2012年01月03日(火)

采配

テーマ:本棚
子供の頃、祖父の仕事の関係で今はなき川崎球場に何度か野球を観に行った。

川崎球場は現在の千葉ロッテマリーンズ(当時ロッテオリオンズ)の本拠地であった。
当時のロッテは決して強いチームではなかったが、私が観に行った時はどういう訳か勝った。

断片的にしか覚えていない幼き頃の記憶だが、鮮明に覚えているシーンがある。

ある日の西武ライオンズ戦。

左中間スタンドに独特の美しい放物線を描いて飛びこむ満塁ホームラン。

打った瞬間に(スタンドに)入るとわかる白い打球。
ナイターの照明に照らされたそれは夜空にスッと線を引いたようできれいだった。


当時の三冠王 落合博満の打球である。


その後、落合氏はセパ両リーグのチームを渡り歩き、2004年に中日ドラゴンズの監督に就任。
結果は周知の通り、名選手でありながら監督としても素晴らしい結果を残した。

在任期間中(2004年から2011年)の8年間は全てAクラス。
(優勝4回、2位3回、3位1回、またチーム53年ぶりの日本一にも導いた。)

お金に物を言わせて大型の補強をするのではなく、今あるチームの力を引き出しながらの戦い方で結果を残すところに、落合監督の凄さを感じていた。

また同時にビジネスの世界でも通用するマネジメント力・ノウハウがあるのでは?と興味を持っていた。
マスコミからは一部歪曲されて伝えられているであろう本当の落合流を知りたかった。


その落合氏が自身のこれまでを振り返りながら、考え方やノウハウをまとめた1冊。

「ビジネス界の方が野球界より厳しい部分もあるのではないか」と感じているという落合氏からビジネスパーソンに向けたビジネス書といったところだ。

多くのビジネスパーソンにとってヒントとなる箇所が必ずやあるだろう1冊。


「采配」
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落合博満
ダイヤモンド社
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構成としては、前半は自分自身との向き合い方や仕事に対する考え方が書かれている。
・1章 「自分で育つ人」になる
・2章 勝つということ
・3章 どうやって才能を育て、伸ばすのか


後半は、リーダー(上司)のあり方、チーム(組織)の作り方、そして最後に次のリーダー(後継者)の見つけ方・育て方について書かれている。
・4章 本物のリーダーとは
・5章 常勝チームの作り方
・6章 次世代リーダーの見つけ方、育て方



私は書店でこの本を手に取って、第1章のタイトルの脇に書かれている言葉で購入を決めた。

本当の意味でのプロとは、
自ら考え、責任を持って行動し、
積極的に教えを乞い、成長を続ける、
いわば「自立型人間」のことである。


そうですよね。これはもう。
プロ=職業人 ってそういうことですよね。

という気持ちになる。
自分の行動に当てはめて考えると「痛い」ところもあり、大変深い言葉だ。


読みながら多くのページに折り目がついた。
(心に響いた言葉があるページを折りながら読むので)

その中でも前述の輝かしい結果を残したひとつの要因でもあり、
今の私に一番響いたのは、
「第4章 本物のリーダーとは」の中から
「できる・できない、両方がわかるリーダーになれ」であった。

なぜ毎シーズンAクラス(3位以上)に入れるチームを作ることができたかを問われて、唯一はっきりと答えられるのは
「選手時代に下積みを経験し、なおかつトップに立ったこともあるから」
とのこと。

高校時代は野球部の入退部を繰り返し、大学は中途退学。
一時はプロボウラーを目指したことも。
社会人では東芝府中でサラリーマンも経験しつつ、プロ入りできること自体を「儲けもの」だと考えていたようだ。
2年間は1軍とファーム(2軍)を行ったり来たりという「下積み」を経験。
やがて、三冠王を3回も手にして球界のトップに。

そのため、「できない人の気持ち」も主力選手の気持ちもわかるという。
またそのため、特別扱いはせずに、やる気のある者の自己成長をサポートしてやろうと考えるのだそうだ。

ビジネスの世界には様々な人がいる。
「できる人の思い」「できない人の気持ち」、両方の気持ちを理解できるリーダーになってほしいと落合氏は言う。

激しく同意。

このリーダー論と少し似ているが、私が普段から感じていることを少しだけ書こうと思う。
(読者に誤解を与えずにうまく表現できるか自信はないが)

やや極論ではあるが、いわゆる「コンサルタント」を生業とする人はどこかでモノづくり(製造業)を経験してほしい。
(製造業の経験が極論過ぎるなら、理屈の通じない感情で動く世界を感じてほしいと言い直そう)

まったくの偶然かもしれないが、これまで私が出会った「優秀な」コンサルタントの共通項は製造業経験者だった。

というのも、仮にABC会計を駆使して、人の行動単価を算出し、“理論的に”最も効率的な工程や配置を組んだところで人は動かない。

「確かに言うとおりだけど、嫌だね」
逆に
「よく分からないけれど、おまえが言うならやるよ」

人を動かすのには理屈ではない感情の世界がある。

製造現場では特にそうだ。
古い日本企業では特にそうだ。

理屈ではない職人気質のような感情。
是非、そこを肌感覚で理解して、現場に飛び込んでコンサルしてほしい
(もちろん、理論もとても大事なことは言うまでもない)

私の専門分野である「人事・総務」もそうだと思う。

感情ありきではいけない。
だが、
・理論に感情をそっと添える(寄り添う)
・規則を忠実に守って、最後にそっと感情を添える

 (例外規定や経過措置など)
そんな感覚が必要なのだと思う。


う~ん。だい~ぶ、横道にそれてしまった。
まあ、それだけいろいろと考えながら読むことのできるヒント満載の1冊ということで許していただきたい。

<関連図書>
コーチング―言葉と信念の魔術
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