食べて飲んで観て読んだコト+レストラン・カザマ

読んだ本の勝手な感想を中心に、日々の行動のあれこれを綴る。
フレンチレストラン・カザマのお料理ご紹介。


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主婦・朋美は自分の46歳の誕生日に家族で外食してお祝いしようとイタリアンレストランを予約したのだけど。

ちょっと気張ってお洒落してメイクしたら、夫や長男に「似合わない、化粧が濃い、変。」とけなされ、次男はゲームに夢中で一緒に行きたくないと言われ、レストランではグルメを自認する夫(食べログのレビュアーらしい)に料理にケチつけられ、自分の誕生日なのにハンドルキーパーにされてシャンパンも飲めず、さらには「料理が下手。美味しいもの食べて育ってないから味音痴。」などと馬鹿にされ、ついにキレた。

 

「あたし先に出るわ。」と言って、一人車に乗って家出した!

 

今の夫と結婚前に付き合っていた男が長崎にいることを思い出して、とりあえず長崎に向かってみようと高速道路を西へ西へと車を走らせる。

ロードムービー風に、景色が流れサービスエリアに止まれば色々な出会いがある。出会いといっても、素敵な出会いとは限らない。ちょっと親切な男かと思えば、身体を売る女と思われていたり、カレシとケンカして置いていかれた気の毒な女性かと思えば、車を乗り逃げされる。大変だけど、まるでサーフィンしているかのように大波小波をどこか平気に超えていく朋美がいっそいさぎよく気持ちよい。

対して朋美の家族である夫や息子たちは、なんとも自己中な輩で、朋美も完ぺきな主婦ではなさそうだけど、あんまりな家族たち。こんな夫や息子ならば、自分も捨てたい(笑)特に、トイレの使い方(−_−#)

 

こんな展開で、桐野作品とすればどこまでこの家族は崩壊していくのかと興味深々で読み進めたのだけど、これが意外にも後味の良い結末で、いいんだけどちょっと予想が外れて軽く裏切られたような気分。 

ゲーム三昧の中学生の次男が、「お母さんに会いたい。」と電話してきて、修学旅行の費用がいると父親をだましてお金を手に入れ飛行機で長崎にやって来た時も、絶対この子はヤバイと疑ったもんだ。「オレを捨てていった母親」に仕返しするとかなんとか恐ろしいコトを想像したけど、全然そんなことなかった(^-^; ホントに母親が恋しくなったんだな、このゲーム少年。ドキドキしながら読んだのにね(笑)

 

まあけれども、今どきのコミュニケーションが取れにくい家族や、孤独に暮らす老人の生活問題、原爆や震災の被害で残る傷跡、荒野のような現代の世相を切り取りながらのロング・ドライブ、面白く読めた一冊。

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この社会、あるいは近未来社会で生きる人々のうごめく心をどす黒いまでに深くえぐって描き出してみせる桐野夏生さんの小説は、大好きです。自分の知らない世界の物事を書いた小説を読むのが面白いので、SFや時代物が自分の趣味ですが、桐野さんの物語世界も結構ツボです。

この「ハピネス」は、現代東京のウォーターフロントにある高層マンションに住むママ友たちのお話し。まあ確かに自分の知らない世界ではありますが、ママ友さん達ってどこにでもいらっしゃる普通の方々ですよね。桐野さんの以前の著作にあるような、パートの主婦たちが人殺しをする、というような異常な筋立てでもないようです。ママ友さん同士のお付き合いはなかなか大変なものもあるとは漏れ聞きますが、子育てからはるか遠くに来てしまった自分にはあまり縁の無い事柄でもあります。まあ、でも桐野さんの小説だからと思い、手に取ってみました。

本作は雑誌「VERY」に連載されていたもので、この雑誌は30代女性がターゲットだそうです。お洒落なブランドのお洋服やお化粧品、優雅でステキな主婦たちのライフスタイルを演出する雑誌らしい。読んだことが無いので聞いた話ですが(^-^; なので、そんなオシャレ志向な読者たちに向けて、子育てを含む生活の色々な諸問題をも描いているストーリーが、読者世代の心を掴み、自分たちのコトを書いてあるようだわ、という感じに支持された様子です。伝聞ですが(^-^;

トウキョウベイを見渡せる高層マンション、夫はおおむね一流企業勤務で収入もそこそこ高く、オシャレ上手な専業主婦たちは同世代の子どもを持つママ友たちとグループを作り、毎日子どもを遊ばせながら情報交換やヒマつぶしをしています。子どもをどこの幼稚園に入れるかも重要事項の一つ。そんなグループの一つにいるヒロインの岩見有紗は、みんなと違う悩みがありました。アメリカに単身赴任している夫から離婚を迫られていて、近頃は夫からの連絡すら一切無い有りさま。幸い夫の両親が良い人たちで、孫も可愛がってくれて夫婦関係も心配してくれいますが、こんな話はママ友たちには絶対打ち明けられません。

という状況の中、素敵なウォーターフロント暮らしのお洒落ママたちの中で、欝々としたイヤーな感じの雰囲気が満ちる桐野ワールドです。未来社会でも時代劇でもないけど、やっぱりワタシの知らない世界が展開しました。まあ、ここに出てくるママたちが身に着けるブランド名もほとんど知りませんでしたしね。シャネルとユニクロくらいかな、知ってるのは(笑) どちらも、持ってませんがー(^-^; 

ラストで有紗の夫が突然帰国し、あんなに離婚したがって有紗を苦しめていたのに、笑顔で元のさやに納まろうとしたのも意外で不思議でした。またグループのリーダー格のママ友が、不幸な結果を迎えたのもなんとも気の毒な、、、。人を見下すような所もあったのかも知れませんが、そんな悪い人でもないと思うのに、夫を奪われ、見栄をはっていた実家が実はしょぼい家だったのもばれて、高層マンションで輝いていた有紗の憧れの人は存在しなくなりました。

桐野さんの筆は誠に容赦ありませんねえー。
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30年で200組。福は在日の縁談を仕切る日本一の“お見合いおばさん”だ。斡旋料で稼ぐのに、なぜか生活は質素。日々必死に縁を繋ぐ理由とは(「金江のおばさん」)。在日韓国人の彼に恋をした。結婚への障害は妊娠で突破したはずが、大量のごま油と厳しい義母が待っていて…(「日本人」)。婚活から介護まで、切なく可笑しく温かく家族を描く連作集。文庫化の際に「ハンサラン 愛する人びと」を改題。 「BOOK」データベースより引用

もうご存知の方も若干おいでかも知れないが、我がダンナは「韓国時代物ドラマ」のファンである。そのおかげで、自分も時々横で見るため、今では日本の江戸時代の徳川将軍名より李王朝の王様名の方が馴染み深くなったぐらいだ(笑) その時代の華麗な王族の衣装や王妃様たちの髪形や飾り物などを眺めるのも楽しい。もう韓ドラブームも一段落し、政治問題から嫌韓などという言葉も踊る昨今であるが、BSテレビでは今でも韓ドラを山のように放映している。なんといっても、韓国は隣国であるし、文化の交流も深く、人々の行き来も多い。日本に住む韓国人(または朝鮮人)、韓国に住む日本人の方々も多い現代である。

本書の著者の深沢潮さんは、在日韓国人のご両親がありご自身はご結婚を機に日本国籍を取得されたということである。本書には6つの短編が収録されているが、いずれもそういう韓国または朝鮮の血を引き日本で暮らす人々の物語。著者ご自身の立場から見た同胞たちの暮らしと心情、日本社会と日本人がリアルに描かれている。人々のあり様のおかしみと、そしてしみじみと心打たれるものもあり、とても興味深く、楽しめる読書となった。

韓国に興味のある自分、韓国の男性と結婚されて韓国暮らしをしている方のブログにかつて頻繁にお邪魔して、韓国文化のリアルなレポートを楽しませて頂いていた。結婚してから義両親とのお付き合いが始まり、韓国独特のしきたりやチェサと言われる日本でいう法事のような催しのお手伝いを嫁として努めることの大変さ、様々なカルチャーギャップを、たっぷりと面白おかしく学ばせて頂いた。

本書に収められている「トルチャンチ」という子どもの一歳のお誕生日を盛大に行うお祝いのことも、愛読していたブログで詳しく知っていたので、「トルチャンチ」にまつわるちょっと滑稽に見える祝い方にも馴染みがあり、ふむふむと頷きながら楽しく読んだことである。伝統的な韓服(チマチョゴリ)や小さな男の子の頭に被せる頭巾のようなもの、それらは韓ドラ時代劇でおなじみである。

人種の違いや文化の違いは当然であるが、それらはお互いに尊重しあえるはず。日本に暮らす在日の方々の、「自分は何者であるか」という問いはその方々の心に深くあって、明快な答えが出るものではないかも知れないし、自分個人が深く理解できるわけでもないが、色々と知っておくのも悪くないのではないだろうか。

グローバルな心をもって広く様々な国々の方とお付き合いを出来れば、幸い。本書もオススメ!
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昨年、久しぶりに読んだ村上春樹作品の「1Q84」がとても面白かったので、本書が文庫版発売されたのを機会に早速読んでみました。
本書も、発行当時はものすごく話題となり、マスコミに大きく取り上げられていたことを思いだします。なので、本書の主人公の「多崎つくる」が学生時代の親友グループから絶交を言い渡され、その理由に心当たりが無かった、というお話だということは聞き知っておりました。まあ、そんな事があるだなんて、本人は気づかないうちにどんな事をしてしまったのでしょうねえ、、、と、いつか読んでその謎を知りたいと思いましたね。そして、いま、その謎は解き明かされました。

うーーん、まあ多崎くんにとってはひどく理不尽な理由でしたね。全く身に覚えのない、しかも道徳的にもいわば犯罪的にも悪い事をしたとされ、またその当時は理由を言って貰えなかったために弁明する事も、身の潔白を訴えることも出来なかったのですから。そのために、彼はもう一歩で死ぬところまで悩み、絶望したというのに。

そんな事があったために、多崎くんの人格は多少変わってしまい、育ちの良いおっとりしたハンサムな好青年は、やや鋭さと影のあるでもやっぱり感じの良い大人の男になったようです。「駅を造る」という自分に合った職業にも付き、複数の女性とも軽いお付き合いをしながら暮らしていた多崎くんは、やがて運命の女性と出会いました。

この多崎くんと沙羅さんという魅力的な女性とのカップルは、「1Q84」の天吾と青豆のカップルを連想させますね。職人気質な一つの物事を突き詰めて考えていくような男と、知識や経験が(良い意味でですよ?)豊富なクレバーな大人の女。「1Q84」は、ちょいと現実から離れた不思議空間の世界観がありましたが、そこにいたカップルを現実の日本に置いたらこんな感じ、というような。

そして多崎くんは沙羅さんの導きで、かつての親友たちに会いに行く旅に出て、自分の中に空いていた何かを埋める作業に着手するのでした。
いいお話しでしたね。「1Q84」のような不思議で訳のわからない謎もないし、分からなかった過去の出来事も説明があり、多崎くん本人が納得できるかどうかは別にしても、分かっただけでなんてスッキリできることか。前向きに歩いて行ける明るい未来のようなものを暗示してお話しは終わりますが、多崎くんの今後の幸せを確信して、一読者として気持ちよく本を閉じることが出来ました。

でも、「1Q84」の方が、自分としては好みですかねー(^-^; 
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キョウコはおべんちゃらとお愛想と夜更かしの日々から解放されるため、有名広告代理店を早期退職!都内のふるい安アパート「れんげ荘」に引っ越しし、月10万円で暮らす貯金生活者となったが…。ささやかな幸せを求める女性を描く、待望の書き下ろし小説。(「BOOK」データベースより引用)


この本のテーマとしては、忙しくお金を稼いだり、気の合わない家族(ここでは母親)との軋轢に耐える、そんなしがらみかに逃れて、貧乏でものんびりと心穏やかに過ごす暮らしを手に入れる、というもの。働かないので、持っているお金の範囲で節約したり、家賃が安いアパートゆえの不便さに我慢しつつある意味楽しんだり、距離を取りつつお隣さんとのお付き合い、そんな地味な日々が綴られる。

忙しなく生きている身の上から見ると、羨ましいようなゆとりや、ちょっとこんな不便(共同トイレやシャワー、夏場の蚊の大群、冬の隙間風)にはもう耐えられないわ、というような感想を持ちながらの読書となることだろう。

しかし。自分目線で言えば、もっと現実的な事柄に思いが行ってしまう。
主人公のキョウコさんは大手有名広告代理店で45歳までばりばり稼いでいた。リタイアして貯金生活者になろうと思った時から、貯金も相当したらしい。そこで月10万円で一生暮らす、という生活を手に入れたわけである。
この退職した最初の年、住民税や国民健康保険料が相当の高額で課せられたはず。もちろん、それは書かれてはいないけれど、織り込み済みで貯金から一括で支払ってしまったかも知れない。
翌年からは、無収入なんだから所得税、住民税は非課税か。残るは国民年金保険料のみか。
月10万円で家賃からその他諸費用、食費まで賄うのはかなり節約生活だし、老後のこともキョウコさんは心配している。それでも高給取りだったから、45歳までとはいえ厚生年金もあるし、企業年金だって相当ありそうだ。60歳過ぎからは年金も貰えるから、わりと心配なく暮らしてゆけるのではないか。問題は、この老朽化した「れんげ荘」にいつまで住まえるか、いずれはもう少しマシなアパートに引っ越さねばならないだろうけど、、、。

四季の移ろいがより身近に感じられる「れんげ荘」の風流な暮らしにうっとりしながら、という読書ではなく、余計なコトばかりに気が行く、もうじき年金が貰える一老人の読書となったのでありました(^-^;

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今回もノーベル賞受賞ならず、落胆されたファンの方々も多かったのかも知れません。取れたら素晴らしい賞ですが、どちらにしてもファンにとって好きな作家さんの価値は変わらないですけどもね。
新刊が出るたびに話題をさらい、ノーベル賞候補常連、新刊「職業としての小説家」も出たばかりで早速良い感じの書評やレヴューも見ました。まあ、そういった事とは関係なく、たまたま書店の文庫平棚でこれというものが無かったので、「新潮文庫の100冊」というキャンペーン品(?)の中から、冊数が多く(文庫で全6冊です)読みごたえがありそうだったので、どれしばらく振りに村上春樹でも読んでみるかと(失礼な言い方ですみません(^-^;)手に取った次第です。自分、さらりと読める本も好きですが、長編で読むのに時間が掛かりそうな本も大好きです。「読書」自体が好きなので、長い時間楽しめるのが長編の良いところです。

村上春樹さんは初期のころから読んでいて、大好きでした。初めて出会った時の、あの文体に新鮮な衝撃を感じてはまりましたよ。20代の頃でしたかね。お洒落なライフスタイルの登場人物たちにも憧れてましたね。お洒落と言ってもシックな感じのね。新刊も出るたびに楽しみにしていたのですが、いつからか読まなくなってしまってました。「ノルウェイの森」は読みました。その後はどうなんだか良く覚えてないですが、「海辺のカフカ」は読んでないです。
なんだか興味が薄れたみたいな感じにだんだん遠のいたみたいです。

今回、人様のレヴューも参考にしようと思って幾つか読んでみましたが、意外とアンチな方々も多いのでビックリしました。評価が賛否両論あるんですねえ。ベストセラー作家ですし、海外でも人気が高いので、みんな村上作品が大好きなんだと思ってました。なのに、何を言ってるのだかわからないとか、気取った文体やセリフが鼻につく、とか、買って損した、とか、、、。損したと思ったとしても、まずは買ってるんですね(^-^; アンチでも読まずにはいられないのか。まあ、それ以上に熱心な大ファンが大勢いらっしゃるということなんでしょうが。

さて、自分ももし分けるならアンチに入るのかも知れません。だって、世間で新刊が出るごとに話題になっているのに読んで来ませんでしたから。
さあ、しばらく振りにお会いした村上さん、どうでしたでしょう。

面白くて、面白くて、面白くて、夢中になってヒマさえあれば読み続けました(笑)
主人公は青豆という珍しい名字を持った30歳くらいの女性と、天吾という小説家志望の同年の男性。
二人のそれぞれの視点から、別々のストーリーが語られています。そしてお話が進むと、二人には小学生の頃に接点があり、ほんの小さな出来事が二人の心に大きなものを残していたことが読者に分かって来ます。

物語りの背景には、私たちの現実社会に存在する色々な問題や出来事を思わせるものがあり、オウム真理教やエホバの証人、ヤマギシ会、NHK、ドメスティック・ヴァイオレンスなどです。また現実感の無い物事も沢山あります。この世界には2つの月があり、リトルピープルとか空気さなぎという良く分からないものも登場します。良く分からないものが出てくるお話というのは、好きな方なのでどんどんのめり込んで読書を楽しめましたが。登場人物のそれぞれのキャラクターも面白く、特に牛河という容貌が醜くて調査能力に優れている男と、タマルという屈強でお洒落なゲイの用心棒というか私設SPの対比。牛河の方は彼の内面や過去の出来事まで語られて青豆、天吾に次ぐ主要人物のように掘り下げられていることもあり、すごく気になる人物でしたのに彼には死が与えられました。大変残念に思っていたら、彼にはまだ重要な役割があったようで、、、でもそれでどうなるのかは謎のまま。

全てのエピソード、登場人物、背景世界の土地や建物や季節など、まるでその世界に自分も入り込んでいるように読書しましたが、最終話でそれがまるで夢から覚めたように、自分放り出されました。残ったのは青豆と天吾だけ。二人を取り巻く人々は、消え失せてしまったよう。
あれだけ沢山の出来事の色々は、二人の恋をより意味ある素敵なものに成就させるための、華やかな彩りに過ぎなかったのではないか。そんな風に思えて、やや気が抜けてしまいました(^-^; 

とても魅力的なキャラクターたちだった故に、彼らはどこへ行ったのか、彼らが生きていた世界は消え失せてしまったのか、それとも少し変化した別の人生を新しい世界で送っているのか、気になってしまいます。まあそんな風にあれこれ考えるのも、読書空間の楽しさではありますね。
さて、また次の村上春樹作品を読むのは、いつになることでしょうか。文庫化された次の作品が書店の平台に並んだら、手に取ってしまうかも知れませんねえ。


賄い:季節ものの松茸ご飯、旨し!
松茸ご飯
右端は、ダンナ謹製茶碗蒸し。上々でした(^-^)

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今年の直木賞受賞作で話題となっている本書。
芥川賞のピース又吉「火花」がものすごい人気となっているので読みたいと思いますが、なにかとっつき難い芥川賞(^-^; エンターテインメント好きの自分としては、直木賞のこちらに大変惹かれたゆえ、珍しくも単行本購入とあいなった次第です。

舞台が台湾、殺害された祖父の犯人を捜す孫、ノワールな匂い、自分のストライクゾーンにピシピシ入ってくる筋立てに、またまたのめり込む読書でありました。

主人公の葉秋生(イエ・チョウシェン)は優秀な高校生でしたが、幼なじみで悪友の戦雄(ジャンション)の誘いに乗り、軽いバイトのつもりでやった替え玉受験がばれて、高校を退学になります。仕方なく最低レベルの高校に転入し、そこから社会の底でもがき続けるようなノワールな青春を送るはめになってしまいました。

喧嘩上等、ヤクザ、見えない将来、大学受験失敗、軍隊学校、兵役、、、。
そして、2歳上の幼なじみの毛毛(マオマオ)と恋愛関係になるものの、理由不明な失恋に血の涙を流します。後年わかった、その理不尽な理由もいやはやな、、気の毒な秋生。
祖父の大陸時代の殺戮と、それにつながるらしい祖父が何者かに殺された事件とその犯人は、、の謎に迫る秋生の執念。

暴君的だった祖父とは、一見違った風に見える秋生です。戦後世代で、台湾にも日本やアメリカから新しいカルチャーがどんどん入ってきて、いわばちょっと軽めの現代ッコ的な所がありますから。しかし、祖父の血を色濃く受け継いでいるのは間違いなく、終章では大陸に渡ってついに見つけた真実と祖父の晩年の思いにまで至ります。
自分もその祖父の思いに何ともいえないある種の共感を抱いたのが、最後の感想でした。

本書を読むに必要なのは、台湾と大陸、2つの中国の存在と日本の介入の歴史問題であると痛感です。共産党と国民党の内戦や殺戮、日本のスパイ、大陸からやって来た外省人と台湾土着の本省人との確執、それらが混沌している歴史を荒っぽく生き抜いてきたのが祖父ですから。

あと、中国名の読みが覚えられずに困ったのが、自分の弱点(笑) 漢字名をついつい日本語読みしたり、字面として読み飛ばしたり。手元に人物相関図と読み仮名を置いて読んだら良いかも、、、と、思いながらも図を作るのが面倒でした(^-^;

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本作は、たしか新聞に掲載されていた豊崎由美氏の書評で知ったのだと思います。
田山花袋の「蒲団」を下敷きにした作品であり、豊崎氏が絶賛しておられました。そこから、中島京子さんの作品を手に取るようになり、以来けっこうはまり何作か読んでいます。しかし、肝心の「FUTON」は未読でした。図書館に予約を入れていたようで(もう1年近くたつ?すっかり忘れていたし(^-^;)、先日届いたというメールが来て、驚きつついそいそと取りに行き、早速読もうと思ったのですが、、、、。


そう、自分、田山花袋の「蒲団」を読んだことが無かったのです。日本における自然主義文学の始まりとも言われ、「中年の作家が女弟子の蒲団に顔をうずめてその匂いを嗅ぎ泣く。」というあまりにも有名なあらすじの私小説、未読!「FUTON」の前に、「蒲団」を読まねばならん、とひとまず「FUTON」はかたわらに置き、Kindleを開いて「青空文庫」をTap!

「蒲団」田山花袋
これを面白いと思えるかどうか。
興味深いお話ではあり、女弟子・芳子の恋愛に振り回される師匠の作家・竹中時雄の心理と行動は喜劇的で笑えるし、この作家の心の内に納得のできる素晴らしい緻密な心理描写でありました。
当時(明治40年発表)の「新しい女の生き方」を語る作家や、奔放にふるまう女弟子、当時の「旧弊な女」の代表である作家の妻とその姉などがおりなす葛藤も読みどころでしょうか。
でも、この作家(中年と言われてますけど実は34歳くらいとのこと、まだお若いんですね)、
本当にウザイ(笑) 


さて、本家も読んだし、「FUTON」です。
「FUTON」中島京子
アメリカの大学で、日本文学を研究しているデイブ・マッコーリー教授(バツイチ、小学生の息子あり)は、教え子のエミ・クラカワ(日系アメリカ人)の華奢で毛のない四肢と漆黒の長い髪、カマンベールチーズを思わせる乳白色の脇の下がお気に入り。こっそり愛人にしていたのに、エミは日本人留学生の新しいボーイフレンドと一緒に日本に遊びに行ってしまった。ちょうど日本で開かれる学会に招へいされたので、エミを探す目的で教授も日本へと旅立った。

さて、このデイブ教授は田山花袋の「蒲団」を研究しており、「蒲団の打ち直し」というタイトルで裏蒲団ストーリーの小説を執筆中。教授の日本旅行のお話の中に、入れ子になって小説「蒲団の打ち直し」が展開する形となっています。
「蒲団」ではわき役の時雄の妻・美穂から見たストーリー。本家「蒲団」でも「打ち直し蒲団」でも、この細君は夫と女弟子の間に何か無いかと疑わないのかと思いながら読んだものです。実際に作家と女弟子には男女関係は無く、時雄の片思いのようなものなんですけど、あまりに態度がおかしいですもんね。現代の奥さんなら、もう離婚話ものかも。美穂も疑わないでもないのだけど、弟子の芳子は恋人に夢中であることだし、夫は親御さんから娘さんを預かり指導・監督するという立場であるから、いらいらしたり、怒りを見せたり、不機嫌になったりしているのだ、と美穂は一生懸命、自分を納得させているようです。

そんな明治の女性たち、夫に従順な美穂や、新式の女性になろうとして親や師匠に逆らいきれない芳子を読みつつ、現代の日本でデイブが遭遇する女性たちは。
出会ったオトコ(この場合、デイブですが)を触媒にして、今までの立ち位置からかろやかに新しいスタートを切ってゆきます。デイブが「バカでカワイイ」と思っていたエミもまた、新しい自分に、なりたい自分になるため、デイブ(をしたかに利用し(^-^;)と別れてスタートするのです。あー、すがすがしい!
またデイブ自身も、女性の見方が変わってアメリカに帰国後、少し新しい自分になったみたいです。心地よいラストシーンです(^-^)

本家「蒲団」は、作家が女弟子の使った蒲団に顔をうずめて匂いを嗅いで泣くシーンで終わるのですけど。
「蒲団の打ち直し」の方のラストシーンは、おおっ!と膝を打つ場面。細君の美穂がその蒲団を物干しに掛けて、嗅いだのは、、、。コワっ!

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「コロッケ」「キャベツ炒め」「豆ごはん」「鯵フライ」「白菜とリンゴとチーズと胡桃のサラダ」「ひじき煮」「茸の混ぜごはん」・・・・・・東京の私鉄沿線のささやかな商店街にある「ここ家」のお惣菜は、とびっきり美味しい。にぎやかなオーナーの江子にむっつりの麻津子と内省的な郁子、大人の事情をたっぷり抱えた3人で切り盛りしている。彼女たちの愛しい人生を、幸福な記憶を、切ない想いを、季節の食べ物とともに描いた話題作、遂に文庫化。 ---amazon より引用


お惣菜の絵の表紙、裏表紙の紹介文を読んで、食べ物小説、好き!と手に取った自分。母(80代)も美味しそうな食べ物が出てくるお話には目がナイ。読んだら貸してあげようといそいそと帰宅した。

お惣菜屋を3人の女たちが切り盛り。元気でガッツあり恋ありの30代くらいの人たちかしら。それとももう少ししっとりと人生の苦さも知り始めた影も併せ持つ40代のヒロインたち?

ページを繰ってあらら? 60歳?
なんだー、人生経験豊富で街の人たちにアドバイスできるような先達、おばあさんたちのお話だったか。

オイオイ! ってか、自分と同世代じゃないのっ。今、なんてった、自分?
おばあさん? 自分もおばあさん?

はいはい、そうなんですねー。自分では、自分のことおばあさんなんて自覚してやしない。でもね、客観的に見れば60歳ってもう立派なおばあさんなんだなあ。だって今、自分で思っちゃったもんね(笑)

そのこと、母(80代)に言ったら、
「わたしだって自分のことおばあさんだなんて思ってないよ!」)(;´▽`A``
そうなんだよねー。で、自分、気づいたんです。この身体、脳細胞は、アナログなんで、本当に日々老いて行く。けれど、心ってデジタルなんだ。心は劣化しないのよ。心は身体とのアンバランスにとまどいはするけど、未だに20代の心もちにすぐなれる。けれど、社会性を持つ人間としてだ、身体の見た目に合わせた言動を自然と取ってるだけなんじゃない?

若い人には分からないだろうけど、我々老人の身の内にも、実は瑞々しい心はちゃんとあるものなのよ!

さて、本書のヒロインたちも、そんな劣化してない心を持っている人たち。
美味しい香り立つようなお惣菜とともに、それぞれの熱いハートを脈打たせている。だってそれが当たり前、デジタルハートは劣化しないから!


某サイトのレビューで見かけた20代女性の酷評。
(自分このレビューを否定するものではないですから、念のため)
還暦のおばあさんが20代の青年に恋するなんて気持ち悪くて、途中で読むの止めて速攻売り払った。(要約)

その気分も分かるけど、それはちょっと違ってるのよ。途中で止めちゃったから分からなかったでしょうけど、本当に恋してたんじゃないの。もっと大変な苦しい思いに耐えて、前に進めるように、ちょっと自分の心を遊ばせてただけ、もしくは作戦、とでも言えるかなあ。こんな機微は、あなたも書いておられたように、50歳以上にならないと分からないかも。あなたももし、50~60歳になった時に、機会があれば完読してみられるといいなあと思います。
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「人」への執着、
「花」への妄想、
「石」への煩悩・・・・・
ちょっと怖くて 愛おしい 五つの 『偏愛』短編集
-単行本帯惹句を引用


ということで、5編の短編が収められています。どれも、少しばかり風変わりな風味があり、自分好みなものでますます中島京子さんが好きになりました。お話の筋もさることながら、一つの文や一つの言葉、一つの読点にまで、ここが好きだなあ、と目を細めてしまうようなものを発見して、読書の楽しみをしみじみと味わいましたよ。

5編の中では、表題作の「妻が椎茸だったころ」が一番好きです。
奇妙なタイトルですよね。
定年退職した泰平は、突然亡くなってしまった妻が書き残したレシピノートに「もし、私が過去にタイムスリップして、どこかの時代に行けるなら、私は私が椎茸だった頃に戻りたいと思う」という書き付けを見つけました。
どういうことだと思われます? 料理をよくする人なら、そうなのだそうです。

泰平は、妻が亡くなる前に予約していた人気のお料理教室に娘に強く勧められて行きました。予約が困難なドリームジャンボに当たるようなお教室なんだから断ったらもったいないと、言われまして。その日は散らし寿司なので、甘辛く煮た椎茸を5個くらい持ってきて下さい、というお料理教室。料理などしたこともない泰平ですが、渋々台所へ行って引出を探してみると干し椎茸がありました。固い椎茸をスライスしようとして、指を切ったり、そのままお醤油と砂糖とともに煮てみてカチンカチンのままの椎茸で火傷したり。腹を立てた泰平は、椎茸を放って寝てしまいますが、翌朝目が覚めると、なんとも良い香りが台所から漂ってきて、妻が料理をしているのかと思ってしまいました。台所では椎茸がふっくらと美味しそうに柔らかくなっていました!
「おまえたち、戻ったのか!」
ここで思わず、声を出して笑ってしまいましたよ(^-^)

お料理教室のカリスマ杉山登美子先生は、散らし寿司を教えてくれながら、泰平に「奥さまはよくお料理をなさる方だったのですね。」と言って、自分が「じゅんさい」だった頃のそれは美しい記憶を語ってくれました。泰平はそれから料理をよくするようになり、自分と妻が椎茸だった頃のそよぐ風に揺れる二つの椎茸のいる風景を蘇らせるのでした。

なんだかすっかりストーリーを語ってしまいましたが、むろんこんなつたない要約で分かって頂けるわけもない、とてもいいお話でした!自分は、それほど料理をする方ではないのですが、大好きな豆腐になる前の大豆だった頃の記憶を蘇らせてみたいですね。さやを通して差し込んでくるお日さまの暖かみを感じていた大豆の頃です(^-^)


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