Photo by Shino Tanaka
フロントマンとは人前に立つ人である。
別に歌手や俳優ではなくても、誰もがフロントマンになる機会がある。
営業やプレゼンテーション、結婚式のスピーチやカラオケ、幹事やチームのリーダーなど、いやでも人前に出なくてはならない。
ライブの主催やAKIRA歌のれん分けステージはフロントマンの心得を習得する絶好のチャンスである。
オレがアドバイスするのはつぎのフロントマン七ヵ条である。
1.自我を消す
フロントマンと言うのは能力以上の仕事を要求される。
意識5パーセント、無意識95パーセントといわれるくらい無意識の持つ潜在能力は計り知れない。
その潜在能力を描き出す邪魔をするのがこざかしい自我である。
恥ずかしいとか、失敗したらどうしようとか、人からかっこよく思われたいとか、そんな自我など捨ててしまえ。
自我というダムが決壊すると、無限の潜在能力が流れ込んでくる。
潜在能力のパワーを使えるようになると自分の能力の数倍の仕事ができる。
神様の操り人形になりなさい。
2.自己評価あるのみ
他己評価なんてタコである。
あなたの人生には自己評価しか存在しない。
他者による評価や査定、批判や賞賛ばかり気にしていると、自分が本来やりたかったコア(核心)を見失ってしまう。
誰に何と言われようと、自分が納得する仕事をすることだ。
自己評価だけで生きるということは、世界に対して自分が全責任をもつ。
なにが起ころうと他人や運命のせいにしない。
世界は自分が創り出しているという覚悟を持つことだ。
3.利他的思考
目の前にいる人が何を求め、どうすれば喜ぶかを条件反射で読み取り、それを形にして表現する。
他人のことは気にするなと矛盾しそうだが、これは1と2を踏まえた人が到達する上級レベルである。
自分が我慢して他人を喜ばせると言うのはまだまだ初心者レベルで、自分を喜ばせ、他人を喜ばせることこそ最高のフロントマンなのだ。
4.好奇心と追求心
我々の祖先が樹上生活をしていたときはじめて地面に降りた人間、森から平原に出て行った最初の人間、落雷で燃える枝を洞窟に持ち帰った人間など、好奇心旺盛な最初の1人が人類を進化に導いた。
好奇心を失った人間は進化を止め、年老いる。
自分が興味を持ったことを徹底的に追求する者だけが創造的な仕事を成し遂げられる。
5.多様な意見に耳を傾ける
たとえ自分と反対の意見でも耳を傾ける。
その人がその言葉を選ぶバックグラウンドも思いやり、その意見に学ぶべきところがあればどんどん取り入れる。
神様が口を1つ、耳を2つくれたのは、自分の主義主張を叫ぶより、他者の意見を聞くことが倍大切だからだ。
6.共通言語で伝える
二流のフロントマンは「どうだ俺ってすごいだろう」ということを伝えるが、一流のフロントマンは「あなたはすばらしい」ということを伝える。
メッセージを伝えるときに大切な事は、なにを伝えるかの「What」ではなく、どう伝えるかの「How」を意識する。
相手のレベルに合わせて言葉や伝達方法を変え、もっとも相手が理解しやすい方法を選択する。
同じ日本語でも相手のもっている共通言語を探し出す能力と、それに即座に対応できる豊富なボキャブラリーを身につけておく。
こういうと難しそうだが、つねに相手を思いやって言葉を選ぶというシンプルなことだ。
7.ファッショナブル&セクシー
フロントマンとは人々に夢を与える仕事である。
ナルシズムのために着飾るのとは対極に、自我を消す人は人々を喜ばせるために服を選ぶ。
ポップでカワイイファッションやエレガントでソフィスティケイト(洗練された)ファッション、ときには奇抜なファッションで人々の自由度を広げることも大切な仕事だ。
もちろん体型づくりや立ち振る舞い、女性だったらメイクも表現分野である。
人々の視線を意識することにより、いつまでも若くセクシーでいられる。
さてさて今日のライブでもフロントマン候補生がたくさんデビューした。
11月27日(日)栃木県那珂川町にて
小形健介セルフストーリーオペラ「君にできないことはない」
オープニングアクトは偉大なるサポートマンピアニストゲンさんに伴奏してもらうという恩恵を得たみかんが「My life 」を熱唱した。
みかんは歌いながら感情があふれ出し、涙ぐみながらも観客を魅了する。
つづいてオレのむちゃぶりでゲンさんのピアノソロ曲「祭」を演奏してもらう。
日本中の祭り歌を取り入れ、息が止まるほどの感動に昇華させるゲンさんは前人未到の領域に踏み込んだ。
これはニューヨークのジャズクラブで演奏してほしい。
まちがいなくスタンディングオベーションの大絶賛を浴びることだろう。
るいるいサンタの一人芝居はまさに生命賛歌だった。
るいるい自身が現実の悲惨さを伝える社会運動家から、命の喜びを伝えるアーティストに変わりつつあるすばらしい舞台だった。
それをサポートするゆーゆー(吉岡優)のインディアンフルートがやさしく感情を揺さぶっていく。
ゆーゆー自身も命の喜びを伝えるアーティストに変化してきた証だ。
5歳と7歳の子供を育てるシングルマザー・マツカナが登場する。
オリジナルの名曲「時計」は、3年前に食道癌で亡くなった夫を歌っているが、喪失と悲しみが感謝と喜びに変わる壮大なメッセージを伝えている。
飾らない歌声がすっと胸に染み込み、勇気を与えてくれるすばらしいミュージシャンだ。
では今日の主催者であるAKIRA歌のれん分け栃木グループ「もんとにほー」にでてもらいましょう。
クニコはオレのギター伴奏で「心がくしゃみした朝」を歌った。
うまく歌おうとしないたどたどしいボーカルが切なく胸をかきむしるね。
クニコの旦那ケイジはまだCDにもなっていない新曲「アイヌノンランアイヌ」に半年前からはじめたギター弾き語りで挑戦した。
この無謀さこそがチャレンジの醍醐味なのだ。
ケイジのボーカルは荒削りだが、とてつもない可能性を感じさせた。
素人のくせにオレが3年くらいかかった腹筋発声をもうマスターしている。
ケイジは化けるね。
ケイジにギターを教えたユウスケは「alone」をギター弾き語りで歌った。
ユウスケもちょっと変わった声の持ち主で、どんどん歌い込めば独特なボーカルになるだろう。
マリポンは主催者特権を乱用し、ゲンさんのピアノをバックに「H(叡智)」を手話 つきで歌う。
オレもいろんなピアニストとコラボしてきたが、ゲンさんほど自我を消し歌い手の魅力を最大限に引き出してくれる伴奏者はいない。
マリポンはゲンさんのピアノにのり、おおらかな表現力を身につけていた。
天才カメラマン&アーティストたなかしのを札幌から呼ぶため、主催者たちは知恵をしぼった。
たなかしの作1万円サイン色紙贈呈式がおこなわれる。
1万円サイン色紙って!? と悩んだたなかしのは、表に絵、裏面ネアリカというゴージャスな技にでた。しのは言う。
「もう2度と依頼されないように 、裏にネアリカで、あげまんババア、あげちんじじいと書きました」
ぎゃはは、色紙を買った塚原ケイジ、クニコ、マリポンも大喜びである。
さらにたなかしのが撮る「AKIRAとのツーショット」1万円企画 も、沖口麻紀子、小島貴子、塚原ケイジ、塚原クニコが名乗り出る。
ふう〜やっとフロントマン候補生による「大人の学芸会」が終わり、オペラがはじまる。
セルフストーリーオペラ「君にできないことはない」
原作・朗読: 小形健介
ピアノ: 藤本ゲン
脚本・歌・ギター: AKIRA
1.ウレシパモシリ(ピアノ)
第1章 忍び寄る病魔
2.The Answer (健介オペラバージョン)
第2章 病気の試練
3.Nobody can replace you
第3章 立ち上がる勇気
4.勇者の石(ピアノ)
第4章 社会の壁
5.Hug yourself(ピアノ)
第5章 運命の遠泳大会
6.家族(ピアノ 、健介オペラバージョン)
第6章メッセージ
7.Puzzle
アンコール
8.Hello my mom!(手話 めい7歳)
9.◯えん
10.ありがとう
健介はもう立派なフロントマンに成長したな。
回を経るごとに表現力が増し、凄味さえ感じさせる演者となった。
会場は感動の嵐である。
7歳にして早くもフロントマンの道を歩みはじめたメイは手話で「Hello my mom!」をサポートした。
メイの堂々としたステージと可愛さにもう観客はメロメロだあー。
一流のフロントマンになるには、とにかく場数を踏むことだ。
先に挙げたフロントマンの心得七ヵ条も人前に立つ体験によって身につけていくしかない。
フロントマンは自分が矢面に立つ大変な仕事だが、もっともやりがいのある仕事でもある。
どんな人もフロントマンになる機会はたくさん訪れるのだから、積極的にフロントマンという生き方を学んでいこう。
それはあなたの人生の主役を生きることだから。