米国のRambus社が、台湾のチップ・メーカー6社に対して、米国での特許侵害訴訟及び国際貿易委員会(ITC)への特許侵害製品の輸入を差止めの申立を行ったとの記事を目にしました。
輸入差止めの申立は、国内に商品が入り込むことを防止するための手続きであり、日本でも関税法で、知的財産侵害品の輸入は禁止されており(関税法第69条の11第1項9号)、知的財産権者は、税関に対して輸入差し止めの申立を行うことができます(関税法第69条の13、 同法施行令第62条の17)。
私も、輸入差止めの申立を行ったことがあるのですが、現在の申立状況について税関のホームページで調べてみました。税関のホームページで「輸入差止申立て受理済一覧」を権利毎に検索すると、以下のような結果がでました。
1)特許権 18件
2)商標権 177件
3)意匠権 65件
4)著作権等 67件
5)著作権等(還流CD等関係詳細) 318件
5)は、海外において正規に販売されたCD等で、国内での頒布が禁止されているものであり、著作権法第113条5項に規定されているものです。
商標権については偽ブランド商品、著作権等については海賊版CD,DVDが主な対象であり、外形的に対象となる商品を見極めやすいのですが、特許権侵害商品については、外形的に特許権侵害商品であることは判断できません。つまり、権利者が「○○という内容の技術を備えた商品」と申し立てたとしても、税関では判断のつきようがありません。
そのため、商品の型番等の外形的に認識できる特徴を明らかにして申し立てる必要があります。
このように、特許権侵害商品の輸入差し止めについては、申立の段階で、問題となっている具体的商品が明らかになっているということになります。しかも、申立人(特許権者)において、その商品についてきちんと分析をして、特許権を侵害していることの確認がされていることになります。
偽ブランドや、海賊版CD,DVDでは、ある程度概括的に特定できるのに比べ、特許権侵害商品については具体的な特定が必要となってくること、侵害判断の困難さが、上記の申立件数の差に表れていると考えられます。
もともと、特許権、実用新案権、意匠権については、輸入差止めの申立制度はありませんでした。しかし、政府の知的財産戦略大綱を踏まえ、平成15年に関税定率法が改正されて、商標権や著作権等と同様に輸入差止めの申立ができるようになりました(現在は関税法に規定されています)。
それ以来、何度か特許権侵害に基づく輸入差止めの申立が行われた事例がニュースなどで大きく取り上げられたりしましたが、多くは、大企業同士の争いの一環として行われているように思われます。
今後も、輸入差止めの申立手続きの利用は、商標権や著作権等が中心であるという状況は続くでしょうが、特許権侵害についても、事案によっては訴訟や仮処分に加え、輸入差止めの申立手続きを活用するということを選択肢することは戦略上有効でしょう。