ストームトルーパー/SWキャラのルーツ(4) | アディクトリポート

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英語で「ストームトルーパー(stormtrooper)」といえば、元来は第一次大戦末期に登場した、ドイツ軍の突撃隊員のことを指す。
↓最初は「塹壕襲撃隊」程度の役割だった。
オレにやらせろ! 作家浪人Addicto救出プロジェクト-塹壕

これがナチス党では、SA(突撃隊)として、正式な軍組織に組み込まれる。
オレにやらせろ! 作家浪人Addicto救出プロジェクト-突撃

何が言いたいかというと、「ダース・ベイダー」は純然たるSWの造語だけど----
↓マクォーリーのダース・ベイダーのコスチューム案には、マスクだけはストームトルーパーのまま、というものもあった。
オレにやらせろ! 作家浪人Addicto救出プロジェクト-ベイトル
----「ストームトルーパー」はそうじゃないってこと。
なので実在のストームトルーパーと区別するため、SWの白い仮面軍団は、「インペリアル(帝国軍の)・ストームトルーパー」と呼ばれていた。

今のアメリカ人は、ストームトルーパーといえば、当然SWの方を思い浮かべるけれど。
オレにやらせろ! 作家浪人Addicto救出プロジェクト-コープス

日本では最初、ストームトルーパーという名前はオモチャでしか紹介されず、だから玩具・フィギュアコレクターは、はじめから、つまりタカラが玩具を展開した1978年当初から、このキャラをストームトルーパーと認識していた。

ところが小説版では、ストームトルーパーは、「機動歩兵」と言われていた。
映画の字幕には『帝国の逆襲』まで出番がなかった。
1作目のセリフには、「ストームトルーパー」は登場しなかったからだ。
で、『帝国』では、「帝国軍だ!」と3POが言う1カ所だけ。

だから1992年にSW復活気運が高まり、スピンオフ小説の第1弾、『帝国の後継者』の邦訳が出た時も、その訳語の古色蒼然ぶりに、大きな違和感を感じた。
オレにやらせろ! 作家浪人Addicto救出プロジェクト-表皮
ストームトルーパーが出てこないで、機動歩兵と言うのが出てくる。
もしかして、この機動歩兵って、ストームトルーパーのこと?
ああ、野田昌宏訳に準拠してるわけね。
じゃあ、ロケットバイクってのは、スピーダー・バイクのことか!
オレにやらせろ! 作家浪人Addicto救出プロジェクト-スカウト
----というように、読みながら自分の頭の中で、置き換え作業もしなければならず、
「これはSWを知らない人が訳してるな」もしくは「何も考えずに、以前の訳語を踏襲してるんだな」ということがわかってきた。

同じ1992年には、海洋堂がSWのソフビフィギュアの商品化を発表。
模型誌の広告などでは、こなれない「ストームトゥルーパー」表記も散見された。

ストームトルーパー表記を後押ししたのは、1988年(昭和63年)4月30日~1989年(平成元年)3月4日放送のアニメ「鎧伝サムライトルーパー」だったと思う。
オレにやらせろ! 作家浪人Addicto救出プロジェクト-サムライ

さて、では、ようやく本題の、ストームトルーパー(以下トルーパー)の元ネタ探しだが、平面デザインの時点では、ラルフ・マクォーリーは他からのインプット(指示や助言)をうけず、自分の中での、理想の仮面兵士を練り上げていった。

というのも、初期の段階では、帝国軍だけでなく反乱軍も、真空の宇宙空間で戦うという条件は同じなので、密封式のコスチュームとマスクに身を包む条件だって同じでのはずで、だから仮面に素顔を隠した反乱軍兵士、通称レベルトルーパーの案が、たくさん見られた。
↓ヤヴィン第4衛星の巨石文明遺跡を拠点にした反乱軍秘密基地から駆けだしてきた反乱軍兵士。プロダクションペインティングの部分拡大。
オレにやらせろ! 作家浪人Addicto救出プロジェクト-兵士
↓「レベルレンジャー」(反乱軍隊員)と名付けられたマクォーリーのスケッチ。上の図柄が、はからずもダース・ベイダーの原案のようになっているのが面白い。
オレにやらせろ! 作家浪人Addicto救出プロジェクト-レンジャー

結局ルーカスの意向で、人間性を否定した帝国軍兵士は素顔を隠すが、正義の反乱軍は個性を尊重するので、素顔をむき出しと言うことになり、仮面兵士のデザインは全て帝国軍に移行した。

それとは別に、マクォーリーはこの機会に、究極の宇宙戦士のスタイルを確立したいと考えてもいたようで、かつてのボツ企画「スター・ダンシング」に提供したデザインも再起用、再構成している。
↓ラルフ・マクォーリーにアプローチした映画作家は、ルーカスが最初ではなく、彼の大学時代の友人、マシュー・ロビンズとハル・バーウッドが、70年代の前半に「スター・ダンシング」という未実現の企画でマクォーリーを初起用した。
オレにやらせろ! 作家浪人Addicto救出プロジェクト-ダンス決
オレにやらせろ! 作家浪人Addicto救出プロジェクト-ミスターフリーズ
↓バットマンの悪役、ミスター・フリーズのアニメ版(右・1997~1999)にも似ているが、劇中のストームトルーパー(左)にも共通項が多い。
オレにやらせろ! 作家浪人Addicto救出プロジェクト-3人

マクォーリーが描いたストームトルーパーの頭部デザインは、
オレにやらせろ! 作家浪人Addicto救出プロジェクト-2Dトル
ガスマスク、中でも三叉(さんさ)式、つまり先が3つに分かれたタイプを参考にしていると思われる。
オレにやらせろ! 作家浪人Addicto救出プロジェクト-女性
↓三叉式ガスマスク各種。ただし時代的にSWの後、つまりストームトルーパーの参考になったのではなく、反対にトルーパーを参考にしたものもあるので注意。
オレにやらせろ! 作家浪人Addicto救出プロジェクト-4種

マクォーリーは頭部デザインにこりすぎてアーマー全身を描いていなかったので、プロダクションペインティングに意図的に全身像を描き込んでおいた。
オレにやらせろ! 作家浪人Addicto救出プロジェクト-全身

さて、舞台はイギリスに移り、立体造形班の出番となる。
現在、ストームトルーパーをデザインしたのは自分だと主張しているのは、シェパートンデザインスタジオのアンドルー・エインズワース、もしくは彼の造形チームにいたニック・ペンバートンだが、これは同社がトルーパーのマスクやアーマーの販売権を正当化するためで、信憑性はゼロに等しい。

エインズワースは、劇中に多数登場するトルーパーを量産する腕を買われて、ゴムボートや釣り堀のポリ素材の成型専門家として下請けをこなしたに過ぎず、その証拠にトルーパー以外に彼が手がけたマスクやヘルメットは、いちように単純な形状でしかなく、彫刻家や原型師の技の冴えがさっぱり見受けられない。

この件に関しては、前のブログ、
LFL訴訟の行方/SDSとの戦い
〈前編〉
〈中編〉
〈後編〉
で、お楽しみください。

さて、エインズワースの訴訟に異議を申し立てて、以下の写真を証拠として提出したのは、
オレにやらせろ! 作家浪人Addicto救出プロジェクト-アップ
ダース・ベイダーの頭部とアーマーの造形を担当したブライアン・ミュワで、ミュワは先任のC-3POの造形師リズ・ムーアを引き継いだ。
彼は、たかだか量産職人にしか過ぎないエインズワースが、トルーパーの原型師だったなどとうそぶくのに我慢がならず、この写真を提供し、ストームトルーパーの原型師はC-3POと同じ、リズ・ムーアであると証言している。
もちろん状況的にも物証的にも、ミュワの証言の正しさは疑いようもなく、リズ・ムーアがトルーパーの原型を手がけたことは間違いない。
特にムーアが1976年に交通事故で亡くなっており、エインズワースが「ボクがデザインしました」と勝手に名乗りを上げても、死人に口なしで反論のしようもなかった(=からこそ、エインズワースが図々しく主張も出来た)ことまで考え合わせれば、なおさらである。

ということとは別に、この写真の全体像もまた、トルーパーの頭部造形がリズ・ムーアの仕事だった確証を与えてくれる。
オレにやらせろ! 作家浪人Addicto救出プロジェクト-秘蔵
決定版の頭部原型と後ろに写っている若きルーカスではなく、右端のボツデザインのトルーパー頭部に注目してほしい。
オレにやらせろ! 作家浪人Addicto救出プロジェクト-ボツ
どうにもまとまりに欠け、決定版と並べてかなり劣ってしまい、どことなくタツノコメカを想起させ、
オレにやらせろ! 作家浪人Addicto救出プロジェクト-たっちゃん
およそシリアスな作品に登場するとは思えず、どちらを選びますかと問われても、ルーカスならずとも、誰でも絶対選ばないような、このふざけたデザイン!

しかしこれがまた、リズ・ムーアの仕事の特徴とも言える。
ムーアはC-3POの頭部粘土原型を数パターン作った時も、ひときわ優れたものを一つだけ造形し、残りは誰が見ても劣るものにしていた。
オレにやらせろ! 作家浪人Addicto救出プロジェクト-顔顔

とにかくムーアが造形した原型は、マクォーリーのデザインをそっくり引き写したわけではなく、各所に天才女流彫刻家の、腕のさえが認められる。
↓への字口の横顔やあごのラインは、チョウチンアンコウに似ている。
オレにやらせろ! 作家浪人Addicto救出プロジェクト-アンコウ
↓鮫のあごの骨が形作る輪郭は、トルーパーの下あご部の張り出したラインとよく一致する。
オレにやらせろ! 作家浪人Addicto救出プロジェクト-ジョーズ


明確に意識していたかどうかはともかく、ムーアはこのように、自然界にある有機的なラインを生かして、トルーパーの造形を説得力と魅力のあるものに仕上げたが、それだけでは、マクォーリーのデザインとの隔たりを説明しきれない。
もっとわかりやすく言うと、マクォーリーの絵(左)を参考にしただけでは、ムーアのような造形(右)には行き着くはずがない、ということ、ヘタをすると先述のボツデザインのような醜態に終わりかねなかったということである。
オレにやらせろ! 作家浪人Addicto救出プロジェクト-比較くん

と、ようやくここで元ネタの登場。
「イナズマンF(フラッシュ)」(1974年4月9日~9月24日)の5月7日放送の第5話、「DESミサイル大空中戦!!」に登場する、マシンガンデスパーである。
写真が小さくてスミマセン。
オレにやらせろ! 作家浪人Addicto救出プロジェクト-マシ
オレにやらせろ! 作家浪人Addicto救出プロジェクト-マシ2
そして実物との比較。
オレにやらせろ! 作家浪人Addicto救出プロジェクト-デスパー

特に注目すべきは、マシンガンデスパーの両肩にある弾帯で、これはマクォーリーのデザインには確認できないのに、
↓これは映画製作用でなく、ずっと後年に描いたものだが、それでも肩に段状のバインダーがなく、それがマクォーリーのデザインではないことがわかる。
オレにやらせろ! 作家浪人Addicto救出プロジェクト-後年
↓ヘルメットを脱ぐとよくわかる、ストームトルーパーの両肩を結ぶ段状のバインダー。
オレにやらせろ! 作家浪人Addicto救出プロジェクト-バインダー

劇中のトルーパーには、なぜかしっかり引き継がれている。

というわけで、今日はここまで。

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