2008-08-08 21:53:23 aguadeafricaの投稿

道なき道の激道中 9

テーマ:旅の話
ティッシュともぼろ布ともつかないものをつめたままの

この機械工。

実はなかなかの腕利きだった。


溶接機を持ってきたかと思えば

すぐに車の下にもぐりこんだ。


あっけないほど簡単に応急処置は終わった。


なんとか明日の見通しがたったところで

俄然おなかが空いてきた。

薄暗い食堂に戻る。


「何か食べるものある?」

「Caril de Cabrito」

カブリート?







カブリートのカレー?




「メェー メェー」


食堂のおばさんが笑いながら、

手であごをさわっては下にのばす。



ヤギだ。


道路わきに放し飼いされていたあのヤギ達だ。

あのヤギ達は食用だったのだ・・・・



「・・・他には何かある?」


「これだけよ。」

そういって、おばさんは壁にぶら下げられたスナック菓子の子袋を指差した。


「じゃ、カレーを」 

しぶしぶ、恐る恐る口に入れたヤギの肉は

やわらかく、クセのない牛肉のようだった。

それでも、なぜかなるべく肉を避けて

ソースとしろご飯だけを口に入れる。


道路わきにいたヤギ達が

目の前にチラチラするのだ。


チラチラしていたのは

ヤギだけではなく先入観もだった。



食べるものではないという思い込みが

気もそぞろに食事を終わらせてしまった。


食が満たされると

今度は寝場所の心配が頭をもたげてきた。
2008-07-02 23:04:51 aguadeafricaの投稿

道なき道の激道中7

テーマ:旅の話







・・・・死ぬまで



その男の言葉がストッと胸に落ちるほど

目の前の男たちは転がり続け、殴り続けていた。



2人を囲む他の男たちは

ただ静かに立っている。



日は沈みきって

食堂の電気がもれてくる以外は

漆黒の暗闇が広がった。



ここで人が死ぬのを見ることになるのか。



なぜか心は落ち着きを取り戻しつつあった。


横の男の


「アフリカの・・・」


という言葉で

立っていた場所からずっと後ろに下がった気がした。


またどこからともなく透明カプセルが

私の周りだけを囲んでしまった。




よそ者から見れば

理不尽だったり

不合理だったり

無駄だと思うことでも

やってしまうこと。

やらなくてはいけないこと。




それを文化と呼ぶのだろうか・・・・





上に乗っていた男が

もう一人の男を放して立ち上がった。



そのままふらふらと歩いて

バオバブの下で

上半身を曲げたままじっと動かない。



もう一人のもとに、周りの男たちが近寄って行った。


両脇を支えられて立ち上がり

食堂の外に置かれたテーブル脇に座った。




バオバブの下にいた男が私たちのところに近づいてきた。



「終わった。行こう。」


「・・・・え?」


「機械を取りに・・・・」


「そんな、無理だろ。

 鼻から血が出てるじゃないか。

 口からも・・・・」



機械工は片方の鼻を指で押さえて

フンッ、フンッと勢いよく血を飛ばし

口から血を吐き出して言った。



「さあ、行こう。

 明日はBeiraに帰んなきゃいけないんじゃないのか?」


友人と機械工は漆黒の闇に消えていった。

2008-06-29 23:44:55 aguadeafricaの投稿

道なき道の激道中6

テーマ:旅の話
男がもう一人の男の上に馬乗りしていた。

しっかりと握りしめられたこぶしが

下の男の上に振り下ろされる。


地面に寝転ぶ二人を囲む男たち。


腕組をしたまま黙って見る男。

ビール片手に二人の真上まで近づいて

何か言っている男。

二人を指差しながら

笑っている男。


食堂から漏れる光が

男達の汗と血を照らす。



その光が照らした先に

先ほどの機械工がいた。

下で殴られているのは彼だった。


喧嘩が他人事ではなくなった。


「ちょっと、どうしよう・・・止めないと!」

思わず前へ進みそうになったのを友人が止めた。

「止めてもムダだよ。

 それに、これは俺らが入る問題じゃない。

 さっきから、あっちでくすぶってたんだ」


どうやら問題は、

例の機械工が私たちの車を修理することにあったらしい。

私たちと機械工のやり取りを見ていた男たちの中に

昔から村に住む機械工がいた。


その古機械工にとっては新機械工は

「オレの仕事を横取りした生意気なヤツ」

新機械工は

「オレが取った仕事だ。ゴチャゴチャ言うな」

ということで取っ組み合いが始まったらしい。



目の前の男たちは

上と下を入れ替えながら

転がっては止まり

止まっては転がり

殴り殴られていた。


理性も思考も尊厳もなく

ただ人間の中にある

動物的な本能があるだけだった。


横の男がつぶやくように言った。



「アフリカの喧嘩はどちらかが死ぬまでさ」

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