New 天の邪鬼日記

小説家、画家、ミュージシャンとして活躍するAKIRAの言葉が、君の人生を変える。


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 熱帯の空気を切り裂いてタクシーは走る。
 小さな村の風景はよくあるアジアの風景なのに、バリ島だけが異質なのは芸術の島だからである。煉瓦色の屋根をした寺院風の建物が多い。
「ここと取引していたよ」
 山師ニックはいくつかの店を指差す。
 道の両側にはみごとなデザインの家具問屋がならんでいた。素朴な華麗さと確かな技術を兼ね備えたバリ独特のテイストだ。石像の店も増えてきた。もはや原始芸術などとは呼べない洗練されたシェイプと現代性を兼ね備えている。同じように絵画、民芸品など、すべてがみやげ物とは一線を画した芸術に近い。
「これらの商品をすべてコンテナに詰めて送っていたんだ。そろそろホテルがあるマスだ」
 ウブドのすぐ南にあるマスは木彫りで有名な村だという。タクシーを降り、なにやら豪華な邸宅にはいっていく。犬が吠えかかるがニックは「タロー、ジロー」などと呼んでなでている。
「メキシコの自宅には犬や猫や鳥やたくさんのペットがいるんだ。妻以外はね」
 ニックはいたずらっぽくウインクすると、奥から管理人が出てきてなつかしそうに抱き合う。
 おお、なじみの宿っつーのもまんざらウソじゃないじゃん。
 はなれにある部屋を見せられてびっくりした。石彫の祭壇が庭に造られ、蓮の花が石の池に浮かんでいる。8畳ほどのリビングには白い大理石の床に太い竹のソファーが置かれ、真っ白いクッションが重なっている。壁にはアンティックのバティック(ろうけつ)染めがかかる。広いベッドルームにはゆったりとしたベッドが二つあり、バスルームをあけるとタブに美しい花びらが浮かんでいる。しかもシャワーとトイレは屋外にあり、開放的な気分に浸らせてくれる。
 むむむ、夢にまで見た大富豪の館そのものなのだ。これで1泊1600円、ひとり800円である。
 極めつきはこの文章を書いている日本語のパソコンまでついているのだ!
 リゾートホテルなど泊まったことのないオレには天国そのものである。
 中庭では20年間ジャワで修行したバティックの先生がバリ人と日本人の生徒さんを教えている。
 ニックとタクシーにのり、ウブドを案内してもらう。ギャラリーや民芸品屋であふれた芸術の町だ。いろいろ声をかけてくる物売りたちもしつこくなく、マイペースなゆるさがいい。
 ニックはわざわざ持ち歩くゴムの蛇でウエイトレスをおどかしたり、ちょっといたずら好きなのがオレに似てる。
 バリ人のガールフレンドの消息を尋ねるため、タクシーでいろんな店をまわった。もう面倒くさいのでその金もまとめて貸してやった。野良犬たちに吠えられながら路地の奥にはいっていく。町の集会所ではガムランの練習をしている。彼らは観光用ではなく、島の大会を目指しているという。いわば「ガムラン甲子園」なので、練習も真剣そのものだ。
 細い路地の奥にはニックの元カノ・コマンの家だ。ニックが60歳、コマンが16歳のときつきあっていたんだって。驚いた家族が出迎える。コマンもあらわれ、ニックと抱擁をした。オレもわけがわからずみんなに紹介される。コマンの兄マデ(25歳)は、フランス人エロイーズ(24歳)と結婚し3ヶ月になる長男が生まれたばっかりだ。祭りや葬式の写真はすばらしく、コマンが流暢な英語で説明してくれた。バリ人が外国人をナンパする方法やバリの生死感から輪廻までディープな話が聞ける。お父さんも闘鶏賭博から帰ってきて、夜中近くまで盛り上がった。
 なんだか着いていきなり、山師ニックのおかげでバリの懐に飛び込んじゃったぞ。
 展開の速さに唖然としながらも、どんな波にでも乗ってやるぜ。
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 バリ行きの飛行機に乗るため、早朝4時に起きねばならぬ。
 どっちみちぎっくり腰が痛くて一睡もできなかったけどね。空港へ行くバスが出るカオサン・ロードへ行くと、昨日買っておいたチケットがない!
 そういえば昨日、スーパーの前で一個ずつラッピングされた15バーツの寿司を買ったとき、財布から紙切れが落ち、拾おうとした瞬間、腰に激痛が走り、ああーれーという間に風に吹かれてしまったのである。まちがいない、その紙切れがバスのチケットだったのだ。「タイの寿司はどうせ変な味だろう」と冷やかしで買った50円の寿司のために2000円のチケットをなくすとは情けない。
 バックパックをよろよろ背負い、一足ごとに「あうっ」とか「ひえっ」とか悲鳴をあげるので、かなり怪しい東洋人に思われたのだろう。ドライバーにいくらわけを話しても取り合ってもらえず、泣く泣くまた2000円を払った。
 午前8時発の飛行機になんとか乗りこむ。
 オレのとなりには、むさくるしい中年の白人が座った。入国のとき申請するビザの用紙が配られたとき、男は驚きの声をあげる。
「ええっ、こんなの前はなかったぞ」
「バリは前にも行ったことがあるんですか」オレが聞く。
「ああ、わたしは住んでいたこともあるし、もう16回目だ。それなのに25ドルもの入国税をとるとはけしからん」
「まあ、確かに高いですけど」
「ところでものは相談だ。わたしは今現金の持ち合わせがない」
 男は60代だろうか、チャールス皇太子がそのままホームレスになったような顔立ちをしている。
「君、この金を貸してくれないか」
 男は情けない笑顔を向けた。
「ええっ、そんな初対面でいきなり言われても」
「わたしはメキシコ住むコロラド出身のアメリカ人だ。グアダラハラに民芸店を出し、バリの家具などを売っている」
 ためしにスペイン語で話してみたら、けっこううまいのでここまでは本当かもしれない。
「地理学の博士号も持っておる。バリ島にアメリカ人のツアーを連れて行ったり、アメリカは保険が高いのでバンコクの高級病院で心臓の手術をさせるコーディネーターをしてるのだ」
 あんたアホやん、こんな山師臭い説明をしたら、よけい信用なくなるのに。
「バリ島のウブドにわたしの行きつけの宿がある。今夜はそこに君も泊まればいいし、明日キャッシングして必ず返す」
 まるっきし信用しなかったが、天邪鬼なオレは「だまされるのもおもしろいじゃん」と思ってしまった。
 飛行機は無事バリに到着し、入国審査でオレたちは親子のように「二人分」と50ドルをはらった。
 空港を出ると、熱帯の空気と突き抜ける青空に圧倒された。タクシーにウブド行きを告げた男は助手席からオレに振り返る。
「あっ、タクシー代もよろしくね」
 うおおー、やっぱ山師だったかあ!
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ひさしぶりー!
地震のモーニングコールに起こされ、早朝5時の電車に乗り、地震で電車がおくれてギリギリジンジンしながら12時のエアーインディアに飛び乗った。
1年ぶりの海外で心ウキウキなのに、とんでもない試練が待ちかまえていたのだ。
出発前に原稿を書き上げるため、この1週間というもの毎日20時間くらい同じ姿勢で1日40枚ペースで書いていた。
飛行機でもずっと座りっぱなしだったため、バッゲージクレームでバックパックをもちあげたとたん、
ぎっくり腰になってしまったのだ。
しかも今回はリュックの底に漬物石のようなドスエフトスキーがはいっていたのだから、たまらない。
階段の上り下り、いすの立ち座り、ベッドの寝起きのたびに悲鳴をあげ、歯を食いしばり、奇妙な苦痛の舞いを踊っている。
前回の中米旅行はしょっぱなから毒サンゴに刺され象足状態で旅をつづけたが、今回のほうがミゼラブルである。
オレの旅の歴史でも最悪のスタートだ。
ただでさえ知り合いのいない異国で途方に暮れていた。セブンイレブンで20バーツ(70円)のビールを買おうか迷っていると「アキラさんですか」と日本語で声をかけられた。
「そ、そうですけど」見覚えのない顔である。
「アキラさんの本はぜんぶ読みました。CDももってます。しかしこんなところで生アキラさんと出会うとは」
名古屋在住の学生ヨッシーとサキのというップルだ。道端に腰掛けてビンビールをラッパ飲みしながら夜中まで語り合った。
ぎっくり腰とひきかえにすばらしい出会いにめぐまれるとは、喜んでいいのか、悲しんでいいのかわからない。
これじゃ陸路の旅が不可能なので、いそいでバリ島行きのチケットをさがした。10数軒の旅行代理店を「コジマ電器とヤマダ電器コンペ方式」で競わせ、最低料金をつぎつぎに下げさせた。これは効くねえ、最初12500バーツ(40000円)だったのが、最後には10500バーツ(33600円)にまで落とさせてしまった。なんにもしなけりゃ、6500円も損するところだ。
はやくも明日の朝8時40分にタイ航空にのり、午後2時に到着する予定だ。
しかしバックパックもてるかな?
つーか、こうやって書いてるうちにまた痛くなってきた。
ぎえっ!(立ち上がった時の声)

PS 徒歩日本縦断に出発した天才アーティスト大介は最南端のはてるま島で警官に捕まり、重労働に耐える。この現地レポートむっちゃおもしろいのでオレがいないあいだ楽しんで。
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