(174) ビデオ喉頭鏡の活用について

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これまで、

気管挿管するためには、ほぼMacintosh型喉頭鏡しか選択肢がなかった。

近年、「ビデオ喉頭鏡」が登場したことにより状況はずいぶん変化した。

 

 

 

ビデオ喉頭鏡は、

 

1.挿管成功率が高い。

 

Macintosh型喉頭鏡でうまく挿管できなくても、ほとんどの症例で挿管が可能。

 

2.習得が極めて容易。

 

麻酔科研修を開始したばかりの研修医でもすぐに使いこなせる。

 

という特性がうけて、急速に普及してきている。

当院でも導入してみたがその効果は絶大で、挿管困難症例の発生は激減した!ように思う。

 

ビデオ喉頭鏡さえあれば、

もうMacintosh型喉頭鏡なんていらない!

 

 

ビデオ喉頭鏡はLisaでも特集され、

 

「挿管困難が予想されるので、ビデオ喉頭鏡を使用します。」というプレゼンはやめにしよう!

「困難気道のない通常の気管挿管」に使用する意義はある。

 

と気管挿管する時は、ビデオ喉頭鏡を第一選択すべし、

と主張するエキスパートもいて、これには賛同する。

 

が、

 

経済的試算を見ると、複雑な気持ちになる。

 

AWS-S200の本体価格は約30万円

使い捨てのブレードは2500円/円

単三乾電池2個(amazonで400円/10本)

連続60分の使用が可能

 

全部の気管挿管をAWSで施行すると、

 

たとえば、

施設の全身麻酔が年間5000症例あるとしたら、

消耗品だけでも単純計算で年間1250万円もかかるそうだ。

 

全国ともなれば全身麻酔件数は年間100万件以上ある。

ということは消耗品だけで年間2500000000円かかる。

 

25億円!

 

実際はもっと全身麻酔の件数は多いだろうし、

手術とは関係ないところでも気管挿管は実施されている。

その全てをAWSで実施するとしたら・・・。

 

日本の医療経済の現状を考えると、

全症例に最初からビデオ喉頭鏡を選択しよう!

とは、良心が痛んでとても言えない。

 

ほとんどの症例はMacintosh型喉頭鏡でも十分に挿管できるのだから。

 

少なくとも自分で気管挿管する時は、

これからもしばらくはMacintosh型喉頭鏡を選択し続けよう。

 


 

次に、

麻酔科研修に来てくれるレジデントはどうか。

 

Macintosh型喉頭鏡による気管挿管手技は難易度が高いため、

個人差はあるものの、その習得にはかなりの時間を要する。

短い麻酔科研修の間に、はたしてMacintosh型喉頭鏡による挿管技術を十分に習得できるのだろうか。

 

中途半端にしか習得できないなら、

将来、いざ挿管が必要になった時(しかもそれは大概困難な状況だろう)にとても役に立つとは思えない。

 

それならMacintosh型喉頭鏡には手を出さず、

割り切って最初からビデオ喉頭鏡だけで気管挿管をトレーニングしたほうが、よっぽど現実的で、臨床現場、ひいては患者の役に立つのでは、と思う。

 

しかし、

ビデオ喉頭鏡のみによる気管挿管トレーニングを行った医師はそれしか使ったことがないから、当然、将来もビデオ喉頭鏡を使い続けることになる。

 

てことはやっぱり、ランニングコストが・・・!

 

 

 

CVCIの解析(97854症例/3年間)では、3例(0.003%)でCVCIを認めたそうだ。

いずれもMacintosh型喉頭鏡による挿管を何度も繰り返した後にビデオ喉頭鏡を使用したが、結局失敗。

 

Incidence of cannot intubate-cannot ventilate (CICV): results of a 3-year retrospective multicenter clinical study in a network of university hospitals.

J Anesth. 2015 Jun;29(3):326-30.

 

→だから、ビデオ喉頭鏡はMacintosh型喉頭鏡のバックアップという位置付けではなく、第一選択で使用すべきデバイスである。

 

と主張するエキスパートもいる。

 

ただ、

 

1.Macintosh型喉頭鏡で実際に喉頭展開してみる。

2.困難そうだなあと思ったのに、そのまま何度も挿管をtryする。

3.やっぱり挿管できず、それどころか状況をより悪化させ、結果CVCIになる。

 

この悪循環にそのまま乗ってしまうようなのが本当に麻酔科専門医か!

 

挿管困難かどうか見極め、

困難そうならMacintosh型喉頭鏡でtryせず、

すぐにビデオ喉頭鏡、あるいはファイバー挿管に切り替える。

 

こういうリスク管理が麻酔科専門医には求められるだろうし、それができることもまた麻酔科専門医の存在意義のひとつだ。

 

安全には代えられないからといって、

盲目的に25億円かけるのは、

麻酔科専門医の存在意義の一つを自分で放棄してしまう気がする。

 

0.003%の症例見つけ出し、回避する嗅覚、

 

・・・というかそんなのいらない時代なんだろうな。

 

納入価格を下げてくれれば済む話だしね。

 

 

 

 

 

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