願望の一つとして、
『自分が超能力者だったら』
というものが挙げられるだろう。
もちろん、
超能力者になったからといって、
女性の衣服を
透視しようと考えている訳ではない。
更に言うならば、
女性の入浴シーンを
遠隔透視しようと
考えている訳でもない。
無いったら
無いのであるが、
ホントに超能力があったら
やらないかと聞かれれば
やらない自信も全くない。
学生時代の
あぶない友人で、
アパートの隣に
美人のお姉さんが
住んでいたS君は
『隣の部屋が覗けるレンズ』
なるものを
通販で見つけて購入し、
届いたものを見てみたら
玄関等で使われている
魚眼レンズが入っており、
取扱説明書に
『壁に穴を開けてお使い下さい』
と書いてあったという。
この場合もS君が
もしも超能力者であったら
こんな無駄金は使うことも
無かったであろう。
って、その前に
普通そんなもの買わない。
TVに出ていた超能力者が
スプーンを簡単に曲げているのを見て
感動した覚えがある。
その超能力者によると、
こういった力は
その強さの違いこそあれ、
本来誰にでも備わっている
との事であった。
逆に言うと、
誰でも訓練により、
少し手で曲げてやる必要はあるが、
本来金属が曲がるはずのない位の
弱い力でスプーンを曲げる事位は
出来る様になるとも言っていた。
当然、その日の夜、
家族が寝静まった後に
俺がとった行動など
決まっているではないか。
台所で恍惚とした表情を浮かべて
スプーンをこする俺がそこにいた。
明日になれば
俺は学校でヒーローである。
何しろ超能力者なのだ。
スプーン曲げなど
お茶の子さいさい、
皆の一様に驚いた表情が
目に浮かぶ。
こみ上げてくる笑いを
必死にこらえ、
俺はひたすら
スプーンをこすっていた。
しかし、である。
スプーンの奴は
こすれどもこすれども
曲がる気配がない。
超能力者は
確かに誰でもその力があると
言っていたはずである。
これでは俺は
ヒーローになれないではないか。
待てよ、確か最初は
少し手で力を加える必要があるとか
言っていたな?
やはり物事には順序が大切である。
俺はスプーンを握りしめ
少し力を加えてみた。
曲がらない。
しょうがない、
もう少し力を加えてみよう。
曲がらない。
しょうがない、
もっと力を加えてみよう。
曲がらない。
しょうがない、
もっともっと力を加えてみよう。
曲がらない。
しょうがない、
かなり力を加えてみよう。
曲がらない。
しょうがない、
気張ってみよう。
「ふんがーーー!!」
と、なんと
スプーンは曲がり始めたのだ!!
俺の両手は
ぷるぷる震える程の力が
かかっていた様な気がしない
でもないが、
細かいことはこの際
どうでも良い。
最初に(少し)力は
必要なのである。
とにかくスプーンは
俺の超能力と
(少しの)力により
見事に曲がったのである。
後は訓練により
力の部分を少なくするだけだ。
「ふんがーーーー!!」
両手の平を
真っ赤にして俺は
家中のスプーンを曲げまくった。
最後の方は
こすりもせずに
いきなりふんがふんがって
言っていた様な気がしないでもないが、
細かいことはどうでもよい。
もう完璧だ。
確かに(少し)力は使っていたが
スプーンが曲がったのは
紛れも無い事実である。
あとは超能力の部分を
さり気なく強調すればいいだけだ。
俺ははゼーゼー言いながら
最高の気分で床についた。
次の朝、
俺は母親の超剛力により、
腕をねじ曲げられたのは
言うまでもない。
では、また。
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