こちらから!
今回はこれとこれの続きで
第3回
ウルトラマンT(タロウ)
「小学二年生」昭和48年4月号~49年3月号掲載作品を完全収録。
内山まもるが描くウルトラマンへの人気の高さもあり、「タロウ」は「小学二年生」と「小学五年生」に同時進行で連載するようになっていたが(次回作「レオ」では「小二」「小三」を並行連載)----
ちなみに「タロウ」の小学館児童誌連載はかけ持ちが多く、
「少年サンデー」と「小学一年生」を石川賢、
「よいこ」(4・5月号の2ヶ月だけ)と「小学館BOOK」(初回だけ)を蛭田充、
「よいこ」6月号以降と「小学六年生」を、講談社の「ミクロマン」が代表作になる
森藤よしひろ(2000年11月3日に逝去!)
が、それぞれかけ持ちしている。
----このコンビニコミックは、あくまでも「小二」版の方だけを「完全」掲載。
「小五」版内山「タロウ」は、単行本「ザ・ウルトラマン」に一部(3ヶ月分)が掲載されたのみ。
↑「ザ・ウルトラマン」2巻目の掲載分は、連載開始から3ヶ月分。トビラ絵は最初(左)はタロウが大きくあしらわれているが、2ヶ月目(中)では背景に後退、3ヶ月目(右)はついにタロウ不在となる。
発行は2005年7月8日付けで、これは「ウルトラマンT」DVD全13巻発売後で、同製品の特典インタビュー用の、篠田三郎の近影や座談会も掲載されている。
この座談会では、歴代ウルトラ兄弟役の俳優(ハヤタ役の黒部進、モロボシダン役の森次晃嗣、郷秀樹役の団次郎〈団時朗〉、北斗星司役の高峰圭二)と談笑していた(はずの)篠田三郎。
しかし翌2006年の劇場版「ウルトラマンメビウス&ウルトラ兄弟」にも、
テレビ番組「メビウス」本編にも、
ウルトラマンタロウは出てくるのに、東光太郎役の篠田本人は出演していない。
このためか、2008年の「大決戦!超ウルトラ8兄弟」では、
タロウすら出てこなかった。
さらに2009年の「大怪獣バトル ウルトラ銀河伝説 THE MOVIE」では、
「メビウス&ウルトラ兄弟」同様に、タロウの声は石丸博也がアテている。
もっとも「タロウ」の最終回では、東光太郎はウルトラマンタロウという分身から決別しているので、
東光太郎は、↑最後の敵バルキー星人(次回作ウルトラマンレオのNGスーツの改造)を、ウルトラマンタロウに変身せずに倒し、
↑人間、東光太郎としての人生を歩み出す。
辻褄はそれなりに合うのだが。
とまあ、周辺事情の前置きが長くなったが、ようやくマンガ本編に話を戻せば、
「帰ってきたウルトラマン」「ウルトラマンA」の2年の経験から、今や内山まもるスタイルが完全に確立され、連載当初から最終話まで、ひたすら安定した画が示されていて、
↑ページのコマ割、戦闘機スーパースワローの画面内配置やパース、余白とのバランス等、文句の付けようがない見事さ。
↑怪獣コスモリキッドの描写も、生物感と巨大感に、怪獣らしさも加味されて貫禄!
最初はおぼつかなかった内山まもるの怪獣描写が、早くも「帰ってきたウルトラマン」の後期には安定したのは、マンガ連載にとどまらず、同じ学年誌の特集ページや、ショウワノートのぬりえなどの文具で描きまくった、いわば怪獣千本ノックのおかげではないだろうか。
↑「小学二年生」昭和47(1972)年1月号。
以前に内山が自作マンガで描いたことのある怪獣まで、より洗練された絵柄で改めて描き直されている。
30年以上経た今でも、安心して読み通すことができる。
読み通すと言うより、絵柄をながめているだけで楽しい!
↑虫歯怪獣シェルターに、本編に一度も登場しなかったZATの潜水艇アイアンフィッシュで、こんなにカッコイイ場面を創出できるのは、内山まもるだけ!
さて、東光太郎に代表されるZAT隊員だが、
どうやら当初は配役未定で先行して描かなくてはならなかった事情もあり、
↑南原隊員の体格は、まるで別人、
↓西田次郎隊員 (三ツ木清隆)の顔は
きちんと描かれもせず。
ひときわ可愛かった森山いずみ隊員(松谷紀代子)をのぞいて、
どうも、真剣に「似せる」という試みは放棄されているようで、
↓朝日奈勇太郎隊長(名古屋章)も、
↓荒垣修平副隊長(東野孝彦)も、
↓北島哲也隊員(津村秀祐)も、
↓南原忠男隊員(木村豊幸)も、
↓上野孝隊員 (西島昭彦・テレビでは8話から)も、
「そのものズバリ」ではなく、「当たらずとも遠かざる」程度にとどめられている。
「タロウ」で隊員の役者のグレードは従来シリーズより上がったが、個々の隊員の役割や性格付けがしっかりしていたのは、第二期ウルトラシリーズでは「帰ってきたウルトラマン」のMATが一番だった。
また「タロウ」では隊員の入れ替わりが激しくても、特段番組にもドラマにも影響がなかったことも、マンガでZAT隊員がきちんと描き分けられていない一因と思われる。
さて「タロウ」番組本編と言えば、それまでのウルトラシリーズの伝統から脱却し、明るく軽妙なトーンの作品作りが信条だが、内山版マンガの方は、「帰マン」「エース」の作風を踏襲して、マジメに淡々と物語が進んでおり、これは従来どおり内山は絵を担当するだけで、基本ストーリーは第8話まで一貫して田口成光が担当しているため。
9話・11話と、「小学五年生」版の全話は、内山のオリジナルストーリー。
そのため登場する怪獣、宇宙人こそテレビ版と同じデザインでも、基本的にはマンガ独自の物語が展開し、「帰マン」の時によくあったテレビ版の後日談という体裁は、第10話(石倉五郎・案)のテンペラー星人の回だけに限られている。
「タロウ」になると、ウルトラ兄弟、父や母というウルトラ家族の設定が確立、
↑ウルトラの母はテレビ第1話では既存ウルトラマンのスーツ改造でしのぎ、ホンモノのスーツは第 話まで登場しなかった。
そのためマンガ第一話でも、内山まもるの推測で描かれている仮のウルトラの母は、息子タロウと同じセブン系の顔つき。
↑「ウルトラマンと言えば内山まもる」という定評は、ファンや小学館だけでなく、本家円谷プロにも認められ、「タロウ」第25話「燃えろ!ウルトラ兄弟」劇中の、ウルトラの国(光の国)の歴史をつづるイラストにまで起用された。
ファンにも浸透したので、マンガ「タロウ」では、ウルトラの国を行き来する話が続出する。
↑第6話ではケガしたタロウをゾフィーが光の国に帰るように進言し、代わりに地球を防衛する。
↑第8話では、怪獣との戦いで目をケガした少年を、わざわざ光の国で治療する。
↑第10話では、テレビで倒したばかりのテンペラー星人の残党におびき出され、久しぶりに戻ったばかりのはずのウルトラの国に、またしても舞い戻る。
↓戦いには勝利するが、愛犬ラビドッグを失う。
お墓の十字架……ウルトラの国はキリスト教か!
さて、ようやくウルトラマンタロウそのもののスタイル(画風)変遷について。
当初は自分の画風がなかった内山まもるが、帰ってきたウルトラマンのスタイル確立に手間取ったのは当然として、
↑「帰ってきたウルトラマン」「小学二年生」連載第1回の表紙絵(左)と、最終回の最終コマ(右)
すっかり安定したエースの時には、絵柄にほとんど変化がなかったのに対し、
↑初期のみ登場の2ピース式のスーツ(左)を再現して、股下に切れ込みがある以外は、最終話の絵柄(右)とほとんど差異の見受けられない、第一話のエース(中)。
タロウは連載中に、けっこう細かくモデルチェンジしている。
たとえば第一話では、口が実物マスクに近い形に描かれている。
↑左が「小五」、右が「小二」の連載初回のトビラ絵。
口は実物マスクに近く、体の赤い部分はベタ(黒)で表現。
ゴーグルの下辺は、なぜか実物とは大きく異なる激しいジグザグライン。
これは、タロウ型のウルトラマンがこれ以前はウルトラセブンしか存在せず、内山まもるがマン系と描き分けるため、セブンだけは人間のような口に描いてこなかったから。
↑「エース」第一話。「古いウルトラマン」って……
↑「エース」第4話
↑「エース」第7話
これが2話からマン系と同じ、人間の唇状にそろい始め、以後はこのまま固定。
↑第2話トビラ絵
↑第2話本編
↑第4話の最終コマでなぜか一度だけ「浮気」しながら、
↑最終話トビラ絵。ゴーグル下辺は、すっかりなだらかなカーブに落ち着いている。
また当初はベタ(黒)一色だったボディは、
↑第一話の本編初登場シーンでは、ボディは黒一色で表現。
↓次のコマでは、早速斜線とベタの2トーンになり、
↓結局、セブンとタロウのボディは斜線に落ち着いた。第10話トビラ絵。
最後に、当初はいかにウルトラまんがの巨匠の内山まもるでも、セブンとタロウを混同して描いていた件について。
第一話に限っては、ボディのラインは、タロウよりもセブンに近い絵柄が多かった。
ふー、今回は長かった~!
時間もお金も、手間もかかったよ!
次はウルトラマンレオですね。
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