感傷的で、あまりに偏狭的な。

ホンヨミストあもるの現在進行形の読書の記録。時々クラシック、時々演劇。

夢違/恩田 陸

¥1,890
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私が見た夢を、あなたも見てみたいですか?


ネタバレします。

(あらすじ)※amazonより
「何かが教室に侵入してきた」。
学校で頻発する、集団白昼夢。
夢が記録されデータ化される時代、「夢判断」を手がける浩章のもとに、夢の解析依頼が入る。
悪夢は現実化するのか? 戦慄と驚愕の幻視サスペンス。
夢を映像として記録し、デジタル化した「夢札」。
夢を解析する「夢判断」を職業とする浩章は、亡くなったはずの女の影に悩まされていた。
予知夢を見る女、結衣子。
俺は幽霊を視ているのだろうか?
そんな折、浩章のもとに奇妙な依頼が舞い込む。各地の小学校で頻発する集団白昼夢。
狂乱に陥った子供たちの「夢札」を視た浩章は、そこにある符合を見出す。
悪夢を変えることはできるのか。
夢の源を追い、奈良・吉野に向かった浩章を待っていたものは―。
人は何処まで“視る”ことができるのか?物語の地平を変える、恩田陸の新境地。

◆◇

第146回直木賞候補作品である。
恩田陸お得意の、不思議系小説であったが、
ありえない世界と現実の世界とをごく自然な形でリンクさせた、非常に技巧的な作品であった。

自分の見ている夢を、映画館などでみんなが見られるようになったら・・・
ひー!
ろくな夢を見てねえなあ、と思われちゃう~。←どんな夢、見てんだ!

そんな愚かしい過去に見た自分の夢などを思い出しながら、
ページをむさぼり、
物語中盤の技巧的な恐怖描写に、一人で読書しているのがこわくなっていた私。


でも・・・

あれ?
何がこわかったんだっけ?
振り返ると、そこには怖さの記憶がない。

そう、まさに、これがこの作品の長所であると同時に弱点でもあるんじゃないだろうか。
ありえない世界を、まるで現実世界のように描いているために、
夢か現か、のくっきりした境界線を(あえて)引かないまま、
私は、ほぼ最後まで霧に包まれた世界から抜け出ることができなかった。

全くの虚構の物語でもないために、
人肌ほどの温もりの記憶はある一方、熱く胸に迫る怖さや熱が残ったわけでもない。

それが目的でもあるのだろうから、
恩田陸的には成功なのだが、サスペンスとしてはどうなんだろう。

なんとなく残る不安と、もやもやが最後まで払拭されず、
読後も、ぼんやりとしたままで、
あらすじは覚えていても、どういう感情を覚えたか、など、
何が心の中で起きたのかすら、ぼんやりとした霧に包まれたまま、忘れてしまう・・・。

恩田氏の『Q&A』でも同様の感覚を覚えたのだが、
読んでいる最中は、ほうほう、と前のめりではあるものの、
本を閉じた瞬間、そこに残る何か、がひどくとぼしい。

思い返してみると、夢ってそんなものなのかもしれない。

夢の中であんなにジタバタ苦しんでいても、
起きてしまえば、寝ている間に感じていた苦しみにはリアル感がほぼないに等しい。
そこに残るのは、
何か自分の夢に対する唯ぼんやりとした不安、それも一筋の不安の影だけである。

そして、ラスト。
全編にわたって広がっていたぼんやりとした不安めいた霧が、一度に晴れていく。

そこで再会する、主人公と結衣子。

で、なんだかとてもいい感じの再会のシーンで終わる・・・。


終了。

え?あれれ?!それでいいの!?それでその後、あんたどうすんの?!
主人公には、結婚を約束した女性がいたはずなんだけど・・・


昔、恋い慕った女性と再会し、やっぱり彼女を愛していた、と再認識するのは
今までの流れで当然わかっていたし、了承済みのことだが、
結婚を約束していた女性とはどうなってしまったんでしょうかな・・・?
その女性は、最初、主人公に対し献身的な女性、という形で一瞬しか出てこず、
説明もないまま、物語は終わってしまった・・・

まあ、別れたんでしょうな。
だって~、思い入れが全然違うんですもの。
その女性に対する愛情と、ず~っと愛していた女性に対する愛情が。

その辺はすべて、読者の想像に任せる感じであった。
というか、そういう小さい事象は気にするなってことだったのかもしれない。

口数多く語りたくなるような作品ではないのだが、
とにかくボソボソっと何かしらの感想をクチにしたい作品ではある。
でもそれは作品の感想、というよりは、夢を通して見た自身のことなのかもしれない。

それでは今夜、夢でお会いしましょう。
恐ろしいことが待っているかもしれませんぞ。。。。

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