特撮魂 東宝特撮奮戦記
2010-01-18 22:26:48
Theme: 特撮の話
特撮魂 ~東宝特撮奮戦記~/川北 紘一

¥2,310
Amazon.co.jpすばらしき怪獣映画の世界 やっぱり「特撮映画」というのはもうなくなっちゃったのかも知れません。いや、東映が唯一がんばっているだけで、少なくとも、かつて王道を誇った「東宝特撮」というものは文字通り終わりを告げた、そういいきっていいのだと思います。なぜなら、それを撮る職、すなわち「特技監督」という職種が東宝から消え去ったからです。代わって登場したのがVFX監督ということになるのでしょう。山崎貴などがそうですね。「ALWAYS 続・三丁目の夕日」の冒頭で、ゴジラが町を破壊するシーンが出てきますが、あれも特撮ではなくすべてCGですからね。まさにあのシーンが特撮の終わりを、図らずも特撮全盛期という場面を使って表現しているわけです。
それはそれで、仕方がないことなのでしょう。鉄道が発達すれば機関士は要らなくなって電車の運転士が必要になったのと同じで、正しい時間の流れの一つなのでしょう。ただ、CGでの計算された動画と違い、特撮におけるミニチュアや着ぐるみの動きは計算の及ばない人の技ならざる表現を時に起こすと言われ、その質感はこれからの映像作りでも欠かせぬ要素であろうと、古き昭和の特撮で育った私たちは思うのです。
そんな、かつてあった特撮の時代の最後の生き証人かも知れないのが、元東宝の特技監督、川北紘一氏です。その最後の特撮マンが語る自伝「特撮魂 東宝特撮奮戦記」を今回は紹介しましょう。
川北さんの特撮というと、「ゴジラVSビオランテ」以降のいわゆる平成ゴジラシリーズが代表的。「昭和特撮」といいながら平成シリーズが代表作というのは妙というか、皮肉ですが、特撮映画、いや怪獣映画の最後の火をともし続けてきた、いわば最後の「円谷を継ぐ者」。ご自身が円谷英二と仕事の接点があったのはわずか10年足らずですが、要所要所で「なぜ特撮か」という神髄を学んだ足跡がこの本の前半部で語られています。まずここは特撮ファンを語るものなら絶対読んでおかなければなりません。監督してだけでなく、編集作業の中からも学べる映像作りのノウハウの話などは、いまの職場に不満を抱えるサラリーマンの方にも、是非読んでおいてもらいたいくだりです。まさに塞翁が馬。
あと、あまり特撮ファンが語りたがらない、SFファンも触れたがらない、かの超大作「さよならジュピター」の制作にまつわるナガーイ年月の苦労話も必読。いやあ、これを読んだあとで「さよならジュピター」を見直せば、絶対違った映像が眼前に現れるはずです、たぶん。
そして、まだまだ特撮マンとしてやりたいことが山ほどありげな川北さんの意気込み。是非再び、VFX全盛のいまだからこそ残しておくべきリアルな特撮怪獣映画を、私たちの前に描いてほしいと願ってやみません。
ウルトラマンになった男
2009-12-28 23:02:08
Theme: 特撮の話
ウルトラマンになった男/古谷 敏

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ウルトラマンの中には本当のヒーローが入っていた さて問題。「ウルトラマン」の主役はだあれ?
ウルトラマンに変身するハヤタ隊員?出演テロップの筆頭に出てくるムラマツキャップ?それとも毎回出てくる怪獣?どれも当たってそうで不正解!
当然正解は、「ウルトラマン」です。え?ここまでは常識だろって?じゃあ、ウルトラマンを演じてたのはだあれ?え?中の人などいない?いやごもっとも。ウルトラマンを演じていたのは、実は本物のウルトラマンだったんですよ!!
あ~、帰らないで帰らないでお客さん。
いや別にふざけてるわけじゃないんですよ。ウルトラマンを演じていたのは本当にウルトラマンだったんです。少なくともきょう紹介するこの一冊を読めば、その意味をわかってくれるはずです。
というわけで、本日紹介するのはその名もズバリ「ウルトラマンになった男」です。
筆者は「ウルトラマン」のスーツアクターだった古谷敏さんです。あ、さっきの2問目の問題で「アマギ隊員」と答えたひねくれたあなた、是非文通しましょう。
そう、ウルトラマンの中にいた古谷さんは、その半年後、「ウルトラセブン」のウルトラ警備隊隊・アマギ隊員となって初めて私たちこともたちの前にその勇姿をあらわにします。この本では、この2年あまりにわたる古谷さんのウルトラ生活が事細かに綴られております。
元々東宝の俳優として活躍を望んでいた古谷さんが、その容姿に惚れ込んだウルトラマンのデザイナー・成田亨さんのたっての願いから“顔の見えない主役”に抜擢され、んまんどかくじけそうになった気持ちを子供たちの声援から奮起し、見事ヒーローを演じていった様が、生々し語られていきます。
また、もはや生存者の方が少なくなってしまったテレビ特撮黎明期の現場の様子や、その後40年以上国民的ヒーローの頂点を極めてきた英雄誕生の秘話もきわめて貴重。
その昔ウルトラマンのあのすらっとした容姿に魅了された経験を持つ昭和の子供たちなら、是非その中にいた本当のヒーローの話に耳を傾けてほしいです。そしてあのときのヒーローは、俳優から身を引いてから今までの40年間、過酷な闘いを続けていたことを知っていただきたい。特にこの10年ばかり、本の中で具体的な言及はされていませんが、「やっと帰ってこられた」という古谷さんの言葉から、孤独なウルトラマンのもう一つの闘いがあったのかなという印象を感じずにはいられません。
2年前、映画「ギララの逆襲」で久々に俳優業に復帰した折、あるイベントで生のお姿を拝見したのですが、そのときの古谷さんの笑顔と、“本物”のスペシウム光線のポーズが非常に印象的でした。その笑顔の裏には、その直前までの言いしれに苦労があったのだなと、改めて知った思いです。
仮面ライダーになり損ねた女の復権
2009-12-13 22:53:07
Theme: 特撮の話
オタクのライフワークの一つとして、1号から基本的に全シリーズ追い続けてきた「仮面ライダー」。今年は「平成ライダー」が始まって10周年という節目を迎え、過去の作品をたどっていく「仮面ライダーディケイド」や、初めての二人の合体変身「仮面ライダーW」、昭和・平成全ライダーが集結した映画「オールライダー対大ショッカー」の上映、さらに海外でもテレビシリーズ「KAMEN RIDER」も放送されたりと、まさにお祭りのような1年でした。
でも、そんなお祭りの中で、ずっと引っかかっていたものが私にはありました。それはこのお祭りにあっても蚊帳の外に置かれていた一人のキャラクター。その名は「電波人間タックル」。昭和ライダーシリーズ唯一の、変身するヒロインです。「仮面ライダーストロンガー」に登場した彼女は、ファンの方なら知っての通り、仮面ライダーではありません。
でも、ストーリーの中ではっきり描かれている通りの改造人間であり、他のライダーとは大きく力が劣るとはいえ、仮面ライダーを名乗る資格が全くないと言うほどのことはないように思えます。基本的に、仮面ライダー4号を名乗ったライダーマンと変わらないと、放送当時小学生だった私には見えました。
そしてタックルの悲劇は、昭和ライダーシリーズではただ一人、決して復活する可能性のない形で戦死した味方変身キャラ(メインキャラという意味で)である点にあり、このことこそが皮肉にも、タックルの存在を際立たせることになります。

「ストロンガー」のプロデューサーだった平山亨氏が後にインタビューなどで語ったところでは「(ストロンガーに変身する)城茂のパートナーとして葬りたい」という茂の思いを反映したためとし、最近コミック化された「仮面ライダーSPIRITS」の中では平山氏の意向を尊重して「城茂が(タックルに変身する)ユリ子を仮面ライダーではなく普通の女性として弔いたい」とする物語が描かれています。
でも、実際の制作当時はそんな設定などなく、タックルが死んだ次の回でこそ、城茂が墓参りをしている姿が出てきますが、それ以降、7人ライダーが集結して最後の決戦に挑んでいくまでの“昭和ライダー最大のクライマックス”において何ら言及されることはありませんでした。その後平成ライダーシリーズが始まったものの「電波人間タックル」に言及する機会などあるはずもなく、その第3作「仮面ライダー龍騎」で史上初の女性ライダー「仮面ライダーファム」が登場した際、「実は変身するヒロインは昭和ライダーシリーズにもいた」と、ほとんど珍種扱いで関連メディアに登場したのが関の山でした。
そんな冷遇を強いられていた電波人間タックルが、まさかまさか、今週末から劇場公開された平成ライダー10年企画の総仕上げ「仮面ライダー×仮面ライダー W&ディケイド MOVIE大戦2010」に登場したのです。

かつてのイメージを保ちつつリファインされたその姿はまぶしいばかり。そしてそれは、単なるおっさんオタク向けの客寄せパンダではなく、「自分が死んだことさえもよくわからず、自分の居場所が見つけられないままさまよい続ける存在」という、まさにこの34年間「電波人間タックル」というキャラクターが置かれていた立ち位置そのものとして描かれています。劇中で岬ユリコ(パラレル設定なので微妙に名前の表記が違う)は言います。「ずっと誰も私のことを見てくれなかった」と。そしてライダーたちを倒していく破壊者・ディケイドに共感して行動をともにする。まさにタックルの復讐。
実際のところ、今回の映画を作った監督・脚本家がタックルの登場にどのような意味を持たせようとしたかは直に聞かなければわかりませんが、これまで冷遇された「電波人間タックル」という、実は私のような当時の男の子たちの頭に言いしれぬ記憶を刷り込んだキャラクターに対する復権を考えたとすれば、正直、ようやく一つの回答を得たような、胸のすく思いを感じるものです。
東映ヒーローMAXスペシャル W×DECADE (タツミムック 東映ヒーローMAX SPECIAL)/著者不明

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東宝特撮総進撃(別冊映画秘宝)
2009-10-26 15:31:28
Theme: 特撮の話
「特撮映画」はなぜなくなったのか 今、「特撮映画」というジャンルはともすると消滅してしまったのかもしれません。「ゴジラ」や「ガメラ」が制作されなくなったことをいっているのではありません。怪獣映画が絶えてしまったのは確かですが。強いていえば「仮面ライダー」や戦隊シリーズの劇場版が毎年作られているのが「特撮映画」というジャンルを維持していることにはなるのでしょうが、これも実は怪しい気が、私はします。
何を言いたいのかというと、今、どんな映画でも、SFであろうと恋愛ものであろうとノスタルジーや時代劇だろうと、何かしらの形で「特撮技術」が加わらないと映像作品として成立し得ないわけですね。その使われ方がどれくらいかを語るのは、もはや無意味なレベルにまで、すでに浸透しきっているのが現状です。むろん、私たちが子供の頃に見てきた着ぐるみの怪獣とミニチュアの町並みとが織りなす昭和特撮のアナログ感とはだいぶ趣の違う、精巧に描かれたCG、VFXという形での、いわば2次元表現による3次元性の再現なわけですが。
でも、最近の戦隊ものや仮面ライダー、ウルトラギャラクシー大怪獣バトルなどを見ればわかるように、本家特撮のジャンル自体がこのCG技術を最大の武器に作られている状況を見れば、もう「特撮」とそれ以外を分け隔てる意味はないと言っていいと思うのです。
ただ、誤解なきように指摘しておくと、「特撮映画」というジャンルがなくなったことを嘆いているわけではないのです。むしろ誇らしく思っているんです。我々がずっと見守ってきた特撮技術という文明が、いわば映画の血や肉となって全体に影響を及ぼし必要不可欠な存在に上り詰めたことがうれしくてたまらないのです。そりゃあ、昔のミニチュアや着ぐるみへの思い入れが強いのは確かですが、今の世界全体の経済状況などを踏まえると、そのスピリッツだけでも受け継がれていることを素直に喜ぶべきと思うんですよね。
そうすればいずれ、「たまにはミニチュアで作ってみようか」なんていう好き者が現れることもあるでしょうから。
で、その好き者たちを生み出した日本の特撮映画の足跡を熱く語るムックを見つけましたので今回はこれを紹介したいと思います。タイトルは「東宝特撮総進撃」です。
初代「ゴジラ」から始まり「モスラ」「ラドン」「サンダ対ガイラ」「キングギドラ」など日本が世界に誇る怪獣ものの数々から、「日本沈没」、「妖星ゴラス」、「緯度0大作戦」などSF、パニックもの、「透明人間」「ガス人間第1号」などスリラー系などなど、昭和29年から平成に至る東宝が手がけた「特撮映画」のすべてが詰め込まれた、もうこれ一冊でご飯どんぶり3杯くらいは軽くいける贅沢な盛りつけとなっております。
しかも各作品に寄せた文章にはみうらじゅんを筆頭に「こいつに是非語ってほしい」というメンツが、惜しみなく愛情を降り注いでいる、怪獣に育てられた私のような人間にはまさに夢のようなムックです。
「ご家族そろって楽しめる怪獣本の決定版!」などと白々しい文句が表紙を飾っておりますが、こんなもん、家族なんかに恥ずかしくてもったいなくて見せられますか!!
劇場版ディケイドに見る昭和ライダーの立ち位置
2009-08-09 00:10:12
Theme: 特撮の話
特撮ファンにとって絶対外してはいけない注目の映画、「劇場版仮面ライダーディケイド オールライダー対大ショッカー」をさっそく公開初日のきょう、見て参りました。これから見ようと思っている方も多数おられるでしょうから、ストーリーに深入りするのは避けるとして、全般としては特撮ファンのナット行く部分半分、あまりに詰め込みすぎて時間が足りなすぎという感じの作品とだけ言っておきましょう。まあ、平成ライダーシリーズ10周年のお祭り映画という位置づけですから、その許容範囲の出来であったことは間違いないし、新旧特撮ファンの必須課題といえるのもまた確かです。
で、面白いな、と思ったのは作り手サイド・ファンサイド双方を掛け合わせたであろう、昭和ライダーの格付けというか、それぞれの立ち位置なのであります。
冒頭のライダー同士がガチンコ勝負を繰り広げる「ライダーバトル」(別名ガンバライド実写版)とクライマックスの大ショッカーとの大決戦、それとこれまでのテレビ版仮面ライダーディケイドでのこれまでのライダーの登場パターンなどを加味すると、
1号&2号の存在感の重さ。
世代を超えた支持がズバ抜いて強いV3。
敵方が魅力的すぎたX。
その容姿はいまだ際立つアマゾン。
エレクトロファイヤーの切れの良さがかっこいいストロンガー。
やっぱり存在感薄いスカイライダー(中の人は出世頭なのに)。
7つの腕はどうしたスーパー1。
ただの顔出しZX、ZO、真。
隠し球にしてはでかすぎるJ。
敵役がかっこよすぎその2、ブラック。
意外と平成ライダーの正当な源流、ブラックRX。
そして、どう見ても全ライダー中最強にしか思えないGACKTライダーマン(変身前)。
まあ、これだけのキャラを登場させて60分ちょっとの尺におさめた監督の手腕は評価したいところですが、やはりディレクターズカット版を見ないことにはちゃんとした評価は難しいのかな。個人的には電波人間タックルに登場して欲しかったのですが…。え?それはライダーじゃないからって?だってこれじゃ男臭すぎるじゃん。
それにしても「シンケンジャー銀幕版」の前座感はひどすぎた。
