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2008-01-22 21:14:30

1969フォード・トリノ・タラデガ

テーマ:フォード



1960年代後半において、ストックカーレースの結果がユーザーの新車購買意欲に対する影響力というものは、現代のそれとは比較にならないほど大きかったと言われている。実際レースがあった日曜日の翌週におけるディーラーの賑わいとなると「勝ったメーカー」の方が明らかに増していたのであるから。


こうして1950年代の半ばからというものの陰になり日向になりつつストックカーレース界全体を支配していたメーカーワークスの影響力は、1960年代も終わりになると公式にはワークスとしてのレースへの関わりを否定していたGMを除いて(そのGMとて完全に無関係だったわけではない)、まさにピークに達することとなったのである。


ここで大きなきっかけとなったのは1969年にオープンすべく建設が進んでいたNASCAR最速コースの「タラデガ」ことアラバマ・モータースピードウェイの存在だった。タラデガのオープンはこの時点で190mphを超えていたレースカーの最高速度が200mphに達することを意味していた。その結果、最もワークス活動に熱心だったダッジとフォードは200mph領域での最高のパフォーマンス発揮を狙った空力スペシャルレースカーの投入を決心したのである。ご存じの通りここで言うダッジの製品とはチャージャー500とチャージャー500デイトナ。そしてフォードの製品というのが今回紹介するトリノ・タラデガとタラデガの兄弟車としてリリースされたマーキュリー・サイクロン・スポイラーIIである。





フォード・トリノ・タラデガとマーキュリー・サイクロン・スポイラーIIの開発決定にあたっては、ジェネラル・マネージャーとして時のフォードを率いていたシーモン・クヌッセンが直接指揮を執っていた。ここでパートナーに指名されたのはストックカーの開発において事実上のワークス活動を担っていたホールマン・ムーディー。開発作業における技術的責任者を務めていたのはチーフ・エンジニアであったラルフ・ムーディーである。


こうして1969年度からフォードとマーキュリーのストックカーウェポンとなることが決定したニューマシンは1968年初めから開発作業に入った。ベースとなったのはフォードがモデルチェンジしたばかりのフェアレーン・トリノ・スポーツルーフ。マーキュリーがトリノの兄弟車だったサイクロンである。モディファイの骨子は最高速度向上に最も有効だった全長の延長と空力的に有害と思われたディテールの修正である。その結果、市販状態では53.5インチだった全高は52.6インチに低められ、全長は専用のフロントフェンダーとノーズピースを装着することで5.9インチ延長されていたのが特長である。


このノーズはただ延長するのではなく、レースカーを製作する上で位置の変更が認められていなかったラジエターグリルやバンパーにまで留意されていたことはいうまでもなく。特にそのバンパーはそれ自体にフロントスポイラーの効果を持たせるためにスタンダードのリアバンパーをカットし全幅をわずかに縮めて装着していたといった具合にユニークなアイディアが駆使されていた。


ちなみに一見しただけではほとんど同じ様に見えたトリノ・タラデガとサイクロン・スポイラーIIではあったものの、ベースとなったボディシェルが微妙に異なっていたことから延長ノーズの形状におけるいわゆるオデコの部分の傾斜角がサイクロンの方が深くなっており、空力的にはこちらの方がわずかに有利であったと言われている。


フォード・トリノ・タラデガとマーキュリー・サイクロン・スポイラーIIは500台と定められていたNASCARにおける最低量産台数に合わせてトリノ・タラデガが754台、サイクロン・スポイラーIIは519台が一般ユーザーに販売された。もちろんワークス系チームはフォードのファクトリーからホワイトボディで供給された個体も存在しており、全体数はもう少し多かったと思われる。


なお実際のストックカーレースにおいてはフォードの新型レースエンジンであるBOSS429が使用されたものの、当時のNASCARルールにおいては車両とエンジンのホモロゲはそれぞれ別に取得することが容認されており、エンジン単体としてのBOSS429のホモロゲは、トリノやサイクロンより多くのハイパフォーマンスエンジンファンが多いと予想されたマスタングを通じて取得する道が選択された。


1969年度NASCARグランナショナルはダッジとの熾烈な戦いとなることが予想された。その中でチャンピオンの座を獲得したのはワークスのホールマン・ムーディーからエントリーしたデビッド・ピアソンだった。








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