金融市場での地位向上を目指してきた中国政府が、新興国株式の「エリートクラブ」に落選したことに落胆している。株価指数開発会社の米MSCIは6月中旬、中国本土で上場する株式を、優良銘柄で構成する「新興国株指数」に採用することを見送った。市場改革の遅れが問題視されたためだ。折しも欧州主要国も中国に改革進展を求める強硬姿勢に転じており、中国当局は改革断行に向けて外堀を埋められつつある。

地位向上に取り組んでいた習近平政権には痛手となった」(ブルームバーグ)

「過去6カ月間、MSCI側が(中国に)抱く懸念に対応してきた中国政策当局に打撃だ」(ロイター)

6月14日、MCSIが年に1度、実施する新興国株指数の構成銘柄の見直しで、上海、深●(=土へんに川)両市場に上場する人民元建て株式「中国大陸A株」を採用しないと発表すると、海外メディアはそんなふうに伝えた。

MSCIは投資家向けに、優良な株式銘柄を選定して集めた「指数」を作成する会社。新興国株からえりすぐった銘柄で作る新興国株指数には、すでに香港市場に上場する一部の中国株が採用されているが、中国大陸A株は選定されていなかった。

新興国株指数に組み入れられれば、安心できる投資先だと判断した機関投資家らから、膨大な資金が指数の構成株式に流れ込む。その規模は「10年間で数十兆円」(アナリスト)ともいわれる。中国にとって、労せずして大陸企業への投資が得られることになる。

過去2年の見直しでも、中国大陸A株は同指数への選定に落選した。市場改革が進んでいないと判断されたためだ。

MSCIは今回も改革が十分ではないと判断し、見送りを決めた。ロイターによると、MSCIのグローバル調査責任者のレミー・ブリアンド氏は、「市場アクセスを改善するため、中国当局により多くの重要な改革が進められた」と認めながらも、「こうした措置の有効性を評価するにはもう少し時間が必要」と述べ、一層の改革が重要だとの認識を示した。
中国政府は今年のMSCIの見直し作業に向け、周到に準備を進めてきた。昨年の落選後、MSCIとの作業部会を設置すると表明。部会では、MSCIが抱く「懸念」に対応して、どのような市場開放措置が求められているのかを議論した。

記憶に新しいのは、昨年8月の中国市場の混乱が、世界の主要株価を大きく押し下げた際の対応だ。中国当局は急場の対応として株式の売買停止を実施。だが、それによって上場銘柄の半数以上の売買が停止され、投資家の動揺に拍車をかけた。

「指標への中国大陸株の組み入れは歴史の必然だ」。中国証券監督管理委員会(CSRC)のトップ、祁斌主任は、MSCIの判断を控えた6月上旬、そう豪語し、売買停止を抑制するための措置など、今年に入り急ピッチで進めた改革の成果に自信を示した。

中国本土A株の採用に期待が高まっていただけに、落選決定への失望も隠せない。採用が見送られ、祁氏は15日、「理論的には、国際的な指標に、このような大型市場が含まれていないとすれば、その指標は不完全だ」と強弁するしかなかった。

中国の経済金融政策の担当部門は、人民元の国際通貨化と並び、MSCIによる中国本土A株の選定を重視してきた。国際通貨基金(IMF)は昨年11月、人民元をドルやユーロ、円などと並ぶ「特別引出権」(SDR)構成通貨として採用すると決めた。中国が主導するアジアインフラ投資銀行(AIIB)も一定の進展をみせていただけに、新興国株指標への落選は手痛い後退となる。

さらに、中国当局にとって、今年の年末に向けて別の関門が待ち構えている。世界貿易機関(WTO)による中国の「市場経済国」認定の是非だ。

中国は2001年にWTO入りを果たしたが、当初の15年間は「非市場経済国」として扱われることになり、貿易相手国から反ダンピング(不当廉売)課税の制裁措置を受けやすい立場に甘んじてきた。12月には、そうした不利益を被らなくて済む「市場経済国」に認定されるはずだった。


ところが、欧州議会は5月、市場経済国への移行に反対する決議を採択した。決議は定数751の議会で賛成546票と圧倒的多数で採択され、国有企業改革などが進まない限り、反ダンピング措置が必要だとした。

背景には、近年、問題となっていた中国による鉄鋼の生産過剰とダンピング問題が改善されていないことがある。鉄鋼の生産過剰により、欧州各国で鉄鋼メーカーを中心とした工場閉鎖と雇用悪化につながっており、産業界が危機感を強めていた。

経済的な恩恵から中国との関係強化を進めてきた欧州勢も、ここにきて、供給過剰を解消する構造改革の必要性を中国側に強く求める姿勢に転じてきている。市場経済国認定は、欧州連合(EU)の執行機関である欧州委員会が前向きな方針を示してきた。反対決議の採択によって、欧州議会側がこれを牽制した形だ。認定には欧州議会の承認が必要となるため、欧州委員会側も無視できない。

「EUが鉄鋼をめぐる新たな対中制裁を示唆」

ロイターが6月下旬にブリュッセル発で報じた記事は、EU側が中国の経済改革の遅れを深刻に受け止め、鉄鋼以外を含む資源系分野に広く「通商防衛措置」を採る可能性があるとのEUの内部文書をすっぱ抜いた。

記事は、こうした対応方針は欧州委員会によって承認を得たものだと伝えており、中国の市場経済国認定に理解をみせてきた欧州委員会も、年末の認定判断に向けて対中改革圧力を高めているもようだ。

市場経済国の認定問題に、英国によるEU離脱問題も影を落とす。AIIBの設立に際し、英国は米国の反対を押し切って原加盟国に名を連ねたほど、欧州内で指折りの中国の「良き理解者」だった。外交関係者の間では、英国は中国の市場経済国認定を「無条件で支持した唯一の国」(米紙ワシントン・ポスト)とみられているという。

その英国が6月下旬の国民投票でEU離脱を決め、EU内での英国の影響力低下は避けらそうにない。中国は通商問題をめぐる英国という支援者を失いかねない状況にあるわけだ。

中国が12月に市場経済国の認定を得られないことになれば、“MSCIショック”を上回るほどの失態となる。人民元の為替市場、国有企業の優遇、統計の透明性や市場アクセスなど、中国当局の眼前には多くの改革項目が並んでいる。海外の目を意識しながら、中国はかつてない改革圧力にさらされることになる。
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   防衛省は16日、中国海軍のドンディアオ級情報収集艦1隻が沖縄県の北大東島周辺の接続水域に侵入したことを確認したと発表した。これを受け、外務省の金杉憲治アジア大洋州局長が劉少賓駐日中国公使に対し懸念を伝達した。防衛省は情報収集と警戒監視を続けている。

防衛省によると、中国の情報収集艦は16日午後3時5分ごろ、沖縄県の北大東島の北から接続水域に入り、約55分後の4時ごろに北北西から離れたという。沖縄周辺海域で実施中の日米印海上共同訓練「マラバール」に参加していた3カ国の艦隊を追跡する形で航行した。海上自衛隊の護衛艦「ひゅうが」が確認した。海上警備行動は発令されなかった
防衛省幹部は「中国は日米印の一連の共同訓練を継続的に情報収集している可能性が高い。特異な航行だ」と警戒感を示した。

中国海軍は9日未明、尖閣諸島(沖縄県石垣市)の久場島と大正島の間を北上するロシア艦隊の動きにあわせるように、ジャンカイI級フリゲート艦を接続水域に侵入させた。また、15日未明にも今回と同一の情報収集艦1隻が、インド艦艇2隻を追尾する形で鹿児島県の口永良部島付近の領海に侵入している。

中谷元(げん)防衛相は記者団に「引き続きわが国周辺海域の警戒監視活動に万全を期す」と強調。「中国側には再三、懸念を申し入れている。事態をエスカレートさせることがないよう、しっかりとした対応を望んでいる」とも述べた。





 

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防衛省は15日、中国海軍の艦艇が鹿児島県の口永良部島周辺の領海に入ったと発表した。同海域の領海に中国艦が入るのは初めて。中国艦はすでに領海を出ている。自衛隊に対して海上警備行動は発令されていない。政府は警戒監視を強めて情報収集を進めるとともに、中国の意図の分析を急いでいる。

防衛省によると、15日午前3時30分ごろ、中国海軍のドンディアオ級情報収集艦1隻が、口永良部島西方の領海を南東に進むのを海上自衛隊のP3C哨戒機が上空から確認した。同艦は約1時間半後の午前5時ごろ、鹿児島県の屋久島(鹿児島県)南方から領海を出た。海自は中国艦に「日本の領海に入っている」と無線で警告した。

防衛省幹部は中国の狙いについて「10日から同海域で行っている日米印共同訓練『マラバール』に参加しているインド艦艇2隻を追尾した可能性もある」との見方を示している。






政府は、今回の動きが国際法上認められる「無害通航」に当たるかどうかの分析などを急いでいる。中谷元防衛相は記者団に「非常に例が少ないことだ。今後も中国艦艇の動きに注目して警戒監視をしていきたい」と述べた。

中国海軍の動きをめぐっては、今月9日にジャンカイI級フリゲート艦1隻が尖閣諸島の久場島北東の接続水域に入ったのを護衛艦「せとぎり」が確認されている。外務省が中国側に抗議していた。


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