あべせつの投稿記録

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公募ガイド エッセイ新コーナー

第一回 応募作品

課題 《比喩の効用を考え、これを効果的に駆使したエッセイ》 600字

 

 

関西人  

あべせつ

 

 

 

「お前、朝飯ちゃんと食うて来たんか? そんな風呂の中で屁ぇこいたみたいな声では後ろまで聞こえんぞ」

関西では学校の先生からして、お笑い芸人のようにウケとオチを意識してしゃべる。

「〇〇君、大きな声で答えましょうね」などとストレートには言わない。

 仮に言われたら、子供はきつく叱られたと思って、煮すぎたうどんのようにしおたれてしまうだろうと思う。

 小さい内から叩き込まれて、日常会話は比喩だらけ、それが当たり前という環境の中へ、

ある日夫が関東から越してきた。生粋の東京人である夫は五年前、念願の自分の店を開いたのだが、当初は面食らってばかりいたらしい。

「四百円のものを、三百円にしろと言ってきかない客がいるんだよ。それなら赤字になるからと、いくら言っても納得してくれなくてさ」とハロウィンのカボチャのような顔をして私に愚痴る。

「ああ、そんなん、こんこんと説明したかてアカンわな。そんな客には『大将、堪忍して下さいな。そんなんやったら鼻血も出ませんわ』と泣いた恵比寿さんみたいな顔して言うたり」

「ええっ? 俺そんなこと出来ないよお」

 とまあ、五年経った今でも夫は関西式ができないので、相変わらず自転車屋は自転車操業。ヘタな落語家のオチのようになっているのである。

 

 

 

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課題が難しすぎるのと、第一回目なので、どんな作品を4求めておられるかが

わかりません。とりあえず、思いついたまま自分の書きたいように書いてみました。

もし時間があれば、もう一本、今度は真面目な文章で書いてみたいと思います。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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課題「桜」

 

花の色

あべせつ

 

 

 

--花の色は うつりにけりな いたづらに わが身世にふる ながめせしまに 小野小町

 

 花残り月とは、よくぞ名付けたものでございます。その日、庭の桜はまるですべてを封じ込めるかのように、四月の空を覆い隠して咲き誇っておりました。例年ですと、とうに葉桜になっていようという頃合いですのに、稀有なことに花冷えが長く続き、桜雲を仰ぎ見る中での母の弔い上げとなりましたのでございます。

 そういえば、過ぐる日の葬儀の時も、このような遅桜でございました。時ならぬ狂い咲きも、母の仕業かと思いますと何やら可笑しく、読経の最中(さなか)というのに不謹慎にもつい忍笑をしてしまうのでした。

夕刻、義理筋の参列者たちが早々に引き上げますと、古い屋敷の中は伽藍堂のようになりました。ひとり残された私は片づけを終えると、喪服のまま庭に降り立ち、老桜を仰ぎ見ました。

月明かりの下、こぼれ散る花びらを見ておりますと、夢見(ゆめみ)(ぐさ)と異名した古人(いにしえびと)の気持ちがよくわかります。亡き母も、桜に夢見たひとりでございました。

 

幼い頃に戦禍でふた親を失いました母は、年老いた祖母に弟妹たちと共に育てられました。食うや食わずの戦後の混乱期をなんとか生き抜き、街にも活気が戻り始めましたのが二十二歳のとき。母は是非にと請われ、神戸は元町の呉服屋で売り子として勤め始めました。後帯の頃より、今小町と世間様から持て囃されていた母は、たちまち界隈きっての看板娘となり、一年も経たぬ内に多くの縁談が舞い込むようになったのでございます。

呉服屋の旦那さんのお引合せで、大阪の料亭の若旦那との縁談もほぼまとまり、「これでようやく赤貧の暮らしから、祖母や弟妹達を楽にしてやれる」そう思った矢先、母は結核に罹患したのでございます。当時、死病と忌み嫌われておりましたその病に、婚約は破談、勤め先からもお暇を言い渡され、その後は数年にわたる療養を余儀なくされたのでございました。

僻地の療養所で臥せる、失意の母を慰めましたのは病室の窓に覆い被さるように枝を伸ばした桜の古木でありました。

「桜はね。厳しい寒さを超えるからこそ、春に花を咲かせることができるのだよ」

主治医の言葉に、母は我が身を重ね合わせ、「いつか、きっと」と耐え忍ぶことができたそうでございます。

桜の盛りを三度越え、ようやく容体も落ち着いてきました頃、母は療養所を出ますとともに、自らを陰日向なく支えてくれていた若き青年医師、つまりは私の父と結婚をいたしました。

母の達て(たって)の希望で、祝言は本家の庭の満開の桜の下で行われました。病を乗り越えた母の美貌には一層磨きがかかりましたとみえ、賓客たちからの「まるで桜の化身」との賛辞に、母は酔いしれたそうにございます。

その後は長らくの間、安楽に暮らしておりました母を、再び悩ませましたのは、忍び寄る老いでありました。街で背なの曲がった老婆などを見かけますと、さもそれが自分にうつるかのように眉を顰め、ハンケチで口をおおい足早に通り過ぎるのでございます。

「ああは、なりたくない。ああなる前に死んでしまいたい」

 日頃より、口癖のように申しておりましたが、まさかそれが本気であろうとは知る由もございませんでした。

 三十二年前のあの日、夜半に母の姿のないことに気付いた父が、屋敷内を探し求めておりますと、庭の方角から妙に明るい光が差し込んできたのだそうでございます。いぶかしく思った父が、広縁の障子を開けて庭を観ますと、花明かりの下で桜の果実となりし母の姿を見つけたのでございました。

 知らせを受けた私は、まさかという驚きとともに、どこか心の奥底で「ああ、やっぱり」とも思ったのでございます。

 その前年の秋の日に、母は還暦を迎えておりました。 それでも冬を耐え、桜花爛漫の日までを待ちましたのが、いかにも母らしいことでございます。

 小野小町は落魄し、己の老醜を嘆きながら没したと申します。

--散り急ぐのは潔いのか、愚かであるのか。

 母に似ず、美貌に縁のなかった私には、到底わからぬことではありますが、晩年を亡き父の代わりに桜守をしながら暮らして参ろうかと思うのでございます。 完

 

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課題「桜」 2作目

桜騒動 

あべせつ

 

 

 

 

終業後、そそくさと帰宅した俺は、新しく我が家となった古風な日本家屋の前にたたずんだ。

南向きの重厚な数寄屋門を真中に、東西に長く築地塀が伸びている。その塀の瓦屋根から、今が盛りの桜並木が卯月の夜空を突き上げながら白く染めているのが見えた。

「自宅で花見ができるとは、何とも風流やなあ」

 俺は勢いよく玄関の格子戸を開けて入った。

 

 

 先月、亡母の姉が他界した。名前しか知らぬ伯母であったが、身寄りは俺と兄貴だけということで、二人して弁護士に呼び出された。細かい内容は端折るが、とにかく『桜の面倒を見てくれる人に全財産を譲る』、そういう遺言があるとのことだった。

金持ちのくせに昔から強欲な兄のこと、こりゃあ『遺産争続』になるぞと、腹をくくった俺に「なあ剛史、お前が住んだらどや」と案に相違して兄が言い出した。

「えっ? いいの?」

「俺はもう自分の家があるさかいな。お前んとこの子供も、もう大きなっとるんやさかい、アパート暮らしでは手狭やろう」

--やっぱり、いざとなったら兄弟やな。

不覚にも目頭が熱くなった。

 

 

「ちょっと、あんた、これ見てえな」

 引越しした翌朝、妻の洋子がポストに入れてあったという一枚の紙を俺に突き付けた。そこには一言『花殻の掃除をしろ。迷惑だ』とマジックで乱暴に書きなぐってあった。

「誰やろ。気持ち悪いわあ」

洋子は気味悪がったが、俺はただの悪戯と大して気にもとめていなかった。

ところが、それから毎日のように苦情を書いた紙が、郵便受けに放り込まれるようになったのである。

「もう、あんたもちょっとは掃除手伝ってえな。道掃くだけで、どんだけ大変やと思うてんの。私かてパートに行かなあかんのに、掃除ばっかりやっとられへんわ」

 帰宅するなり洋子の怒号が飛んできて、俺はあわてて箒を手に表へと飛び出した。

 

 

 一週間ほどで花の盛りは過ぎ、やれやれ一件落着と思われたのだが、桜の厄災は留まることを知らなかった。

葉桜の頃になると、『暗い。枝切しろ』、入梅すると、『毛虫を何とかしろ』と書かれた紙が入れられた。

「これって、お隣さんとちがうの?」

「ううむ、どうも、そうらしいな」

確かに伸びるに任せた枝葉は、近隣に影を落とし、さらにはドクガが大発生していた。この毛虫に刺されると熟れた苺のようにぶつぶつと赤く腫れ上がり、あまりの痒さにかきむしると今度は火ぶくれが弾けたほどの痛さに飛び上がるのである。何より始末が悪いのはこの毒の毛が風に乗り、知らぬ間に人や洗濯物に付いたり、窓から家の中に入ってくるので防ぎようがないことであった。

とはいえ、二階の屋根を越そうかという大木を、素人がどうこう出来るはずもなく、仕方なく植木屋を頼んで事を収めてもらった。

「こんなん、なんぼパートに出たかて追いつけへんわ」

 多大な出費に洋子はむくれた。

 

 秋になると、今度は落ち葉の災難が起きた。「あんたんとこの落ち葉が、うちの樋に詰まって、えらい往生しましたわ」と、お隣さんが清掃業者の請求書を持って怒鳴り込んできたのである。とりあえず平身低頭に謝って堪忍してもらったが、洋子も俺もほとほと疲れ切ってしまった。

 

 そんなある日、珍しく兄貴が我が家を訪れた。

「昨日、弁護士がうちに来てな。そろそろ遺産分割協議書とか言うんを作らなあかんらしいねん。お前、正式にこの家を相続するか? 税金はこれぐらいかかるらしいけどな」

 目の玉の飛び出るような相続税の金額に腰を抜かしてしまった。

「こんな大金、俺らには無理やで」

「さよか、ほんなら俺が貰うても文句あらへんのやな?」

もう桜の世話は懲り懲りだった俺たちは、一も二もなく相続放棄の手続きに捺印した。

早々に屋敷を出ることにした俺たちに、何回も引っ越して大変やろうと、まとまったお金をくれたのには有難さに涙が出た。

 

 翌春、兄貴もさぞや苦労をしてるだろうと屋敷を訪ねてみると、ものの見事に桜の木は切り倒され、売家の看板が立てられていた。

「どういうことやねん。桜の世話が条件やったんと違うんか」

血相を変えて自宅を訪ねた俺に、玄関先で兄貴は「そやけど、いつまで見ろとは書いてなかったやろ? 一年は面倒見たんやから反故やないで」と、いけしゃあしゃあと言い放った。   完

 

 

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「桜」で、もう一作、応募しました。

 

 

 

 

 

 

 

 

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