饗庭孝男『窓』
絶版なのですが、ほんとに好きな窓の本です。
帯に「文学者のことばと写真で綴る、安らぎと郷愁のヨーロッパ」とあるとおり、
フランス文学者・文芸批評家である筆者が撮った窓の写真に、
短い文章が添えられています。
この文章が、写真で切り取られた風景の外側の空気を
ちょうどいいバランスで含んでいて、
どれもほんとに気持ちよく読めます。
いちばん好きなのは「フォントネー修道院 L'Abbaye de Fontonay」の窓(p.33)。
ブルゴーニュのモンパールという町から少し離れた
森の奥にある、シトー会のフォントネー修道院。敷地
の中に湧き出る泉の音。梢をわたる風と鳥の声
が聞こえるだけ。美しい窓からさす夏の光と芳草
の色。沈黙と祈りと労働の聖なる空間よ。(p.32)
深い知見のある人の文章は、平易な言葉で語られていても、
静かな強さが備わっていて奥行きがあるのだなと
しみじみ思いつつ、ゆっくりながめています。
それから、「木の窓、心の開口部 La fenetre en bois, ouverture du coeur」(pp.28-29)
最後の行「花のある窓はその心の開口部。」が印象的でした。
最後に、「窓から光に向って De la fenetre a la lumiere」(pp.14-15)は
詩人のロンサールが住んでいた町にあるサン・ジェル大聖堂の窓。
ロンサールが出てきて、本の最後が、ヴェネチア大学の窓の写真で終わっているのも
これはL'IMPRESSION de L'EUROPE というシリーズの中の一冊で、
ほかに「花」「水」「空」があります。
図書館で借りましたが、どれも楽しかったです。
<おまけ:絶版だけどとても気に入っている本:洋書編>
・その1
Antiques at Home: Cherchez's Book of Collecting and Decorating with Antiques
B5判でフルカラー246ページ、
しっかりしたハードカバーのアンティークの本です。
学生の頃に迷っているうち、気がついたら絶版になっていたのですが
十数年後、旅行先の京都でふらっと入った古本屋さんで発見!
重かったけれど持って帰りました。
Contentsはそれぞれの材質で花かごが描かれていたり、
Silverのページには職人さんが写っていたり。
Celamics, Wood, Silver, Texitiles, Glass, Paper と
ジャンルごとに一章ずつ、まんべんなく網羅されていて、
家の中で飾られている様子がたくさんの写真とともに紹介されています。
それぞれの扱い方やマーケット情報なども書いてありました。
ヴィクトリアンな雰囲気で、ぎっしり詰まっている
たからもの箱のような印象です。
Celamic の章で書かれていた一文、
I love all types of blue-and-white pottery -- it always looks fresh and crisp.(p.30)が
とても嬉しかったです。
・その2
ラデュレが何なのか全く知らなかった(ひどい)三年前の秋に
古本屋さんで偶然見つけて、
その頃から好きだった「シェリーのローズバッド(■ )と色が一緒だ!」だけで
反射的にレジに向かってしまいました。
フランス語と英語の対訳になっていますが、文章はほとんど読まず読めず
たいてい写真をながめております。
レシピ本ではなくて、お菓子にまつわる写真集という感じです
とにかくデザインがほんとに洗練されていて、かわいいです。
色別に章立てされていたり、コラージュ風になっていたり、
物語の中の、架空のお菓子の国のような雰囲気が本当にスバラシイ。
とくに気に入っているのは
p.30-31の、かえる on the ウエハースと、p.60-61のお菓子 on the 本 。
その後、ローズバッドがうちに来てからは
これでお茶を飲みながら本をながめられるというミラクルが。
先日のお昼ごはん、
きゅうりといちごジャムのサンドイッチにカッテージチーズとトマト。
色を揃えてフフフとなっていることが多いです。
ラデュレのお店に行ったり、
お菓子類を頂いたりしたことはいまだにありません。
全方位的に申し訳ありません…(土下座