ここまで引っ張っておいてこんなこというのもおかしいのですが

基本的には動物福祉には賛成です。

動物をいじめてはいけません。かわいそうです。


でも人間は食べ物を食べないと生きてはいけません。

だから人間は仏教的な考えでは罪深いと理解されているのですが(これ以上の宗教論は無理です)

それを理解したうえで経済動物としての考えを持たなければならないと思っています。


殺したらかわいそうだからお肉・お魚を食べないでも大丈夫でしょうか?

野菜を食べればいいって植物だって生きていますよ。

ということです。


そしてペットだって人間の欲を満たすために飼育されているのですよね。

だから本当に究極に動物福祉を考えればペットなんて飼ってはいけないということになりませんか?


これは極端な例ですのでこういうことの中間を取って


人間の快適な生活を維持しつつ

動物への負担は最小限に抑えてあげましょう


ということだと認識しています。

(ここで考えが違っている人はこれ以上読み進めないでください。私とは価値観が違いすぎます)

だから人間の快適な生活を維持しつつが満たされた上での動物福祉は賛成です。


そして養鶏での動物福祉は何が問題なのか?


現在ヨーロッパでは2012年までにケージでの鶏の飼育が禁止されます。

また昨年の投票でアメリカカリフォルニア州では2016年からケージ飼育は禁止となりました。

つまり、現在のケージスタイルから放し飼い、平飼いへシフトしなければならないのです。

(現在オランダでは、このルールを先取りし主なるスーパーではケージ飼育の卵をおいていません)


5年前の私の知識はここまででした。

そしてこの記事を読んでの反応は

鶏の健康にはよさそうじゃない?でも土地代がかかるよね?

でした。

これは事実で確かにあっています。でも読みが浅すぎます。流通の世界を考えていないのです。


確かに放し飼い・平飼いになれば、鶏にはいい環境です。

でも通常の10分の1しか飼育できませんので、土地代が10倍かかります。

人件費も3倍くらいかかるでしょう。

そうすると土地の高い都会では養鶏は出来ない。

田舎の農業が盛んになる。いいことだ。

しかも卵の値段も1パック180円前後が400円前後になり

収入も増える


これも事実です。

しかしいかに日本の田舎の土地、人件費が安いからといっても

もっと安いところがあるじゃないですか?


ハイ、中国です。


そしてスーパーに150円の卵(中国産)と400円の卵(国産)が並ぶのです。

どちらを買いますか?

よしんば消費者は賢いので、中国の食品の安全性を疑い、国産を選ぶかもしれません。

でも外食産業はどうでしょう?

コスト最優先のフランチャイズチェーンはどちらを選ぶでしょうか?


今現在でも国産卵と外国産卵は市場で戦っています。

そしてその品質・衛生管理・そして何より価格で外国製品に勝っているので

国内自給率95%を保っていられるのです。(一部粉卵と呼ばれるフリーズドライ卵が加工食品向けに輸入されているので100%を保てない)


これがケージ飼育を禁止されたら上記のようなことが起こりうるのです。

となれば一部の消費者のためだけに400円の国産卵が流通し

それが買えない人は中国産を食べなさいということです。


さてこの状態は


人間の快適な生活を維持しつつ


の状態でしょうか?


一部のお金持ちは自分の生活は非常に安定していますから

動物のことまで守ってあげられるかもしれません。

でも普通の人たちは動物よりも自分達の生活の安全とか安心が大切なのです。


中国の食品が全部危ないとは言いませんし

なんでも国産が一番だとは思っていません。

しかし、こと卵については生で食べることを前提として作っている日本と

生で食べる文化が浸透していない中国産では

もともとの衛生管理基準が違うのです。(これは生産だけでなく流通においてもそうです)


そして日本が中国産の卵が危ないと考えて、やっぱり国産に戻ろうかと考え直したときに

日本の養鶏場に元と同じように生産をする力が残っているでしょうか?


だって現在1年間にヒヨコが1億羽生まれています。(1億2000万羽くらい飼育されています)

しかし放し飼い、平飼いでは3000万羽くらいの飼育羽数になるでしょう。


そうなると私のようなヒヨコ屋さんは施設の維持が出来ませんので廃業していると思います。

(九州にヒヨコ屋さんは7社ありますがいいとこ2社、場合によっては1社が残るという形です)

餌屋さんも同様でしょう。薬屋さんも。流通さんも。


そしてこのような壊滅状態から元に戻せといわれても10年以上かかります。


つまり

ケージで飼育したらかわいそうだからケージ飼育禁止

   ↓

国産卵暴騰

   ↓

外国産卵流入

   ↓

国内の養鶏場壊滅

   ↓

外国産依存

   ↓

食品の安全管理に疑問・また食料自給率さらに低下


となる可能性が高いと考えているわけです。


何度も言います。

動物がかわいそうだといっている金持ちはいいんです。

少々高くても安心安全な食品を買えばいいのですから。

なんならペットのワンちゃんのために国産買っちゃいますから。


でも一般人はそこまでお金使えません。

もし、養鶏場の企業努力でなんとかしろといわれても

もともと卵の価格なんて7割が餌代なわけですから

増える土地代と人件費と設備代を削るのは無理なんです。

衛生管理費用ももっとかかります。


そして現在イギリスでは国内のケージ飼育は放し飼いに統一されようとしています。

でもイギリスは土地が広いのです。

そして外国産の卵に比べて品質が低いのです。

そしてもともと外国産の卵への依存度が高いのです。

つまり、レストラン・加工食品では普通に外国産の卵が使われていて

スーパーには安い外国産と少し高い国産が並んでいたのです。(しかも値段が高いのに品質は低い)


この状態から国産卵を逆転させるにはどうすればいいか?

どこかで差別化をしなければならない

どこで差別するか?


はい、飼育方法です。


だからイギリスの動物福祉はうまく行っているのです。

(本当に全国でうまく行っているのかどうかは知りませんが、わたしが聞いている範囲の養鶏場の回答は賛成しています)


イギリスと日本は違うのです。

ましてやヨーロッパはEU連合ですから、外国産の食品は当たり前のように流通しています。

止める方法はありません。(関税もない?あっても低いでしょう)


もう一度考えてみてください。

卵の値段が3倍になっている。そしてその横に中国産がものすごく安く売っている。

元に戻りたくても後継者はもういない。


動物を守るために自分達の生活を犠牲にする(こういう事もいいのでしょうが限度があります)

なんともおろかです。


畜産はみなさんには関係ないことかもしれませんが

将来の自分達の食べ物のことです。

こういう事実を知ってください。何か行動はおこさなくてもいいですから

こういう未来の可能性があるということを知っていてください。

そうすれば未来が変る可能性がありますから。


いつになくまじめに書いてしまいましたが事実です。