オレ達が次にバスから降りた場所は、湯郷(ゆごう)温泉という場所であった。
『はい、あの~、間もなくですな…ですね、湯郷温泉にて足湯体験をしていたらくんですけろ、はい、え~とですね、バスを降りられますたらでつね、え~、足湯の人…あの~、職員の方がですね、そこで待ってて下さってますんで、え~とそうですね、はい、ついて行ってもらう…みたいな感じでよろしくお願いいたします、はい。
一応温泉ですきゃらね、足湯だけでもポカポカして来るんじゃないでしょうかね、はい。
あ、それでですね、タオルを持参していらっしゃる方もいらっしゃるんじゃないかとは思いますぐぁ、もしあの~、タオルをお持ちでない方がいらっしゃる様でいらっしゃったら、あの~、あちらの方でですね、タオルを百円で販売しておりまするんで、よかったらあの~、はい、ね?はい、ご購入いただけたらね、よろしいかと思い…ます。
あ、あの~、購入いただいたタオルは持ち帰れますのでね、はい、あの~、よかったらどうぞ、はい』
何を言ってるのだろうか、このお姉ちゃんは?
それくらいの事はそっちの方で用意しとくのが普通だろうが?
大体誰が足湯で使ったタオルを持ち帰るというのか?
それくらいの疑問は足湯なんかやった事無いオレだって分かるぞ、大丈夫か?HIS。





それにしても今回は大人数で来てホントによかった。
何故かというと、オレ達意外の参加者は全て二名一組で、予想外にもみんな若いのである(カップルは二組だけで、後は全部女の子)。
そうなるとどうなるかというと、年寄りの団体みたいに和気あいあいとした空気ではなく、何と言うかこう…とにかくヒソヒソとして空気が悪いのだ。
(危ねぇとこやったわ…こんなツアーに京ちゃんと二人で来てたら、ひたすら寝るしか無いやんけ。
いや待てよ?意外とオレの斜め前の席に座ってた女子二人と仲良くなって、アイツも8年振りに彼女が出来てたかも……いや、あの女の子達じゃ無理やな。挨拶した時の愛想は良かったけど、見た目が何かジャガ芋とウイロウみたいやったもんなぁ。
んじゃ、イサオと二人で来てたら……無いな、それは無い。確実にみんな逃げてまうやろ、普通の人なら。
それに、もし万が一ナンパに成功したとしても、その女は地球人じゃねぇな、間違いなく。
ヤベ。想像しただけで、また腹具合悪くなって来たわ…)

周りには川と田んぼくらいしかない辺鄙な立地。
ま、田舎のドライブインというのは伝統的にこうなのだろうが、足湯の隣にある施設には簡単な食事が出来る食堂と土産屋。それに立ち食いうどんのコーナーと、田舎に行けば行くほど何故か定番化していくフトクリーム。
ま、出来る事なら何でもやろうと言う姿勢は分かるのだが、田舎のドライブインというのはどうしてこう一々センスが無いのだろう?
漬物だの煎餅だの蒟蒻だの、そんな何処の田舎にでもある様なもんは他所の店に任せて、どうせやるならもっと個性出して現実的に行こうや。
いつまでも「おばあちゃんの漬けた〇〇漬け」みたいな事を看板に書いてるだけじゃ客なんか来ぃひんぞ?
そや、歌作ろ、歌。
あの~ホレ、ニンニク卵黄のCMの、「ば~あちゃんのくっちグセ♪」みたいなヤツ。
でもアレ、「ばあちゃんの口臭ぇ」に聞こえるしなぁ…やめといた方がいいか。
んで、ここの店ん中って、おばあちゃんじゃなくてオバハンばっかりやんか、おばあちゃん出さんかい!おばあちゃんを(婆さんマニアか)。
それからな、おばあちゃんが漬けた漬物が真空パックされてたらアカンがな、色気無いし。
おばあちゃんが漬けた本物の漬物っつーのは臭くてナンボや。こんな無臭で、しかも今時の居酒屋みたいな洒落たパッケージではアカン。ウチの死んだ婆さんなんか、カタカナしか書けへんかったぞ?
どうせならもっと現実的に行かな、現実的に。
例えばホレ、せめて支払いの時だけでも奥で寝てる婆さんを起こして来て、糠床掻き混ぜたそのままの手でお釣り渡すとか…いや、そりゃちょっと勘弁して欲しいな。
とにかくこれじゃ看板に偽り有りやんけ、婆さんを利用した詐欺は良くないぞっ!
全国ババ連から訴訟を起こされる前に改善しろ!
(しかしひでえな、こりゃ…)
土産屋の前を走る国道沿いにアホほど並べられた販促旗を見ながら、ここもそんなに長くは続かんだろうなとため息をつくオレ。
そのセンスの酷さをいくつか紹介しよう。

出たよ、ラーメン。
しかも昨今のラーメンブームの中、今更「B級」は無いやろ。やり直し!

ま、言いたい事は容易に想像つくけど、略しただけかい!
もっとひねってひねって!

こちらはオニオンを日本語にしただけ。
大人気の割には店内に山積みのまま残ってた。
ま、所詮玉ねぎ。

だんだん可哀相になって来たんで、京ちゃんに呼び込みをやらせてみた。
が、もちろん逆効果。

そもそもの原因はこれか。
そんな館に大歓迎されても、オレなら全力で無視する。

あまりのふがいなさに、バスの中で不機嫌になるイサオ。
が、レベル的には土産屋の中に設置してあったおみくじ自販機と同じかそれ以下。

移動中、ずっと背後に寒気を感じると思ったら霊が写っていた。
守護霊じゃない事だけは断言出来る。


