ウルトラセブン  魔の山へ飛べ | 俺の命はウルトラ・アイ

ウルトラセブン  魔の山へ飛べ

『ウルトラセブン 魔の山へ飛べ」

テレビ トーキー 30分 カラー

放映日 1967年12月10日


 

製作国 日本

製作言語 日本語

放送局 TBS系

 

監修 円谷英二

 

プロデューサー  末安昌美

脚本         金城哲夫
 

撮影         逢沢譲

美術         成田亨

            岩崎致躬

照明         新井盛       

音楽         冬木透

録音         松本好正

効果         金山実

編集         柳川義博

助監督       安藤達己

製作主任     高山篤

製作担当者    塚原正弘

 

特殊技術

撮影          佐川和夫

美術          深田達郎

操演          沼里貞重

照明          小林和夫

光学撮影       中野稔

助監督         東條昭平

制作主任       房前義勝

 

東京現像所 

キヌタラボラトリー

TBS映画社


出演

 

中山昭二(キリヤマ隊長)

 

森次浩司(モロボシ・ダン)

石井伊吉(フルハシ・シゲル)


阿知波信介(ソガ)
古谷敏(アマギ)  
 

金城哲夫(医師)

上原正三(医師)

赤井鬼介(医師)

 

佐竹弘行

松井隆之

荒垣輝男(ワイルド星人 スーツアクター)
丸山詠二(ワイルド星人 声の出演)

鈴木邦夫

松島映一

春日章良(牧場主)

鈴木和夫

島田太郎


上西弘次(ユキムラ ウルトラセブン・スーツアクター)
浦野光(ナレーター)

 

特殊技術 的場徹

監督 満田 禾斉

 

制作 円谷プロダクション

    TBS

 

森次浩司→森次晃嗣

 

石井伊吉→毒蝮三太夫

 

春日章良→春日俊二

 

 

満田 禾斉→満田かずほ

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 ナレーター

 「それは嵐を告げる稲妻に乗って地球に
  侵入した。網の目のような地球防衛軍
  のレーダーもそれを捉えることはでき
  なかった。」

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何者かが若者達に不思議なカメラを向ける。若者

達は倒れ急死する。

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 ウルトラ警備隊キリヤマ隊長は、相次いで起こる

若者達の急死事件で、全ての遺体に外傷がないこ

とを不審に思い、部下のダン・ソガ両隊員を現場に

派遣する。


 

  ダン「ソガ隊員、何を黙り込んでいるんですか?」


 

  ソガ「今日がどんな日か知ってるか、

     13日の金曜日」


 

 イワミ山では、何者かが調査しているダンの姿をカメラ
で捕らえ、撮影する。ダンは倒れこむ。ハッとするソガ。

 撮影した男は馬に乗って立ち去る。


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ソガ「ダン、ダン、おい!ダン」
 

 必死にソガはダンを助け起こし、呼びかけるが返事は
無かった。

 ウルトラ警備隊の医師三人が診察するが、ダンの体

調は回復しなかった。若い医師が首を振り、他の二人

もダンの状況が絶望的であることを表情で示す。


 

 モロボシ・ダンは亡くなった。

 

 涙を流す隊員達。

 

  キリヤマ「モロボシ・ダン、地球防衛軍の

        誇り。
        このことは今度の事件が解決する

        まで内密にしておく。
      

        ダンが殺られる程の相手だ。

        我々の手で敵を倒すんだ。

        これは、ダンのとむらい合戦だ。」


 

 イワミ山では、ウルトラ警備隊隊員が聞き込み
を開始する。ユキムラという牧童が行方不明に
なっていることを牧場主とその仲間から聞き出す。


 

 アマギから連絡が入り、キリヤマ・ソガ・フルハ

シは洞窟を調査する。二人の警察官が怪しいカ

メラで撮影され、急死する。警備隊員三名は一斉

にカメラに向けて射撃する。


 

宇宙人が現れ両手を振り回し、武器を置いて
逃走する。洞窟から一人の男性の遺体が発見

される。

 

 牧童達の証言で、遺体は行方がわからなくなっ

ていたユキムラであることがわかる。

 フルハシは、宇宙人がユキムラを殺し、彼に

なりすまして、カメラで地球人の命を奪っていた

ことを推測する。


 

 作戦室ではアマギが宇宙人の残した銃のよう
武器を調査研究する。

 


   アマギ「隊長、わかりましたよ。これはカメラです」

  

   キリヤマ「カメラ」

 

 

   アマギ「命を吸い取るカメラです」
        百聞は一見に如かず、見てください。」

 


   アマギは、マウスにカメラを向ける。マウスは急死する。


 

   アマギ「このマシンから赤外線かのような光線が
       発射され、何の傷も与えずに中のフィルムに
       生命が吸い取られる仕組みになってます。」


  
  キリヤマ「死んだんじゃないのか?」

 

  
  アマギ「肉体は確かに死んでいます。しかし、生命体
       はフィルムに定着されて生きてるんです。」

 

 

 アマギは、スクリーンにフィルムの中味を映写する。
ダンを初め事故に合った若者達が、苦しそうに動いて

いる。

 


  アマギ「ダンをはじめ、被害者達の生命が肉体を離れて
       フィルムの中、つまり異次元空間を生きてるん
       です。」
  


  キリヤマ「すると、死んではいないということか」
 

     

  アマギ「しかし、どうやってこのフィルムの生命体を
      元に戻すか、です。」

 

 

  フルハシ「アマギ隊員、ダンを助けてくれ、頼む!」


 


  一方、洞窟を探索していたソガはカメラを持ってい

た宇宙人と再会する。



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 この宇宙人は、ワイルド星人と名乗る。


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    ワイルド星人
     「待ってくれ、撃たないでくれ! 我々ワイルド
      星人は地球を侵略しない。
      ただ、少しばかり人類の若い生命が欲しいだけ
      だ。我々の民族は老衰し滅び去ろうとしている。
      どうしても若い命が欲しいんだ。」


   ソガ「そんな勝手な」

   

 

   ワイルド星人「わかっている、だが、地球人に頼んでも
           我々の気持ちはわからないだろう。」


   ソガ「だから人間の命を奪ったというのか!?」

  


   ワイルド星人「わかってくれ、我々には若い新鮮な
          生命が必要なのだ。あのフィルムを
          返してくれ!」

 


    ソガ「フィルム?勝手に人間の命を売り渡すような
        ことは出来ん。」

 


   ワイルドは怒り、ソガに光線を浴びせる。

  ソガは、ワイルド星人 に催眠術をかけられ、あやつ

  られ、キリヤマ隊長に「イワミ山にフィルムを持ってきて

  下さい。」というメッセージを伝達する。

 

   キリヤマ・アマギ・フルハシの三者がフィルムを持っ

  てソガを救出することの交換条件として、フィルムの入

  った缶をワイルド星人に渡す。

 

   ワイルド星人は喜び、ソガを三者に引き渡す。

  

   だが、フィルムの缶は空だった。怒ったワイルドは、「ナ
  ース」と叫ぶ。

 

   竜の怪獣ナースが現れる。

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怪獣ナースに援護を頼み、走って近づこうとする

ワイルド星人。



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 ソガは、「ダンの仇だ」と怒ってワイルド星人に向け

てウルトラ・ガンを発射して、焼殺する。

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主人を殺されたナースは、怒りに燃えて、ウルトラ

警備隊に報復しようとする。


 

 地球防衛軍では、アマギがダンの体にカメラを向け

る。

 

 

  アマギ「宇宙人は肉体と生命を分離した。今度は

       それを一緒にする訳だ。」

 

 

 つまり、遺体をカメラに収め、フィルムの中の生命体

と再会させ、現像して復活させる、という試みだ。合成

が開始される。



 

 生命体と肉体のピントが合わさった。アマギの試み

は成功する。


 

モロボシ・ダンは「ヤー」と叫んで、鮮やかにその命

を復活・蘇生した。


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ナースは円盤になる。キリヤマ達に危機が迫る。
そこへ、復活したダンが変身したウルトラセブンが
現れる。


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ナースは、セブンの周囲を飛び回って幻惑

する。



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ウルトラアイは我が命-ウルトラセブン  アクト版

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 竜体に戻ったナースが、セブンを狙う。


 

セブンとナースの激闘が展開する。


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ナースは、セブンの肉体を縛りあげる。

 

セブンは、痛みのあまり倒れこむ。

ナースも力一杯に絞めあげる。

 

 セブンは気力を振り絞って立ち上がり、ナース
を引きちぎる。


 

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セブンの勝利を見届ける、キリヤマ・ソガ・

フルハシ。


 

   ソガ「敵を倒しても、ダンの奴は戻って来ない。」


 

 すると、蹄の音が響く。

 

 白馬に乗っている青年は、なんと、蘇ったモロ

ボシ・ダン、その人である。三人は驚喜する。


 

 ソガ「ダンじゃないか、助かったのか、この野郎。
    よくも俺に心配かけやがって、ダン!」


 

 ダン「隊長、ご心配かけて。」


 

 キリヤマ「いやあ、無事で良かった。」

 

 

アマギから連絡が入り、フィルムに生命を吸われた
被害者全員が救出されたことが報告される。


 

 ダン「おかげで、命をとりとめることが出来ました。
    アマギ隊員、まさに命の恩人です。」


 

アマギ、頷く。 

  

 

  ダン「隊長、一度死んだら、命がますます惜しくなり
     ました。」

  

 

  キリヤマ「それでいいんだ。

        命は一度きりで自分だけのものだ。

        そう簡単に宇宙人なんかにやれるか。」

 


 四人は、生命の尊さを深く確かめながら、地球防衛

軍基地への帰路につく。

 

 夕陽を受けながら、四人を乗せたホーク1号が、空を

飛んでいる。

 


 

  ―いのちを生きる―

 


 

 「魔の山へ飛べ」の主題は何か?この問いを聞く時、
私は「いのちを尊ぶ」ことである、と申し上げたい。明

確な根拠がある訳ではなく、単なる自分の推測でしか
ないのだが、この深く素晴らしい傑作を見るとき、「い
のちの尊さ」を明らかにしている、と思わざるを得ない

のである。

 


 脚本の金城哲夫は、「ウルトラシリーズ」において「
いのちとは何か?」を問い続けてきた。『ウルトラQ』
「2020年の挑戦」(1966年5月8日放映)では、2020年と
いう未来からやってきたケムール人が、老化する肉体を
活性化・強化するため、若い地球人の肉体を奪おうとす
る。ワイルド星人と手法・目的・動機が非常によく似て
いる。淳(佐原健二)や由利子(桜井浩子)達は、この
ケムール人の冷酷な策謀から地球人のいのちを守ろう

とする。

 

 『ウルトラマン』第一話「ウルトラ作戦第一号」(1966年

7月17日放映)では、怪獣ベムラー捜索中の事故でハ
ヤタ隊員を死なせてしまったことにウルトラマンは強い
罪悪感を抱き、彼にいのちに自己のいのちを捧げて蘇生
せしめ、二つの命を一つにして、地球の平和を守るため
に生きる、という課題に目覚める。39話「さらばウルト
ラマン」(1967年4月9日放映)ではゼットンに殺された
ウルトラマンは、M78星雲の宇宙警備隊員ゾフィと対面

する。「私は二万年も生きたから、もういい。だが、若い

ハヤタは気の毒だ」と共に命を生きた地球人のパートナ

ーを気遣うウルトラマンに対して、ゾフィは「命を二つ持

ってきた」と語り、ウルトラマンとハヤタを分離させつつ、

それぞれに命を与えて蘇生せしめる。『ウルトラマン』に

おいて、ハヤタは「生→死→生→死→生」、ウルトラマン

は「生→死→生」の物語を生きた。
 
 いのちの神秘、いのちの不思議を金城は描いた。琉球・
沖縄に長く伝わるいのちを尊ぶ言葉「命どぅ宝」の精神が
こめられていることも窺える。ハヤタの命を奪ってしま
ったことを詫びて悔いるウルトラマンの心に、戦争や事故
で亡くなった人を思い、忘れずに生きようとする心根がこ
められていると、推測する。

 

 ワイルド星人は「自星の民族が老衰している。同胞を救
うためになんとしても地球人の若い肉体が欲しい」と望ん
で、地球人の生命の奪取する。ワイルド星は、生老病死の
四苦の「老苦」に悩んでいる。「老いた私たちが生き残る
ために、君たちの若い肉体が欲しい」という論理である。

 

 

 生老病死は、いのちを生きる生物の全てが逃れ

られない苦しみである。「老い」とは、人間で言うな

らば、七十代・八十代の方のみが感じる深刻な「

老い」だけではなく、若者や幼児にも、肉体の疲労

や心身の衰えが感じられれば、それは、「老い」

である、と言えよう。


 

 ワイルド星人は、老いの悲痛さを訴え、なんとか地球

人の若い肉体を得て、母星の危機を突破しようとする。

 哀れで、切ない。

 

 彼はケムール人のような冷酷非情な侵略者ではない。

生き残る為に地球人に犠牲を強いることに罪悪感を持っ

ている。侵略の意図はないのに、結果的に地球を侵略し

てしまったことに、「申し訳ない」という反省の気持ちを抱

いている。生き残りをかけるワイルドと地球人の生存を願

うソガ。共に同胞を愛する者どうしである二者が戦わざる

を得ない、という物語に、金城脚本と満田演出の慧眼が

ある。


 今回は、命を閉じ込め封じこめてしまうフィルムが、

大切なテーマをになう媒体として、登場する。


 

 肉体は死んでも、生命はフィルムに記録される。

  

 映画作りを志す者の闘魂も反映しているのかもしれない。

 

例え、自身が死んでも、いのちはフィルムの中で生きる。

この事柄が成り立つ故に、映像を作る者は、フィルムに

いのちを燃やすのだ。

 

 いのちを記録するフィルムを描きながら、金城は、

脚本にいのちの生き甲斐を見出した、自身の生き方

を表現したのかもしれない。


 フィルムの中を彷徨うダンや若者達の様子を、満田

監督は幻想的に映している。



 

 「ダンの仇だ」と言って、ワイルド星人を狙撃し焼殺す
るソガ。ワイルドのフィルムに生命を吸い取られた親友
を思う彼の復讐は筋が通っている。一方愛する主人ワ

イルド星人を、無残に焼き殺されて激怒する怪獣ナース。

蘇生したダン=セブンに報復の戦いを挑む。ナースの

報復戦も又、ナースなりの筋がある。


 

 金城脚本は、このソガ対ナースの戦いに、「報復の連
鎖は簡単に断ち切れぬこと」を鮮やかに明示している。
愛する者を殺された存在の怒りがいかに大きいか、が描
かれている。換言するならば、戦いは人類の歴史、生物

の歴史から無くならない。だからこそ平和を願う心が一層

大事になるのである。

 

 

大詰めにおけるダンの
  

   「隊長、一度死んだら、命がますます惜しく

    なりました。」

 

 という台詞に、金城の「いのちを尊ぶ」こころが溢れている。

ダンも「生→死→生」の道を経て、いのちのかけがえの無い

尊さに目覚めた。危機を通ったがゆえに有り難さの実感も格

別である。

  

  

  キリヤマ「それでいいんだ。命は一度きりで自分だ

        けのものだ。そう簡単に宇宙人なんかに

        やれるか。」


 


 隊長の台詞には、命の尊さを確認するともに、

「命どぅ宝」の心が光る沖縄を、「簡単に他者に

やれるか」という、金城の愛郷の念もこめらてい

ることを思う。

 

 

   

 ワイルド星人の老いの悲しみと若い肉体への

思い。

 

 中年になって、腰痛や足の痛みや虫歯などに

悩まされている自分は、『セブン』の再放送に熱

中し、怪獣ごっこに夢中になって駆け回っていた

幼年期が愛おしくなることが、最近多い。

 

 

 日々老いながら、たった一つの尊いいのちを

得たことに感謝し、生き甲斐を見つけて、命の足

跡を残していく。

 

 

 このことの尊さを、金城脚本は、教えてくれた。

 

 自分も、親に産んでもらったことに深謝し、

ただ一つのいのちの有り難さを確かめなが

ら、自身のいのちを生きていきたい。


 

                      文中敬称略


 

 

参考資料 『ウルトラセブン』 DVD.vol 3


 


 

                          合掌