不透明な時代を見抜く「統計思考力」 | ただのオタクと思うなよ

不透明な時代を見抜く「統計思考力」


 昨日のブログでは書かなかったのですが、昨日取り上げた「ウェブはバカと暇人のもの」の中で繰り返されていた言葉に、「ネットの情報など所詮はニッチ」と言うのがありました。最近よくある宣伝文句に「ネットで話題の」という接頭語をつけているのをよく見かけますが、これほどいい加減な言葉もないものです。「ネットで流行っていること」ほど、人による温度差の激しいものはないことは、ネットで常に多くの情報に接している人ならリアルな空間で感じるギャップでよく実感しているのではないでしょうか。
 ネット上に流れる情報だけでなく、新聞紙面やテレビで報じられる情報でも、「今、○○が流行っている」などともっともらしく書かれても、それが実際どれくらい流行っているのか、自分が知らないくらいだから本当は全然流行ってないんじゃないか、そう疑いたくなることもよくあります。
 そんなもやもやっとした「事実」は、客観的データを持って裏を取る必要があります。とはいえ、どのデータを見れば真実を見極められるのか、なかなか難しいのも確かです。その辺りのテクニックを紹介しようというのが「不透明な時代を見抜く「統計思考力」」です。
 「インターネットが普及したおかげで本が売れなくなっている」「小泉首相のせいで格差社会がひどくなった」「数学が出来るビジネスマンは年収が高い」「凶悪事件が一度起きると立て続けに起こるようになる」など、何となく「そうだよな」と思い込んでいる通説を、的確な統計データを用いて真実を見極める習慣を身につけようというのが本全体の趣旨。どの事例も一面的に全くでたらめではないものの、データの当て方によって通説とは全然違う真実が見えてきたりするもので、例えば、本が売れなくなっているのは、インターネットが普及する以前からの傾向だったり、「数学が出来るビジネスマン」も世代によって条件が大きく異なってくるなど、もっともらしいデータに潜む盲点に気をつけようと言った話が出てきます。
 社会性の高い内容を例題にしている分、本全体のアウトラインとしてはあらかた理解できるのですが、結構込み入った統計学用語も登場するなど、細かく読み解くには腰を据えてかかる覚悟が必要な、手応えのある内容というのが、文系人間の私の印象です。とはいえ、文章自体は決して難解ではないので、少々身構えて取りかかれば、決して理解できないほどの内容ではないと思います。何より思い込みで失敗する癖のある方には、是非お薦めしたい一冊といえるでしょう。

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