『Steins;Gate』 | アドベンチャーゲーム研究処

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アドベンチャーゲーム(AVG・ADV)の旧作から新作まで、レビュー+紹介を主として取り上げるブログ。(更新は不定期)
取り上げる範囲は家庭用のみです。

【概要】
 ADVにも多くの楽曲制作を行い、ゲーム部門も『Memories Off』などが有名な5pb.と、『Phantom』で名を馳せたNITRO+が共同制作する科学アドベンチャーのシリーズ第二弾。第一弾のPCで発売された『CHAOS;HEAD NOAH』とは異なり完全家庭用オリジナルであることを重視し、いわゆる萌え系になりすぎていなかいデザインを採用したこともあってか、発売時の注目度はそれほど高くなかったのだが、プレイしたユーザーからの高評価がジワジワと広がり、いわゆる「美少女もの」では異例のロングセールスを記録。特にネット上では異常なまでに評価されており、2009年に発売されたアドベンチャーゲームでは最も話題を呼んだ作品といって間違いないだろう。プレイボリュームは20~25時間程度。セールスは累計4.7万本。

Steins;Gate(シュタインズ・ゲート)(数量限定版)

【システム】
 基本的には読むことに特化したノベルゲーム。独自システムとして、ケータイ電話の通話やメール送信によってストーリーが分岐する「フォーントリガーシステム」というものがあるが、これは随時ケータイ電話の操作によって話が変化するような複雑な物ではなく、分岐する際にアイコンが変わりその時に返信するか否かを“選ぶ”ことで物語に介入する、「分岐を推理するゲーム」ではなく「ドラマを体感するゲーム」を狙ったものとなっている。また細かな分岐としてメール返信もあるが、一部を除いて本編に直接関わる物はなく、狙いとしては世界観に触れるための仕掛けと言ってしまって良いだろう。

【ゲームテンポ】
 ゲームテンポは、分岐部分が可視化されていることもあってノベルゲームにありがちな“無根拠な分岐探し”は避けられており、目的もなく高速スキップを眺めるという状況にはならず、前作を更に進化させたインターフェースもかなり優秀で、オートセーブや細かい調整も完備しロード時間も殆ど無いのでゲームプレイにストレスはあまり感じないだろう。また、この作品は“読むこと”がゲームの90%以上を占めているが、その点で退屈させないために展開はスピード感を重視しており、テキストの面でテンポを意識した作りになっている。そのこともあって、ボリュームでは他の“雑音”の多いノベルゲームより劣っているのは間違いないが、逆にテキストに対するストレスは大幅に削減され、最後までプレイするのもあまり苦には成らない。

【ストーリー】
 タイムリープをテーマにしたSF。登場人物が水物のネットスラングを会話で多用するのが特徴だが、おおまかなストーリーは展開が固定化されており、恐らく中盤までには展開が予測できる予定調和なものになっている…のだが、これは恐らく狙ってのこと。上述の通り分岐は可視化されているので、プレイヤー自身が解っている展開を“実際にボタンで操作”することで決定することになり、物語上の動作を実際に自分で行動することで世界観に介入するためゲーム以外では表現することの出来ないストーリーとなっており、この部分が最大のゲーム性と言って良いだろう。逆に、ストーリーを一度体験してしまうと再プレイ時にはその仕掛けは作用せず、また一周で10時間程度はかかるためネットスラングの部分を含めてアドベンチャー最大の短所である“1度きり”感はかなりあるのも否定できない。

【ここが○!】
・スピーディーな展開で、“読んで遊ぶテキスト”になっている。
・ゲームでしか体験できないストーリーが体験できる。
【ここが×…】
・良くも悪くもファーストプレイが全て。
・フォーントリガーの隠し要素に不満(ネタバレなので内容は伏せる。)

【総括】
 枠組みは間違いなく「美少女ゲーム」な上に、多用されるネットスラングもあって“わかる人”でなければ魅力が半減してしまうタイトルなのは確かなのだが、逆に“わかる人”にはトコトン楽しいゲームとも言える。その点で、ネットで異常に高い評価を得たのは納得できる話ではある。ストーリーはループ物でありがちな物事の一回性を悲劇的に再確認し続けるというもので、もういい加減今更感があると思うのだが、仕掛けや世界観(=主人公にとって居心地の良い守るべき世界)作りの上手さが手伝って有り体なストーリーがゲームとして面白くなっている。この点は間違いなく料理した人間の力量に尽きるだろう。拍手。結果“自分がコア”であることを自覚しているユーザーに薦めたい一作なのだが、そもそも対応ハードがXBOX360な時点で“無自覚なコア”は居ないと想定されるので、気になっているユーザーにはトレイと時間が空いているなら何も言わずに突っ込んでおけと言えるソフトではある。

【次に手にとって貰いたい作品】

この世の果てで恋を唄う少女 YU-NOキャプテン・ラヴ

PS2『EVER17 -the out of infinity-』
SS『この世の果てで愛を唄う少女YU-NO』
PS『キャプテン♡ラヴ』(分岐の仕掛けがかなり似ている。)

【得点】
7/10