ピピピ・・・ピピピ・・・と音が鳴り響く。部屋には黄色い携帯電話、腕時計、置時計が幾つかあり、どこから聞こえるのか必死で探そうとしている。
早く音を消したいのだけど、どこから鳴っているのかがわからず、時計を代わる代わる耳に当てて焦っている。やっと見つけた時計にはスイッチがなく、プラスのドライバーでネジを外さなければならないようだ。
-ふと、目が覚めた-
夢だった。 携帯の時計を見てアラームが鳴っていたのだと気づいた。
三月。ほんの少し立派になった我が子の背中に涙する卒園式。
四月、爺ちゃん婆ちゃんにプレゼントして貰った大きなランドセル🎒を背負った姿に微笑む入学式。
ぴしゃっと正装して眩しい太陽に目を細めた記念写真。
今はそんな季節だ。
誰もが経験する至極の喜び。
その時を待たずして、またひとり、会員が逝ってしまった…
享年36歳、余りにも早すぎる。
まさに車に乗ろうとしたその時、発作で倒れたらしい。
少年のような寝顔だった。
決して前に出るタイプではなかったから、
あまり話したことがないと言う会員も多かった。
何度か少人数で飲んだ。
雨漏りの仕事も真面目に取り組んでくれていた。
いい奴だった。
喪主挨拶で奥様から良い旦那、良いパパだったと聞き、涙が溢れた。
まだ抱っこが必要な2人の姉妹は分かっていない様子だった…
たった二年の間に二人も会員を亡くすなんて・・・
神様仏様に異議あり!彼らの人生の再審を要求したい思いだ。
お経が唱えられている間に
もしも自分が死んだら…そんなことを考えた。
今ここにいる仲間たちが私の時にも来てくれるかな…
妻は私のことをどんな人だったと話すだろうか…
2人の息子はちゃんと受け止められるだろうか…
会社はどうなるかな 119はどうなるかな・・・
そんなことを考えた。
だめだだめだ、まだ死ねない。死ぬわけにはいかないと思った。
まだ息子たちに何も伝えてないし教えてない。
私はなにも成し遂げてない。
最終の新幹線で帰宅したのが深夜1時。
今朝、人の死について息子と話をした。
当たり前のことなど何もない。すべては有り難し。
いつか必ず別れが来るものだ。
親を見送らなければならない。
先輩を見送り後輩に見送って貰わなければならない。
こればかりは順番がある。
いつまでもその日が来ないで欲しい。
でもそれは、明日かもしれない。
だから懸命に、今を生きるしかない。
ありがとう、木下兄弟。
祐介さんと先に始めといてくれよ。
ちょっと遅れそうだ。