anesthemanのブログ

一般病院に勤務する麻酔科医です。ここは麻酔管理向上のための自己学習?の場です。解釈がおかしいときは指摘していただけると嬉しいです。


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肝切除術の重大な合併症の1つに術後肝不全がある。
高ビリルビン血症、凝固障害、脳症、腎不全、易感染性による敗血症などにつながり、致死的な合併症である。

Case Scenario: Postoperative Liver Failure after Liver Resection in a Cirrhotic PatientAnesthesiology. 116(3):705-711, March 2012.

術後肝不全は肝切除術(major)の0-30%(平均5-8%)に発症し、
肝切除術の術後死亡原因の18-75%をしめる。


術後の肝機能(Bil値、凝固機能)は術後2日目ぐらいがピークなことが多く、
術後1週間ぐらいで正常化する。
これに合致しない場合、肝不全兆候が示唆される。

決定的な治療法にかけるため、予防が最善の策となる。

重要なのは肝切除量と残肝機能である。
残肝volumeは正常肝では26%、肝硬変では40%がラインとも言われている。
それにchild分類、ICG、門脈圧亢進症の有無などを加味し切除量を決定する。

Model for End-stage Liver Disease Scoreというのもある。
Mayo Clinic のホームページにて簡単に計算可能である。

心もとない残肝量の場合、あらかじめ門脈塞栓術をおこない、
残肝を肥大化させ、残肝機能を高める。

いったん手術が始まると、
外科医は巧みな技術と、様々なデバイスを駆使して、
迅速に、かつ出血が少なくなるように努力する。
術中出血、輸血や、術直後のbicarboneteの値が術後肝不全の発症と相関するといわれる。

ただ、
出血量が多く、輸血しちゃったから術後肝不全のリスクがupするのか。

それとも、
侵襲の大きな術式や、低い肝機能のため術後肝不全のリスクが高い症例だったからこそ、
必然的に出血が多くなって輸血が必要になるのか。

どちらが先なのだろう。

時々、輸血はしてくれるな!という外科医に遭遇するが、
どう解釈すべきか。

出血、輸血は原因?結果?

出血量を減らす試みとして他には、Pringle法もある。
理論的にはいいんだけど、
残念ながら輸血の必要量が減ったとか、
予後が改善したとは証明されてないらしい。

中心静脈圧を下げろ!と要望されることも多いが、
これに関しては以前エントリーとして取り上げたことがある。

肝臓手術の管理 (中心静脈圧と出血量の関係)

麻酔薬として最近、レミフェンタニルが肝障害を軽減するかも!と注目されている。

Remifentanil Preconditioning Reduces Hepatic Ischemia–Reperfusion Injury in Rats via Inducible Nitric Oxide Synthase Expression
Anesthesiology. 114(5):1036-1047, May 2011.


術後の炎症反応の程度も術後肝不全の発症に影響している。

そもそも肝臓手術の患者は、
肝臓手術自体、おそらくPringle法のためと思われる腸内細菌のtranslocationが起こりやすい。
肝機能低下していることから、網内系機能も低下している。
という理由で感染症を併発するリスクが高い。

そのため抗菌薬投与が推奨されるが、
投与方法についての有効なRCTには欠ける。

血行動態異常も術後肝不全の原因となるため、
術後はUS、ドッブラー、CTでチェックが必要。

肝静脈うっ血
・ローテーションによる流出路障害
・小さな残存肝に対して相対的に過剰な肝流入血流量、圧による肝移植で言うところsmall for size syndrome
門脈塞栓症

流出路障害ではstentも選択肢になるようだ。
small for size syndromeでは門脈流入血流量を減らすため、脾動脈塞栓が考慮される。
門脈塞栓症では外科的か、抗凝固薬どちらの対応が良いかは議論が残る。

血漿交換療法や持続緩徐式血液濾過などの肝臓の代替となる技術もあるが、エビデンスには乏しいものの、将来が期待されている。

唯一の根治的治療として肝移植がある。
適応としてミラノ基準(腫瘍が単発で直径5センチ以下、または3個以内で直径3センチ以下の場合)が使われるが、本邦では実施施設が限られ、現実的ではない。
anesthesiologyのcase scenarioでは適応となり、さらっと肝移植が行われていた。

残念ながらいつも単なるメモ書きで終わってしまう。

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全身麻酔下での手術では、
中枢から末梢に熱が再分配され、体温が低下する。

全身麻酔により熱産生が低下するだけでなく、
対流、伝導、蒸発、放射など様々な機序により熱が奪われ、
さらに体温が低下し、あるところで定常状態に達する。

術中低体温は、創感染、凝固障害、筋弛緩遷延のリスクになり、術後回復遅延につながる。

従って、
手術中は36度以上を保つように管理することが推奨される。

対流、伝導、蒸発、放射など熱が奪われる機序をブロックすることは大切だが、
それだけでは低体温は改善しない。
積極的に加温していく必要がある。

Forced-air warming
(たとえば、Bair Hugger、くまさんでおなじみベアハガー。)

Carbon-fiber resistive-heating system
(たとえば、SmartCare、オレンジ色の重い装置)

Circulating-water garment
(たとえば、Rapr・Round Body Wraps 自施設にないから実物見たこと無いけど。)

など加温装置も色々ある。
果たしてどれが一番効果的なのだろうか。

Core temperatures during major abdominal surgery in patients warmed with new circulating-water garment, forced-air warming, or carbon-fiber resistive-heating system.
J Anesth. 2011 Dec 22.


先ほどの
1. Forced-air warming
2. Carbon-fiber resistive-heating system
3. Circulating-water garment
  (これだけさらに +circulating-water mattress)
での深部体温の変化を比較している。

結果は、
Circulating-water garment(+circulating-water mattress)が一番術中の深部体温保持効果が高かった。

ただ、今回の結果は、
Circulating-water garment(+circulating-water mattress)が一番効果があったものの、
単に(+circulating-water mattress)があることによって他のと差がついただけだろうと著者らは考察していた。

circulating-water mattressをプラスしたため、加温装置の体表カバー率に差が出てしまっている。それが原因だと。

Forced-air warming群と、
Carbon-fiber resistive-heating system群の
体表カバー率が15~20%だったのに対して、
Circulating-water garment(+circulating-water mattress)群では30%だった。

さらに、
仰臥位だったら自体重により背部の皮膚の血流が落ちるため、
circulating-water mattressは熱伝達効率が悪い。
しかも、熱傷のリスクにもなる、
と指摘している。

そのため、本文の最後のまとめでは、
今回の結果で一番良かったCirculating-water garment(+circulating-water mattress)を推奨するのではなく、
一般的にはForced-air warming、すなわちBair Huggerが、安価で安全でもっとも良いんではないでしょうか、
circulating-water mattressを使用するにしても注意が必要ですよ!
とまとめていた。

研究デザインは重要ですね。
結果にへんな解釈が必要になり、
結局のところ何が言えるのかわからなくなってしまいます。


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最近いろいろなところで話題になっているおじさん図鑑!?
知ってますか?

本屋でやっと見つけました。



見てみると、
「こんなおじさん、いるいる。」
と妙に納得してしまいます。
著者のすごい観察眼には恐れ入ります。


「自分はまだここで描かれているおじさんほどおじさんではないよなあ。」
と自分に言い聞かせているような気もしながら・・・。

そう思っているのは自分だけでしょうか!?
端から見たら大して違いが無いかもしれない。
ああ、恐ろしい。

話題のネタになること請け合いです。

おじさん必見、
いや、おじさんだけでなく、
将来のおじさん候補、
はたまた女性も楽しめるかも。

単行本サイズでおすすめです。

反面教師にもなるかも。

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全身麻酔を導入すると、
3相性に体温が低下することが知られている。

術中の低体温は、
凝固障害、心合併症、創感染症の発生リスクとなったり、
輸血必要性が上昇したりする。
術後の回復が遅延するため、
結果として在院日数の増加につながるため、
そのため積極的に加温に努めて、
低体温を防止する必要性がある。

加温する方法の1つにアミノ酸輸液の投与というのがある。

その機序は必ずしも明確ではないものの、
代謝に影響を与え、熱産生効果を高める。
投与開始を契機に徐々に体温が復温していく様子は、
トレンド画面をみると良くわかる。

ただ、
仮に麻酔導入時から投与を開始しても、
熱の再分配を原因として急速に体温が低下する、
いわゆる第1相を防止するほどの熱産生効果はないようだ。

アミノ酸輸液はいつから投与すれのが良いのだろうか?


奈良県立医大のDrが、
低体温の第3相、いわゆるプラトーフェイズになってから、
アミノ酸輸液を投与開始した時の結果を報告していた。

Amino acid infusions started after development of intraoperative core hypothermia do not affect rewarming but reduce the incidence of postoperative shivering during major abdominal surgery: a randomized trial.

J Anesth. 2011 Dec;25(6):850-4. Epub 2011 Sep 17.


投与群:アミノ酸輸液を投与した。11例
非投与群:投与していない 10例

投与群は深部体温(鼓膜温)が35.5度まで低下したら、
アミパレン200mlを1時間で投与した。

両群ともよくある体温管理に加え、
Bair Hugger(上半身用 38度)を使用していた。

体温:
深部温(鼓膜温)
温度勾配(前腕皮膚温ー指先皮膚温)

15分間隔で麻酔導入時から4時間目までと、
さらに抜管時に測定した。

結果

深部温:
麻酔導入から4時間目、抜管時とも両群間で差が無かった。

温度勾配:
麻酔導入時から4時間目までは両群間に差はなかったが、
抜管時は投与群で少なかった。

術後シバリング:
投与群では頻度は少なく、程度は軽かった。

低体温になってからアミノ酸輸液を投与しても、
深部体温の再加温効果は非投与群と差が無く、
アミノ酸輸液による深部体温の再加温効果があるとは言えない、
という結果だった。

ただ、
アミノ酸輸液投与開始基準である35.5度になったのが導入開始から約75分後のことなので、体温測定していた時間が短かったことも効果を確認できなかった理由の可能性があり、術後まで長時間見てれば差が出たのではないかとも考察している。

また、
温度勾配は体温調節性の指標とし、
温度勾配が少ない=血管収縮が少ないと考えている。
アミノ酸輸液を投与することにより、
体温調節性の血管収縮は軽減し、
その結果、術後シバリングの重要な予測因子である末梢温を上昇させることが出来たことが、シバリングが減少したの理由だと考察している。

結果をそのまま読んで、
今日からの臨床に活かすとするなら次のような感じか。

低体温になってからアミノ酸輸液を投与しても、
深部体温の復温に与える影響は限定的。
だが、様々な合併症のリスクになりうるシバリングの発生を減少させることが出来るので、
可能ならどのタイミングでも良いから
アミノ酸輸液(アミパレン200ml/h 1h)を投与しよう。


個人的な意見としては、
Bair Huggerによる加温効果が高いことも、
深部体温に差が出なかった理由なのではないかと思う。
Bair Huggerがなければ、
非投与群はずっと低体温のままだった可能性があり、
両群間でしっかりした差が出たのではないだろうか。


アミノ酸輸液も可能な症例には投与する。

Bair Huggerもしっかり使用する。


術中の低体温、術後のシバリングを予防するために、
両者をほぼルーチンで使用したいと思うがどうでしょう。

Bair Huggerを使用しても、
現状では医療施設の持ち出しだったような・・・。
願わくばきちんと特定医療保険材料として算定していただきたいなあと思います。(これは確認未)

ペット医療でも使用されてるみたいですね。
http://takahashipetclinic.blog62.fc2.com/blog-entry-388.html


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ASAのガイドラインで、
術前2時間まで水分の摂取が許容されたのが1999年のこと。
ヨーロッパでも同様のガイドラインが制定されている。

しかし、
日本では2003年になっても、
まだほとんどの病院で術前一晩の絶飲は当たり前だった。

ERASの概念が広く知られるようになり、
術前の絶食絶飲時間も見直されてきたのは最近の事である。

日本人での安全性、有効性の報告も多数でてきている。

さらに駄目押しの一手!
として、
大学病院レベルの他施設無作為比較試験が報告されていた。

Safety and efficacy of oral rehydration therapy until 2 h before surgery: a multicenter randomized controlled trial.
J Anesth. 2011 Nov 1.



方法:
2010年1月~2011年3月までに行った、
20~80歳の予定手術を対象としている。

通過障害などの経口補水療法に適さなさそうな状態は除外されている。

一次エンドポイント:麻酔導入直後の胃液量と pH 。
二次エンドポイント:嘔吐誤嚥などの合併症の有無、BMIと胃液量の関係、傾向補水の効果(検査データ、患者満足度など)

補水群:OS-1 1000mlを摂取。
(手術前日21:00時から術日朝までに500ml、
 術当日朝術前2時間までに500ml。)
絶飲群:術前日21:00に絶飲。


結果:
麻酔導入直後

胃液量
補水群 15.1ml、
絶飲群 17.5ml(P=0.30)
ORS群と絶飲絶食群間の平均差はわずか2.5mlのみ。

胃液pH
補水群 2.1
絶飲群 2.2(P=0.59)

FENa
補水群 0.94%
絶飲群 0.64%(P<0.001)

FEUN
補水群 37.7%
絶飲群 27.2%(P<0.001)

尿量
術前、手術開始1時間後まで、ともにORS群の方が多かった。

患者満足度
補水群の方が口渇感、空腹感はなかった。

合併症
両群ともになし。

他施設無作為比較試験としてエビデンスレベルを挙げても、
やっぱり術前2時間までの経口補水療法は十分に安全に施行できる事が示された。

術前2時間まで経口補水しても、
心配していた胃液残存による導入時の嘔吐リスクの上昇は無いと断言しても良いだろう。
残存胃液200mlというのが嘔吐のリスクの目安のようだが、
それを超えた症例は1例も無いし、
実際合併症も無かった。

FENa、FEUN、BUN/Creの結果を見ると、術前日夜からの絶飲は体内水分量を減少させている事を示している。
そのため、患者は口渇、空腹感も感じてしまい、患者満足度も低下した。

まとめると、
術前の長期間の絶飲によってもたらされるメリットはない。
それどころかデメリットがある。
一方、術2時間前までの経口補水はメリットも色々あるが、
なによりデメリットが無い事が良い。

興味深い事は、
高齢になるほど、胃液量は減少するという逆相関関係があった。
高齢者だからといって絶飲時間の安全域を広くとる必要はなさそうだ。
(今回の報告では80歳以上は除外されている。)

またBMIと胃液量には相関関係はなく、
肥満だからといってこれまた絶飲時間の安全域を広くとる必要もなさそうである。
(今回の報告ではBMI35以上は除外されている。)

Gastric emptying of water in obese pregnant women at term.
Anesth Analg. 2007 Sep;105(3):751-5.


妊婦も大丈夫そうである。

まとめると、
高齢者、肥満、妊婦、いずれも経口補水療法の対象としても問題なさそうである。

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