靖国問題
テーマ:人間と社会本は大別すると2種類に分かれる。「知るための本」と「味わう本」である・・・とは、世の読書家の多くが共通して口にする言葉だ。それはまた、教養のための本と娯楽のための本と言い替えることもできるだろう。本書はそのうちの前者に属する本である。本書の「はじめに」に次のようにある。
「『靖国』という問題。それが、どのような問題であるのかを、私たちは本当に知っているのだろうか。」「靖国神社がどのようなものであるのかを知らなければ、首相の参拝がなぜ問題になるのかは理解できない。参拝がなぜ問題になるのかを理解できなければ、それに対する自分の意見を持つこともできない。」「問題解決の糸口は見えず、靖国神社をめぐる対立はますます泥沼化しているように見える。そんな中で、自分の意見を持ちたい──そう願う読者の一助となることをめざして、本書は書かれる。」
この引用文を読んですこしでも関心をもった人なら、この本はまず読んで損はないと言っていい。「私は歴史家ではなく、哲学者の端くれである」という著者の思想傾向はやはり平和主義的である。靖国神社は一貫して「戦争神社」として批判的に描き出される。読後感は、肯定的、否定的、人によってさまざまかもしれない。しかし、すくなくともこの問題について知識が貧しいと感じている者が、自分で判断し、自分の頭で考えはじめるための手がかりを得ることは確実にできる本だといってよいと思う。
知るための本を読む醍醐味のひとつは、「未知」を「既知」にかえることの快感だろう。味わう本にはない種類の面白さが知るための本にはあるのだ、ということにあらためて気づかされる本である。
長くなるが、もう一度「はじめに」から引用してこの本にこめられた著者の志をフォローしておこう。
「靖国問題は実はきわめて複雑な問題で、少なくとも以上のような側面(※歴史・文化・代替施設案の問題等:引用者注)をきちんと分節化してアプローチしないと、迷路に迷いこんで出られなくなってしまう。泥沼化した現状を突破して、問題解決の地平を見通すためにも、可能な限り丁寧に問題を解きほぐしていきたい。」
- 著者: 高橋 哲哉
- タイトル: 靖国問題




