昨夜、三越劇場で愛知県出身の歌手「なかにし陽子」さんのリサイタルがあり、それに知り合いの有力タンゴ演奏家が4人も揃って出演したので聴きに行ってきた。
日本橋のデパートの三越でと言うことより、なかにしさんのファンがそうなのだと思うが、普通のタンゴコンサートとは異なった雰囲気の演奏会だった。先ず、和服の女性が沢山来ていたこと。そして華やかな訪問着姿もチラホラ。これは普通のタンゴ演奏会では余り見られない光景だ。
それに、遅れて来る聴衆の多いことと、それが演奏中に平気で入場してくるのに違和感を覚えずには居られなかった。遅刻者の大半は、お付き合いで、お義理で来場しているのではないかとさえ感じた。
前半はタンゴで、後半はシャンソンやポピュラー曲が演奏された。前半と後半では、なかにしさん以外の演奏メンバーが全面入れ替わった。
ボクが関心を持っていたのは前半だけだが、後半も全部聴いた。
前半のタンゴ演奏では、4人の演奏家は、なかにしさんの叙情的歌唱を盛り立てるべく、細かな神経の行き届いた演奏をしたが、タンゴファンのボクから見ると、4人とも脇役として控え目に演奏していたようにも見受けられた。このコンサートの性格上、その分だけ、多少の物足りなさを感じてしまったが、それは演奏家たちの責任ではない。
なかにしさんは美声で、外国語もお上手だが、タンゴ以外の曲も歌われるのでタンゴ専門の歌手とはいえないと思う。そして、彼女の歌唱法と語り振りと、タンゴ以外の広範な演奏曲目が演奏会の雰囲気を特徴付けた様に思う。
タンゴ好きの聴衆が、激しく切れの良いタンゴ演奏のリズムに酔いしれ、熱狂する雰囲気は感じられなかった。拍手にもそれが表れていたようだ。
折角の4人の一流タンゴ演奏家たちも、なんとなく場違いと言うか、遠慮がちの演奏だったように思う。
なかにしさんは、今回の4人のタンゴ演奏家たちのうち、コントラバスの田中氏以外の3人とは始めての共演で、多少心配でもあったが、よくやってくれたという感想を述べられたが、この演奏家たちのタンゴ界での活躍ぶりを熟知している自分としては、そのコメントには、納得し兼ねるものがあったのは否定できない。演奏家たちとしても、不完全燃焼だったかもしれないが、それは、今回の演奏会の性格上、止むを得ない事であり、聴衆の中のタンゴファンたちも、これで納得するしかない点であろう。