カフェ回り | あんざいのりえ=アコるデノンノン

カフェ回り

私が初めてアビニヨンに来た時、
レストランでご飯を食べてると、いろんな業種の人が回ってきた。

物乞い
花売り

びっくりしたのは、ジッポー売り。
目の見えないそぶりで、各テーブルにジッポーを置いていく。
しばらくすると、ジッポーを集めて回る。
もし、ジッポーを買う場合は、ジッポーの置かれていた場所に5ユーロを置いておくと、集めに回ってくる。
目が見えないはずなのに、どのテーブルのどこに置いたかをはずさない。
……多分、見えてると思う。

そして、もちろん音楽もやってくる。
だいたい3曲くらい演奏して、店の灰皿を借りてチップを集めて回る。

カフェは、ジプシー達の仕事場だった。

でも、状況は変わってきた。

今、アビニヨンで、カフェ回りをしているのは、
地元のフラメンコギターと歌手のコンビと私だけだ。

ジプシー達は、サルコジ政権になってから、テーブルを回ってチップを集めるのを禁じられてるようだ。

街角でバンドで演奏して、
そのとなりで女の人が、CDを持って立っている。
一応、物販って事らしい。

これは、アンデスのフォルクローレのやり方と同じ。

きっと、ブローカーみたいな組織があって、CDを作らせて、マージンを取ってるんだろう………

でも、ジプシーの音楽家は、どんなに搾取されようとも、仕事の形態が変わろうとも、
音楽はやめない。

彼らが音楽をやっているのは、それが代々受け継がれてきた仕事だから。
彼らは、それ以上の仕事には就けない。
だから、どんな逆境がやってきても、音楽はやめない。
もし、彼らがやめてしまえば、彼らの子供や孫や、その次の代の子供達も、職を失う事になるから。

そんな、かないこない彼らの胸をかりて、一生懸命、張り合うのは楽しかった。

でも、今は カフェに彼らの姿はない。

フランスらしい景色がなくなりかけている…………


まぁ、でも、逞しい彼らの事だから、どんな手段を使おうとも、フランスにやって来て、
金を稼ぐ事だろうけど………

(何らかの文献など読んだわけではなく、あくまで私の感想)