なかのひと Chrome Counter
2008-01-16 22:58:35

1965FDNYマック・スーパーポンパー

テーマ:トラック






1965年夏、FDNYことニューヨーク市消防局に最新型の消防車が納入された。その名はマック・スーパーポンパー。この消防車には他の消防車とは異なる大きな特長があった。それは一台の消防車だけではなく、それぞれ役割分担した複数の消防車で構成された大きな一つのシステムだったということ。こうしたシステムを採ることとなったのは、消防車としての機能が並外れて高かったためシステムでなければ運用できなかったということである。


それではマック・スーパーポンパーはどのくらい高性能だったのだろうか? まずはそのシステムから見てみよう。このシステムは基本的に5台の車両で構成されていた。一台目はシステムの中核というべきポンプ車である。

マックのFシリーズキャブオーバートラクタで牽引されるトレーラーにはデラバル(ドイツのタービンポンプメーカー)製の6段遠心加圧ポンプとそのポンプを駆動するためのネピア・デルティック18気筒ディーゼルエンジン(2400ps)が搭載されており、最大で8800gpm(ガロン・パー・ミニッツの略。この場合は毎分8800ガロン/約33トン)の放水能力を持つという高性能振りを発揮することができた。ちなみに標準的な消防車の平均的放水能力は現在でも1000~1500gpm前後である。このことからもスーパーポンパーの能力がいかに並外れていたかということが分かる。


二台目はスーパーテンダーと命名されていた放水車兼ホースキャリアである。全体のデザインはポンプ車と同じくマックFシリーズトラクタと専用トレーラーの組み合わせ。今回紹介している写真はこのスーパーテンダーである。この車両の役目は川や海などから汲み上げ、ポンプで加圧した水を他の放水車に分配することだった。そして最後がサテライトポンパーと呼ばれていた3台の放水専用車である。こちらは通常の消防車の放水砲を大幅に強化されたものであり、形状的には一般の消防車と変わりなかった。メーカーもマックだけに止まらず、アメリカン・ラフランス製などもあった。


さて、FDNYがこうした消防車システムを導入した背景に存在していたのは、高層ビルが林立するマンハッタンにおける消防能力の強化に他ならなかった。ちなみにマック・スーパーポンパーの放水能力は理想的な状態で最大400m以上という驚異的なレベル。一台でも強力なこの放水を5台セットで行うことで、ビル火災の他に船舶火災や工場火災など、従来は極めて困難な消火作業となることがほとんどだった大規模火災での初期消火を目指したということである。なお活動中のマック・スーパーポンパーの勇姿は以下のマックトラックのサイトの1965年のところで。


http://www.macktrucks.com/default.aspx?pageid=260


マック・スーパーポンパーは1965年夏に配備された後、同年8月12日に初出動。以来、退役となった1982年までの17年間に2200回以上も出動し、その能力を遺憾なく発揮した。なお退役した後は数年間に渡ってFDNY自身の手で保存されていたが、現在は全て個人コレクターの手に渡り大切に維持されている。今回紹介しているのもまさにそんな個人の手に渡った個体に他ならない。






余談だがスーパーポンパーの心臓部というべきポンプの駆動に使われていたエンジンについてもまとめておこう。というのもこのエンジン、今となってはなかなか見ることができないユニークなメカニズムを備えていたのである。


ネピア・デルティック18気筒ディーゼルエンジンのシリンダー配置はV型でも直列でも水平対向でもH型でも星型でも無かった。それではどういう配置だったのかというと、倒立三角型とでもいうべきもの。この説明ではほとんどの場合その具体像を想像できないとは思うのだが、とりあえず以下の図を見て欲しい。


http://www.fh-friedberg.de/users/zima/napier.html


要するに正三角形の頂点の部分にクランクシャフトを置き、シリンダーはそれぞれの三辺の部分に配置。3本のクランクシャフトに接続されたピストンとコンロッドはそれぞれのシリンダーの両端から挿入され、一本の長いシリンダーの中で燃焼室を共用する様に向かい合ってセットされていたというもの。当然こういったデザインでは通常のバルブメカと組み合わせることはできないため、吸排気はシリンダー側面に開けられたポート穴を使った2サイクルとなっていた。また吸気/掃気には過給機が必須とあってメカニカルスーパーチャージャーが装備されていた。


イギリス製のこのエンジンは少々構造が複雑という欠点はあったものの、6気筒分の全長の中に18気筒のシリンダー(ピストンは二倍の36個もあった)を収めることができるというスペース効率を高く評価され、ディーゼル機関車や魚雷艇用として相当数が使用されることとなる。


世界中にユニークなメカニズムを備えたエンジンは数多いが、ネピア・デルティックはその中でも有数の個性派である。






コメント

[コメントをする]

コメント投稿

一緒にプレゼントも贈ろう!

Amebaおすすめキーワード