「おっ母に見せたかったな・・・」


ライブが終わって、帰りの新幹線の中でボソっと悲しそうにつぶやいたお父さん。



お父さんは知らないかもだけど、私おばあちゃんと約束してたんだ。











「ゴールデンウイークに原宿行ったらね!たくさんたーくさん芸能事務所の人にスカウトされたんだよ!」


お土産を渡しながら興奮する私の話を、おばあちゃんは目を細めて嬉しそうに聞いてました。


「あらら!そりゃすごいねぇ。アイドルにでもなるのかい?」


「まっさかあー!私には無理だよ!私の事みんな音痴って言うし。」


「麗愛ちゃんは頑張り屋なんだから、きっと大丈夫。きっと上手になるよ。」


「そうかなあ。。。でも、もしそうったらおばあちゃんの事、武道館コンサートに連れてくね!」


「ぶどうかん?」


「おっきなコンサート会場!」


「約束だね。楽しみにしとくよ」


「うん、絶対武道館連れてく!」







その時はコンサートじゃなくて、『ライブ』って言うなんて知らなかった。




小学校の頃、共働きだった両親の代わりにいつも私達兄妹の面倒をみてくれていたおばあちゃん。


9歳の時に被害にあった東日本大震災の時には、原発事故から守る為に北海道に連れて行ってくれたおばあちゃん。



甘えん坊で、おばあちゃん子だった私。



原宿の話を嬉しそうに聞いていたおばあちゃんが、どこか苦しそうにしていて、少し心配でした。




それからしばらく経ったある日


「おばあちゃん膵臓ガンだって。もう手遅れで数ヶ月の命だって。年を越せないって。」









お医者さんって凄いんだね。



人の寿命を超能力者みたいに当てちゃうんだね。






まだ歩ける内に想い出作りにって。



おばあちゃんの大好きな桃狩りに行ったけど、その時にはもう体調良くなくてあまり食べられなかったよね。



写真のおばあちゃん、最高の笑顔で写ってたよ。



すぐにプリントアウトすれば良かった。














おばあちゃん天国に行っちゃった。



まだ写真見せて無かったのに。



お正月は福袋買ってあげるって言ってたから、楽しみにしてたのに。



来年には病気を治して桃をたくさん食べるって言ってたのに。





私ね、音痴なのにアイドルになったんだよ?



まだ武道館連れてってないよ?






あの時、武道館の事なんて本当はよくわかって無かった。



アイドルはみんな武道館で歌うんだって思ってた。



だから、よく知りもしないで初お披露目公演の書き初めで『武道館』なんて書いた。



もうおばあちゃんの事、連れて行けないのにね。



でも、約束したもんね。



ずっと武道館って言い続ける理由はおばあちゃんとの約束だから。



少しだけアイドルの事が詳しくなってみたら、もっともっと大きなステージがある事も知ったんだよ。



でも、やっぱり私にとって武道館は特別で大切な場所なんだ。。。









《天国のおばあちゃんへ》



何があっても私の味方で、何があっても応援してくれてありがとうね。



おばあちゃんはもう居ないけど、私には、私の事を応援してくれるたくさんのファンの人達がいるから。



だから、安心してね。



私が武道館行くまで、天国から見守っててください。




追伸


今年もおばあちゃんが大好きだった桃の季節になりました。


今年の桃は甘くて美味しいです。


もう一緒に桃狩りには行けないけど、今年のお盆休みには桃を持って行くから天国でおじいちゃんと食べてね。





【橋本麗愛】

コメント(10)