきであるが、
reviewなどでは、
単回投与の場合は、
第3、4肋間で、
0.375-0.5%のropivacaine、bupivacaineを
3-4mlの使用が一般的なようだ。


合併症として、
神経損傷や気胸の頻度はほとんどないが
(一般的な超音波ガイド下での注意は必要!)、
一過性のhorner症候群が5%ぐらいに見られているようだ。


話はずれるが、
continuous local anesthetic wound infusionも、
PVBと同等の鎮痛効果を示しているようだが、
創の問題(ポケット形成しそう)を考えると、
積極的に採用はしにくい気もする。


乳癌手術時の麻酔で、
全身麻酔に傍脊椎神経ブロックを併用することは、
疼痛の少ない、
よりよい周術期管理を提供できるようになるだけでなく、
術後再発にも影響を及ぼす可能性があることから、

今後のこの分野の動向にも注目しておく必要があると思われる。

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テーマ:

超音波ガイド下神経ブロックが一般的になり、
外科や整形外科など多くの手術で行われるようになってきた。


術後の良好な鎮痛を提供する神経ブロックだが、
局所麻酔薬を多く使うため、

局所麻酔薬中毒のリスクも忘れてはいけない。

日常臨床で何も問題なく行えているから大丈夫!

といえなくもないが、
ブロック後の局所麻酔薬の血中濃度の変化は、
知識として知っておくにこしたことはない。


そこで、
当院では主に腹腔鏡下胆嚢摘出術で活用している、
腹横筋膜面ブロック(TAPブロック)に注目してみたい。


個人的には、
腹横筋膜面ブロック

 0.375%アナペイン10ml/片側 両側施行
腹直筋鞘ブロック

 0.375%アナペイン10ml/片側 両側施行
としている。

使用アナペイン総量 150mgで、
50kgの人の場合は、3mg/kgだ。


この場合、血中濃度はどうなってるのだろうか?



Plasma ropivacaine concentration after ultrasound guided transversus abdominis plane block
British Journal of Anaesthesia 105 (6): 853–6 (2010)


http://bja.oxfordjournals.org/content/105/6/853.full.pdf+html



TAPブロックの施行後に、
使ったアナペインの血中濃度はどのように推移しているのか!?
というのを観察した研究があったので紹介してみる。



対象


18歳以上の女性
予定開腹婦人科手術
除外症例:アレルギー、妊婦、肝腎障害



麻酔方法


プロポフォール2-3mg/㎏
フェンタニル1-2μg/㎏
筋弛緩薬は麻酔科医の好みで選択
paracetamol 1g
morphine 0.05-0.2mg/kg
維持はsevoflurane
術後鎮痛はmorphine、paracetamol、dicrofenac


TAPブロック:ropivacaine総量3mg/kg、40mlにして片側20mlずつ両側に施行。


採血はブロック施行後1時間は15分ごと、2時間目は30分ごと、3、4、12、24時間後に施行。



結果


症例:28症例、
年齢:43歳
体重:67.1kg
アナペイン使用量:201mg
手術時間:125分
静脈血漿ropivacaine濃度:
最高値:平均2.54μg/ml(30分値)
(4.0μg/mlという人もいた。)
2.2μg/ml以上は90分まで続いた。(中央値45分)
遊離ropivacaine濃度 
30分値:0.14μg/ml(最高0.25μg/ml、0.15μg/mlを超えていた症例は10例あり。)
症状の評価は無し。



で、結局のところこの数値がどうなの!?

というところだが、


過去にはropivacaineを静注したらどのくらいの血漿濃度で神経症状が出るか?
というすごい内容のstudyがあるらしい。


http://bja.oxfordjournals.org/content/78/5/507.full.pdf+html
(読んでないけど)


それによると、
静脈血漿ropivacaine濃度 2.2μg/ml
(遊離ropivacaine濃度 0.15μg/ml)
で神経症状がでるらしい。


ということはこの程度(3mg/kg)のropivacaineを使用したTAPブロックでも、
ほとんどの症例で神経症状が出る濃度に達しているといえる。

恐ろしい!


もっとも上記の神経症状が出る濃度を調べたStudyでは、
あくまでも神経症状をみているのであって、
life threatening toxicityをみているわけでもないし、
神経症状を減弱するような麻酔薬を使っていたわけではないから、
全身麻酔を行っている麻酔科医にしてみれば、
2.2μg/mlなんて設定レベルは低すぎじゃない?

ということになる。


また血中濃度には動脈静脈格差がある、

といわれているようで、

となると、

静脈での濃度で評価すること自体が間違いかもしれない。


ほかには、
中毒の発生には局所麻酔薬濃度の絶対値よりも、
濃度の上昇スピードのほうが重要!

という意見もあり、
ropivacaine 3mg/ kgのTAPブロックでは


局所麻酔薬中毒 必発!

というわけではないだろう。


それから、
腹横筋膜面に注入するのと、
ずれて筋肉内注入になるのでは血中濃度が違うという話もあり、
一言でTAPブロックとまとめられない気もする。


なんにしても、
少なくとも、

ropivacaine 3mg/kgのTAPブロックでは、
思いのほか血中濃度があがってるということは知っておいていいだろう。


ブロックしてから、
しばらくは全身麻酔管理だから普通は問題ない。


けれど、
手術が思いのほか早く、

たとえば30分で終わった時

(があればいいが)

とかでは、
今回の結果を頭の片隅においておく必要があると思う。


あと、ブロックは手術前がいいかもしれない。


また、ブロック時もできるだけ筋肉内注入にならないような配慮が必要だろう。

今回のstudyは健康で、若い女性が対象だった。

ということは、
高齢者や、心不全症例なんかはもっと血中濃度が高くなる可能性もある。

そういう患者にはropivacaineの減量をしたほうが安全かもしれませんね。



超音波ガイド下神経ブロックをはじめるときの教科書としてはこれは外せません。




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テーマ:
全身麻酔後に肺機能低下が一時的に低下する.
そのため、術前から低肺機能の患者では、
できたら全身麻酔を回避したいとよく考えられる。

しかし、全身麻酔は全身麻酔でも、
TIVAとBAL(balanced anaesthesia with sevoflurane)では、
術後肺機能低下の程度に違いがあるのか?
それとも同じなのか?

これに関するstudyは今までにはないとのことである。

そこで、これ↓


Lung function after total intravenous anaesthesia or balanced anaesthesia with sevoflurane

Br J Anaesth. 2011 Feb;106(2):272-6. Epub 2010 Nov 9. 





対象は腰椎手術60例
TIVA群とBAL群に分類(Total5例を除外)
睡眠時無呼吸症、心肺合併症あり、病的肥満、神経、肝、腎障害あり、の症例は除外されている。


TIVAはプロポフォール、レミフェンタニル、AOを使用。
BALはプロポフォール、フェンタニルで導入、レミフェンタニル、GOS2%で維持した。
プレメディはなし。


術前と、抜管後(鎮痛をVASでコントロールしたのち)にspirometryで呼吸機能をチェックした。


評価項目

努力性肺活量(FVC)、
一秒量(FEV1s)、
mid-expiratory flow25-75、
peak-expiratory flow




結果

FEV1s、MEF、PEF:
両群とも術前は正常範囲だったが、
GA直後には術前と比較して有意に低下していた。
ただし、両群間では差がなかった。

FVC:
両群とも術前は正常範囲だったが、
GA後はともに低下した。
BALよりも、TIVAはより低下していた。
(両群間で差が出たのかこれだけ。)


FVCが低下するのは無気肺の存在といわれている。
GAでより発生するのは呼吸筋、特に横隔膜の筋緊張が低下するためとか、
分泌物によるとか色々言われているが、
とりあえず、GA後には無気肺が多かれ少なかれ発生する。

BALではTIVAと比較して、
揮発性麻酔ガス自体の気管支拡張効果があるためと、
GA後の咳が多い、
(=Recruitment maneuver)
という理由でGA後の無気肺形成が少なく、
結果としてFVCの低下が少ないのではないかと考察されている。

また術後疼痛があると、
呼吸機能に影響が出るため、
(検査施行上の影響といえるかもしれないが。)
しっかり鎮痛し、VAS<3で検査するという設定がされていた。
いろんな意味で、やっぱり鎮痛は重要なことに変わりない。
参考として、使う鎮痛薬の種類で術後肺機能は変わらないといわれているらしい。


興味深かったのは、
今回のStudyの対象はすべて腰椎手術だったのだが、
そのいずれも抜管はproneで行われていることだ。
この施設では20年以上前から腹臥位手術での抜管は、
腹臥位で行っていて、
循環動態も安定し、安全で、咳も少なく、exellentだとしている。
日本でも腹臥位手術で腹臥位になってから麻酔導入し、
LMA挿入、管理している施設もあるぐらいだから、
本当に、施設によって麻酔方法は様々です。

AWSもあるし、腹臥位にしてから挿管する施設も出てくる、
というか、あるのでしょうか!?

このような地道な研究を
積み重ね、
麻酔科学が安全に発展していってほしいと思います。
従事しているDrには本当に頭が下がります。



テーマ:

(注:今回の内容は文献的な考察を踏まえていません。)






2011年2月5日 読売新聞朝刊5面より

英国国民保健サービス(National Health Service;NHS)の一部門である、
国立医療技術評価機構(The National Institute for Clinical Excellence;NICE)では、
医薬品や治療技術の有効性の比較を行う上で、
QOL(生活の質)を考慮した生存期間(QALY)を、
国際的に認知された標準的な方法として使用している・・・らしい。


QALYってなんだろう?








QALY=生存期間(年)x効用値(utility)

で計算されるものです。


経済評価を行う際に、治療の結果として、
単純に生存期間の延長を論じるのではなく、
生活の質(QOL) を表す効用値で重み付けしようとしたものです。




つまり、
生存期間(量的利益)と生活の質(質的利益)の両方を同時に評価できるものなのです。

効用値(utility)とは完全な健康を1、死亡を0としてそれぞれの状態に点数(価値)を与えていった値です。




たとえばAという治療をうけた場合、
5年間生存期間が延長すると仮定し、
その後の効用値0.8とすると、
QALYは 5(年)×0.8=4(QALY)となります。

Utility0.1で10年生きるのと、
Utility0.5で2年生きるのと、
Utility1.0で1年生きるのと、
これらは皆同じ価値であるとみなされるのです。


植物状態では、
効用値Utilityはほぼ0なので、
植物状態のまま長期間生存していても、
死んでいるのとほぼ同じという評価になるのです。

もちろん、これに関しては経済的側面からだけでなく、
倫理的な、感情的な面からも賛否両論あるでしょう。


さて、

植物状態になるのがわかっている状態で手術をするべきか?

積極的治療は見送るべきか?

植物状態の人が病気になったらどうするか?



QALYはあくまでも意志決定のための判断支援の一助にすぎず、
医学の進歩具合、価値観、予後予測、倫理的側面など、
総合的に判断されていく必要があることは間違いないでしょう。




参照元
http://canscreen.ncc.go.jp/yougo/08.html
http://homepage2.nifty.com/ebm-main/qaly.htm
http://www.arsvi.com/2000/0911st.htm
http://www.csp.or.jp/cspor/upload_files/arch_70.pdf

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