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体で感じる・心が育つ
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No.122 ご入学おめでとうございます
原 田 京 子 ( 児童文学作家 )
 4月です。幼稚園や小学校に入学するお子さんをお持ちのお母さん(すみません、お父さんもですね)、「ご入学おめでとうございます」。子どもたちが自分の手を離れて新しい集団に所属する。自分と過ごす時間よりも自分以外の人と接する時間が多くなる。集団の中でうまくやっていけるかな? お友達ができるかな? 期待と不安と、複雑に入り混じったその気持ちは、お母さんもお子さんも同じでしょう。いや、子どもたちは新しい世界に飛び出していけることが楽しみで胸がいっぱいでしょうから、心配なのはお母さんたちばかりかもしれませんね。

 子どもが生まれたときは本当に嬉しくて、ただただ元気に育ってくれたらいい、そう願っていたけれど、子どもが成長するにつれて、次第に子どもへの期待は膨らんでいきます。「這えば立て、立てば歩めの親心」。ひたすら子どもの無事な成長を願う親心をうまく表現している言葉ですが、子どもの成長につれて、親はだんだん子どもに対する欲が出てきます。
 先月のコラムに書いたように、「わが子が賢くいい子に育つ条件」、それが知りたくて、40才になる前に大学院に入学し、その答えにたどりつくことができました。三つの条件のうちの「知的刺激」という意味で、「早期教育」が私の修士論文のテーマだったわけですが、現在、これまでのコラムの中で、このテーマに関する内容が含まれるものを整理していますので、結果がまとまり次第、ご報告いたしますね。

 さて、今月のコラム、私の反省を込めて書いていくことにします。
 ずいぶん以前に、私は「前世療法」というものを試みたことがあります。その詳細について、このコラムで述べるのは控えますが、私はこの「前世療法」の権威であるブライアン・L・ワイス博士の書かれた『前世療法』という本に興味を持ち、一度だけワイス博士から直接、前世療法を受けたことがあります。それまでも、自分自身でワイス博士の書かれた本と、付属のDVDに従って、自分の前世について知りえた機会がありました。それによれば、私の前世として示されたのは、「砂漠」「白装束の男性」などなどでした。ラクダに乗り、お供の男性を連れて砂漠を旅する白装束の男性。このことから導かれた結果、私は前世では「修道士?」だったのではないか?ということでした。私自身、禁欲的なところがあるし、モノトーンの服しか着ないし、物への執着があまりありません。ですから、私の前世は、きっと、「旅から旅へと修行を続ける修道士の男性だった」と思っていたのでした。
 しかし、最近、旅先で、自分がなんと欲深い人間であるかということに気づかされたのです。「かわいい子には旅をさせよ」といいますが、還暦を過ぎても旅は何かしらたくさんの気づきをもたらしてくれるようです。

 旅をすると、普段の日常とはまったく違う場面に出くわします。我慢することを余儀なくされたり、時間の制限を受けたり、予期せぬ事態に対処させられたり、予想もつかないような出来事を経験します。そして、そのたびに決断を迫られます。そうして、自分の本性のようなものと直面させられるのでした。
 たとえば、ホテルに関して。チェックインの際に眺めがよりよい部屋を希望します。それが満たされると、今度は部屋の備品が充実しているかについて(私の場合、コーヒーマシーンなど)気になります。自分がより快適にその部屋で過ごせるようにと、要求は限りなく増えていきます。
 冷静に考えたら、とても快適な部屋で過ごせているのに、ひとつでも満たされないことがあると、そのことが気になってしまいます。自分の部屋よりもずっと下層階の部屋で過ごしている人がたくさんいるのに、自分の部屋よりも上層階の部屋はもっと眺めがいいだろうな、とか、コーヒーマシーンがあったらおいしいコーヒーが飲めるだろうな、とか、そんなことを考えている自分がいるのです。
「もっと、もっと……」そんな思いをなかなか断ち切れません。私はなんと強欲な人間でしょう。前世が「禁欲的な修道士」だったなんて想像もつきません。
 そんなことを考えていたら、親が子どもに抱く思いにも同じことがいえるなあ、そう思ってしまったのでした。
「子どものありのままを受け入れ、ありのままを愛する」。それは簡単なようで本当に難しいことだと思います。「生まれてきてくれてありがとう」初めてのご対面のときの何にも変えがたい気持ち。「元気に育ってくれたら、それだけでいい」子どもに対する、親としての純粋な気持ち。そうして、幼稚園や小学校に入学できるまでに無事に成長してくれたこと、そのことに感謝している現在の気持ち。それらの気持ちを忘れずにいられたら、それからの子育てもどれほど心に余裕を持ってできることでしょう。

 子育てを終えて、子どものほうが自分よりも体がでっかくなってしまった今であるからこそ、まあ、良くぞ無事に育ってくれた、と思うことばかりです。いくつもの壁にぶつかり、そのたびに悩まされた子育て真っ最中の日々。過ぎ去ってしまえば、ただただ、いい思い出ばかりが思い浮かぶのです。だから、子育て真っ最中のお母さん、いい思い出をたくさん作りましょうね。
 子どもたちが、幼稚園から、学校から帰ってきます。楽しかった、嬉しかった、ドキドキした、びっくりした、子どもたちはそれぞれに自分が感じた気持ちで心をいっぱいにして、帰ってくるでしょう。玄関で、両手を広げて、新しい環境で一生懸命頑張ってきたお子さんを思いっきりハグしてあげてくださいね。そうして、お母さんのほうから何かをたずねるのではなく、子どもたちが自分の口で話し始めるのを待って、ゆっくりと、じっくりと、その報告を聞いてあげてください。その一挙手一投足から、子どもたちが何を感じ取ってきたのかを察してあげてください。もしかしたら、とても大切なことほど、言葉に出せずに心の中にしまっているかもしれません。

 さて、最後に本の紹介を。心理学者のエレイン・N・アーロンさんが書かれた本『The Highly Sensitive Child:ひといちばい敏感な子』という本です。自分のお子さんが「もしかしたら……」と悩まれているお母さんにお薦めします。

※今月は、これまでに写した子どもたちの可愛い写真を載せました。
2018-04-03 更新
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2008 | 02 | 03 | 06 | 07 | 08 | 10 | 11 | 12
2007 | 12
著者プロフィール
原田 京子(はらだ きょうこ)
1956年宮崎県生まれ
大学院修士課程修了(教育心理学専攻)

【著書】
児童文学
『麦原博士の犬語辞典』(岩崎書店)
『麦原博士とボスザル・ソロモン』(岩崎書店)
『アイコはとびたつ』(共著・国土社)
『聖徳太子末裔伝』(文芸社ビジュアルアート)
エッセー
『晴れた日には』(共著・日本文学館)
小説
『プラトニック・ラブレター』(ペンネーム彩木瑠璃・文芸社)
『ちゃんとここにいるよ』(ペンネーム彩木瑠璃・文芸社)
『タイム・イン・ロック』(2014 みやざきの文学「第17回みやざき文学賞」作品集)
『究極の片思い』(2015 みやざきの文学「第18回みやざき文学賞」作品集)
『ソラリアン・ブルー絵の具工房』(2016 みやざきの文学「第19回みやざき文学賞」作品集)
『おひさまがくれた色』(2017みやざきの文学「第20回みやざき文学賞」作品集)

 

Diamant Rouge de Lunch

テーマ:

宮崎観光ホテルのディアマンルージュでランチ

太田シェフが春色満載のランチのコースを用意してくださいました。


ヒラマサのタルタル

ライムのパウダー

そして

お野菜を食べると、そら豆がビオラの花の下に。


春の香りのグリーンのポタージュ


もちろん、私の大好きな帆立も。

あらびきのトウモロコシの粉をまぶした帆立とベビーコーンのコラボ。

 


お肉はとろけるように柔らかく、お肉本来の甘さが、フリッターの塩梅とマッチ。


そして最後はイチゴのプディング。

ピスタチオのアイスは甘さ控えめで、ピスタチオ本来の味が楽しめます。

 

実は、2月、3月と、母が入院し、

しかも、書いている作品の締め切りが目白押しで、体も頭もパンク寸前!

 

だから、太田シェフの素晴らしいお料理に体も心も癒されました。

いつもながらに美しくて美味しいお料理。

太田シェフ、本当にありがとうございました。

 

なかなか予約が取れなかったから、

久しぶりのディアマンルージュでランチ。

太田シェフが特別に私だけのメニューを用意してくださいました。

 

サーモンのムースのテリーヌ。

日向夏のジュレ、カラスミ、キャビアなどを添えて。

写真でその美しさが伝わっているでしょうか?

お料理を目にした時、思わず「きれい!」と叫んでしまいました。

実際は、写真よりもっともっと美しいです。

 


カブのスープ。

ビーツのチップが添えてあります。

スープがビーツと混ざると、美しいオレンジ色になります。

 


私の大好きな帆立。金柑のソース。

ズッキーニのグリーンと黄色。トマトの赤がお料理を引き立てます。

 


黒毛和牛のヒレステーキ。

季節のお野菜を添えて。

マッシュポテトにも一工夫。

ミディアム レア。焼き加減も完璧!

 


ストロベリーのケーキ。

名前を忘れてしまった。ごめんなさい。

本物のイチゴとは別に、ホワイトチョコレートの味がするイチゴが。

バニラアイスを添えて。

 

もう、前菜からデザートまで完璧です。

 

太田シェフのお料理は本当に美しい。そして、美味しい!

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No.121 宮崎県に住む若いお母さんたちへ
原 田 京 子 ( 児童文学作家 )
 いつもコラムを読んでくださってありがとうございます。
 さて、今月から、コラムの新しい試みを始めます。
 これまでコラムは毎月独立した内容になっていましたが、今月から内容を次の月へと続くものへとしたいと思っています。これまで書いてきた100以上の内容を集約しながら、ひとつの方向性を持って書いていきたいと思います。
 どうしてそういう構成にしようと思ったのか?
 それは、読んでくださる方にも、書いている私と同じ方を向いていただくことで、いっしょにより良い子育てを目指していくことができると考えたからです。
 ですから、もし、コラムを読んでいきながら、なにかしら疑問や不安が生じたならば、また、コラムとは関係なくても、自分の子育てになにかしらの思うことがあるならば、私宛にそれを伝えてほしいのです。そうすることによって、同じ疑問や不安も持った方々とそれを共有し、いっしょに考えて、答えを出すことができるからです。

 この10年で書かれた1,000枚近い原稿のこのコラム。ひとつひとつに私の思いを込めて大切に書いてきました。ですから、ひとつひとつをゆっくりと子育ての合間に読んでいただけること、それは私にとって最高に幸せなことです。
 ですが、子育てに切実に悩みがあって、すぐにでも何かしらの解決のヒントが欲しい、そう思っているお母さんにとって、1,000枚近いコラムのどこから読んでいいのかわからないかもしれない。ですから、そんなお母さんのために、コラムの内容をいくつかに分類して、カテゴリー化したらわかりやすいかもしれない、そう考えたのでした。
 もちろん、これからの私の人生において、素晴らしい出会いや出来事はきっとたくさんあります。そんなときは、それを特化して、コラムの中に盛り込み、皆さんにお知らせします。
ほんの一瞬、すばらしい瞬間を共有し、一息ついてもらいたいので。

 さて、話は変わりますが、2月の始めから、宮崎県総合博物館で「絵本とわたしの物語展」が開催されていました。開催期間の11日間で12,200人を動員したそうです。このコラムが公開される頃にはもう終わっていると思います。もし、見逃されたならとても残念です。先日、そのオープニングセレモニーで私は児童文学作家として挨拶をしたのです。
 
 

「絵本と私の物語展」挨拶文


 今日は「絵本と私の物語展」のオープニングセレモニーにお招きいただき、ありがとうございます。
 私は、本を読むことが文章を書くことと同じくらい大好きです。特に絵本は、子どもたちのためのお話を書く上で大変参考になるのでよく読みます。ですから今日は、たくさんの素晴らしい絵本に出会えるのを楽しみにして参りました。
 私には三十才になる息子がいますが、その息子が生まれてから、子育てをする中で、ある思いを抱いていました。その思いというのは、「子どもが賢くいい子に育つにはどんな子育てをしたらいいのか?」という、たいていの母親が抱く思いでした。
 私はその答えを知りたくて、四十才を前に大学院に入学し、教育心理学を専攻。「早期教育」をテーマに、自分の年の半分くらいの学生に混じって、二年間の学生生活を送り、知りたい答えを得ることができました。
「子どもが賢くいい子に育つために必要なこと」それは、「子どもが体全体を使って自由に遊び、触れることのできる自然環境」「愛情をいっぱい注いでくれる人間とのコミュニケーション」「知的刺激を与えてくれる環境」でした。知的刺激を与えてくれるという意味では、特に、本というものの存在は大きいと思います。
 本は活字の集合体ですから、ただ本を与えただけでは子どもは本を読みません。本の中には想像を超えた素晴らしい世界が詰まっているのだということを知らせなければならないのです。その本の持つ魅力を知るには、幼い頃からの大人の働きかけが必要なのです。
 その本というものへの入り口が「絵本」だと思うのです。絵本によって導かれて、やがて挿絵がない、文字だけの本の面白さも知ることができるのだと思います。
 宮崎県は、「いい子どもが育つ都道府県」のトップにランキングされています。先ほど私が述べた「子どもが賢くいい子に育つために必要な三要素」、つまり、「海あり、山ありの素晴らしい自然環境」「人情豊かな県民性」、そして、「知識を与えてくれる環境」が宮崎県にはあります。まさに、「いい子どもが育つ都道府県」に選ばれるだけの条件がそろっているのです。
 私は、県外に行くと必ず美術館などを訪れますが、この県立博物館を始め、素晴らしい県立図書館や県立美術館など、自然に囲まれた素晴らしい知的環境が整っている県は他にありません。私はそのことをとても誇りに思っています。
 この「いい子どもが育つ都道府県」ランキングトップである宮崎県で、こうして素晴らしい「絵本とわたしの物語展」が開催され、たくさんの子どもたちが絵本の持つ素晴らしさに触れる機会をもてたなら、宮崎県の子どもたちはますます素晴らしい子どもに育ち、成長していくでしょう。
 そのことは、子どものための物語を紡いでいる私にとってもとても幸せなことです。そして、私もまた、これからも、子どもたちが幸せになれるような物語を書いていきたいと、あらためて思いました。
 今日は本当に素晴らしい機会を与えていただき、ありがとうございます。
 


「いい子どもが育つ都道府県ランキングトップ」の宮崎県に住んでいる、それだけで「いい子どもが育つ」条件が整っているといえます。その意味で、皆さんはとても恵まれている幸せなお母さんだといえるかもしれませんね。

※今月の写真は、嬉しかったプレゼントです。
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2008 | 02 | 03 | 06 | 07 | 08 | 10 | 11 | 12
2007 | 12
著者プロフィール
原田 京子(はらだ きょうこ)
1956年宮崎県生まれ
大学院修士課程修了(教育心理学専攻)

【著書】
児童文学
『麦原博士の犬語辞典』(岩崎書店)
『麦原博士とボスザル・ソロモン』(岩崎書店)
『アイコはとびたつ』(共著・国土社)
『聖徳太子末裔伝』(文芸社ビジュアルアート)
エッセー
『晴れた日には』(共著・日本文学館)
小説
『プラトニック・ラブレター』(ペンネーム彩木瑠璃・文芸社)
『ちゃんとここにいるよ』(ペンネーム彩木瑠璃・文芸社)
『タイム・イン・ロック』(2014 みやざきの文学「第17回みやざき文学賞」作品集)
『究極の片思い』(2015 みやざきの文学「第18回みやざき文学賞」作品集)
『ソラリアン・ブルー絵の具工房』(2016 みやざきの文学「第19回みやざき文学賞」作品集)
『おひさまがくれた色』(2017みやざきの文学「第20回みやざき文学賞」作品集)

 

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No.120 進化?それとも退化?
原 田 京 子 ( 児童文学作家 )
「なんか異様な光景だなあ。」
あるレストランに足を一歩踏み入れ、テーブルにつこうとして、夫が言いました。店の中にいたほとんどの人がスマートフォンの画面を見つめていたのです。ひとりで来店していた人はもちろん、目の前に連れの人が座っている人も、みんなもくもくとスマートフォンの画面をさわっていたのです。(ちなみに、夫はスマートフォンや携帯電話の類を持っていません)
私はそのとき、ふと思ってしまいました。スマートフォンなどによって、現代人は、目に見えない不特定多数の会ったこともない相手と知り合いになれるけれども、目の前の人とは友達になれないのではないか、つまり本当の意味での友達は作れないのではないか、と。

科学技術が進歩したおかげで、私たちの暮らしはずいぶん便利になりました。シャワートイレなど、私にとっての必需品です。もう、これがない昔には絶対に戻れません。ましてや、水洗トイレなどではない、あの「ぽっちゃんトイレ」なんて耐えられません。
でも、でもです。私たちの子どもの頃は、どこの家もそれがあたりまえだったのです。昼でも暗いので、夜など、とても怖い思いをして、足を踏ん張っていた、かつてのトイレ事情ですが、それによって、子どもたちの体も心もずいぶん鍛えられたのです。現に、現代の子どもたちの中には「しゃがむ」という行為ができない子どもだっているといいます。

考えてみると、科学技術の進歩によって産み出されたもので、私たちの生活は大変便利になり、暮らしは楽になりました。そして、たくさんの情報を、一瞬のうちに手に入れることができるようになりました。
しかしそのことは、同時に、私たちからある大切なものを奪ってしまったような気がするのです。以前の私は、調べものがあると本を買い、本が手に入らないときは図書館に行って調べたりしていました。それが今では、知りたいことについてパソコンにいくつかの検索ワードを挿入したら、たちどころにたくさんの情報がパソコンの画面に表示されます。その情報がどこから来ているのか、果たして正しいのか、といったことは関係なく、また、それを確認することもなく、活用することだってあるのです。

日常生活をはじめとして、さまざまなことが楽になってきていることで、私は昔に比べてとても怠慢になっているなあと思っています。
昔はそれがなくても耐えられる、それなしでも平気でできていたことが、今ではそれがなくてはどうしようもない、生活できない、そんなものが増えていくということは、ある意味とても恐ろしいことだと思います。
そのことは、人間そのものが退化してしまっているということに他ならない。進化しているのは科学技術だけで、それによって恩恵を被っている人間が進化しているわけではない。つまり、人間が進化しているのではなく、退化していることを意味しているのではないかと思うのです。

哲学者 内山節氏はこんなことをいっています。 
「江戸時代は、個人がそれぞれ自分の喜びのためや自分の家族のためなど、自分の目的のために一生懸命働いていた。そうして、自分の利益を上げ、社会全体としての利益が上がり、結果として日本の経済が発展する。だからこそ、社会の発展が自分のものとして実感できる。
しかし、現代社会は、経済の発展がめまぐるしく、人々の意識がそれに追いついていない。経済発展に貢献しているのは一部の人であり、自分はその貢献に直接関与しているとは思えない。よって、経済発展への実感、満足感がない」と。

つまり、進歩していく科学技術によって生み出された道具の使い方に慣れることに精一杯で、自分自身の力で何かを生み出したり、現在よりももっと素晴らしい人間になれるように自分から困難な道を選んで努力をしたりするような人間が少なくなっていくのではないか、私はそのことを懸念しています。進化していく道具を使いこなすことであたかも自分が進化しているように勘違いをしている。しかし、進化しているのは科学技術であり、人はその恩恵を被ることで、逆に退化しているのです。

 現在、吉野源三郎氏の書いた「君たちはどう生きるか」という本がたくさん読まれているといいます。正確には、この本の漫画本が売れているということです。私はこの本を20年位前に、漫画本ではなく岩波文庫の本で読みました。漫画にならなかったら読まなかったかもしれない。漫画本になることで、おおぜいの人が読むきっかけができた、そうは思うのですが、漫画本になることで、文章が集約され、また、そこに、原著の作家以外の人間の思惑が挿入されます。ですから、文章だけの本の、その行間にただよう微妙な著者の思いを読み取るということができないのではないか、私はそのことをとても残念に思います。ですから、漫画本を読んだならば、それをきっかけに、是非原著も読んでほしいと思っています。

ところで、「人間はどうして勉強をしなければないのか?」子どもたちはそんな質問をすることがあります。その質問にはどう答えたらいいでしょうか。
今月のコラムは、その質問への答えとなるでしょう。文字通り「勉強」とは「勉めて強いる」ことです。脳を鍛えるために勉強をするのです。脳を鍛えるためには脳に刺激を与えなければなりません。その刺激が楽しいものばかりでは脳は進化しません。困難なことを乗り越えた先に喜びがある、勉強とはその繰り返し。そして、人生もその繰り返しなのです。そして、何度も立たされる人生の岐路。その選択のときに、楽な方ではなく困難な方を選ぶことができたら、きっとその先にはさらによりよい人生が待っている。そうできるようになるために勉強をするのです。

人として生まれたからには幸せに生きていきたいと思います。永遠に幸せな状態でいたいと思いますが、永遠に続くものは存在しないのです。また、環境は常に変化していくので、人は変化を受け容れることを要求されます。つまり、幸せに生きていきたいと思うならば、変化していく環境に適応しながら、なおかつ永遠に幸せな状態でいられるように努力を続けなければなりません。
「選択に困ったら、楽な方ではなく困難な方を選ぶこと」「変化を受け容れつつ、永遠に良い状態を維持しようと努力をすること」それが、人間が本当に進化をしていき、幸せに生きるために目標とすることではないか、私はそう思うのです。

※今月の写真は、飛行機から写した雪の富士山と、山種美術館内Cafe 椿のオリジナル和菓子です。川合玉堂展を記念して、玉堂の絵をイメージして作られた美しい和菓子達。
2018-02-01 更新
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2007 | 12

 

ユウナの花。長いあいだの勘違い。

テーマ:

20年以上前に、沖縄に来た時、

タクシーの運転手さんが、窓の外を見ながら、

「あれはユウナの花ですよ。」と教えてくれました。

それからずっとこの花はユウナの花だと思っていました。


ところが、今回沖縄に来て、あらためて調べてみたら、

これは、「トックリキワタ」という名前の花。

本物のユウナの花はこれ。

「ユウナ」というのは奄美や沖縄での呼び名で、

正式には「オオハマボウフウ」といいます。




運転手さんが間違っていたのか、私が勘違いしていたのか。

トックリキワタの花は、やがて下の写真のように実がなり、

ワタが取れます。


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No.119 20年以上前に書いた息子への手紙  
原 田 京 子 ( 児童文学作家 ) 
 あけましておめでとうございます。今年もこのコラムをよろしくお願いいたします。

 年末のお掃除の際、大切なものをしまっている書類棚を整理していて、ある「手紙」を見つけました。それは、今から20年以上前、小学校2年生のときの息子にあてた手紙でした。子ども宛の手紙ですから、文章も子ども向けに書いてあります。ちょっと長いですが、加筆訂正無しの原文のまま、皆さんに披
 

裕人君へ

 お父さんとお母さんの世界で一番大切な宝物の裕人君。裕人君が生まれるまでのことと、生まれてからのことをお手紙に書きます。
 お母さんがお父さんと結婚したとき、お母さんは小学校の先生をしていました。お母さんは子どもが大好きなので、毎日毎日、学校で楽しく過ごしていました。だけど、一生懸命頑張りすぎて、それに、お母さんはもともと体が弱かったので、病気になってしまいました。病院のお医者さまから「これ以上無理をすると、赤ちゃんを産めなくなりますよ」といわれて、お父さんがそれは心配して、「すぐ先生をやめなさい」といいました。
 それから、お母さんは毎日毎日、クラスの子どもたちのことばかり考えて、学校をやめるのが悲しくて泣いてばかりいました。お母さんが学校をやめることを知らない子どもたちは、「先生、このごろ泣き虫になったね」といって心配してくれました。
 学校をやめる日が来て、お母さんは子どもたちとお別れをしました。お母さんの顔は涙と鼻水でぐちゃぐちゃになりました。子どもたちも、お別れの作文を読みながら泣いていました。
 どうしてこんな話を始めにしたかというと、お母さんは子どもが大好きだということを裕人君に知ってほしかったからです。子どもが大好きなのに、子どもたちと別れなければならなくなって、それに病気のために赤ちゃんも産めなくて、お母さんは毎日毎日、家の中でひとりぼっちで、お父さんが仕事から帰ってくるまで、まるで、死んだ人のように元気がなくなっていました。
 お父さんもお母さんも早く赤ちゃんがほしいといつも思っていました。神様にお願いもしました。おじいちゃんやおばあちゃんをはじめ家族のみんなが早くお母さんに赤ちゃんができたらいいとお守りを買ったり、神社にお参りに行ったりしてくれました。それでも何年もお母さんには赤ちゃんができませんでした。「もう赤ちゃんができないかもしれない」「だれか赤ちゃんをくれないかなあ」お父さんとお母さんはそんなことを考えたりしました。
 そして、それから、お父さんとお母さんはアメリカで生活をすることになりました。アメリカで1年くらい生活をしてから、日本に帰ったときでした。お母さんのおなかに裕人君がやってきたのです。みんな、アメリカに行ってよかったよかったといいました。お母さんが元気になって、しかも赤ちゃんができたからです。
 お父さんとお母さんがどんなにうれしかったか裕人君はわかりますか?
 お父さんはもともと優しかったのが、もっともっと優しくなりました。お母さんが元気な赤ちゃんを産むようにいろいろなことをしてくれました。普通のお母さんは、赤ちゃんがおなかにいるとき、吐き気がしたり、気分が悪くなったりすることが多いのですが、お母さんの場合は元気いっぱいでした。いつもは体の弱いお母さんが、裕人君がおなかにいるときは風邪ひとつひきませんでした。そして、おなかがすいてしかたがなくて、焼肉やラーメンやうなぎやてんぷらや、そんな脂っこいものばかり食べていました。お父さんはお母さんのために、肉まんとかギョーザとか、いつも仕事の帰りに買ってきてくれました。だからお母さんはまるで「スターウォーズ」に出てくるジャバ様のようにブクブクと太ってしまいました。それでもお父さんは「かわいい、かわいい。もっともっと食べて元気になりなさい」といって喜んでいました。なぜならお母さんはそれまで病気がちで、とてもやせていたからです。
 お母さんはそうやって、みんなから大切にされて、おなかの中の裕人君といっしょに10ヶ月を過ごしました。おなかの中の裕人君に毎日、話しかけたり、歌を歌ってあげたり、なぜてあげたりしました。そして、昭和62年4月4日に裕人君は生まれたのです。
 赤ちゃんを産むのは大変だけど、お母さんは看護婦さんから褒められるくらい大安産でした。きっと裕人君が、お母さんが苦しくないようにいっしょに頑張って外に出てきてくれたからにちがいありません。お母さんのおなかの中から外に出てきた裕人君は、とても大きな産声をあげました。部屋の外で待っていたお父さんにも聞こえるくらいの大きな声でした。
 ところがそのあと、とても不思議なことが起こったのです。お母さんが裕人君に向かって「お母さんよ」といったときのことです。裕人君はあんなに大きな声で泣いていたのに、お母さんが声をかけたとたん、ピタリと泣き止んで、お母さんの声のするほうに顔を向けたのです。そして、まだ目は見えなかったのに、お母さんの声を聞こうと耳を傾けたのです。
 お母さんはびっくりしました。裕人君は、おなかの中にいるときに聞いたお母さんの声をちゃんと覚えていたのです。そのあと、お母さんのそばにやってきたお父さんもびっくりしていました。「すごいね、ちゃんとおなかの中にいるときからお母さんの声を聞いていたんだね」といいました。
 そうやって、みんなが裕人君と会えるのを楽しみにしていたのです。8歳になった今まで本当にいろいろな人にかわいがられて、みんなから愛されて、裕人君は育ったのです。そのことを忘れないで、みんなを大切にして、これからも元気に腕白に育ってください。
 裕人君はいつまでもお父さんとお母さんと、そしてみんなの宝物です。

 私だけでなく、これは、お子さんのいるお母さん方すべてが経験し、感じたことだと思います。とっくの昔に終わった子育てですが、こうして、妊娠・出産当時のことを振り返ると、感慨深いものがあります。
 今、子育て真っ最中のお母さん、妊娠・出産時のこと、日々の子育てにおいて感動したこと、年の始めに、心も新たに、お子さんへのまっすぐで素直な思いを込めて書いてみませんか?

※今月の写真は、0歳から6歳までの息子の写真です。 
2017-12-29 更新 

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著者プロフィール 
原田 京子(はらだ きょうこ)
1956年宮崎県生まれ
大学院修士課程修了(教育心理学専攻)

【著書】
児童文学
『麦原博士の犬語辞典』(岩崎書店)
『麦原博士とボスザル・ソロモン』(岩崎書店)
『アイコはとびたつ』(共著・国土社)
『聖徳太子末裔伝』(文芸社ビジュアルアート)
エッセー
『晴れた日には』(共著・日本文学館)
小説
『プラトニック・ラブレター』(ペンネーム彩木瑠璃・文芸社)
『ちゃんとここにいるよ』(ペンネーム彩木瑠璃・文芸社)
『タイム・イン・ロック』(2014 みやざきの文学「第17回みやざき文学賞」作品集)
『究極の片思い』(2015 みやざきの文学「第18回みやざき文学賞」作品集)
『ソラリアン・ブルー絵の具工房』(2016 みやざきの文学「第19回みやざき文学賞」作品集)

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