「KING様のお仲間の中に彼がいると確信できたら、協力してください」
「なんか俺、信用されてないな」
「だってもし、彼がクアドラ様の元に戻っていたら。クアドラ様に期待される彼のこと、修吾さん、利用するでしょう? そういう戦略に、巻き込みたくないんです」
「人のナンバリングが読めるだけで偉そうにしている、それ以外にはなんの役にも立たない『ぞろ目』のために、君の大切な人を利用する? そんな非情な男に思われていたとは心外だな」
「クアドラ様の影響力は已然として、KING様を支持する人の力をも凌ぎます。修吾さんもそれをご存知だからこそ、クアドラ様を取り込みたいとお考えなのでしょう?」
「それ、KINGが聞いたら激怒するよ?」
「KING様は、所詮12歳のお子様です。クアドラ様の豊富な経験にかなわないことだってありますよ」
「その幼い子供に仕えてる身だってこと、忘れてないか? トップの悪口を言うそのお口には、おしおきしないと駄目だな……」
道ばたに車を停めると、修吾は助手席で身を固くする小笠原美咲の身体を力任せに引き寄せ、唇を重ねようとした。
「──まいったな」
触れるかどうか、ぎりぎりの距離を保ったところで、速水修吾は自らの欲望を放棄した。
「そこまで義理堅いんだ、彼に」
「修吾さんは見た目によらず、浮気性ですよね。紳士だなんて嘘ばっかり。理緒さんに言いつけますよ?」
「悪かった、だからこれ、外してくれないか?」
懇願して、ようやく、唇を覆いつくした黄金色の透き通ったガード膜を外してもらう。
「さすがだね、HOLY。ナンバリングどおり、君は心も身体も神々しく神聖なわけだ」
「修吾さんこそ。HACKなんて怖いナンバリング持ってる人が直属の上司だなんて、最低。今度またこんなことしたら、絶対理緒さんに告げ口しますからね!」
「KINGにぞっこんな理緒は、俺にとっては妹みたいなもんなんだけど?」
「その妹みたいな理緒さんは、私を心底嫌ってますよ? 私に手を出したら、理緒さんはきっともう、修吾さんと口もきいてくれなくなりますよ? 覚悟してます?」
「──俺の負け。理緒には言うな」
「抜けてますね、修吾さん。私を嫌ってる理緒さんが、私の告げ口を聞くと思います? 無理ですよ、会話が成り立たないんですから」
車を降りて、してやったりの顔をした小笠原美咲の視線が、ふと横に逸れる。
修吾を避けたときの身の強ばらせ方とは異なる、緊張を伴った様子に、速水修吾は彼女が誰に気づいたのかを悟った。
「よう、ナオキじゃないか」
確執と契約、そして(5)へ


