2011-11-19 22:59:48

UMD®Passport はなぜ有料なのか

テーマ:業界話
今月11日、
ソニー・コンピュータエンタテインメント(以下SCE)より
UMD®Passport サービスが発表されました。

UMD®版ゲームを持っていると、認証措置を経たのちに
同じゲームのDL版が格安で買えるというこのサービス……
ネットでは好意的な評価も見られる一方、
「格安とはいえ(既にUMD®版を持っているのに)
 DL版をもう一回買わせるのは変ではないか?」
「二重課金でがめつい」
といった声も少なからず散見されます。

エンドユーザーの立場として考えた場合、正直、
こうした批判をしたくなる気持ちもわかります。

このサービスの目的は言うまでもなく

「UMD®版を買ったかDL版を買ったかで
 VITAでプレイできる/できないが分かれてしまう
 問題に対する救済措置」

なわけで、そうした視点から考えれば、
タダでサービスを提供するのが順当ではないかという意見も
それほどおかしい感覚ではないでしょう。

実際、ウチの会社でも「値段0円にしたら?」という案があり
結構真剣に検討を重ねました。
ただ、最終的には有料にすべきという結論を出しています。

このサービスが有料にならざるを得ない理由は何か?
今日はその辺の考察をしていきたいと思います。

※あくまで私の考察なので、これが理由の全部とは限りません。
 一業界人の個人理解として参考程度にどうぞ。

X          X          X          X

<前提:値段は誰が決めている?>

考察を始める前に前提を一つ。

UMD®Passport の売値は500円~1000円の間に集中していますが
この売値は誰が決めたかといえば、
当然、販売者である各パブリッシャーが決めています。

A社のソフトであればA社が売値を決めているわけで、
間違ってもSCEが勝手に値段を決めたり、もしくは
「この値段幅で決めるように」といった制限を課したりといった
事実はありません。まず、この前提は抑えておいてください。
(ちなみにライセンシーに対して売値の制限を課す行為は、
 日本では独占禁止法に抵触する可能性があります)


では、いよいよ本題として、UMD®Passport が有料にならざるを
得なかったいくつかの理由を考えていきたいと思います。


<理由1:売却対策(全社共通)> ←多分最大の理由!

仮に UMD®Passport がタダだったとすると、
サービス認証を受けたのち、中古屋にUMD®版だけを売れば
ユーザーはゲームを手元に残したまま
売値だけを丸々利益として得ることができてしまいます。

つまり、本来「UMD®版を持っている人を対象」とした
サービスのはずなのに、後生大事にUMD®版を売らないで
くれている人が損をすることになってしまうわけです。
こうした売却行為を推奨するようなサービスはメーカーとして
提供できるはずもなく、ゆえに有料とならざるを得ないわけです。

ちなみに、この理屈を成立させるためには

UMD®版の中古買取価格 < UMD®Passport による売値

である必要があり(そうでないと売った方が得だから)、
UMD®Passport の売値が500~1000円であることを考えると、
比較的新しいタイトルでは成立していないことになります。

そのため、この視点に立ってだけ考えた場合には、
「高いどころかちょっと危険な値段設定では?」
というタイトルもあるかもしれません。
自分は基本的にゲームを売らない人間なので
タイトルごとの今の売却相場はよくわからないのですが……
小売関係者の方なら、その辺の判断がつくかもしれませんね。


<理由2:サーバー保守に必要(SCE限定)>

UMD®Passport を提供するには
SCEがサーバーを対応させたり保守点検していく必要があり、
その実費くらいは回収しないと赤字になる……という理由です。

ちなみに500~1000円という値段が実費として適正かは不明です。
ただ、ライセンシータイトル(=SCE以外のタイトル)の場合は
SCEに入ってくるライセンス料は売価の一部だけにすぎないので、
500~1000円を丸々充填できるわけではないことも念頭に置いておいてください。

とはいうものの、これはSCEが
「赤字であろうとユーザーに叩かれるよりはいい!」
と経営判断すれば乗り越えられる壁でもあるので、
有料の理由としては1よりは弱いものかもしれません。


<理由3:事実上の値段強制になってしまう(SCE限定)>

仮にSCEが自社の内製ソフトを0円で統一させてしまうと、
他のライセンシーにも事実上0円を強制することになります。
(例えば、SCEのタイトルがそろって0円なのにB社が1000円だったら、
 大方のユーザーは「SCEエラい、B社がめつい」と感じます。
 なので、B社も0円にせざるを得なくなる……という理屈です。)

UMD®Passport は、SCEにしてみれば
儲けを出すことを目的としたサービスではありませんが、
他社にまでその理念を強要することは好ましくなく、
率先して「0円が当たり前」みたいな風潮は作れない……
そう、SCEは判断したのかもしれません。


<理由4:SCEに迷惑をかけてしまう(SCE以外限定)>

「前提」でも言ったように、値段を決めるのは各パブリッシャーなので
やろうと思えば「このタイトルは0円!」と設定することは可能です。

ただ、通常、売上の一部はライセンス元のSCEに行くわけで、
0円に設定してしまうと(自分のところはいいとしても)
SCEにすらお金がいかないことになってしまいます。

これは<理由2>においてSCEを苦しめることにつながるため、
その辺空気を読んで「無料にはできない」と判断した会社もあると思います。

X          X          X          X

自分の方で思いつく理由はとりあえずこんなところですが、
もしかしたら、他にも理由はあるのかもしれません。

そのようなわけで、
「二重課金だ」という人の気持ちはとてもわかるのですが、
様々な事情を鑑みれば有料はやむを得ないのかなと思います。

ただ、どれもメーカー側の事情によるものであり、
ダイレクトにユーザーを向いた理由というわけではないため、
そこをどう感じるかは皆さんの自由です。

コメント

[コメントをする]

1 ■なるほどー

なるほどー、SCEが0円にすると他メーカーまで強制してしまう事になる、納得です
このサービス新作は対応しないんでしょうか?

2 ■値段の問題よりも…

そもそもDL版が提供されていないPSPタイトルはどうなるのでしょうか。もしそれが提供されたらPSPgoにも適用されるのでしょうか。これもパブリッシャーの判断しだいですかねぇ。

3 ■Re:なるほどー

>おーさかさん
んー、サービスが新作に対応するのかどうかは
私にもわからないです。ごめんなさい。

「初めからDL版買えばいい」と考えればいらないことになりますが、
UMD®版発売後しばらくたってからDL版が出るパターンもあるので
今はまだ何とも言えないですね。

4 ■Re:値段の問題よりも…

>Hayward_NZさん
後からDL版が発売された場合は、基本的には、
そのDL版はPSPgoでもプレイできるはずです。

ただ、UMD®Passport はUMDの認証が前提となっているため、
PSPgoしか持っていない人はそもそもUMDを認証させられず、
割引のない状態で初めからDL版を買うしかないでしょう。

PSPとPSPgoを両方持っているなら、ちょっとまわりくどいですが、
まず両機を同じアカウントとして登録しておき、
PSPでUMD®版を認証させ、UMD®Passport で割引購入した後に
それをPSPgoにダウンロードしてプレイする……
ということは可能だと思います。

5 ■騒ぐ事でもないと思う

「PSVitaでPSPのソフトを遊べる権利」みたいなもんだと思えば、数百円程度は妥当な額だと思いますけどね。
これを高いと思うのなら従来通りPSPで遊べばいいわけですし。

6 ■Re:騒ぐ事でもないと思う

>匿名さん
ええ、それも一つの考え方だと思います。

多分、GBA→DSといい、GC→WIIといい、XB→360といい、
「前世代ハードとは互換性があるもの」というのがある意味お約束になりつつあったので、
違和感を感じる人も多いのでしょう。

(もっとも、PS2→PS3とか、微妙な前例なら既にありますが……。)

7 ■転送料や管理費、DL対応費用が必要というのは納得です

理由1の書き方は、ちょっと「?」と思ってしまいます。

追加負担はUMD非売却派のためと書きつつも、結果的に追加負担を強いています。
しかも、0円の場合には非売却派が相対的に損するだけなのに比べ、追加課金の場合には両者が絶対的に損をします。

DL版への移行に追加費用がかかることは反対ではないですが、「ユーザのために」みたいな表現が気になりました。

8 ■Re:転送料や管理費、DL対応費用が必要というのは納得です

>なごやんさん
いえいえ、最後の方でも書いてますが、
「ユーザーのため」というよりは
「メーカーのため」の対策だと思います。
誤解を招く書き方になっていたなら申し訳ありません。

「UMD非売却派ユーザーに損をさせない」というよりは、
「UMD売却派ユーザーに得をさせない」意味合いが強いです。
事実上、手元にソフトのコピーが残るにほぼ等しいので、
0円提供は業界(メーカー側)としてはなかなか難しいと思います。

UMD認証した瞬間UMDが破壊される(権利がコピーではなくムーブされる)んだったら
0円でも一向に差しつかえないんですけどね……。
(実際にはそんなことできないですし、したらしたで問題になるでしょうが。)

9 ■無題

どれもそれらしい理由ではあるかもしれませんが
一番の核心的理由は

本来新品でソフトを買ってないユーザーが中古から
UMDパスポートに登録されていないUMDソフトを購入して
それをUMDパスポートに登録すれば
メーカーとしては実質タダでそのユーザーにソフトを配信せざるを得なくなる事態になるからだと思いますよ

10 ■Re:無題

>名無しさん
んー、どうでしょう。

メーカーにしてみれば、中古UMDを買われた時点で既に機会損失を被っているので、
同じユーザーが無料でDL版まで手に入れるかどうかは
そこまで重要視してないような気もします。

ただまぁあくまで私の感覚なので、メーカーによっては
名無しさんのように考えたかもしれませんね。

ミソなのは、サービス開始から時間が経つほどに、
中古UMDで認識登録できる保証がなくなっていく…ということだと思います。
UMD Passport目的で中古UMDを買う人が仮にいたとしても、
時間が経つほどにその行為は博打性が高まっていくことになります。

11 ■あまり同意できません・・・

PSP->Vita における仕様変更 (UMD削除)は
SCE の戦略的な事情に過ぎないのでは?

そのためのコストを消費者に求めるのは
どのような事情であっても SCE のエゴに過ぎないと思います。

パブリッシャー事情についてはご指摘の通りですね。

12 ■Re:あまり同意できません・・・

>64男さん
いや、仰られることもわかりますよ。

64男さんのような意見に対しては、
よく「互換性があること自体本来必須ではないのだから、文句をつけることではない」
といった主旨の反論をされる方もいらっしゃいますが、
「VITAに下位互換性がある」ということ自体をハードのアピールの一材料としている以上、
その理屈は成り立たない(SCE側の戦略上の都合であると言える)でしょうね。

上で書いた通り、私は「現実的には仕方ないよ」と考えている立場ですが、
64男さんが仰られるような感覚自体は否定はしませんよ。

13 ■なるほど

「なんで(UMDで)買ったソフトをSCEの都合で更にお金取られるの?」って思ってました。
でもよくよく考えると無料ダウンロードにすると確かに中古屋に売った利益はそのままそのユーザーのものになってしまいますね。
100%納得とはいかないものの、この説明で理解はできました。
なるほど、そういうことで有料なんですね。

14 ■Re:なるほど

>Riggsさん
とはいえ、本当はVitaに外付けUMDリーダー(有料)がくっつけば
それが一番スマートな解決だったとは思うんですけどね。
技術的に難しかったのかなぁ……。
(UMD Passport始めちゃった今となっては、どの道もう出せないですが)

15 ■とても勉強になりました。

高いソフトでは1500円~2500円という価格設定はボッタクリかと思っていましたが、中古の買取価格という観点から考えると納得でした。
(それでもベスト版で元価格が安いもの等高いなぁと思うソフトもありますが・・・)
これから対応作品が増えて、ある程度古い作品で新品販売がない若しくは新品が安いソフトの価格設定については低価格に抑えてくださることをメーカーにお祈りするしか無いですね。

UMD Passport始めちゃいましたが、外付けUMDリーダーがベストですよね。
PSPが販売終了した時にでも販売されませんかね?
技術的にVitaに外付けUMDリーダーが無理なら、個人的にはPS3用でもいいんで出して欲しいです。
トルネの外付けHDDのようにPS3本体にUMDのライセンス登録して、他のPS3で認証されたら古いPS3のライセンスが無効になる仕様にすれば、中古対策も十分かと思います。
それでも中古で買ったユーザーがPS3に登録しなかったり、なかなか店から売られなかったときにはユーザーが得してしまいますが、現状でもVita持ってない知人から借りて登録して格安で購入できるわけですし、落とし所かと。

16 ■Re:とても勉強になりました。

>閑々さん
私も外付けUMDリーダーがわかりやすくて一番だと思っています。
Vitaには独自端子とはいえ一応USBついてますし、何が壁だったんだろう…。
いずれにせよ、Passportを始めた今となっては、なかなか難しくなってしまったでしょうね。

PS3用リーダーも面白いアイディアですが、
認証させるためだけにリーダー買ってくれ…というのは少し厳しいかもしれませんね。
(そのままPS3でPSPがプレイできようものならバリューあるんですが…)

コメント投稿

一緒にプレゼントも贈ろう!

トラックバック

この記事のトラックバック Ping-URL :

http://trb.ameba.jp/servlet/TBInterface/aithera/11083583634/fb37ce88

Amebaおすすめキーワード

    アメーバに会員登録して、ブログをつくろう! powered by Ameba (アメーバ)|ブログを中心とした登録無料サイト