精神科医の著者は生涯を通して「何のために生きるか」という大きな問いへの回答を真剣に探し求めた。
人が生きていくうえで最も必要なのは「生きがい」であり、この世で生かされている幸せを感じ取れるかがポイントとなる。
生きがいは、人生の試練を与えられた場でしばしば生まれる。
もし生きがいを感じられなければ、他者の役に立つ仕事を探してみればよい。
この世でなすべき仕事がわかれば、生きがいは明確になる。
他人や社会への貢献こそが、生きがいの源泉となるのである。
かんたん!ポイント
津田英学塾在学中にハンセン病を初めて知った著者は、
医学部進学を決意し30歳で精神科医となる。
そして同じ人間に生まれながら病に苦しむ人がいるのはなぜか、と思い悩む。
過酷な環境にありながら、
生きる気力を失う人がいる一方で、
希望を見だす患者がいる。
そこに存在する「生きがい」について、
深く洞察を始めるのである。
著者は医師、著述家、母親として八面六臂(はちめんろっぴ)の活躍をする中で、
何かを求めて苦労する行為こそが生きがいをもたらしてくれるものであると気づく。
「苦労して得たものほど大きな生きがい感をもたらす、
ということは一つの公理ともいえる」。
かんたん!ポイント
たとえば実社会においても、
実現不可能に思えるプロジェクトに取り組むことこそが、
生きがいとなるのではないだろうか。
逆に言えば、試練を乗り越える現場のないところには、
生きがいは存在しにくいのである。
「ほんとうに生きている、
という感じをもつためには、
生の流れはあまりにもなめらかであるよりは、
そこに多少の抵抗感が必要であった。
したがって生きるのに努力を要する時間、
生きるのが苦しい時間のほうがかえって生存充実感を強めることが少なくない」
と著者は記す。
著者は生きがいの本質について、
さまざまな考察を加える。
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生きがいには、生存充実感への欲求、変化への欲求、自己実現への欲求、
意味と価値への欲求などがある。
大事なことは、
この世で生かされている幸せを感じ取れるかどうか、である。
現世に生を受けたという僥倖(ぎょうこう)を噛(か)みしめることが、
すなわち生きがいなのである。
人間は自分で勝手に産まれてきたのではない。
たくさんの偶然が重なり、父母、祖父母、
祖祖父母と人間の悠久のつながりの先に生を受けている。
自分が何か大いなるものに生かされていることを忘れてはならない。
ノーブレス・オブリージユという言葉があるが、
この世に生を受けたこと自体が「ノーブル」なのではないだろうか。
生きているとは、何かを行う義務を伴うような、
大きな価値のあることなのだ。
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与えられた使命を全うしながら、
誠実に一生懸命に生きていく。
ここに生きがいの本質がある。
そのためには他人をあまり意識せず
「自分らしさ」をもっと出してもよい。
生きがいは自分の価値観で決まるもので、
のびのびと自由に自分らしく生きていけばよいのである。
今でもアクティブに活動したあとの夜更けに、「これでよかったのだろうか?」という
考えが頭をよぎることがある。
こうした際には、
単純に元気づけるだけの自己啓発本では如何(いかん)ともしがたい。
そこで、迷ったときには本書を播(ひもと)き、
自分へ真撃に問いかけるようにする。
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「いったい自分は何がしたいのか、また何ができるのか?」。
長い間、心の支えとなってきた本書を読むことで、
いつも勇気をもらい安心するのである。
本書は好きな章から読み始めることをぜひすすめたい。
どの読者にもぴったりと合う話が必ずあるだろう。
そこから深く読み進めばよいのである。
本書には、落ち込んで生きがいが感じられないときの処方箋も書いてある。
生きがいを感じられなくなったら、
何か他者へ貢献できることを探してみればよい、
と著者は説く。
自分の身を捧げて役に立てる場がどこにもない、
というのは不幸である。
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周囲へ貢献したときに、
人は必ず幸福になれるものである。
他者を喜ばせ献身できるからこそ、
自分の中に生きがいが生まれるのだ。
「生きがいを感じているひとは、
他人に対してうらみやねたみを感じにくく、
寛容でありやすい」
のである。
そして生きがいには「未来に向かう心の姿勢」がある、
と著者は述べる。
「自己の生存目標をはっきりと自覚し、
自分の生きている必要を確信し、
その目標に向かって全力をそそいで歩いているひと -
いいかえれば使命感に生きるひと」が、
いちばん生きがいを感じるのだ。
確かに、使命感に生きる人は世間に広く知れ渡ることなく、
人目につかず良い仕事をしている人にも多い。
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彼らは他人に認められようとなかろうと、
自分の活動が社会に活き、
他者を支える力になっているのを実感している。
実は、著者は「生きがいを探る」という
精神科医としての本来の仕事を世に知ってもらおうと、
本書を執筆した。
本書は、生きがいという難しい内容を扱っているにもかかわらず、
やさしく丁寧な文体で書かれているため非常に読みやすい。
わかりやすいだけでなく、
内容が極めて深い本なのである。
生きがいという人生の根源にかかわることに対して、
何のてらいもなくストレートに論じる姿は、
まさに感動的である。
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