アマルコルド ~音楽と映画のダンディズム~

“アマルコルド”とはフェリーニの映画タイトルであり、過ぎし遠い日々に想いを寄せるという意味です。

 歳を重ねればこそ、古き名曲や名画に触れる度に新たな発見をします。 
 思慮と分別を持つ紳士淑女に、今宵再びクールでアダルトな音楽と映画を!


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 80年代の幕が開けた頃の話である。当時のボクは4月から始まる都会での新生活に期待と不安を入り混ぜながら、残り僅かの学生時代を過ごしていた。期待と不安...と書いたが、元々地元志向の強いボクの正直な思いは、あの時でさえ、何らかの都合で東京行きが御合算にならないかと身勝手に考えていた。
 家族から離れ、友人達と別れる辛さを味わいたくなかったのだろうか? 否、もっと大きな理由があったと思う。それが何かは上手く表現出来ない。自分はこれからどうなるのか? 心の状態は漠然としていた。
 あの頃の空気の匂い...ただ身の周りの変化が近づいている実感があるせいか、何か新しいことが起きそうな予感もあった!

 その頃...80年代最初に流行した曲が久保田早紀の「異邦人」だった。イントロの民族楽器の強い音色が頭にこびり付いたが、詩の内容も忘れられない。「子供達が空に向かい、両手を広げ、鳥や雲や夢までも掴もうとしている...。」
 瞬時に中近東辺りの貧しい子供達の姿が浮かんできた。
 アマチュア音楽祭でグランプリを受賞したクリスタル・キングの曲は「大都会」だ。注意深く歌詞を聴くと、夢と希望を抱いて都会に来た若者が、人の裏切りに遭い、挫折していく。それでもそれを定めと決め、力強く生きていこうと...。
 自分の何年後かの姿がオーバーラップしていた。外はまだ寒い風が吹いていた。

 それでも敷かれたレールを走るしかないと観念したのだろうか? 春の訪れと共に心も晴れてきた。青々と輝く草花の薫り、穏やかな陽射しに心も陽気になった。
 70年代の終焉を感動的な武道館ライヴで締めた甲斐バンドは「ビューティフル・エネルギー」を発表した。音感や曲調が凄くソフィスティケートされていて、明らかに従来の甲斐バンドとは違っていた。それまでの古いしがらみに区切りを付けて、新しい世界へ突き進めという暗喩なのかと都合よく解釈していた。

 佐野元春が「アンジェリーナ」を携えて、衝撃的なデビューを果たした。出発の日、玄関を出る際の家族との別離はかなり辛かった! 
 いつまでも見送る母と妹の姿が小さくなっていく...。後ろを振り返らずに駅に向った。その光景は生涯忘れないようにと脳裏に刻んだ。将に谷村新二の「サライ」の歌詞を体現してきたのだ。

 社会人として初めて会社のドアを開けた瞬間の感触は今でも残っている。ボクと同じように地方から上京してきた同期の連中との不器用な接触と都会で暮らす息苦しさに戸惑いながらも2週間の研修期間が終了した。
 少しながら緊張感も解れて会話が増えた。聞けば、ここに集まってきた者は皆、同じような不安を抱えていたのだ。互いにそれを知った途端、すぐに親しくなり、楽しい日々を過ごすようになった。新しい出逢い、一挙に大勢の仲間が出来た歓びを堪能していた。
 いつも空は晴れていた。心なしか、都会の空気も澄んでいるかのように思えてきた。夢を叶える躍動感が沸き始め出したのだ。

 その頃、流行っていたのが太田裕美の「南風 -SOUTH WIND-」である。この曲は3月に発売されたが、すぐにキリンオレンジのCM曲に採用されてスマッシュ・ヒットした。
 とても爽やかで明るくなる曲だが、何よりハワイ出身のモデル、サンドラ・スミ・フォンカーザーがとても可愛かった! 確か彼女、ボクとほとんど同年代の筈だ。そうすると...年齢は...
 今、彼女がどんな人生を歩んでいるかは知らないが...止めよう! こんな話!


 全く同じ時期に流行っていたのがリンダ・ロンシュタットの「How Do I Make You 邦題:お願いだから」である。我ながら前節が長すぎる!  (ノ-_-)ノ ~┻━┻・・.....
 ヴォーカリストとしての実力がありながら低迷していた彼女が、一躍注目されたのは、74年のアルバム『悪いあなた』からであろう。その後、77年の『夢はひとつだけ』、続く78年の『Living In The U.S.A.』は全米No.1アルバムヒットを記録し、実力と名声が広く知り渡ったのである。またこの間、バディ・ホリーのカバー「It’s So Easy」等がヒットしている。


 70年代は彼女の絶頂期だったのだ。都会で暮らす前年、つまりボクがまだ学生だった頃、クラスの中でも話題にはなっていたが、正直ボクは嗜好が合わなかった。それまでの彼女はウエストコースト・サウンドの薫りを漂わせた曲目が多く、気だるく感じていたのだ。
 しかし80年代早々に発売した『Mad Love』は、従来の曲調が薄れ...と言うより真逆のロック調の色彩を濃くした曲目が多い。特にこの「How Do I Make You」は、いきなりのドラムの猛々しい叩き、リズミカルなサウンド、刺激的な歌詞が見事に調和されて心地良い!

 改めて聴くと、彼女の声量豊かでメリハリの効いた歌声はロックに合っていると気づいた。彼女も新たなディケードを迎えて、何か違う方向性を探っていたのだろうか? 
 ボクも周りの人々も、またボクが直接会うことはない広い分野のアーティスト達は新しい試みに挑戦し、何かを変えようとしていた。80年代初頭はそういう時代だった...。

     「 How Do I Make You 」 Written by Billy Steinberg

    You're a doll. Your eyes see all,and how do I make you.
    How do I make you.  How do I make you wanna see me.

    You're so young. But your feelings are deep,and how do I make you
    How do I make you. How do I make you feel for me.

    You put your head on my pillow. And you're fast asleep,and how do I make you
    How do I make you. How do I make you dream about me.

    Ooh, ooh baby The world's a wall of ice
    You're gonna need someone to treat you warm and keep you nice.

    I like the way you dance. The way you spin,and how do I make you
    How do I make you. How do I make you spin for me.

    You put your head on my pillow. And you're fast asleep,and how do I make you
    How do I make you. How do I make you dream about me.

    Dream about me. Dream about me. Wooo dream about me.



「ヴェリー・ベスト・オブ・リンダ・ロンシュタット」/リンダ・ロンシュタット [CD]

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