NHK夫婦別氏

 

 来る1216()に、最高裁判所は「夫婦別氏」と「女性の再婚期間禁止」について、大法廷で憲法判断を含めた判決を行う予定です。その判断前に、マスコミ各社は事前の世論調査を実施しています。この時期に世論調査をすること自体が、最高裁の判断を誘導しようという意図が見え隠れしており、大変問題だと感じています。

 

NHK世論調査は同氏派が50%、選択的別氏派が46% 賛否が二分

 

 NHKは、127()に「夫婦別氏」について、世論調査の結果を報道しています。それによると、結果は次のようなものです。

 

「夫婦は同じ名字を名乗るべきだ」と答えた人が50%、「同じ名字か別の名字か選べるようにするべきだ」と答えた人が46%で、賛否が分かれています。

年代別では、20代から50代までは「選べるようにするべきだ」という回答が6割を超えていますが、60代はほぼ同じ割合で、70代以上になると逆に「同じ名字を名乗るべきだ」という回答が70%近くになり、世代によって答えが大きく異なっています。

「夫婦は同じ名字を名乗るべきだ」と答えた人に理由を聞いたところ、▽「同じ名字を使うことが当然だから」が28%、▽「家族の絆や一体感が弱まるから」が26%、▽「子どもに好ましくない影響を与えるから」が22%などでした。

一方で「同じ名字か別の名字か選べるようにするべきだ」と答えた人に理由を聞いたところ、▽「個人の意志を尊重すべきだから」が59%で最も多く、▽「女性が名字を変えるケースが多く不平等だから」が17%、▽「どちらかの名字が途絶えることがあるから」が13%などでした。

それぞれの名字を名乗るために婚姻届を出さずに、結婚している夫婦と全く同じように生活する「事実婚」についてどう思うか聞きました。▽「とても理解できる」が10%、▽「ある程度理解できる」が49%、▽「あまり理解できない」が23%、▽「まったく理解できない」が12%で、「とても理解できる」と「ある程度理解できる」を合わせると全体のおよそ6割が「理解できる」としています。

http://www3.nhk.or.jp/news/html/20151207/k10010332071000.html

 

 NHKは、世論調査を紹介した後に、同氏派と選択派の二人の学者の見解を紹介しています。一応両論を紹介して、客観性を装っていますが、問題があります。自分自身は夫婦別氏を選択するか、選択制の場合は子供の氏をどうするのか、法改正しないで通称使用の拡大で対応するということについては、何も聞いていません。選択制の中には、自分は選択しないが、したい人がいるのであればさせてもいいのではないかという慎重容認派が多く含まれています。さらにその中には、法改正しないでも通称使用拡大で対応できるのであればそれでもいいと考えている人も含まれています。そのことを聞かないで、選択制支持が46%もいると報道するのは問題があります。

 

 

●毎日新聞は選択制賛成が51%、反対が36

 

 毎日新聞も7()に全国世論調査の結果を報道しています。「夫婦別氏」を選択できるようにすることに「賛成」との回答は51%で、「反対」の36%を上回ったが、選択制が認められた場合は「夫婦で同じ名字」を選ぶと考えている人は73%に上り、「夫婦で別々の名字」は13%にとどまったとのことです。

 

毎日はさらに、同様の調査を以前も実施しており、平成21(2009)12月調査を紹介し、今回と比較しています。6年前は選択制「賛成」が50%、「反対」42%で、男性で賛否が相半ばしていましたが、今回は男性でも賛成が反対を上回ったとしています。

http://mainichi.jp/articles/20151207/k00/00m/010/084000c

 

NHKと同様に毎日も、夫婦別氏の最大の問題である子供が父母のどちらの氏を名乗るか、法改正しないで通称使用の拡大について、聞いていません。また、それを聞くと、選択制の賛成派が減ることは間違いないからでしょう。

 

 毎日は世論調査の名を借りて、世論を選択制賛成に誘導し、そして最高裁に対して、国民も選択制の賛成論が多いので、現行民法を憲法違反にして、夫婦別氏を導入しても大丈夫ですよとでも言いたいのでしょうか。

 

●中日新聞は 選択制賛成多数 7

 中日夫婦別氏

 

 中日新聞はもっと露骨です。インターネットアンケート調査ですので、当然関心がある人が回答しますので、賛成派が多数を占めます。「自分は夫婦同姓がいい。他の人も同性であるべきだ」と男30%・女10%、「自分は夫婦同姓がいい。でも他の人が別姓を選択するのは自由だ」が男53%・女57%、「自分は夫婦別姓がいい。他の人が別姓を選ぶのも自由」が男14%、女29%となっています。

 http://www.chunichi.co.jp/article/living/life/CK2015120702000006.html

 

 ネット調査なので、個別意見が掲載されています。

・「違和感があり、自分ではない感覚があるから」(通称使用の女性54)

・「結婚したときに結婚前の人生全体を否定された気分になった」(女性56)

・「旧姓時代に積み上げてきたものが、ことごとく消えてしまったように感じる」(婿養子男性56)

・「保険や通帳の姓を変更するのが面倒だった。国家資格の免許書き換えも迫られた」(女性45)

・「離婚で再び姓が変わったので、本来離婚を報告する必要のない間柄の人にまで知られてしまった」(女性45)

・「自己の一部分である姓を変えなければいけない苦痛は表現しようがない」「アイデンティティーを喪失してしまう人にとって、同姓を強制するのは人権問題。選択的夫婦別姓制度は誰の権利も侵害しない」(事実婚から出産契機に婚姻。女性34)

・「一番の問題は、同姓で当たり前という固定観念だ」(女性50)

・「政治家は姓を変えない男性が多い。当事者の痛みが分からない」(女性49)

 

家族制度という共同体、社会や国家の在り方の根底に係る問題を、感情論や生活の利便性、個人の問題、ましては人権問題だと言われても・・・と感じてしまいます。

 

●法務省の賛否の見解

 

法務省のホームページには、夫婦別氏についてのページがあります。http://www.moj.go.jp/MINJI/minji36.html

 

そこを読むと、なぜ夫婦別氏を導入しなければいけないのかという重要な立法事実について、次ぎのように書かれています。(婚姻制度等の見直し審議に関する中間報告及び報告の説明(平成79月)])

 

①女性の社会進出が進むに伴って、婚姻によって氏を改めることが社会生活上の不利益、不都合をもたらす事態が増加してきておりこれを解消すべきである、

②現代社会における多様な価値観を許容する観点から、夫婦がそれぞれ別の氏を称することを希望する人々には、その道を開いてよい、

③個人の氏に対する人格的利益を保護すべきである

④現行制度は、形式的には夫婦が対等な立場で氏を決定することになっているが、社会の実態は約98%の女性が婚姻によって氏を改めており、実質的な男女不平等を生じている。

 

一方、それに対する消極意見の理由も、中間報告には挙げられています。

①夫婦同氏制度は、我が国の伝統であり、社会に定着している。

②夫婦別氏制は、婚姻の意義を薄れさせ、家族の秩序を維持する上で好ましくない。

③夫婦別氏制の下では、子の氏の決定に関する問題が生じる。

④別氏であることを希望する人は、現実に極めて少ない。

⑤婚姻により氏を改めることの不利益は、婚姻までの氏を通称として使用することにより、回避することができる。

 

以上の両論を読み比べて皆さんはどう思われるでしょうか。法務省が検討してから20年近くが経っていますが、本質は変わっていないと思われます。改正理由は、個人的理由としか感じられません。今生きている国民だけでなく、将来の国民(子孫)にも大きな影響を及ぼす民法という重要法案を改正する理由にはなり得ないと思います。

 

●選択的夫婦別氏制度は家族制度の弱体化へ

 

八木秀次麗澤大教授は、「別姓の容認は家族の呼称の廃止を意味し、家族の一体感をも損なうことになる。」と発言しています。

http://www.sankei.com/column/news/151117/clm1511170001-n1.html

 

秦郁彦(現代史家)先生は、「海外でも夫婦に同姓を義務づける国はほとんどなくのくだりだ。」「そもそも全国一律の戸籍制度を完備してきた国は日本以外はほとんどないから、次元の違う制度比較は空論になってしまう。」 的外れの論旨が多いと発言しています。

「問題の核心は親子別姓」と喝破しています。

 http://www.sankei.com/column/news/151125/clm1511250001-n1.html

 

 家族制度がなくなっていいと思っている日本人はいないと思います。夫婦別氏の導入は、例え選択制であっても、「氏」という家族の呼称の廃止となり、必ず親子別氏となって、家族制度の弱体化につながります。私は、通称使用拡大をしつつ、法改正には慎重にすべきと考えています。中日新聞の回答者が言うように、私が政治家として法改正に慎重なのは「固定観念」でも「痛みを感じない」からでもありません。家族という共同体、社会や国家の在り方の根底の問題については、軽々に判断できないと考えているからであり、このような問題は最高裁の司法判断にはなじまないと思います。16日の最高裁の判断は慎重な対応を望みたいと思います。

 

 

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